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る観測 空振計による観測

平成22年度科学技術振興調整費「重要政策課題への機動的対応の推進」課題(成果速報)

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東京大学地震研究所

ア.はじめに

空振の観測は、火山の表面活動を知る有効な手段として、近年ますます重要視されてきている。我々 は、噴火前の 2010 年 12 月に、新燃岳火口の北方約 700 m の新燃北観測点(SMN)にマイクロフォン (SI102)を設置し、既に設置してあった広帯域地震計と共にテレメータ観測を行っていた。また、噴火開始 直後には、火口から 2.5 km ~5 km の範囲にある複数の地震観測点に同じ型のマイクロフォンを追加し た。これらの空振データにより、噴火前-開始時-最盛期の表面活動について多くの情報を得ることが できる。

図 1-5-1 1 月 17 日~23 日の地震と空振の相関解析結果。赤と青のラインは空振と地震上下動の 振幅をログで表したもの。その下の図は縦軸が地震の空振に対する遅れで、相関係数を色で表した もの。そのパターンによって、風のノイズと空振シグナルを区別することができる。1/18 11:29 頃、風 のノイズの振幅があまり変わらないのに、突然連続噴気を示す縞模様(図中、Infrasound と表記)が消 える。その後、パターンがまったくない状態が発生。このとき、地震の振幅が徐々に増加している。そ の後は地震振幅の高い状態が続き、相関パターンの全く見られない時期の間に、薄く縞模様(連続 噴気活動?)が見られる。1/19 2:01-2:58 及び、1/23 4:11-4:53 には、強い火口活動を示すパター ンが見られる。1/19 のイベントは、地震と空振の振幅が共に大きくなっているが、1/23 のイベントで は、空振にだけ影響が見られる。また、地震の振幅が、1/23 8 時過ぎより急激に減少し、13 時半頃 から復活している。

また、1 月末から 2 月始めにかけての噴火活動最盛期には、強い爆発が多数発生し、火口から 10km 以上も離れた場所でも窓ガラス損傷の被害があった。空振被害は、距離だけでなく方向にも依存し、その 原因について様々な議論が行われている。空振の伝播過程で、火口近傍(2-3km以内)では、地形の影 響が大きく、遠方(数十 km 以上)では、大気構造の影響を強く受ける。しかし、その遷移領域での伝播特 性についてはまだよく分かっておらず、系統的な観測データはほとんどない。そこで、そのギャップを埋め るべく、本緊急研究では、数 km~数十 km の伝播特性を明らかにすることを目的として、観測網の整備 を行った。

イ.地震と空振の相関解析から見た新燃岳 2011 年噴火初期の推移

空振観測の最大の障害は、風のノイズである。このノイズを低減するため、これまで多くの研究が行わ れ、広い範囲にパイプを張り巡らせて空間的に平均化された圧力変動を測定する方法や、アレイ観測に

(a)

(b)

(c)

(d)

図 1-5-2 2011 年 1 月 27 日未明の準プリニー式噴火に伴う(a) 空振(赤)と地震(青)の振幅変化、(b)相関 パターン、(c)噴出高度(気象庁映像による)、及び、(d)噴出の様子(姶良・伊佐地域振興局、大浪池監視カ メラ映像による)。映像中央部の文字は映像抽出に用いたフリーソフトウェアにより印字されてしまったもの で、観測には関係ない。

設置したマイクロフォンが一つあるのみであった。我々は、地震と空振の相関解析によって、一点の観測 データから風のノイズと空振シグナルを区別する手法を開発し、噴火の推移を観察してきた。それによる と、今回の噴火活動の最初だと言われている 1 月 19 日未明の噴火以前にも、連続的な空振活動が続い ていたようである(図 1-5-1)。また、1 月 23 日の 4 時から 5 時にかけて、強い空振活動が見られるが、そ れに対応する噴火等の報告はされていない。しかし、1 月 18 日以降高いレベルが続いていた火山性微 動の振幅がその空振活動の 4 時間後に急減し、またすぐに復活するという現象が生じており、1 月 26 日 の大噴火につながる何か重要なイベントが発生したのではないかと注目している。

地震と空振の相関解析は、火口活動の発生の検出だけでなく、その変化の把握にも有用である。図 1-5-2 は、1 月 27 日未明の準プリニー式噴火中の相関パターンと噴出高度の変化を比較したものである

(図 1-5-2c:気象庁による新燃岳南側からの撮影映像を使用)。新燃岳噴煙や噴泉の高度が大きく変化 するところと相関パターンの変化がよく一致している。また、3:08-3:20 で相関パターンがみられなくなっ ているところでは、空振の振幅は減少し、地震振幅は増加している。ちょうどこの間、噴泉高度のデータが 抜けているのは、霧またはガスで隠されてしまったためであるが、それが火山活動と関係しているのかどう かは不明である。西側の大浪池から撮影された映像(図 1-5-2d:映像提供姶良・伊佐地域振興局)から は、この時、南よりであった噴出位置が中心からやや北寄りの部分にまで大きく拡大し、その後、噴出中 心が北寄りに移動している様子が見られる。

ウ.既存の観測システムの問題点と新しい観測網の仕様

今回の噴火初期をとらえたマイクロフォン(SI102)は、これまで空振観測に使われていたものに比べて、

軽量かつ低消費電力で、電源条件や作業環境の悪い場所での観測に非常に便利である。噴火前の空 振観測点は、火口から約 700m の SMN のみであったが、1 月 27 日の大噴火直後に、新燃岳南側を中心 に、観測点を増設した。1 月 29 日から噴火活動が大爆発を繰り返すようになると、このマイクロフォンの通 常の使用範囲を遙かに超える空振が多数発生し、窓ガラス被害も深刻になった。空振のデータは取れて いたが、その波形や振幅に疑問が生じたため、急遽、マイクロフォンの大振幅での特性を調べる試験を、

メーカーと共同で行った。校正試験では、包括的核実験禁止条約(CTBT)に関わる世界的な空振観測 網などで実績のある、微気圧計 MB2005 をリファレンスとして用いた。その結果、このマイクロフォンでは、

100 Pa 程度以上の振幅の波形を正確に捉えることが難しいことが分かった(図 1-5-3)。

しかし、これまで火山の空振観測に用いられてきた様々な機器のどれを見ても、精度、ダイナミックレン ジ、消費電力、使いやすさなどの点で、一長一短である。検討の結果、本緊急研究では、最新の高精度 水晶振動式デジタル圧力計(NanoBaro, Paroscientific 社製)を導入することにした。

本緊急研究費を用いて、NanoBaro 5 台を購入し、自作のプログラムにより、PCでデータを収録、地震 研究所のサーバーへ転送するシステムを構築した。まず、新システムとリファレンスである MB2005 の比較 試験を室内で行った(図 1-5-4)。空振源として、ドアの開閉による室内圧力変動を利用した。その結果に 見られるように、 NanoBaro は MB2005 に比べて高い周波数の応答が悪く、位相が遅れているように見え る。しかし、高い周波数成分については他の安価なマイクロフォンでも計測することが可能であり、位相の 遅れは理論的に取り除くことができる。MB2005 に対する NanoBaro の利点は、小型で軽量であることとダ イナミックレンジの大きいことである。

表 1-5-1 新システムの NanoBaro と収録 PC 観測点 NanoBaro Sensor # GPS Serial PC

KJG 2 120496 IBN026589 KJG Toshiba P11 3 120499 IBN026309 P11 Lenovo P12 4 120501 IBN024572 P12 Lenovo P03 5 120486 IBN026312 P03 Lenovo EBS 1 120495 IBN026310 Ginostra

-3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000 5000

-4000 -2000 0 2000 4000

BK SI102-0021 SI102-0025

各センサー

(Pa)

MB2005 (Pa)

図 1-5-3 各マイクロフォンの出力とレファレンス微気圧計(MB2005)の出力の比較。新燃岳の観 測点で使用していた、SI102 型マイクロフォンは、大振幅のシグナルに対して強い非線形性が現 れている。

新燃岳周辺の観測点整備状況を図 1-5-5 に示す。本緊急研究を受けて整備した観測点は P で始まる 点であるが、その場所は新燃岳と桜島南岳を結ぶ直線を意識して配置した。また、既存の観測点の位置 を考慮して、それと 60 度をなす直線上にも観測点を追加した。これは、霧島、桜島両火山からの空新を 数 10km のスケールで観測することを意図している。

図 1-5-4 NanoBaro とレファレンス微気圧計(MB2005)の出力の比較。(b)(c)は(a)の黄色い枠の 部分の拡大。

(b)

(c)

エ.新しい観測網によってとらえた空振波形の例

観測点の整備が完了したのは 5 月 7 日であるが、その後しばらく、新燃岳の噴火活動は発生していな かった。6 月 29 日に久々に比較的大きな噴火が発生し、明瞭な空振も観測された。図 1-5-6 は NanoBaro 観測点と、既存のマイクロフォンの観測点でとらえた空振を新燃岳火口からの距離の順に並べたものであ る。波を見やすくするため、1-7 Hz のバンドパスフィルターをかけている。NanoBaro とマイクロフォンの振 幅差が、校正試験で調べた以上に大きく、周波数特性も含めた振幅補正について検討を行っているとこ ろである。

図 1-5-5 新 燃 岳 周 辺 の 空 振 計 の 設 置 状 況 。 赤 丸 : SI102 ; 黄 ピ ン : NanoBaro(ERI) ; 白 ピ ン : NanoBaro(ERI&JWA);紫旗:MB2005。EBS にも NanoBaro を設置したが、ネットワーク通信速度が遅く、PC でのデータ転送に問題が生じたため、MB2005 に切り替えた。