第 4 章 楕円関数フィルタ 100
4.5 設計例
4.5.4 一端短絡共振器
が悪化していることを考慮すると,前節の1段目および3段目に短絡スタブを用 いた場合と比べて,放射損失による影響を大きく受けていると考えられる.
-100 -80 -60 -40 -20 0
1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
|S21| [dB]
Frequency [GHz]
Frequency [GHz]
f1=4.0 GHz f1=3.5 GHz f1=3.0 GHz
-0.10 -0.05 0.00
2.4 2.5 2.6
|S21| [dB]
(a) SB = 40 dB
-100 -80 -60 -40 -20 0
1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
-0.10 -0.05 0.00
2.4 2.5 2.6
|S21| [dB]
Frequency [GHz]
Frequency [GHz]
f1=4.0 GHz f1=3.5 GHz f1=3.0 GHz
|S21| [dB]
(b) SB = 50 dB
-100 -80 -60 -40 -20 0
1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
-0.10 -0.05 0.00
2.4 2.5 2.6
|S21| [dB]
Frequency [GHz]
Frequency [GHz]
f1=4.0 GHz f1=3.5 GHz f1=3.0 GHz
|S21| [dB]
(c) SB = 60 dB
図 4.35: SB及びf1による図4.34に示したフィルタの特性の変化
表 4.6: 各阻止レベルSBにおける図4.34に示したフィルタの素子値 (a)SB = 40 dB
f1 = 4.0 GHz f1 = 3.5 GHz f1 = 3.0 GHz Z1 33.49 Ω 54.92 Ω 154.3 Ω Z21 106.4 Ω 106.4 Ω 106.4 Ω Z22 94.30 Ω 94.30 Ω 94.30 Ω
Zg1 100 Ω 100 Ω 100 Ω
l11 18.74 mm 21.41 mm 24.98 mm l12 11.24 mm 8.565 mm 4.997 mm l21 26.65 mm 26.65 mm 26.65 mm l22 33.72 mm 33.72 mm 33.72 mm lg1 29.98 mm 29.98 mm 29.98 mm
(b)SB = 50 dB
f1 = 4.0 GHz f1 = 3.5 GHz f1 = 3.0 GHz Z1 32.88 Ω 53.90 Ω 151.5 Ω Z21 51.11 Ω 51.11 Ω 51.11 Ω Z22 42.68 Ω 42.68 Ω 42.68 Ω
Zg1 100 Ω 100 Ω 100 Ω
l11 18.74 mm 21.41 mm 24.98 mm l12 11.24 mm 8.565 mm 4.997 mm l21 25.25 mm 25.25 mm 25.25 mm l22 35.59 mm 35.59 mm 35.59 mm lg1 29.98 mm 29.98 mm 29.98 mm
(c)SB = 60 dB
f1 = 4.0 GHz f1 = 3.5 GHz f1 = 3.0 GHz Z1 32.59 Ω 53.44 Ω 150.2 Ω Z21 25.86 Ω 25.86 Ω 25.86 Ω Z22 19.58 Ω 19.58 Ω 19.58 Ω
Zg1 100 Ω 100 Ω 100 Ω
l11 18.74 mm 21.41 mm 24.98 mm l12 11.24 mm 8.565 mm 4.997 mm l21 23.35 mm 23.35 mm 23.35 mm l22 38.49 mm 38.49 mm 38.49 mm lg1 29.98 mm 29.98 mm 29.98 mm
図4.35に示した特性から,通過帯域においては帯域幅,リプル幅共にほぼ影響 は受けていない.ただし,f1が低くなる,すなわち中心周波数に近づくにしたがっ て通過帯域の高域部分でのリプル幅が増加する傾向がある.また,通過帯域近傍の 阻止帯域において,低域側では全てのSBに対して約5〜10 dB増加しており,f1
が低くなるに従って増加する傾向がある.一方,高域側ではf1 = 4.0 GHzのとき にSBより約5 dB大きな阻止レベルとなっており,f1が低くになるにしたがって,
阻止レベルは大きくなる.しかし,そのときの阻止帯域は阻止レベルの大きさと トレードオフの関係になるので,阻止レベルと阻止帯域の関係からSBの決定に は注意が必要である.
さらに,表4.6に示した各素子値から,全てのSBにおいて,f1 = 3.0 GHzとし た場合に,150Ωを超える大きな値の特性インピーダンスが現れ,実現が困難であ るという問題がある.また,SB = 60 dBの場合では,f1によらず約20Ωという 小さな特性インピーダンスが必要であり,これもまた線路の不連続部や幅の広い 線路を用いることによって様々なモードが励振されること等から特性に悪影響を 及ぼすため,利用は困難である.
したがって,前節と同様に,SBと素子値の実現性を考慮し,各パラメータを SB = 50 dB,f1 = 3.5 GHzとした.
いま,表4.3に示した諸元の基板に構成したときの回路パターンを図4.36に示 し,電磁界シミュレーションによって得られた特性と実測によって得られた特性 を,誤差の検討のために図4.13に示す集中定数回路および図4.34に示した分布定 数線路から得られた特性と併せて図4.37に示す.
2.3
18.325.7
3.1
0.7
2.2
22.9 22.9
23.3 6.315.5
Via 0.5
Unit : mm
Port 1 Port 2
99.1
60.7 26.3
図 4.36: 1,3段目の共振器が一端短絡共振器の場合の楕円関数BPFの回路パターン
図4.37に示した特性より,分布定数線路の特性において,f0付近で楕円関数特 性が得られていることが確認できる.また,1段目および3段目の共振器として一 端短絡共振器を用いたことによって実現される減衰極を3.5 GHzに確認でき,通
-30 -20 -10 0
1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
|S11| [dB]
Frequency [GHz]
Lumped circuit Distributed circuit EM
(a)シミュレーション結果(S11)
-100 -80 -60 -40 -20 0
1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
|S21| [dB]
Frequency [GHz]
Lumped circuit Distributed circuit EM
(b)シミュレーション結果(S21)
-100 -80 -60 -40 -20 0
1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
|S11|,|S21| [dB]
Frequency [GHz]
|S11|
|S21|
-5 -4 -3 -2 -1 0
2.3 2.4 2.5 2.6
|S21| [dB]
Frequency [GHz]
(c)測定結果
図 4.37: 1,3段目の共振器が一端短絡共振器の場合の楕円関数BPFの回路パター
ンの特性
過帯域低域側では約5 dB悪化しているが,高域側では阻止レベルが63.3 dBとな り,楕円関数特性で設定した仕様以上の大きな阻止レベルを持つ阻止域を実現で きている.
他方,電磁界シミュレータによる計算結果において,通過帯域では中心周波数
が2.44 GHz,中心周波数における挿入損失は1.48 dBとなり,低域側へシフトして
いる.また,通過帯域近傍の阻止域について,高域側では65.7 dBの阻止レベルを 確保できている.これらの分布定数線路による特性と電磁界シミュレーションに よる特性との差異は,分布定数線路では考慮されていなかった線路の不連続部の 影響やViaの影響,導体損失の影響,回路からの放射による損失の影響などが考 えられる.回路基板サイズは99.1×60.7 mm2であり,線路長はεrによる波長短縮 のために,表4.6(b)に示した値よりも小さな値となっている.
また,実測結果では中心周波数が2.43 GHzであり,中心周波数における挿入損
失は1.41 dBとなっている.通過帯域近傍の阻止域において,低域側では1.68か
ら2.19 GHzの範囲において阻止レベルが42.6 dBとなり,高域側では阻止レベル
が58.5 dBとなっている.電磁界シミュレータによる計算結果と比較して通過帯域
低域側の阻止レベルが約1 dB悪化しているが,概ね一致した特性となった.
したがって,1,3段目の共振器として一端短絡共振器を用いた場合,4.5.2項に示 した短絡スタブを用いた場合と比較して,通過帯域近傍の阻止域での特性は低域 側での阻止レベルが約4 dB悪化しているものの,高域側では仕様の50 dBよりも 約6 dB大きな阻止レベルを実現できている.以上の結果から,通過帯域近傍の阻 止域において,通過帯域低域側よりも高域側により大きな阻止レベルを必要とす るような仕様に対しては,本項で示す回路構成を用いることにより対応できる.
最後に,通過帯域内における放射損失の影響を検討するため,製作した回路パ ターンをシールドケースに入れて図4.38に示すように測定を行った.このとき,蓋 を閉じてシールドを施し,得られた測定結果を図4.39にそれぞれ示す.
図 4.38: 1,3段目の共振器が一端短絡共振器の場合の測定の様子
図4.38に示した回路パターンはシールドケースの大きさに合わせるために,50 Ω 伝送線路を励振線として用いている.また,図4.39(b)に示した測定結果から,通 過帯域内の約2.4 GHzから2.5 GHzの範囲においてシールド後に挿入損失が低減
-30 -20 -10 0
2.3 2.4 2.5 2.6
|S11| [dB]
Frequency [GHz]
Shielded Unshielded
(a)S11
-10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0
2.3 2.4 2.5 2.6
|S21| [dB]
Frequency [GHz]
Shielded Unshielded
(b)S21
図 4.39: 1,3段目の共振器が一端短絡共振器の場合の放射損失の影響
していることが分かる.このとき(a)に示した結果から整合も放射損失の影響を受 け,若干の悪化が見られる.したがって,通過帯域内の挿入損失に関して,シー ルド後もシールド前と同程度の整合が得られた場合,さらに挿入損失は小さくな ると考える.