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リアルタイム降灰状況把握

ア.序文

火山灰は爆発的噴火により火口から放出される降下火砕堆積物の一種であり、広範囲に飛散すること から、自然環境や社会インフラに与える影響が大きい。新燃岳は 2011 年 1 月の準プリニー式噴火以降、

断続的に爆発的噴火を行っている。本課題では噴煙から降下する火山灰をリアルタイムに観測し、迅速 に噴火活動の評価を行うとともに長期的傾向を把握して中長期的噴火予測に役立てることを目的とする。

イ.観測手法

火口から放出された火山灰は大気と混合しつつ噴煙として風下に運搬される。噴煙の乱流混合が弱ま ると噴煙から離脱し、地表に降下する。降下する火山灰の量やサイズ、形状などから噴火の規模や様式 が推定できる。そのため、リアルタイム降灰観測装置を製作し、新燃岳山麓に5台を配置したネットワーク を構築した。降灰観測装置は花粉センサ、重量センサ、カメラ、制御装置、電源装置からなる(図 2-6-1)。

花粉センサは径 0.5mm〜15μm の浮遊粒子数を 3 分間計測する。堆積物として残りにくい微量の降灰を 検出可能である。重量センサは耐候性のある上皿式圧力センサを用いる。測定範囲は 1g〜6kg、精度は 0.5g である。層厚に換算すると 0.03mm〜15cm に相当する。上皿には 20cm 四方のガイド枠を装着し、単 位堆積重量に換算しやすいよう配慮した。カメラは重量センサを撮影し、ネットワークに送出する。重量セ ンサの上皿に堆積した火山灰の色や形状を観察可能であるほか、重量センサの LED 表示部を直接読み 取ることが可能である。夜間でも火山灰を目視できるように上皿に照明装置を加えた。各種センサの制御 には独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構により開発されたフィールドサーバ技術を用いた。

フィールドサーバは省電力自立分散型インターネットノードであり、農業分野で野外環境計測の実績があ るが、火山観測に利用されるのは初めてである。電源装置は太陽光発電パネルと風力発電機を併用す る。

観測装置は新燃岳の卓越風の方向に配慮し、南から北東にかけて 6 から 8km の距離に設置した(図 2-6-2)。機器の設置は 4 月 15 日に完了し、ただちに観測を開始した。観測は 30 分に 1 回の設定とし、

機器の起動を含め、約6分間稼働する。その間にインターネット回線を使ってつくばの FTP サーバに観測 値を送信する。

ウ.観測結果

4 月 18 日の噴火に伴う降灰をリアルタイムで検出し、噴出物の主軸方向は霧島東観測点の方向である ことが判別できた。噴火は 19:22 に開始し、霧島東観測点では花粉センサで約 500 粒子のカウント増を記 録した。また重量センサでは 3gの重量増が認められた(図 2-6-3、2-6-4)。ひなもり台観測点では噴火前 から大きな変動があったが、カメラ画像から降雨の影響であることが識別できた。皇子原観測点は通信不 良で欠測していたが、後日微量の降灰があったことがわかっている。別途実施している降灰サンプリング 調査からひなもり台、御池小、折田代観測点では降灰がなかったことが判明しており、降灰観測装置によ る観測結果が後日の現地調査と整合的であることが判明した(図 2-6-5)。

6 月 16 日の噴火は皇子原観測点近傍で降灰したという現地情報があったが、検出されなかった。6 月 23 日および 29 日の噴火は観測網より北側に降灰したため検出されなかった。

図 2-6-2 観測点配置図。基図に国土地理院 20 万分の 1 地勢図「鹿児島」「宮崎」を使用 図 2-6-1 皇子原観測点における降灰観測装置の設置状況。

図 2-6-4 霧島東観測点における 4 月 18 日噴出物のカメラ映像。撮影は翌朝。

図 2-6-3 4 月 18 日の花粉センサおよび重量センサ観測結果。

エ.考察

4 月 18 日の噴火についてはリアルタイム観測網による観測結果は後日の分布調査と調和的な結果で あった。後日の分布調査による噴出量は約 2 万トンと見積もられた。一方、6 月 16 日の噴火では現地で 降灰情報があったにもかかわらず、降灰が観測できなかった。この噴火による噴出量は数百トン程度と見 積もられる。よってこれらの結果からは降灰観測網は数百トン程度では見逃す可能性が高く、1 万トンオ ーダー以上の規模の噴出量を持つ噴火であれば検出可能であるといえる。今回開発した観測機器は完 全自律運転で稼働しており、今後はより火口に近い場所などへ設置することによって、より小規模な噴火 を検出することや、より正確に噴出量を把握することが可能になるだろう。

オ.結論

本研究では世界で初めてフィールドサーバを火山観測に応用したリアルタイム降灰観測網を構築した。

4 月 18 日の噴火では、降灰を検出することに成功し、主軸方向を特定することに成功した。本研究により、

無人自律運転による降灰観測網の有効性と可能性が示された。

図 2-6-5 4 月 18 日噴出物の分布。

平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究 平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

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