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2/166 平 成 23 年 霧 島 山 新 燃 岳 噴 火 に 関 する 緊 急 調 査 研 究

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平成 22 年度科学技術振興調整費

「重要政策課題への機動的対応の推進」課題

(成果速報)

中核機関名:独立行政法人防災科学技術研究所

研究期間:平成 22 年度

SHINMOEDAKE

「平成 23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究」

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目次 Ⅰ.調査研究概要 1.調査研究の趣旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2.調査研究の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3.調査研究の全体像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 4.調査研究の体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 Ⅱ.調査研究成果 1.調査研究成果の総括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 2.調査研究の本文 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 (1) 噴火推移把握のための観測研究 (1-1) 無人ヘリによる火口周辺の地震・GPS 観測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 (1-2) 無人ヘリカメラによる噴火状態の確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 (1-3) 無人ヘリによる火口周辺の航空磁気測量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 (1-4) 広帯域地震計による観測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 ( 1 - 5 ) 空 振 計 に よ る 観 測 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 3 (1-6) 衛星搭載 SAR による火口変化の抽出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 ( 1 - 7 ) 火 山 性 地 震 の 即 時 的 な 震 源 決 定 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5 8 (2) 噴火現象の観測と火山灰等の拡散予測研究 ( 2 - 1 ) ゾ ン デ 観 測 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 5 ( 2 - 2 ) 噴 出 状 況 の 高 解 像 観 測 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 9 ( 2 - 3 ) 噴 煙 の 詳 細 観 測 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 2 (2-4) 無人航空機による火山ガス直接観測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 ( 2 - 5 ) 火 山 ガ ス 連 続 観 測 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 0 ( 2 - 6 ) リ ア ル タ イ ム 降 灰 状 況 把 握 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 4 ( 2 - 7 ) 気 象 レ ー ダ ー を 用 い た 観 測 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 8 (2-8) 噴煙柱形成の数値シミュレーション ・ ・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・126 ( 2 - 9 ) 山 灰 輸 送 の 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 3 0 3.調査研究成果の発表状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・133

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■プログラム名: 重要政策課題への機動的対応の推進 ■課題名: 平成 23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究 ■中核機関名: 独立行政法人防災科学技術研究所 ■研究代表名(役職): 鵜川 元雄 (総括主任研究員) ■調査研究実施期間: 平成 22 年度(一部平成 23 年度繰り越し) 1.調査研究の趣旨 平成 23 年 1 月 26 日に本格的なマグマ噴火が始まった鹿児島・宮崎県境の霧島山新燃岳では、多量 の火山灰の放出による航空機の欠航や農作物の降灰による被害さらには爆発的噴火に伴う強い空振に よる建物被害が発生した。霧島山新燃岳では、今後も当分の間、爆発的な噴火を繰り返すと考えられ、 噴火規模の増大や連続的な火山灰の放出のような噴火活動の活発化も懸念された。火山の噴火活動は、 平成2年の雲仙普賢岳、平成12年の三宅島等、長期化を呈する場合が多く、このような状況においては、 火口近傍を含む火山体や噴煙の観測を行い、これをもとに噴火活動の状況・実態の把握や推移の予測 あるいは降灰などの災害要因の予測が火山防災及び復旧活動等において最も重要であり、緊急の課題 である。 このため本調査研究は、マグマ噴火が発生し、降灰による被害と今後の噴火の推移が懸念される霧島 山新燃岳において、霧島山新燃岳の噴火に対する防災対策に貢献するとともに全国の火山噴火におけ る推移予測研究にも貢献するため、火口周辺部の観測強化などによる噴火推移把握のための観測研究 とレーダー等による噴火現象の観測及びシミュレーションによる火山灰等の拡散予測研究を実施するも のである。 なお本調査研究は当初、平成 23 年 3 月 31 日に完了する予定であったが、3 月 11 日に発生した平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震の影響を受け、一部の観測研究が期間内に実施できなくなった ため、平成 23 年 6 月 30 日まで実施期間を延長することになった。 2.調査研究の概要 本調査研究は、① 噴火推移把握のための観測研究と② 噴火現象の観測及び火山灰等の拡散予 測研究により構成されている。 ① 噴火推移把握のための観測研究 本課題では、合成開口レーダーを用いた火口状況把握及び地震波による火山性地震の発生状況把 握のための調査研究及び無人機等による火口近傍観測及び噴火推移把握のための地震・空振観測を 実施する。 このため、防災科学技術研究所は、「だいち」やドイツの TerraSAR-X などの衛星による合成開口レー ダー画像から火口周辺部を中心にした火山体の形状の変化をモニタリングし、噴火の推移を推定すると ともに、火山体即時震源決定データサーバーを利用して、新燃岳山体で発生している火山性地震の地

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震波の振幅特性を用いた即時的震源推定手法により、発生状況を把握する。 また東京大学地震研究所は、地震観測装置及び GPS 観測装置を無人ヘリコプターに搭載し、人が立 ち入ることのできない火口近傍に設置するとともに、空中から火口近傍状況を把握する。また、周辺に広 帯域地震計、高性能微気圧計及び低消費電力型地震計測ユニットを設置し、火山体浅部を中心にした マグマの移動のモニタリングを実施する。これらにより火山体浅部の活動に関連して噴火推移把握のた めの噴煙と地震動、空振動の相互関係を明らかにする。 ② 噴火現象の観測及び火山灰等の拡散予測研究 本課題では、霧島山新燃岳周辺でのゾンデ観測や噴煙の噴出状況の高解像観測、気象レーダーを 用いた噴煙観測、無人機による火山ガスの直接観測や定点連続観測、リアルタイム降灰観測を実施する とともに火山灰の拡散予測高度化のため数値シミュレーションによる研究を実施する。 このため防災科学技術研究所は、ゾンデを用いた噴煙周辺部の直接観測により、噴煙発達の場に関 する条件を取得するとともに、噴煙高精度画像収録システムを用い、火口部ビデオ撮影・解析を実施し、 火口直上での噴出物の移動を把握し、噴煙の発達速度を推定する。さらに噴煙の正確な把握のために 気象レーダーのデータ解析を行う。 気象研究所は、映像や降灰調査による噴煙の詳細観測、気象レーダーにより観測されたエコーデータ の分析による噴煙高度観測、火山灰の拡散・降灰の数値シミュレーションの高度化のため、予測精度を 上げるためのシミュレーション手法の改善のための研究を実施する。 産業技術総合研究所は、CO2/H2O アナライザー及び高速水素モニターを用いて、無人飛行機によ る火山ガス組成把握を行うとともに、ヘリコプターにより自立型噴煙連続観測システムを地表設置し、噴煙 組成の変動を検出する。また降灰状況を迅速・正確に把握するためリアルタイム火山灰観測装置を設置 し、降灰状況の変動を検出する。 東京大学地震研究所は霧島山新燃岳で見られた準プリニー式・ブルカノ式噴火に関し、噴煙柱形成過 程シミュレーション用サーバを用いて数値シミュレーションを実施し、噴煙高度と噴火強度の関係を明らか にする。 なお本調査研究のうち東京大学地震研究所による噴火推移把握のための研究と産業技術総合研究 所による噴火現象の観測及び火山灰等の拡散予測研究は、3 月 11 日に発生した平成 23 年(2011 年) 東北地方太平洋沖地震の影響を受け、観測調査研究が期間内に実施できなくなったため、平成 23 年 6 月 30 日まで実施期間を延長することになった。

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4.調査研究の体制 実施体制一覧 研 究 項 目 担当機関等 研究担当者 1.噴火推移把握のための観測研究 1. (1) 無人ヘリによる火口周辺の地震・GPS 観測 1. (2) 無人ヘリカメラによる噴火状態の確認 1. (3) 無人ヘリによる火口周辺の航空磁気測量 1. (4) 広帯域地震計による観測 1. (5) 空振計による観測 1. (6) 衛星搭載 SAR による火口変化の抽出 1. (7) 火山性地震の即時的な震源決定 東京大学地震研究所 東京大学地震研究所 東京大学地震研究所 東京大学地震研究所 東京大学地震研究所 防災科学技術研究所 防災科学技術研究所 ○大湊 隆雄(准教授) 金子 隆之(助教) 青木 陽介(助教) ○金子 隆之(助教) 大湊 隆雄(准教授) ○小山 崇夫(助教) ○武尾 実(教授) 及川 純(助教) ○市原 美恵(助教) 武尾 実(教授) ○小澤 拓(主任研究員) ○熊谷 博之(主任研究員) 研 究 項 目 担当機関等 研究担当者 2.噴火現象の観測と火山灰等の拡散予測研究 2. (1) ゾンデ観測 2. (2) 噴出状況の高解像観測 2. (3) 噴煙の詳細観測 2. (4) 無人航空機による火山ガス直接観測 2. (5) 火山ガス連続観測 防災科学技術研究所 防災科学技術研究所 気象庁気象研究所 産業技術総合研究所 産業技術総合研究所 ◎鵜川 元雄(総括主任研究員) 棚田 俊收(プロジェクトディレクター) 長井 雅史(研究員) ○小園 誠史(研究員) 藤田 英輔(主任研究員) 實渕 哲也(主任研究員) ○福井 敬一(主任研究官) 鬼澤 真也(研究官) 安藤 忍(主任研究官) ○篠原 宏志(研究グループ長) 宮城 磯治(主任研究員) 田中 明子(主任研究員) ○篠原 宏志(研究グループ長) 次ページに続く

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2. (7) 気象レーダーを用いた観測 2. (8) 噴煙柱形成の数値シミュレーション 2. (9) 火山灰輸送の数値シミュレーション 防災科学技術研究所 気象庁気象研究所 東京大学地震研究所 気象庁気象研究所 中野 俊(研究グループ長) 及川 輝樹(研究員) 下司 信夫(研究員) 星住 英夫(主任研究員) 川辺 禎久(主任研究員) ○真木 雅之(観測・予測研究領域長) ○新堀 敏基(主任研究官) 福井 敬一(主任研究官) ○小屋口 剛博(教授) 鈴木 雄治郎(助教) ○橋本 明弘(主任研究官) 新堀 敏基(主任研究官) 福井 敬一(主任研究官) ◎ 代表者 ○ サブテーマ責任者

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Ⅱ.調査研究成果 1. 調査研究成果の総括 ① 噴火推移把握のための観測研究 霧島山新燃岳の火口周辺部は、噴火推移を把握する上で重要であるにもかかわらず、噴火により一部 の観測点が被災し、さらに噴火による危険のため人が立ち入ることができず、観測点の復旧ができない状 況が続き、観測能力が低下していた。 本調査研究で実施した無人ヘリによる火口周辺の地震・GPS観測により、新燃岳の火口周辺に4 台の 地震計と3 台のGPS 受信機を設置し、地震計からは噴火で失われた定常観測点を補う地震データが得 られ、震源決定精度が向上することが確かめられ、また設置したGPS 受信機の解析誤差は1~2cm程度 であることがわかり、火口周辺部で精度の高い地殻変動のモニタリングを行うことができることを示した。 無人ヘリによるカメラの映像や航空磁気測量からは、火口周縁部の火砕物の堆積状況や、火砕流の 分布、火口の北〜北西側に高温を示唆する弱磁化領域があることなどがわかった。また深部にマグマ溜 まりがあると推定されている霧島山西部を中心に整備した広帯域地震計により、この領域の震源決定精 度が向上するとともに火口近傍で発生した火山性微動に火道内での流体の移動を示唆する信号を見出 すなど、マグマ活動に関連する地震観測能力が向上した。さらに地震観測データはリアルタイムで気象 庁に送られ霧島山の火山活動監視に役立てられている。火山体に設置した空振計により、地震計のデー タと併せて火山活動をモニタリングする新手法を開発するとともに、空振計アレイ観測により空振の地形 や大気構造による伝播特性を評価することができ、空振被害に対する予測精度の向上が期待される。 霧島山で発生する火山性地震の発生場所を即時的に決定するために、既存ボアホール観測点のデ ータを対象として、高周波(5-10 Hz)の地震波振幅を用いた自動震源決定手法を開発し、その結果をウ ェブにより閲覧できるシステムを構築した。今後の火山活動評価に活用されることが期待される。 新燃岳の火口内部に関しては、日本の陸域観測技術衛星「だいち」、ドイツのTerraSAR-X、カナダの RADARSAT-2 の合成開口レーダー(SAR)データを用いて、SAR 散乱強度画像からは、火口内に溶岩 が出現したことによる地形変化が捉えられ、溶岩の体積は1 月29 日から1 月31 日の間に急速に増加し たこと、またその期間の増加率はほぼ一定の8×106m3/day であること、火口内に蓄積した溶岩の体積は 15×106m3 であることを明らかにする成果を挙げた。衛星SARデータからは、噴火前後のデータにSAR 干渉法を適用することにより、新燃岳の南東に火山灰の堆積によると考えられる地形変化を検出した。 SAR 干渉解析による地殻変動調査では、霧島山西方域に噴火前の膨張、噴火を挟む時期の収縮、さら に1 月29 日以降、韓国岳の西と北西に数キロの空間波長を持つ隆起が生じていたことを示唆する結果 を得た。 ② 噴火現象の観測と火山灰等の拡散予測研究 噴火現象の観測においては、気象レーダー、ゾンデ観測、高解像度画像収録システムによる観測、 無人機や自立型の観測装置による火山ガス観測、リアルタイム火山灰観測装置による観測などが実施 された。またこれらの調査研究による成果を考慮した火山灰の拡散予測の数値シミュレーションの高度 化の研究も実施した。

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ュレーションにおける初期値及び予測精度向上に有効な噴煙高度の時間変化が観測できることを確認 した。低仰角でスキャンする気象レーダーの火山噴火監視や噴煙分布の定量的推定の可能性につい ては、国土交通省河川局の国見山レーダーおよび釈迦岳レーダーのデータを用いて調査し、現業用 気象レーダーは顕著な火山噴火現象の監視に有効であることを確認した。噴煙分布の定量化には、さ らに地上で観測された降灰量との比較検討が必要という結論を得た。 火山灰の移流拡散シミュレーションの精度を上げるため、その基礎データとなる霧島山周辺の気象 場と噴火により放出された火山灰の大気中での粒径分布を観測することを目的としたゾンデ観測を実 施した。この観測によりシミュレーションに用いる気象場の検討に有効な霧島山周辺の風速、風向、温 度、湿度の高度分布を得るとともに3 月23 日の噴火直後に浮遊する火山灰粒子の粒度分布について の情報を得ることができた。 火口直上の噴煙発達過程のメカニズムを明らかにするために、高解像度画像収録システムを用いて 新燃岳火口部のビデオ連続撮影を行い、3月に発生した2回の噴火で形成された噴煙を極めて良好な 観測条件で撮影することに成功した。その高解像度映像を用いて、噴煙の運動速度を推定し、3 月13 日の噴火では噴煙が比較的活発に連続して上昇運動を続けなから火口直上に発達、一方で3 月23日 の噴火では噴煙の上昇運動の強度が弱く周囲の風の影響を強く受け噴煙が側方に流されていくという 対照的な噴煙の挙動の違いを定量的に明らかにすることができた。 火口上空の映像観測と降灰調査を同時期に実施することにより、爆発噴煙は噴出直後加速しながら 上昇するが、ある程度上昇すると減速に転じること、ブルカノ式の爆発噴煙でも複合的な構造を伴い部 分ごとにかなり異なる上昇速度となる場合があること、火口から7~10km 離れた地点においては、噴火 開始後20~30 分後に降灰が開始することが分かった。 多成分ガスアナライザー(Multi-GAS)を搭載した無人航空機による火山ガス直接観測では、3月15 日と5月18日に新燃岳の噴煙を直接観測し、火山ガス組成を推定した。5 月18 日に把握された火山ガ ス組成は、島弧火山ガスとしてはCO2 に富みSO2/H2S 比が小さいことが明らかとなり、火山ガスは比 較的高圧条件下でマグマから放出されている可能性が示された。新燃岳南東約5km に設置した自立 型の噴煙観測装置により、噴煙中のSO2/H2S モル比は4月中旬には3 程度であったが、5月初旬には 0.8 に低下しており、無人航空機による観測とも総合した結果、噴煙中のSO2/H2Sモル比が、少なくと も3月中旬以降からゆっくりと減少していることが明らかとなり、火山ガス供給圧力の増加もしくは温度の 低下が生じていることが推定された。 火山灰の降灰状況をリアルタイムで把握するために、花粉センサー、重量計、カメラを搭載し、携帯 電話回線経由で30 分毎にデータを配信できるリアルタイム火山灰観測装置を作成した。この装置を新 燃岳周辺の南から北東方向の5カ所に4 月15 日に設置し、降灰状況の連続観測を実施し、4月18 日 の噴火の降灰状況をリアルタイムで検出し、主軸方向を特定することに成功した。 噴煙柱の数値シミュレーションにおいては、噴煙柱高度とマグマ噴出率の関係を精密に決定し、そ れを1次元噴煙柱モデルと比較し、観測された噴煙柱高度と噴出率の関係を説明するためには、大気 と噴煙の混合効率(エントレインメント係数)が比較的高い値をもつ必要があることが示された。噴煙柱 高度と噴出率の関係が大気と噴煙の混合効率にどのように依存するかを系統的に調べるために、3次 元噴煙モデルによる数値計算を行った。 火山灰の移流拡散の数値シミュレーションの高度化においては、気象レーダー観測に基づく噴煙高

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度の時間変化を考慮する新しい手法により、降灰分布の予測精度を向上させることができた。 火山現象の観測は、多分野にわたる様々な手法を用いなければならないという特徴がある。今回の 調査研究においても、噴煙や降灰、気象場を把握するため、レーダー、火山ガス測定、降灰調査、映 像取得、ゾンデ観測等、様々な手法による観測が実施され、その成果を火山活動評価や数値シミュレ ーションによる降灰予測の高度化に反映させることができた。

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平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

無人ヘリに

よる火口周

辺の地震・

GPS 観測

無人ヘリによる火口周辺の地震・GPS 観測

平成22年度科学技術振興調整費「重要政策課題への機動的対応の推進」課題(成果速報)

1-1

東京大学地震研究所

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(1) 噴火推移把握のための観測研究 (1-1) 無人ヘリによる火口周辺の地震・GPS 観測 (東京大学地震研究所) 火山の火口近傍は火山活動を理解するうえで要となる場所であるが、観測者や観測機器が噴火により 被災する可能性があり、観測上の空白域となる場合が多い。この空白域を埋める観測手法があれば火山 研究・火山防災にとって極めて有益である。我々は、火口近傍での多様な火山観測を行うために、自律 型無人ヘリと各種遠望観測・操作システムを組み合わせた火山観測システムを開発してきた。霧島新燃 岳の噴火によって、火口付近の観測点が被災したことを受けて、被災観測点を補うために新燃岳火口か ら1-2kmの火口近傍に、地震計 4 台と GPS 受信機 3 台を設置した。 ア.無人ヘリ 使用した無人ヘリは、ヤマハが開発した RMAX-G1 である。以下に、図 1-1-1 を示す。 図 1-1-1 地震計および GPS の設置に用いた無人自律ヘリコプター RMAX-G1 RMAX G1のペイロードは燃料等を全て含んだ重量で約 10kg であり、搭載燃料や気象条件により増減 する。基地局から無線の到達する 5km 程度まで飛行可能であり、機体と基地局に備えられた GPS により、 あらかじめ設定された経路を位置精度 1m 以内で自律飛行することができる。この高い位置精度により高 精度の繰り返し観測が可能である。また、搭載された無線により飛行中の機体から映像を含む様々なデ

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ータをリアルタイムで伝送することができ、現場の状態を確認しながら機器を設置するといった用途にも向 いている。 無人ヘリに搭載されたウインチのワイヤに地震計や GPS の観測モジュールを吊った状態で設置点上空 まで運び、ウインチからワイヤを徐々に繰り出してモジュールをゆっくり降下させることによって、静かに設 置する。図 1-1-2 に、無人ヘリによる観測装置設置システムの概要を示す。 図 1-1-2 無人ヘリによる観測装置設置システムの概要 イ.地震計 地震計モジュール(図 1-1-3、1-1-4)は太陽電池と携帯電話網による通信機能を備え、消費電力を抑 えるために通信時間をタイマーで制御している。この設置方法では、観測モジュールの向きと傾きを制御 することが難しい。太陽電池を南に向けることができないため、太陽電池をモジュール全面に配置した。 また、設置時に水平をとることが困難なため、3 成分加速度センサーを採用した。さらに、限られたペイロ ードにはウインチや機体カメラの重量が含まれるため、地震観測モジュールの重量は 5kg 程度に抑える 必要があり、搭載できる 2 次電池や太陽電池の容量が大幅に制限されている。

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図 1-1-3 地震計モジュールの外観。振動を防止と軽量化のため、アルミ製三脚に載せ られている。電源は太陽電池で、モジュール全面を覆っている。携帯データ通信網を介 してデータを回収する。 図 1-1-4 地震計モジュールの内部。地震計を完全に水平に設置することは困難なため、 傾いても観測可能な 3 軸加速度計を用いている。データはコンパクトフラッシュに書き込 む。1 年間分の連続データを記録することが出来る。

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ウ.GPS モジュール GPS モジュールも地震計と同様に、太陽電池と携帯電話網による通信機能を備え、消費電力を抑える ために通信時間をタイマーで制御している。大きな違いは、地震計は連続観測であるのに対し、GPS モジ ュールは消費電力を抑えるために 1 日当たり 8 時間計測し、1 日一回、一日分のデータをまとめて送る仕 様になっている点である。GPS モジュールの構成を図 1-1-5 に示す。 図 1-1-5 新燃岳における地震計・GPS の設置 霧島新燃岳は 2011 年 1 月 26 日にサブプリニアン噴火を起こし、火口近傍の観測点は噴石により破壊 された。新燃岳の火口近傍に地震計と GPS を設置することにより、新燃岳の火山活動の推移を迅速かつ 的確に捉えることが可能である。2011 年 5 月に、火口から 3km に位置する新湯付近を無人ヘリの基地局 として、地震計と GPS の設置をおこなった。設置場所と設置時刻は以下のとおりである。 表 1-1-1 地震計設置位置、設置時刻 設置点名 緯度 経度 標高 設置時刻 (一時)回収時刻 最終設置時刻 K1 31.90683 130.87426 1171m 5/15 12:10 5/18 14:25 5/27 11:30 K3 31.90414 130.88038 1211m 5/15 14:59 5/19 9:52 K4 31.90798 130.87736 1275m 5/15 16:14 K5 31.91877 130.88214 1315m 5/18 13:36 K6 31.90301 130.88759 1310m 5/27 12:41

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設置点 名 緯度 経度 標高 設置時刻 K1 31.90654 130.87345 1150m 5/27 9:17 K3 31.90414 130.88038 1211m 5/2713:54 K5 31.91877 130.88214 1315m 5/27 12:01 設置した地震計、GPS の位置を図 1-1-6 に示す。赤丸が地震計、黄丸が GPS の位置を示す。K3 には 地震計も一時的に設置した。図 1-1-7、1-1-8 の写真は、設置後の地震計および GPS モジュールの様子 を上空の無人ヘリから撮影したものである。 図 1-1-6 地震計(赤丸)、GPS 受信機(黄丸)および無人ヘリ基地局の位置(オレンジの四 角)。地震計および GPS 受信機は新燃岳火口から1-2km以内に設置されている。各観測 点の設置時期は次のとおり。K1: 5/15 から 5/18 まで設置。一旦回収後 5/27 に再設置。 K3: 5/15 から 5/19 まで設置。K4: 5/15 に設置。K5: 5/18 設置。K6: 5/27 設置。

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図 1-1-7 K1 に設置した地震観測モジュールと GPS 観測モジュールを無人ヘリにより 上空から撮影した映像。K1 は新燃岳西側に流れた火砕流の上であり、周囲には炭化し た木が散在している。

図 1-1-8 K5 に設置した地震観測モジュールと GPS 観測モジュールを無人ヘリにより 上空から撮影した映像。周囲の木々は新燃岳からの噴石によりなぎ倒されている。

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す。 図 1-1-9 観測地震波形の例。2011 年 5 月 17 日 7:39 頃、新燃岳付近で発生した浅い 地震。 無人ヘリで設置した 2 観測点 K1 と K3 での上下動記録を比較している。(左):加 速度記録、(右):加速度記録を積分し、速度記録に変換したもの。 縦軸の単位は m/s/s (加速度記録)および m/s(速度記録)。横軸の単位は秒。 エ.震源決定精度の向上 新燃岳に無人ヘリによって設置された地震観測点のデータを用いるとどの程度震源決定に有効かを 調べるため、いくつかのイベントの震源決定を行った。震源決定の対象となったイベントのリストを表 1-1-3 に示す。特に、新燃岳火口直下で発生しているものをピックアップした。表 1-1-3 で、読取り可否の 項の記号は、○は初動が読めたイベント、△は、一見初動が見えにくいが他の観測点で震源決定して予 想される走時をみると初動が識別できるもの、×は全く識別できないものを表す。 表 1-1-3 読み取りの対象としたイベントリスト

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無人ヘリで設置した観測点と定常観測点の全ての初動が読み取り値を用いて震源決定した結果(図 1-1-10)と、無人ヘリで設置した観測点のデータを用いずに震源決定した結果(図 1-1-11)を比較する。 無人ヘリで設置した観測点を用いた方が、浅く決まる地震が増えているが、これが、火口近傍に設置した 効果で、浅い地震の深さがよく決まるようになっている。特に K5 の読み取り値が得られた場合の精度向 上は顕著である。K5 観測点は、噴火前に震源決定上極めて重要であった「新燃北」付近に設置されてお り、噴火で失われた観測点の代替として十分に機能していることがわかる。 図 1-1-10 無人ヘリで設置した観測点と定常観測点の全ての 初動読み取り値を用いて決定された震源分布 図 1-1-11 無人ヘリで設置した観測点のデータを用いずに決定した震源分布

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新燃岳に無人ヘリコプターで投入する予定の GPS 観測機材について、観測精度を確認するための試 験観測を、地震研究所屋上において約 1 ヶ月間行った。消費電力の都合上 1 日の駆動時間は 8-12 時 間である。図 1-1-12 は、試験観測の様子を示す。地震研究所屋上に 3 台の観測機材を設置して試験観 測を行った。観測ユニットは太陽電池で覆われ、GPS アンテナが上部に露出している。図 1-1-13 は、観 測ユニットの内部を示す。受信機およびデータロガー・データ通信カード・通信制御用 Linux box・ニッケ ル水素電池が含まれている。 得られたデータは GIPSY-OASIS II を用いて解析を行い、各観測点の 1 日ごとの座標を求めた(図 1-1-14)。各日の座標の繰り返し誤差は水平成分で 1-2 cm、鉛直成分が 3-4 cm であった。この値は、ピ ラーを立てるなどして土台を固定し、24 時間観測を行う場合よりも悪いが、変動が大きいと思われる火口 近傍での変動を計測するには十分な精度であると考えられる。 図 1-1-12 試験観測の様子。地震研究所屋上に 3 台の観測機材を設置して試験観測を行った。 観測ユニットは太陽電池で覆われ、GPS アンテナが上部に露出している。 図 1-1-13 観測ユニットの内部。受信機およびデータロガー・データ通信カード・通信制御用 Linux box・ニッ ケル水素電池が含まれている。

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図 1-1-14 試験観測によって得られた時系列。各観測点の各成分について示す。座標系は ITRF2005 を用い ている。また、各成分について繰り返し誤差も図中に示している。水平成分は 1-2 cm、鉛直成分は 3-4 cm で ある。 カ.GPS 観測点の精度 新燃岳山頂火口近傍に設置された GPS 観測点 3 点の内、通信状態の良好な K5 観測点について 6 月 24 日から 7 月 2 日までの 9 日間のデータを回収することができた。電力の制限があるため、毎日の観 測時間は 8 時間である。図 1-1-15 に、東西成分、南北成分、鉛直成分それぞれについて、1 日毎に決

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の膨張収縮を捉えるために十分な精度が得られている。新たなマグマ貫入が起きた場合、無人ヘリにより 火口近傍に設置された本 GPS 観測網により、精度の高い地殻変動のモニタリングを行うことができること が示された。 図 1-1-15 GPS の K5 観測点の座標時系列。横軸は通日、縦軸は各成分の座標を mm 単位で示す。上から、東西成分、南北成分、鉛直成分。各成分の座標の標準偏差は東 西成分: 11.3mm、南北成分:7.7mm、鉛直成分:25.5mm である。

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平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

無人ヘリカ

メラによる

噴火状態の

確認

無人ヘリカメラによる噴火状態の確認

平成22年度科学技術振興調整費「重要政策課題への機動的対応の推進」課題(成果速報)

1-2

東京大学地震研究所

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ア.はじめに 2011 年 1 月霧島新燃岳で噴火が始まった。翌月上旬に、巨大な放出岩塊が火口から 3 ㎞を超える地 点まで飛来したことを受け、火口から半径 4 ㎞の地域(4 月以降 3 ㎞)が立入規制区域に指定された。こ のような状況の中、科学技術振興調整費「平成 23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究」が立ち 上げられ、この一環として、無人ヘリによる火口近傍への機器設置・観測計画が実施されることとなった。 ここでは、この無人ヘリにより、撮影した新燃岳火口およびその周辺域の様子を紹介する。 イ.無人ヘリによる火山観測システム 無人ヘリによる火山観測システムは、東京大学地震研究所が中心となって開発を進めているもので、 火口近傍への地震計および GPS 設置(回収も可能)、空中磁気測量、可視・赤外画像撮影、試料採取、 地形計測など、多様な内容を含み、アクセス困難な火口近傍での観測を“観測パッケージ”としてトータル に実現し よう とするもので ある。観測 に使用する 無人ヘリは ヤマハ発動 機(株 )の 自 律型無人 ヘ リ RMAX-G1 で、本機は GPS とリンクした自律型航行システムが搭載されており、基地局のコンピュータ上で 設定した飛行経路を、1m 前後の精度で自律航行することができる。機体と基地局は常時通信を行ってお り、飛行経路の変更や機体搭載機器の遠隔操作、機体カメラのリアルタイム映像の確認等が随時可能な 仕様となっている。ペイロードは約 10 ㎏、行動半径約は約 5 ㎞で、これまでの最高到達高度は 1,638m で ある(今回の新燃岳観測で記録)。一回のフライト時間は、燃料搭載量によって変わるが、通常 30~40 分 程度である。無人ヘリに関する詳しい内容は Kaneko et al. (2011)に記されている。利用する観測機器や 装置のほとんどは、無人ヘリ専用に独自に開発・改造が行われたものである(例えば、地震計および GPS は、センサー、ロガー、電源、伝送システムが一体化され、筐体を含め 5kg の重量に収まるように設計され ている)。 無人ヘリからの撮影は、専用の防振雲台を介して機体底面にカメラ機材を装着して行う。このため、他 の観測機材と異なり、市販の製品をそのままの形で利用することもできる。無人ヘリを利用することにより、 危険な場所であっても、観察対象に至近距離まで近づき撮影ができるため、火口域や噴出物の状況を 詳しく知ることが可能となる。 ウ.新燃岳の観測 今回の新燃岳の観測は 2011 年 3 月と 5 月の 2 期に分けて行った。作業内容は地震計と GPS 設置が 中心であったが、空中磁気測量、映像撮影も実施した。映像撮影用のフライトは 5 月 22 日、27 日、30 日 に、延べ 5 回行い、静止画、HD ビデオ、赤外画像の撮影を行った。5 月の観測では、無人ヘリの離発着 場所および基地局を、新燃岳から西南西約 3 ㎞にある「新湯林道バス停」近くに置いた(写真 1-2-1 ~ 1-2-3)。ここで紹介するのは、この際得られた静止画である。静止画の撮影は、機体にデジタルカメラ (35mm 固定焦点レンズ使用)を装着し、インターバルタイマーでコントロールすることにより行った。各写 真のおよその撮影位置を図 1-2-1 に示す。撮影高度は新燃岳火口上空で標高 1,500~1,600m 程度とし た。以下(写真 1-2-4 ~ 1-2-16)に示すものは、その代表的な画像である。 画像から推定される点は、以下にまとめられる。 ・火口近傍の 2011 年堆積物は、南~西~北部で薄く(数 10cm~1m 前後?)、東~南東部で局所的に厚 くなっている(数~10m 前後?)と推定される。 ・火口内の状況は、 2 月下旬から大きな変化は見られない。ただし、新たなしわの形成や、溶岩噴出域と 思われる場所が周囲と同レベルまで盛上っていること、などの違いも見られる。 ・噴気活動は、火口内溶岩の周辺部から発生しており、2011 年 5 月末現在、溶岩表面からはほとんど見 られない。火口内東縁部に大きな火口(直径 100m 前後?)があり、これを含め、東~南東部のからの噴 気活動が最も活発となっている。

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・南西部斜面に見られる火砕流様堆積物は、先端部に付近に一部炭化した樹木が散在していることから、 火砕流であることが確認された。この火砕流は、流走距離が火口中心から約 1,100~1,200m、火口縁よ り約 800m 程度であり、1 月 26 日の準プリニー式噴煙の一部が崩壊することによって発生したものと推定 される。

参考文献

Kaneko,T., Koyama,T., Yasuda,A., Takeo,M., Yanagisawa,T., Kajiwara, K. and Honda, Y. (2011) Low-altitude remote sensing of volcanoes using an unmanned autonomous helicopter: an example of aeromagnetic observation at Izu-Oshima volcano, JAPAN, Inter. Jour. Remote Sensing, 32,

1491-1504.

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写真 1-2-1 写真 1-2-8 写真 1-2-7 写真 1-2-3 写真 1-2-5 ⑦ 写真 1-2-6 ⑧ ⑨ 写真 1-2-4 ⑪ 写真 1-2-2

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写真 1-2-14 写真 1-2-12 写真 1-2-9 写真 1-2-11 写真 1-2-13 写真 1-2-16 流れの方向 炭化 写真 1-2-10 写真 1-2-15 流れの方向

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写真 1-2-3 離陸した無人ヘリ。設置用の地震計を吊り下げている。右下に地震計の近接写真を示す。 写真 1-2-4 火口南西部。火口縁南西部にある「うさぎの耳」が下中央に見える。火口内の黄白色に見える部 分は、表面に昇華物(硫黄?)が生成している場所。火口内西端部(画面中央やや左)と北端部(画 面右上)付近に噴煙が認められる。 写真 1-2-5 火口内中央部。南から北方を見る。画面最上部に、火口内溶岩の縁に沿って分布する噴気域の 北側部分が見える。画面最下部は、火口内溶岩の南縁に近い部分(南北両縁の距離は約 600m)。 写真 1-2-6 火口内東部。南から北方を見る。右手中央は、写真 1-2-9 の規模の大きい火口。 写真 1-2-7 火口内溶岩の中央やや南東寄りにある溶岩噴出域と思われる場所(画面上が南。写真 1-2-5 の ⑦)。緻密な溶岩が円形の領域に露出しており、一部に絞り出されたような構造が見られる。2 月 22 日に撮影されたレーダー画像((独)情報通信研究機構)では、この領域は北東-南西方向の割れ 目を中心に一帯がわずかに凹んだ地形をなしているが、今回の画像では全体が周囲とほぼ同レベ ルのフラットな面となっている。 写真 1-2-8 火口内溶岩の中央やや東側にあるしわ構造の一部(写真 1-2-6 の⑧)。しわは全体として凹地形 (幅は 10 数 m 程度か)となっており、火口と思われる穴が何ヶ所かで開いているのが認められる。こ の場所での噴火よって吹き飛ばされたと思われる岩塊が周囲に積重なっているように見える。前出の レーダー画像ではこのしわは写っておらず、2 月 22 日以降に形成されたと考えられる。 写真 1-2-9 火口内南東縁にある規模の大きい火口。直径は 100m 程度と推定される。 写真 1-2-10 南西部の火口内壁。「うさぎの耳」の西側。火口壁の状況から、2011 年噴出物の厚さは、数 10cm ~1m 前後と推定される。 写真 1-2-11 西部の火口内壁。2011 年の堆積物は薄く、左手側の斜面で、2011 年堆積物の間から茶色の地 肌が広く露出している(写真 1-2-4 の⑪)。中央の巨大岩塊は今回の噴火による放出物(長径は数 10m 程度か)で、火口内溶岩の縁に載っている。この放出岩塊は、写真 4 で矢印の先に写っているも のと同じ。 写真 1-2-12 北部の火口内壁。2011 年の堆積物は薄い。内壁を覆う堆積物(画面右上)は、2011 年の噴火以 前から存在している。 写真 1-2-13 東部の火口内壁。2011 年の噴出物が厚く堆積しているように見える。厚さは数~10m 前後と思 われるが、正確な見積りには、元の地形を含めた堆積構造の検討が必要である。 写真 1-2-14 火口の南側斜面。南斜面を流下した泥流の発生域にあたる。赤っぽい地肌が所々露出している のは、2011 年堆積物の大半が崩れ、流下したためと推定される。 写真 1-2-15 南斜面を流れ下った泥流堆積物の末端部付近(黒いっぽい部分)。流れの末端部に沿って、岩 塊が分布している。 写真 1-2-16 南西側斜面山麓部に分布する火砕流堆積物の末端部(標高 1,150m 付近)。樹木は下流側に 向かって倒壊し、その根本部分が炭化している(拡大写真。長さは 4~5m 程度)。これらの樹木は、 火砕流に根本が埋積され、その熱により炭化し倒壊したと考えられる。右手下には無人ヘリにより設 置した GPS(右)と地震計(左)が見える(脚部を含む幅は約 1m)。

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平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

無人ヘリに

よる火口周

辺の航空磁

気測量

無人ヘリによる火口周辺の航空磁気測量

平成22年度科学技術振興調整費「重要政策課題への機動的対応の推進」課題(成果速報)

1-3

東京大学地震研究所

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ア.はじめに 火山活動研究に火口近傍での観測は不可欠であるが、新燃岳は活発な活動を続けており、3 ㎞以内 の立ち入り規制がかかっていることもあり容易に近づくことができず、火口近傍での観測を十分におこな えていないのが実状である。そこで本研究では、人的危険・被害を回避し安全に火口近傍観測をおこな うため、無人ヘリコプターを利用することとした。本項では空中磁気測量観測について報告する。 イ.航空磁気測量 火山岩は微弱な磁化をもった、いわば磁石であり、また高温になるとその磁化が弱化・消失する性質を もっている。磁気測量とは、そのため火山体周辺で磁場を測定し火山体内の磁化分布を推定することで、 地下の温度分布を推測することが可能となる、非接触型測定の一つであり、従来陸上での測量や有人機 に磁場測定装置を搭載した飛行観測が盛んにおこなわれている。本研究のように、有人機でなく、無人 ヘリコプターを利用する利点として、人的危険の回避の他に、低空で飛行できることと、プログラミングされ た航路を精密に航行できることの 2 点が上げられる。1点目については、磁場は磁化物体からの距離の3 乗に反比例して急激に減衰してしまうため、地面により近く飛ぶことは磁化情報を多く得る上で大きなメリ ットである。2点目の精密に航行できることは、今後再び航空磁気測量を行う場合、同一の航路で測定す ることで、磁場の時間変化を抽出、ひいては火山体内の温度変化を検出することが可能となるという点で 火山活動を把握する上で非常に大きなメリットである。 ウ.新燃岳における飛行測定 本観測では、無人ヘリコプターにセシウム磁力計を搭載し、全磁力測定を行った。無人ヘリコプターの 機体自体の磁化の影響を避けるため、磁場センサーをヘリコプターから吊り下げて、約 4.5m 隔離して搭 載した(図 1-3-1、1-3-2)。離着陸場所および通信基地局は新燃岳から南西およそ 3 ㎞に位置する新湯 温泉近傍に設けた。飛行高度はおよそ対地 100m で一定とし、測線間隔もほぼ 100m で矩形航行をした。 速度およそ 10m/s で飛行し、総飛行距離でおよそ 85 ㎞の観測を行い、新燃岳の東西約 2km、南北約 3km のエリアの全磁力を測定することに成功した(図 1-3-3、1-3-4)。 エ.磁化構造解析結果 測定したデータをもとに、磁化構造解析を行った。本解析では鉛直方向には磁化が一定であると仮定 し、磁化の平面分布の推定を行った(図 1-3-5)。その結果、磁化強度が平均 1.5A/m と非常に弱いことが まず上げられる。霧島火山は安山岩質が主であり、マグネタイトが少ないことを表しており、本観測で全体 としてもやはり磁化が弱いことを確認することができた。また、平面的な分布に着目すると、山体の北側、 特に北西方向に弱磁化の領域が帯状に伸びていることがわかる。地殻変動解析から新燃岳の北西約 6km にマグマ溜りとみられる膨張源が存在することが示唆されており、今回推定された弱磁化の領域はそ のマグマ溜りから新燃岳火口へ伝わる通り道が高温になっていることを表している可能性があることがわ かった。

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図 1-3-1 緑と黒のストライプの筒状のものがセシウム磁力計センサー。ヘリコプターからの磁場の影響を避け るため、4.5m 吊り下げた状態で搭載する。

図 1-3-2 測定風景。センサーは指向性があり縦向きである必要があるため、センサーの姿勢を安定させるた めに整流用の赤いコーンをつけている。

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全磁力値:46000nT 47500nT 図 1-3-3 全磁力分布平面図。無人ヘリコプター航跡上に、測定された全磁力値で色づけしたもの。新燃岳西 側の東西約 2km、南北約 3km のエリアを飛行測定した。 図 1-3-4 全磁力 3 次元分布図。図 1-3-3 の平面図を新燃岳の南西側から俯瞰した図 ※ 図 1-3-3、1-3-4 の作図にあたっては、国土地理院発行「ウォッちず」をもとにフリーソフト「カシミール3D」 を用いて作成した。

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図 1-3-5 上図:推定された磁化強度の平面分布(赤いほど弱磁化(高温に相当)) 平均 1.5A/m と磁化強度は非常に小さい。また、新燃岳火口から北~北西方向に弱磁化の領域が広がってい ることがわかる。下左図:解像度分布(白い領域ほど良好に解像されている)、下右図:データ残差(黒いほどデ ータ残差が少ない。赤い、あるいは、青いほど残差が多い。) 500m 新燃岳

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平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

広帯域地震

計による

観測

広帯域地震計による観測

平成22年度科学技術振興調整費「重要政策課題への機動的対応の推進」課題(成果速報)

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東京大学地震研究所

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ア.広帯域地震観測網の展開 2011 年 1 月 26 日から始まった新燃岳の本格的なマグマ噴火をうけて実施された科学技術振興調整費 による緊急研究で展開された広帯域地震計(Trillium 120 秒計)(赤二重丸)と空振計の観測網(白二重 丸)は、2011 年 3 月末には現地収録で観測を開始した。4 月 9 日までには、携帯電話によるモバイルテレ メーター化が 7 観測点で完了し、4 月 15 日までに 3 観測点での有線テレメーター化が完了した。観測点 の配置図を既存の地震研究所(赤)、気象庁(青)、防災科学技術研究所(緑)の定常観測点、他大学の 臨時観測点(黄)とともに、図 1-4-1 に示す。なお、今回設置した観測網のデータはすべて公開される。 表 1-4-1 に観測点の情報をまとめる。 図 1-4-1 観測点配置図 表 1-4-1 観測点の情報 観測点名 観測項目 緯度 経度 標高(m) 観測開始 備考 P01 (小野田農場) 広帯域地震観測 31.98778 130.87368 605 3/27〜 商用電源、モバイルテレメーター P02 (上江小学校) 広帯域地震観測 32.03215 130.84750 259 3/25〜 独立電源、モバイルテレメーター P03 (白鳥温泉下湯) 広帯域地震観測・空振観測 31.97801 130.83138 696 3/27〜 商用電源、有線テレメーター P04 (岡元小学校) 広帯域地震観測・空振観測 32.02143 130.78592 274 3/27〜 独立電源、モバイルテレメーター P05 (栗野岳レクリエーション村) 広帯域地震観測 31.94497 130.78170 763 3/25〜 独立電源、モバイルテレメーター P06 (リンデンパークゴルフ場) 広帯域地震観測 31.98863 130.72827 493 3/25〜 独立電源、モバイルテレメーター P07 (グリーン光芳) 広帯域地震観測 31.92488 130.72100 238 3/25〜 独立電源、モバイルテレメーター P08 (三体小学校) 広帯域地震観測 31.88329 130.78238 317 3/27〜 商用電源、有線テレメーター

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P09 (霧島高等学校) 広帯域地震観測 31.86677 130.73773 201 3/25〜 独立電源、モバイルテレメーター P10 (霧島開発) 広帯域地震観測 31.89535 130.81134 594 3/27〜 商用電源、有線テレメーター P11 (幸ヶ丘小学校) 空振観測 31.98150 130.91400 384 3/28〜 商用電源、有線テレメーター P12 (永久津小学校) 空振観測 32.02300 130.97233 240 3/28〜 商用電源、有線テレメーター 烏帽子観測点(EBS) 空振観測 31.89790 130.85628 950 3/27〜 地震研究所の定常観測点に空振観測を追加 霧島火山観測所(KVO) 空振観測 31.94746 130.83927 1200 3/27〜 地震研究所の定常観測点に空振観測を追加 図 1-4-2 に代表的な観測点と広帯域地震計、高性能微気圧計の写真を示す。独立電源の観測点はソ ーラーパネルによりバッテリーに充電しており、数日の悪天候でも観測が継続されるように設計されている。 広帯域地震計は温度変化によるノイズを押さえるため、地中約 1mの深さに設置し周辺を断熱カバーで 覆うことによりノイズ低減を図っている。 図 1-4-2 広帯域地震計 a):P05 観測点 b):P07 観測点 c):広帯域地震計のマンホール d):広帯域地震計 e):高性能微気圧計 イ.霧島火山の地震活動 この観測網は、既存の地震観測網が新燃岳・御鉢付近の霧島連山東部に集中しているため手薄と成 a) b) c) d) e)

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岳西方で発生する地震活動があったが、観測網が手薄なために十分な震源決定精度が得られていなか った。今回の観測網整備により、深部マグマ活動に関連する地震活動や地震波をこれまで以上に精度を 上げて捉えることが期待される。次に、2008 年以降の霧島連山の地震活動とこの観測網の整備による震 源決定精度の向上について述べる。 霧島火山群の新燃岳では 2008 年 8 月 22 日に噴火した後、2010 年3月~7 月の一連の噴火活動を 経て 2011 年 1 月 19 日の小噴火及び 26 日以降の爆発的噴火を含む噴火活動活発化に至った。ここ では、この期間における火山性地震活動と震源の推移をまとめる。 図 1-4-3 に 2008 年 7 月~2011 年 1 月に霧島火山群周辺で発生した地震の分布を示す。主な震源 域は、新燃岳火口周辺直下・御鉢火口周辺直下・韓国岳の西方及び北方に広がる震源域である。図 1-4-4 には霧島火山周辺で発生する地震活動のうち、新燃岳周辺で発生するもの(図 1-4-4(a))と、韓国 岳西方及び北方の震源領域で発生するもの(図 1-4-4(b))の日別頻度を表したものである。新燃岳周辺 においては、2008 年 8 月の噴火直前の群発地震活動以前は静穏であったが、8 月 19 日より激しい群発 活動が起こり、8 月 22 日の噴火に至った。その後徐々に発生数は少なくなり、2009 年 5 月頃の群発活 動の後は一段と活動が低調になったが、2009 年 12 月発生数が増加し、2010 年の 3 月~7 月の噴火活 動が起こった。また、2010 年 9 月~10 月からは明らかに活動度が高まり、2011 年の噴火活動活発化に至 った。韓国岳西方及び北方の地震活動は、2008 年 8 月の噴火以降目立つようになったが、時々まとめ て発生するのが特徴である。やはり、2009 年 12 月以降は発生頻度がやや高まったように見える。また、 2010 年 9 月~10 月に新燃岳直下の地震活動が明らかに高まったことに同期して、この領域でも激しい 群発活動が起こっている(9 月 18 日に 48、10 月 2 日に 20)。その後も、比較的高い活動度を保ってい る。図 1-4-4(c)は、国土地理院が観測している電子基準点のうち、えびの-牧園間の斜距離を示してい る。2009 年 12 月より伸びているが、これは、韓国岳西方にあるマグマ溜まりの体積増加の結果と解釈さ れている。斜距離の伸び始めと地震活動の活発化が同期していることから、韓国岳西方におけるマグマ 活動と関連していることが推察される。また、斜距離変動は、2010 年 9 月~10 月に様子が変わっている が、これと、韓国岳西方及び北方領域の群発活動、新燃岳直下の地震活動の活発化と同期しており、マ グマ溜まりへのマグマ供給量、マグマの新燃岳への移動などと地震活動が関連していると考えられる。 図 1-4-3 2008 年 7 月~2011 年 1 月に霧島火山群周辺で 発生した地震の分布。●は韓 国岳火口、●は新燃岳火口、 ●は御鉢火口を示す。

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(a) (b) (c) 図 1-4-4 霧島火山周辺の地震活動と地殻変動 霧島火山群の韓国岳西方及び北方では、マグマ溜まりの変動と関連していると思われる地震が発生し ているが、2011 年 4 月-5 月期にも図 1-4-5 に示すような活動が起こっている。特に 4 月 9 日には 27 回を記録しているが、これは、2010 年 9 月 19 日に記録した 48 回に次ぐ回数となっている。ここでは、本 研究で展開した地震観測網のデータを既存の観測網のデータと合わせて震源決定を行なった結果を示 す。図 1-4-6 に得られた震源分布を、図 1-4-7 に震源の時間変化を示す。4 月 9 日の群発活動、5 月 2 日の群発活動が、それぞれまとまった位置で発生している。参考までに、GPS のデータ解析から推定され ているマグマ溜まりと思われる圧力変動減の水平位置をプロットしてあるが、茂木モデルを仮定した場合 に求められる位置は、震源域に隣接しているように見える。新設された地震観測点データを用いることに より震源決定精度が向上しているため、今後、データをためることによって、地殻変動源との関係、この領 域の地震発生の意味を議論できるようになると期待される。

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図 1-4-5 霧島火山周辺の地震活動(2011 年 4~5 月) 図 1-4-6 2011 年 4 月~5 月に霧島火山群韓国岳西方及び北方で発生した地震の分布。 ●は韓国岳火口、●は新燃岳火口、●は御鉢火口を示す。 図 1-4-7 韓国岳西方及び北方で発生した火山性地震の時系列分布(2011 年 4 月及び 5 月)。左図 2011 年 4 月、右図 5 月。それぞれの図の左上は震央分布、左下は経度-深さ分布、右上は震央分布の緯度方向 の時系列、右下は深さ分布の時系列を表す。時系列の数値はその月の日付。

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さらに、今回の観測網による震源決定精度の向上を確認するため、同じ震源データセットで広帯域地 震観測網の読み取りを加えた場合(図 1-4-8(a))と従来のデータのみで決定した場合(図 1-4-8(b)) の比較を図 1-4-8 に示す。図中の黄丸は地殻変動データに茂木モデルを仮定して宛は目を行った 場合のソースの位置である。今回の観測データを加えることにより、震央の東西方向の決定精度が 向上している。韓国岳西方の活動は地殻変動源の直上付近に集中しており、この地震活動が上部 地殻内にあるマグマ溜りの活動に密接に関連していることが推察される。 (a) (b) 図 1-4-8 観測網構築による震源決定精度の向上の確認 (a)同じ震源データセットで広帯域地震観測網の読み取りを加えた場合。 (b)従来のデータのみで決定した場合。 本研究では、広帯域地震観測網の整備と合わせて、高性能空振観測網も整備した。地震と空振の並 行観測は火口活動を把握する上で有効であることが本研究で明らかになったが、その詳細は(1-5)の「空 振計による観測」の項で詳細に記述する。ここでは地震と空振の相関解析により明らかになった噴火前兆 と見られる火口近傍の微動振幅変化について報告する。新燃岳火口の北、約1kmの観測点 SMN にお いて、2010 年 12 月 5 日にマイクロフォン(白山工業・SI102)を設置し、空振観測を行っている。同じ場所 に設置している空振計と地震計(上下動)との相関関係のパターンを調べることにより、波形からだけでは 分かりにくい火口活動やその変化を検出することができる。今回、噴火前である 12 月 6 日からの連続変 化を詳細に調べた結果、2011 年 1 月 18 日の昼前に、今回の噴火活動につながる顕著な変化の開始が 発生していることが分かった。 12 月 6 日~1 月 18 日には、空振の振幅が増加すると地震の振幅も増加している。これは、地震・空振 の相関パターンから風のノイズによる増減である事が判明している。1 月 18 日 11:29 から、空振の振幅と 連動しない地震振幅の増加が始まった。このとき、最初の増加時に空振の振幅も増加しているが、地震と 空振の相関パターンに不連続な変化が見られ、変化の始まりは明らかである。1 月 19 日、23 日の火口活 動の後には、地震振幅は一度低下するが、すぐに回復する。そのまま通常より振幅の大きい状態が続き、 噴火に至る。2 月 8 日には平均的な振幅レベルは噴火前まで下がっているが、地震の発生による一時的 な振幅増加は時折発生している。

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このように、火口近傍の観測点での微動レベルが噴火活動、火口活動を把握する上で有効なデータで あることが明らかになったので、新燃岳の活動の全体像を把握するため、2011年1月18日〜5月末までの 間の新燃北(SMN)観測点(2月7日まで)、霧島南(KRS2)観測点(2月8日から)における微動レベル(1Hzよ り高周波数側のエンベロープ振幅を10秒毎に平滑化)と気象庁の高千穂河原の傾斜計(KITK_N)(bytap 補正済み)、気象庁の遠望観測資料から整理した噴煙活動のデータを並べて表示した結果を図1-4-10 に示す。1月26日の準プリニー式噴火以降、1月28日深夜から1月31日まではBL型地震と微動が多発し、 この間に韓国岳北西に向いた傾斜変化が継続している。この間、新燃北観測点の微動エンベロープ振 幅は1E-6以上の高いレベルを維持しており、多くの爆発的噴火が観測されている。しかし、傾斜と爆発的 噴火には明瞭か対応が見られない。2月8日以降になると、爆発的噴火の前に傾斜変化が見られるように なる。例えば、2月10日までと2月28日朝〜3月4日昼の間、やや微動エンベロープ振幅が高く噴火が多く 観測されているが、この期間以外では噴煙を1000m以上まで上げる噴火活動の前に高千穂河原傾斜計 の南北成分(KITK_N)が山上がりと成る変化がよく対応している。なお、2月22日深夜の傾斜変化に対応 する噴火活動の記録はないが、悪天候のために確認できていないと思われる。地震記録には噴火活動 があったことを示唆する波形が記録されている。4月以降は微動が断続的に発生しているときに、傾斜変 化が緩やかに元に戻り、対応する噴火が見られないケースも増えてきている。 図 1-4-9 2010 年 12 月 6 日~2011 年 1 月 28 日の期間の新燃北観測点(火口から 1m)に おける、地震上下動(SU)と空振(MC)の振幅変化.それぞれの信号は、1-7Hz の周波数帯域 で平均振幅を計算.

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図 1-4-10(a) 霧島山の微動レベル、傾斜データ及び噴煙活動(2011 年 1 月)

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図 1-4-10(c) 霧島山の微動レベル、傾斜データ及び噴煙活動(2011 年 3 月)

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図 1-4-10(e) 霧島山の微動レベル、傾斜データ及び噴煙活動(2011 年 5 月) ウ.ハーモニック微動の解析 新燃岳の火口に溶岩ケーキが形成された 1 月 30 日〜2 月 3 日の時期に、比較的振幅の大きな「ハー モニック微動」が観測された。この微動は噴火活動が準プリニー式から火口内にマグマが上昇して爆発 的噴火活動に移行する時期に対応しており、その発生源についての考察することは、今回の噴火メカニ ズムを理解する上で重要である。そこで、2011 年 1 月 31 日〜2011 年 2 月 3 日に発生したハーモニック 微動に関して、広帯域地震計で観測された記録を元に考察を行った。観測された微動の代表的な波形 例を図 1-4-11 に示す。これらに微動の内もっとも振幅が大きい 2 月 3 日の 6 時 8 分に発生した微動に ついて、その波動の定性的特徴から、発生源に関する一考察を行った。 まず、この微動の非線形性を検証するため、相関次元を指標とするサロゲートデータ解析を行った。そ の結果は、データが線形相関を持つデータや線形相関を持つデータに単調な非線形変換を施すことに 図 1-4-12 微動と同時に観測された空振 波形の拡大図 図 1-4-11 観測された微動の代表的な波形例

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調和振動子の重ね合わせで励起された可能性はきわめて低いと言える。図 1-4-12 に微動と同時に観測 された空振波形の拡大図を示すが、その波形的な特徴からも、非線形性が強いことが伺える。 図 1-4-13 微動の特徴 的な部分の切り出し区間 の代表的な波形例 図 1-4-14 区間 4 の微動 の相関図。 図 1-4-15 区間 5 の微動 の相関図。 図 1-4-16 区間 6 の微動 の相関図。 図 1-4-17 区間 8 の微動 の相関図。

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つぎに、この微動を励起する非線形ダイナミクス(非線形微分方程式系)に制約を与える必要条件を読 み解くため、微分方程式の位相的な取り扱いを行う。ここでの大きな仮定は、観測された微動が非線形微 分方程式の解として近似的に解析できるとしている点である。しかし、空振が火口付近から発せられてい ることからも推測されるように、これらの微動は火道内部に発生源があると推定される。さらに、微動の卓 越周期は約 1 秒程度で、火口から約 500m の新燃北観測点で観測された記録は波動伝播に影響がきわ めて少なく、上記の仮定が成り立っていると考えられるデータである。そこで、微動データの時間軸を適 当な長さに切り、各区間で(近似的な)解の相図を作成し、その位相幾何学的な特徴を読み解いていく。 図 1-4-13 に微動の特徴的な部分の切り出し区間を示す。そのうちの区間 4、5、6、8 の相図を図 1-4-14 〜図 1-4-17 に示す。 図 1-4-16 に示した部分がこの微動で比較的定常な状態と成っている部分で、その相図は方程式系が 2 重ポテンシャルを持つ事が必要条件であることを示している。 つ ぎ に 、 こ の 様 な 位 相 的 特 徴 を 再 現 す る 可 能 性 の あ る 火 道 内 部 の モ デ ル と し て 、 単 純 化 し た Collapsible Tube の集中定数モデルとの比較を試みる。図 1-4-18 がこのモデルの概念図である。 Collapsible Tube 部分の弾性、質量保存、上流・下流での運動量保存、下流での運動量流速方程式、蒸 留でのエネルギー保存、Tube 部での流体慣性の変化を組み込んで方程式系を構成している。 この数理モデルにおいて、流体粘性を若干変化させることにより、各区間での位相的特徴を再現する 相図が得られる。その比較を図 1-4-19~図 1-4-22 に示す。比較したモデルパラメータは Tube 部分の断 面積を現すパラメータの時間微分である。図 1-4-19 は観測とモデルの波形と 1 回微分までの相図を比較 しているが、図 1-4-20〜1-4-22 は 1 回微分、2 回微分の相図を比較している。この集中定数の数理モデ ルにより、観測された微動の位相的特徴(定性的特徴)がある程度再現できている。このことは、この時期 の微動が火道内部での流体の動きにより励起されている可能性を示すものである。 図 1-4-18 火道内部モデルの概念図 図 1-4-19 観測とモデルの波形と 1 回微分までの相図

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図 1-4-20 図の左が観測、右がモデルから計算された相図

図 1-4-21 図の左が観測、右がモデルから計算された相図

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エ.広帯域地震計で捉えた 6 月 29 日の噴火に先行する長周期シグナル 2011 年 6 月 29 日 10 時 27 分に発生した新燃岳噴火に先行した長周期の地震動を、広帯域地震計で 捉えることが出来た。霧島南観測点の広帯域地震記録を地動変位に変換したものを図 1-4-23 に示して いる。記録は南北成分(火口に向かう方向)と上下成分を示している。噴火の約 4 分前から長周期のシグ ナルが見られ、火道内部を噴出物(発泡したマグマなど)が上昇することに伴う圧力変動により励起された と考えられる。広帯域地震記録から傾斜成分を取りだした結果を図 1-4-24 に示す。新燃岳火口方向が 下がる傾斜変化が噴火開始後から顕著に見られる(図 2 の緑のライン)。このように、噴火に先行して火道 内部で起こっている現象を広帯域地震記録で捉えることに成功した。このデータの定量的評価は今後の 課題である。 図 1-4-23 霧島南観測点の地動南北成分 (上)と上下成分(下) 図 1-4-24 広帯域地震記録から取り出した 傾斜成分.噴火(赤破線)後に火 口側が下がる傾斜変化が確認で きる(緑のライン)。

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図 1-2-1  各写真のおよその撮影位置。
図 1-3-5  上図:推定された磁化強度の平面分布(赤いほど弱磁化(高温に相当))  平均 1.5A/m と磁化強度は非常に小さい。また、新燃岳火口から北~北西方向に弱磁化の領域が広がってい ることがわかる。下左図:解像度分布(白い領域ほど良好に解像されている)、下右図:データ残差(黒いほどデ ータ残差が少ない。赤い、あるいは、青いほど残差が多い。) 500m  新燃岳
図 1-4-10(d)  霧島山の微動レベル、傾斜データ及び噴煙活動(2011 年 4 月)
図 1-4-20  図の左が観測、右がモデルから計算された相図
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参照

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