よる火口周 辺の航空磁 気測量
無人ヘリによる火口周辺の航空磁気測量
平成22年度科学技術振興調整費「重要政策課題への機動的対応の推進」課題(成果速報)
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東京大学地震研究所
ア.はじめに
火山活動研究に火口近傍での観測は不可欠であるが、新燃岳は活発な活動を続けており、3 ㎞以内 の立ち入り規制がかかっていることもあり容易に近づくことができず、火口近傍での観測を十分におこな えていないのが実状である。そこで本研究では、人的危険・被害を回避し安全に火口近傍観測をおこな うため、無人ヘリコプターを利用することとした。本項では空中磁気測量観測について報告する。
イ.航空磁気測量
火山岩は微弱な磁化をもった、いわば磁石であり、また高温になるとその磁化が弱化・消失する性質を もっている。磁気測量とは、そのため火山体周辺で磁場を測定し火山体内の磁化分布を推定することで、
地下の温度分布を推測することが可能となる、非接触型測定の一つであり、従来陸上での測量や有人機 に磁場測定装置を搭載した飛行観測が盛んにおこなわれている。本研究のように、有人機でなく、無人 ヘリコプターを利用する利点として、人的危険の回避の他に、低空で飛行できることと、プログラミングされ た航路を精密に航行できることの 2 点が上げられる。1点目については、磁場は磁化物体からの距離の3 乗に反比例して急激に減衰してしまうため、地面により近く飛ぶことは磁化情報を多く得る上で大きなメリ ットである。2点目の精密に航行できることは、今後再び航空磁気測量を行う場合、同一の航路で測定す ることで、磁場の時間変化を抽出、ひいては火山体内の温度変化を検出することが可能となるという点で 火山活動を把握する上で非常に大きなメリットである。
ウ.新燃岳における飛行測定
本観測では、無人ヘリコプターにセシウム磁力計を搭載し、全磁力測定を行った。無人ヘリコプターの 機体自体の磁化の影響を避けるため、磁場センサーをヘリコプターから吊り下げて、約 4.5m 隔離して搭 載した(図 1-3-1、1-3-2)。離着陸場所および通信基地局は新燃岳から南西およそ 3 ㎞に位置する新湯 温泉近傍に設けた。飛行高度はおよそ対地 100m で一定とし、測線間隔もほぼ 100m で矩形航行をした。
速度およそ 10m/s で飛行し、総飛行距離でおよそ 85 ㎞の観測を行い、新燃岳の東西約 2km、南北約 3km のエリアの全磁力を測定することに成功した(図 1-3-3、1-3-4)。
エ.磁化構造解析結果
測定したデータをもとに、磁化構造解析を行った。本解析では鉛直方向には磁化が一定であると仮定 し、磁化の平面分布の推定を行った(図 1-3-5)。その結果、磁化強度が平均 1.5A/m と非常に弱いことが まず上げられる。霧島火山は安山岩質が主であり、マグネタイトが少ないことを表しており、本観測で全体 としてもやはり磁化が弱いことを確認することができた。また、平面的な分布に着目すると、山体の北側、
特に北西方向に弱磁化の領域が帯状に伸びていることがわかる。地殻変動解析から新燃岳の北西約 6km にマグマ溜りとみられる膨張源が存在することが示唆されており、今回推定された弱磁化の領域はそ のマグマ溜りから新燃岳火口へ伝わる通り道が高温になっていることを表している可能性があることがわ かった。
図 1-3-1 緑と黒のストライプの筒状のものがセシウム磁力計センサー。ヘリコプターからの磁場の影響を避け るため、4.5m 吊り下げた状態で搭載する。
図 1-3-2 測定風景。センサーは指向性があり縦向きである必要があるため、センサーの姿勢を安定させるた めに整流用の赤いコーンをつけている。
全磁力値:46000nT 47500nT
図 1-3-3 全磁力分布平面図。無人ヘリコプター航跡上に、測定された全磁力値で色づけしたもの。新燃岳西 側の東西約 2km、南北約 3km のエリアを飛行測定した。
図 1-3-4 全磁力 3 次元分布図。図 1-3-3 の平面図を新燃岳の南西側から俯瞰した図
※ 図 1-3-3、1-3-4 の作図にあたっては、国土地理院発行「ウォッちず」をもとにフリーソフト「カシミール3D」
を用いて作成した。
図 1-3-5 上図:推定された磁化強度の平面分布(赤いほど弱磁化(高温に相当))
平均 1.5A/m と磁化強度は非常に小さい。また、新燃岳火口から北~北西方向に弱磁化の領域が広がってい ることがわかる。下左図:解像度分布(白い領域ほど良好に解像されている)、下右図:データ残差(黒いほどデ ータ残差が少ない。赤い、あるいは、青いほど残差が多い。)
500m
新燃岳