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気象レーダーによる火山噴火監視

(2-7a) 気象レーダーによる火山噴火監視 (防災科学技術研究所)

ア.はじめに

火山噴火により放出される火山灰は、農作物へのダメージ、陸上交通機関や航空機の運航の障害、

人間の呼吸器への影響など様々な悪影響を与える。また、地上に積もった火山灰は降雨により火山泥流 となって下流の町を破壊することがある。大噴火のときには、大量の火山灰や火山ガスが成層圏まで噴き 上げられることがあり、地球規模で長期間漂うと太陽の光を遮り、地球の気温を低下させる可能性がある。

これらの問題に対処するためには、火山の噴火を監視し、噴出した火山灰の分布を定量的に評価する技 術を確立する必要がある。本研究では、霧島新燃岳が噴火した時の国土交通省レーダ雨量計データを 収集し、スキャン毎の反射因子 PPI 画像を作成し、気象レーダによる火山噴火監視の可能性と噴煙分布 の定量的推定の可能性について調査する。

イ.収集データ (a) データ収集期間

2011 年 1 月 1 日~2011 年 3 月 28 日 (b) 国交省レーダデータ

霧島新燃岳の噴火時における国交省釈迦岳レーダおよび国見山レーダのレーダデータを収集した。

国見山・釈迦岳レーダはバイナリ形式で記録されており、最大観測範囲は 300km、空間分解能は 256 セ クタ×200 レンジ(レンジ幅 1.5km)である。同時に、参考データとして噴火時の写真、動画等も収集した

(表 2-7a-1 参照)。

表 2-7a-1 収集データの一覧

No. 対象データ 期間 備考

国見山レーダ 受信電力データ

MTI_ZH,MTI_ZV,NOR_ZH,NOR_ZV 2011/01/21 00:00~2011/03/03 09:00

国見山レーダ諸元 2011

釈迦岳レーダ 受信電力データ

MTI_ZH,MTI_ZV,NOR_ZH,NOR_ZV 2011/01/21 00:00~2011/03/03 09:00

釈迦岳レーダ諸元 2011

いであ(株)Web カメラ画像 2011/01/20~2011/03/03

世界測地 31,50,39.63 130,52,20.92

鹿児島県地域振興局 Web カメラ画像

2011/01/19,22,26-28,30, 02/01-07,09-11,14,18,24,28, 03/01

世界測地 31,55,02 130,51,07 1366m

図 2-7a-1 に霧島新燃岳、釈迦岳レーダ、国見山レーダの位置、各レーダのビーム観測高度を示す。

国見山レーダから新燃岳(標高 1421m)までの距離は 67.8km、観測仰角は 0.4°と 0.8°である。標準大 気の屈折率と地球の曲率を考慮した場合、新燃岳上空でのレーダビームの中心の高度は仰角 0.4°と 0.8°でそれぞれ約 1.7km と 2.1km である。釈迦岳レーダから新燃岳までの距離は 141.4km で、観測仰 角は 0.3°と 0.8°である。新燃岳上空でのレーダビームの中心の高度は仰角 0.3°と 0.8°でそれぞれ 約 3.2km、4.4km である。国見山レーダは新燃岳のすぐ上空を観測しているのに対して釈迦岳レーダは 新燃岳の上空 1.8km から 3km を観測していることになる。

国交省のレーダの特徴として約 2 分毎のデータ取得がある。これは、地上付近の降雨量を観測するた めにアンテナスキャンを低仰角に限っているためである。利点として、噴火現象を高い時間分解能で監視 することができる、下層の火山灰の分布の時間変動をとらえることができるという利点がある。反面、噴火 の立体的な構造をとらえることができない、従って、噴煙高度を観測できない。また、ドップラー速度を観 測していないために、噴出物がどの位の速度で吹き上げられたかという情報を得ることができない。これら の情報は気象庁のレーダで求めることができる(本報告書の(2-7b)「気象レーダーによる噴煙高度観測」

を参照)。

表 2-7a-2 と表 2-7a-3 にそれぞれ釈迦岳レーダと国見山レーダの諸元を示す。両レーダとも偏波機能 図 2-7a-1 左の図と表は霧島新燃岳と釈迦岳レーダおよび国見山レーダの位置・観

測範囲を示した図。 :高層気象観測地点、 :WINDAS 観測地点。右の図は各 レーダの観測仰角でのレーダビームの高度を示す。

は更に偏波間の位相差、水平と垂直の反射因子の相関係数を測定することができる。これらの偏波レー ダパラメータは噴煙監視に有効であると考えられるが、本調査では反射因子と反射因子差に限定した。

その理由の一つは、現業用に利用されている気象レーダは反射因子を測定するものがほとんどであるた めである。

表 2-7a-4 に監視カメラの位置を示す。鹿児島県カメラは高解像度であるが時間間隔は 60 分である。

株式会社いであのカメラは低分解能であるが時間間隔は 3 分である。

B β

4.5mm/h 1287 1.84 4.6mm/h以上 2801 1.33

仰角1(0.3°) 同上 同上

仰角1(0.8°) 同上 同上

仰角1(90) 大気ガス減衰係数Ka 途中降雨減衰係数Kr

α リミット(片道)

記録データ 記録ビット数

LSBの重み 仰角別

80/16384 仰角ごとのNOR/MTIデータ

14(ビット)

Prデータ記録

ハードでの距離補正基準点(km)

通期

60(km)(ソフト)

減衰補正 係数

0.01(dB/km) 0.0013(dB/km)

1.00 0.44(dB)

東経 雨滴定数 北緯 空中線標高

距離方向 方位方向 120分割 512分割 78分割 512分割 102分割 512分割 回転速度

アンテナ径 ビーム幅(水平・実測値) ビーム幅(鉛直・実測値)

送信周波数 送信電力 送信繰返し周波数 アンテナ利得(実測値)

給電系損失(送信系) 給電系損失(受信系) その他のハード系損失

パルス幅(実測値) レーダ定数C値

受信機のSmin ビデオサンプルレート ビデオ振幅量子化

Fs Fh F値計

距離平均 方位平均 スキャン平均

仰角合成のスムージング:有無

2スキャン

(dBm)

クラッタ除去方式 MTI近距離特性の補正:有無

ノンコヒーレントMTI方式 有(60km)

遮蔽補正(範囲)

A/D 関連項目

0.5(μs)

14(ビット)(=4096) -110(dBm) 3,44(H),3.79(V)(dB) レーダ

定数C値 関連項目

250(kw)

6.12(H)、6.44(V)(dB) 420(PPS)

F値 関連項目

6.0(dB)

-110.0(dBm) 100.0(dB) 9.56(H)、10.23(V)(dB)

15.6(H),16.2(V)(dB)

平均化処 理サンプ ル数

6サンプル 48ヒット 解析処理上のSmin

解析処理上のダイナミックレンジ

海抜1248m

1.0(°)

0.99(°)

4(m)

43.2(dB) 観測範囲及びメッシュ分割数

定量(120km)まで

5350(MHz) 130度53分20秒

33度11分14秒 アンテナ

設置位置

アンテナ 性能

1(rpm)、5(rpm)90°

定性(198km)まで 遠距離(300km)まで

2.5(μs)

3.18906×10-7

表 2-7a-2 釈迦岳レーダの運用諸元

表 2-7a-4 監視カメラの位置

Idea カメラ 鹿児島県カメラ

新燃岳からの距離[km] 約 7.56 約 2.94

撮影間隔 3 分 60 分

サイズ[pixel] 220×165 640×480

設置場所 霧島ロイヤルホテル 大浪池

標高 9 階建て屋上 1366m

緯度(世界測地) 31 度 50 分 39.63 秒 31 度 55 分 02 秒 経度(世界測地) 130 度 52 分 20.92 秒 130 度 51 分 07 秒

帰属 いであ(株) 鹿児島県地域振興課

東経 北緯 空中線標高

距離方向 方位方向 80分割 256分割 52分割 256分割 68分割 256分割 回転速度

アンテナ径 ビーム幅(水平・実測値) ビーム幅(鉛直・実測値)

送信周波数 送信電力 送信繰返し周波数 アンテナ利得(実測値)

給電系損失(送信系) 給電系損失(受信系) その他のハード系損失

パルス幅(実測値) レーダ定数C値

受信機のSmin ビデオサンプルレート ビデオ振幅量子化

Fs Fh F値計

距離平均 方位平均 スキャン平均 アンテナ

設置位置

アンテナ 性能

1(rpm)、5(rpm)90°

定性(198km)まで 遠距離(300km)まで

2.5(μs)

8.37394×10-7 131度00分56秒

31度18分27秒 観測範囲及びメッシュ分割数

定量(120km)まで

5260(MHz) 海抜902.5m

1.0(°)

1.02(°)

4(m)

45.2(dB)

32ヒット 解析処理上のSmin

解析処理上のダイナミックレンジ

平均化処 理サンプ ル数

6サンプル F値

関連項目

12.3(dB)

-109.0(dBm) 80.0(dB) 8.19(H)、8.32(V)(dB) 20.49(H),20.62(V)(dB) A/D

関連項目

1.67(μs)

12(ビット)(=4096) -109(dBm) 5.34(H),5.37(V)(dB) レーダ

定数C値 関連項目

250(kw)

2.85(H)、2.85(V)(dB) 280(PPS)

(dBm)

クラッタ除去方式 MTI近距離特性の補正:有無

ノンコヒーレントMTI方式 有(120km)

遮蔽補正(範囲)

仰角合成のスムージング:有無

2スキャン

B β

1357 1.54 1212 1.53 仰角1(0.4°) 1357 1.54 仰角1(0.8°) 1212 1.53

仰角1(90) 大気ガス減衰係数Ka 途中降雨減衰係数Kr

α リミット(片道)

記録データ 記録ビット数

LSBの重み 減衰補正

係数

0.01(dB/km) 0.0013(dB/km)

1.00 0.44(dB)

雨滴定数

ハードでの距離補正基準点(km)

通期

120(km)

80/4096 仰角ごとのNOR/MTIデータ

12(ビット)

Prデータ記録 仰角別

表 2-7a-3 国見山レーダの運用諸元

収集したレーダデータについて新燃岳を含む概ね 50km×50km の矩形エリアについて下記(1)~(5)

に示す図および数値データファイルを作成した。

(1) 全てのスキャン仰角における反射因子および偏波レーダパラメータの PPI 画像

解析の対象としたレーダパラメータを表 2-7a-5 に示す。反射因子については、MTI(地形除去フィルタ ー)の効果を見るために、2011/01/26 の事例について、MTI を使った場合と使わなかった場合の反射因 子

Z

H

Z

V、と反射因子差

Z

DRの各仰角の PPI 画像を作成した。各 PPI 画像は、噴煙の広がりの全体を捉 えられるよう、噴煙の拡散方向に応じて 2 種類の中心位置で画像化を行なった。また新燃岳を中心に 10km 毎の距離円を描画した。

表 2-7a-5 対象とするレーダパラメータ

レーダ名 仰角 メッシュサイズ 反射因子 偏波パラメータ 国見山レーダ雨量計 0.4°、0.8° 1.5km、256 分割 Zh,Zv ZDR

釈迦岳レーダ雨量計 0.3°、0.8° 1.5km、256 分割 Zh,Zv ZDR 新燃岳の緯度経度*;経度 130 度 52 分 56.8 秒、緯度 31 度 54 分 43.29 秒

*Google マップによる(世界測地系)

(2) 各 PPI スキャン毎の反射因子の時間積算値の分布

積算開始時刻は噴火時刻とし、積算終了時刻は噴煙分布が全て含まれる範囲において観測メッシュの 増加が認められなくなった時刻を積算終了時刻とした。ただしレーダ雨量計は 5 分単位のデータであり、

また噴火時刻が分からない場合は目視により開始時刻を設定した。噴煙の分布期間が降雨等のエコー の重複により定まらない場合には、PPI スキャン毎の反射因子から 1 時間毎の積算画像を作成した。

(3) 新燃岳火口から風下方向の線上における各ポイントでのレーダパラメータの時系列図

火山噴出物の量の時間変化が場所によってどのように異なるかを調べるために、反射因子、積算反射 因子、偏波パラメータの指定されたポイントでの時系列および積算値を求めた。ポイントの選定は噴火事 例によって変更し、また、火口付近では密に選定した。

(4) 作図データの gif 画像ファイル化

作図したデータを gif 画像ファイルとしてアーカイブするとともに、噴煙を検出できた期間についてアニメ ーションファイルを作成した。アニメーションは仰角毎に作成した。

(5) 数値データのアーカイブ

作図に使用した数値データをアーカイブした。フォーマットは別途発注者指定の CSV とした。

エ.解析結果

(1) 地形除去フィルターの効果

通常、気象レーダでは気象エコーと地形エコー分離するために地形除去フィルターを使用する。国交省 レーダはノンコヒーレント MTI というフィルターを使用しているが、フィルターの設定によっては有意な信号 も除去してしまうことがある。そこで、2011/01/26 の噴火事例について、MTI を使った場合と使わなかった 場合の反射因子

Z

H

Z

V、と反射因子差

Z

DRの各仰角の PPI 画像を作成して MTI の影響を調査した。その