第 2 章 フィルタの古典設計理論 13
2.2 回路合成
2.2.1 周波数変換
ただし,
γ = sinh β
2n (2.51)
β = ln (
coth RW 17.37
)
(2.52) ai = sin2i−1
2n π (i= 1,2,· · · , n) (2.53) bi = γ2 + sin2 i
nπ (i= 1,2,· · · , n) (2.54) また,このとき得られるn段はしご形回路はバターワース特性のときと同様の 回路構成であり,図2.3及び2.4に示した回路構成で実現される.
[rad/s]
[rad/s]
c
-
c
c
-
c
o
図 2.6: LPF変換
(2.55)によってωcを遮断角周波数とする通過帯域(赤線)に変換される.いま,遮
断角周波数ωcと対応する規格化角周波数Ω = Ωcから式(2.55)は
Ωc=Aωc (2.56)
となるため,
A= Ωc
ωc (2.57)
と決定することができる.このことからLPF変換の式を改めて書き直すと Ω = Ωc
ωc
ω (2.58)
となり,任意の遮断角周波数ωcを設定可能なLPF変換が得られる.
このLPF変換によって,回路構成とその素子値も変換される.まず,インダク タンスの次元Hを持つ規格化素子値をglとしたとき,原型LPFにおけるインピー ダンスは
jΩgl (2.59)
で表わされる.そこで,この式(2.59)に式(2.58)を代入すると,
jΩgl= jΩc
ωcωgl = jωgl
ωcΩc= jωLLPF (2.60) と変形される.ただし,LLPF= gl
ωc
Ωcである.したがって,LPF変換後の回路は 角周波数ωに対してLLPFなる素子が存在することとなる.
同様に,キャパシタンスの次元Fを持つ規格化素子値をgcとすると,原型LPF におけるインピーダンスは
1
jΩgc (2.61)
となり,式(2.58)によって変形すると,
1
jΩgc = 1 jΩc
ωcωgc
= 1
jωgc ωcΩc
= 1
jωCLPF (2.62)
となる.ただし,CLPF = gc
ωcΩcである.したがって,LPF変換後の回路は角周波 数ωに対してCLPFなる素子が存在することになる.以上の回路素子の変換の様子 をまとめたものを図2.7に示す.
g
cL
LPFg
lC
LPFLPF
図 2.7: LPF変換による素子の変化
次に,HPF変換について説明する.HPF変換の変換式は Ω = A
ω (2.63)
で表わされる.ただしAは設計仕様から決定される定数であり,(rad/s)2の次元 を有する.いま,この式の関係を図2.8に示す.
[rad/s]
[rad/s]
c
-
c
c
-
c o
図 2.8: HPF変換
図2.8において,青線(|Ω| ≤ Ωc)はLPF変換のときと同様に原型LPFの通過 域を示している.原型LPFの通過域は式(2.63)によって図中の赤線に変換され,
HPF特性が得られることが確認できる.また,未知定数AもLPFと同様に,遮 断角周波数ωc[rad/s]と対応する規格化周波数Ω = Ωcから
Ωc= A ωc
(2.64) となり,
A=ωcΩc (2.65)
と決定することができる.したがって,HPF変換の変換式は Ω = ωcΩc
ω (2.66)
となり,任意の遮断角周波数を設定可能なHPF変換が得られる.
また,このとき,原型LPFの回路構成と素子値も変換を受け jΩgl= jωcΩc
ω gl =− 1 jω 1
glωcΩc
=− 1
jωCHPF (2.67)
1
jΩgc = 1 jωcΩc
ω gc
=−jω 1
gcωcΩc =−jωLHPF (2.68) となる.ただし,LHPF = 1
gcωcΩc, CHPF = 1
glωcΩcである.以上の回路素子の変換 の様子をまとめたものを図2.9に示す.
g
cL
HPFg
lC
HPFHPF
図 2.9: HPF変換による素子の変化
さらに,BPF変換について説明する.BPF変換の変換式は Ω = ω
A − B
ω (2.69)
で表わされる.ただし,A及び, Bは設計仕様から決定される未知の定数であり,
それぞれ無次元及び(rad/s)2の次元を有する.この式の関係を図2.10に示す.
図2.10から,原型LPFの通過域(図中の青線)がBPF変換によって低域側の遮断 角周波数をω1[rad/s],高域側の遮断角周波数をω2[rad/s]とする通過帯域(図中の 赤線)に変換されていることが確認できる.また,Ω = 0となる角周波数ω0[rad/s]
を通過帯域の中心角周波数と呼ぶ.いま,ω0, ω1及び, ω2のそれぞれに対応する規 格化角周波数Ωから
0 = ω0
A − B
ω0 (2.70)
[rad/s]
[rad/s]
c
-
c
-
2 1
2
-
1 0
-
0
図 2.10: BPF変換
−Ωc = ω1 A − B
ω1
(2.71) Ωc = ω2
A − B
ω2 (2.72)
の3つの式を得る.これらの式を解くことによって,
A = ω2−ω1
Ωc (2.73)
B = ω20
ω2−ω1Ωc (2.74)
ω0 = √
ω1ω2 (2.75)
となる.したがって,BPF変換の変換式は
Ω = ωΩc ω2−ω1 −
ω20Ωc ω2−ω1
ω = Ωc
ω2−ω1 (
ω− ω20 ω
)
(2.76) となり,任意の遮断角周波数ω1及び, ω2(ただしω1 < ω2)とするBPF変換の変換式 が得られる.
また,回路構成及び素子値は jΩgl= jglΩc
ω2−ω1
(
ω− ω02 ω
)
= jω glΩc ω2−ω1
+ 1
jωω2−ω1 ω20glΩc
= jωLBPF1+ 1 jωCBPF1
(2.77) 1
jΩgc = 1
jgcΩc ω2−ω1
(
ω−ω02 ω
) = 1
jω gcΩc
ω2−ω1 + 1 jωω2−ω1
ω20gcΩc
= 1
jωCBPF2+ 1 jωLBPF2
(2.78) と変換される.ただし,LBPF1 = glΩc
ω2−ω1, CBPF1 = ω2−ω1
ω02glΩc , CBPF2 = gcΩc
ω2−ω1, LBPF2 = ω2−ω1
ω20gcΩc である.以上の回路素子の変換の様子をまとめたものを図2.11に示す.
g
cL
BPF1g
lC
BPF2BPF
C
BPF1L
BPF2図 2.11: BPF変換による素子の変化
最後に,BEF変換について説明する.BEF変換の変換式は
Ω = 1
ω A − B
ω
(2.79)
で表わされる.ただし,A, Bは設計仕様から決定される未知の定数であり,それ ぞれ(rad/s)2の次元と無次元の量である.この式の関係を図2.12に示す.
図2.12から,原型LPFの通過域(図中の青線)がBEF変換によって低域側の遮 断角周波数をω1[rad/s],高域側の遮断角周波数をω2[rad/s]とする阻止帯域に変 換されていることが確認できる.また,Ω = ±∞となる角周波数ω0[rad/s]を阻
[rad/s]
[rad/s]
c
-
c
-
2 1
2
0
-
1 -
0
o
図 2.12: BEF変換
止帯域の中心角周波数と呼ぶ.いま,ω0, ω1及び, ω2のそれぞれに対応する規格化 角周波数Ωから
0 = 1
ω0 A − B
ω0
(2.80)
−Ωc= 1 ω1
A − B ω1
(2.81)
Ωc= 1 ω2
A − B ω2
(2.82)
の3つの式を得る.これらの式を解くことによって,
A = (ω2−ω1)Ωc (2.83)
B = ω02
(ω2−ω1)Ωc (2.84)
ω0 = √
ω1ω2 (2.85)
となる.したがって,BEF変換の変換式は
Ω = 1
ω
(ω2−ω1)Ωc −
ω20 (ω2−ω1)Ωc
ω
= 1
1 (ω2−ω1)Ωc
(
ω− ω02 ω
) (2.86)
となり,任意の遮断角周波数ω1及び, ω2(ただしω1 < ω2)とするBEF変換の変換式 が得られる.
また,回路構成及び素子値は
jΩgl = jgl
1 (ω2 −ω1)Ωc
(
ω− ω20 ω
)
= −1
jω 1
glΩc(ω2−ω1) + 1
jωglΩc(ω2−ω1) ω02
= −1
jωCBEF1+ 1 jωLBEF1
(2.87)
1
jΩgc = 1
jgcΩc(ω2−ω1) (
ω− ω02 ω
)
= −jω 1
gcΩc(ω2−ω1)− 1
jωgcΩc(ω2−ω1) ω02
=−jωLBEF2− 1 jωCBEF2
(2.88) と変換される.ただし,CBEF1 = 1
glΩc(ω2−ω1), LBEF1 = glΩc(ω2−ω1)
ω02 , LBEF2 = 1
gcΩc(ω2−ω1), CBEF2 = gcΩc(ω2−ω1)
ω20 である.以上の回路素子の変換の様子をま とめたものを図2.13に示す.
これまで本項においてLPF変換,HPF変換,BPF変換,及びBEF変換の説明 を行った.これらの周波数変換を原型LPFに適応することによって,集中定数素 子によって構成されるフィルタを得ることができる.各フィルタ特性の回路構成 例として,フィルタ次数n= 3のときのフィルタを図2.14に示す.