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平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究 平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

無人航空機

ア.はじめに

火山ガスは、地下のマグマの活動により供給されているおり、火山ガス組成から火山ガスを放出するマ グマの組成や火山ガスの放出条件等を推定することができる。新燃岳では、1 月の準プリニー式の噴火 以降、活発な噴煙活動(火山ガス放出活動)を継続しているとともに、1 週間~2 ヶ月の間隔で間欠的な噴 火を繰り返している。本課題では無人航空機を用いて、計測機器を直接噴煙内に投入観測を行うことに より、放出されている火山ガスの組成を推定し、火山ガスを供給しているマグマ活動の特徴を把握する事 を目的としている。

イ.観測手法

火口から放出された火 山ガスは大気と混合され火 山噴煙として風下に流れる。

火山噴煙中の希釈された 火山ガス成分を測定するこ とにより、元の火山ガス組 成を推定するために開発さ れた、多成分ガスアナライ ザー(Multi-GAS;図 2-4-1)を無人航空機に搭載す ることにより、火山ガス組成 の直接測定を行った。多成 分ガスアナライザー

(Multi-GAS)は、赤外吸収測定による H2O-CO2濃度計、化学センサーによる SO2-H2S 計および半導体 水素センサーを搭載し、ポンプにより外気を吸引して、火山噴煙中の火山ガス成分の濃度変化を測定す る機器である。

観測に用いた無人航空機は(株)エアーフォートサービスが運航する、無人自動自立飛行機(図 2-4-2)であり、エンジンが後方に設置されているために、機種から大気を吸引することによりエンジン排 気の影響を受けずに観測を行うことができる。しかし、搭載機器重量が 3kg、機器搭載室の大きさが 20x40x18cm に限られるため、通常用いられている Multi-GAS を搭載する事は、重量・大きさともに出来な い。そのため、Multi-GAS の心臓部のみを無人機の搭載室に組み込むことにより、Multi-GAS の機能を 損なう事なく、無人飛行機による観測飛行を実施した。

図 2-4-1 多成分ガスアナライザー(Multi-GAS)

観測は 3 月 15 日及び 5 月 18 日に実施した。無人飛行機の離着陸には平坦な敷地が必要であるため、

新燃岳南西約 7km に位置する、霧島高原国民休暇地を離発着地として観測を実施した。各実施日で 3 回ずつ、一時間弱の飛行を実施した。離発着と高度調整、新燃岳までの飛行に要する時間を除くと、そ れぞれ約 30 分程度の観測が行われた。飛行経路はその時の噴煙の高度、方向により様々であるが、例 えば、3 月 15 日の二回目に飛行では、高度 1700m を火口から南西方向に約 3km の範囲で往復飛行し

(図 2-4-3)、最大 0.7ppm の SO2を検知した。大気中の SO2バックグラウンド濃度は非常に低いため、SO2 濃度は噴煙の濃度の指標として用いられる。3 月 15 日の飛行観測では二回目のみ噴煙を検知したが、5 月 18 日の観測では、三回とも噴煙が検知され、SO 最大濃度は 2.5ppm であった。

GPS制御自律飛行により

予定された経路を自動飛行

株)エアーフォートサービス ペイロード3 kg

図 2-4-2 観測に用いた無人航空機の概要(提供:エアーフォートサービス)

3月15日2回目飛行経路

観測飛行高度1700m

離発着基地

霧島高原国民休暇地 新燃岳まで約7km

図 2-4-3 3 月 15 日2回目飛行の飛行経路。噴煙高度と方向に合わせ、飛行高度 1700m で火口直上から南 西方向の約 3km を 2.5 回往復観測飛行を実施した。

図 2-4-2 に 5 月 18 日の 1 回目の観測データを示す。この図では噴煙の内外を往復している時間帯の SO2, H2S, CO2の濃度変化を示し、赤色の SO2, 緑色の H2S の濃度が高い部分が噴煙に対応する。それ ぞれの成分濃度のピークの比から、元々の火山ガス中の成分比が推定され、この図からは、CO2/SO2モ ル比=8、SO2/H2S モル比=0.8 が求められた。図中で青で示された CO2濃度はややばらつきが大きいが、

これは元々大気中の CO2 バックグラウンド濃度が高く、変動源が火山以外にも存在することによると考え られる。同様に H2O/SO2モル比=500、H2/SO2モル比=0.03 が推定されているが、これら比は CO2/SO2 比および SO2/H2S 比と比較すると、バックグラウンドの変動に対する火山ガス起源の変動が小さいため、

それぞれ 2 倍程度の誤差を伴うと推定される。それに対し、3 月 15 日の観測では SO2/H2S モル比=10、

CO2/SO2モル比<10 と推定された。

エ.考察

得られた火山ガス組成の CO2/SO2モル比は、3 月 15 日が<10、5 月 18 日が 8 と、一般的な我が国の 火山ガス組成(CO2/SO2モル比が 1 程度)と比較すると CO2に富んでいる。CO2はマグマへの溶解度が 小さいため、高濃度の CO2が火山ガスに含まれている事は、火山ガスの供給源が高圧である事を示して いる。新燃岳では 1 月末から 2 月初旬にかけて火口内が大量の溶岩で満たされており、この溶岩が火山 ガスの供給源である可能性が考えられていた。しかし、火口内に蓄積されている溶岩(マグマ)は少なくと も 10 MPa 以下の低圧下に置かれているため、本観測で求められた高い CO2/SO2モル比の火山ガスの 供給源ではあり得ない。その結果、現在継続的に放出されている火山ガスは、より深部(おそらくマグマ 溜まり)から供給されていると推定される。

高い CO2/SO2モル比の火山ガスの放出は、マグマから火山ガスが直接放出されている事を示すが、

H2O/SO2比および H2/SO2比からは、より浅部での火山ガス組成の変質の影響が示されている。我が国 の高温火山ガス中の H2O/SO2モル比は 100 程度であり、今回観測された高い H2O/SO2モル比は、地下 水等の混入の影響をであると考えられる。それに対し、H2/SO2モル比は、火山ガスが地表に達した際の

飛行高度

1600m

飛行高度

1800m

図 2-4-4 5 月 18 日 1 回目の飛行観測結果(CO2, SO2, H2S 濃度変化)。噴煙の内外を往復飛行しており、

SO2, H2S 濃度のピークは噴煙通過中に火山ガス成分濃度が上昇している事に対応する。

温度(噴気孔温度)が低いことを示している。

オ.結論

本研究により、世界で初めて無人航空機を用いた噴煙中の火山ガス組成観測が実施され、火山ガス 組成の推定に成功した。推定された組成から、火山ガスが深部マグマ溜まりに由来する可能性が明らか となり、また浅部でのガス組成の変質の可能性も明らかとなった。同時に、本研究により、無人機による火 山噴煙観測の有効性と可能性が示された。

平成23 年霧島山新燃岳噴火に関する緊急調査研究

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