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確率的 AD 変換器の基本的なアイデア

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第 3 章 確率的フラッシュ AD 変換器のモデル化 25

3.2 確率的 AD 変換器の基本的なアイデア

確率的フラッシュAD変換器の基本的なアイデアを図に示す.図3.1左は等間隔にメモリの 付いている定規,右は目盛りがてんでバラバラについている定規であり,どちらの定規もフル スケールは正しいものとする.すなわち,目盛の付け方だけが異なる.これらはそれぞれ,一 般的なフラッシュAD変換器,確率的フラッシュAD変換器のイメージを表している.

長さを計測することを考える.両者の目盛数は20に設定している.したがって,階級数は 両者とも21であり同じだけの分解能がある.

しかし,精度について考えると,明らかに同図左の定規は精度良く計測することができる が,同図右の定規は精度が悪いことがわかる.確率型AD変換器の出発点はこの精度の悪い定

規を利用していかに精度を得るかにある.

方法は非常に単純で,精度の悪い定規をたくさん製造することである.粗悪な定規であって も例えば,1,000本の定規で同じ対象物を計測すればそのもっともらしい長さがあぶり出され るだろうというアイデアである.例えばある定規で測った長さは3 cm,ある定規では2.1 cm ある定規では2.6 cmなど,計測結果がバラバラになっても多数の定規で測ることでその測定 結果は確率収束の法則にしたがい,次第に真の値へと収束する.

上記のアイデアは直感的に,ハードウェア量が増えるから筋が悪い方法に思える.しかし,

第1章で述べたようにLSI設計において定規の目盛りを等間隔にする努力は,バラツキを減 らすことに相当するから,アナログ回路においては面積と消費電力の大幅な増加が避けられな い.例えば,定規の目盛り精度を10倍向上させる努力は,アナログ回路においては消費電力

(素子面積)を100倍にすることに相当する.その代わりに粗雑な定規でよいならば100本作 れることになるから電力と面積の損得で言えばほとんど問題にならない.

さらに,電源電圧が低下していることも述べたが,これは図3.2の様な定規の長さが短く なったアナロジーで説明できる.これまでは,電源電圧が高いため一本当たり30 cmあった定 規が,電源電圧低下の結果,3 cmになったと仮定しよう.目盛りが1 mm刻みで付いていた とすれば前者では,300レベルを識別できるのに対して,後者では30レベルのみしか識別で きない.

これはちょうど電源電圧が下がっても製造ばらつきが減るわけではないことに対応してお り,たとえ短くなったから分解能を回復するために0.1 mmの目盛りを付けようとしても加工 精度が伴わないので不可能である*1.したがって,精度を保ちつつ等間隔な目盛りで検出する には,想定している定規製造の技術では30レベルが限界であるということである.

しかし,確率型の検出方法ならば0.1 mmレベルの細かい検出が可能となる.等間隔に設定 することは諦めて,とにかく300レベルの目盛りをもつ,たくさんの3 cm の定規を持ってき て計測すればよい.数を増やせば増やすほど推定誤差は減少していくから,所望の精度に対し て推定誤差が十分小さくなるまでたくさんの定規を作れば,0.1 mm精度の定規を実現できる.

これは,確率型の検出をすることで技術的限界によって分別できなかった微小レベルの信号 を正しく AD変換できることを意味している.つまりフラッシュAD変換器に代表されるこ れまでの方法は,精度を得るために如何にして加工精度を向上させバラツキを減らすかという アプローチであったが,確率的フラッシュAD変換器では逆に製造ばらつきをあるがままに受

*1小さい信号を測るときは,アンプで目盛りのスケールに収まるように拡大してやればよい.ちょうど顕微鏡の 接眼レンズに目盛りがついていて,対物レンズの拡大倍率で長さがわかるのと同じ理屈である.ただし,アン プもアナログだから作るのはやはり難しい.レンズも拡大すると端部の歪み効果や材料の不均一性で拡大対象 の像が変化するがそれと同じことがおきる.

け入れて精度を改善するという真逆の方法で技術の限界を突破しようとする試みでもある.

以上が基本的なアイデアである.次節から,電圧分解能をもつ確率的フラッシュAD変換器 を具体的にどのように実現できるかを説明する.

ᑣឋễܭᙹ ቫफễܭᙹ

ᨼӳ࠯רẲề ਖ਼ܭẲẺܭᙹ

3.1 一般的なAD変換器と確率型AD変換器の定規によるアナロジー.一般的なAD 換器では厳密に等間隔なスケールで計測し出力を決定するのに対して,確率型ではバラツ キから真値をあぶり出す推定をすることで出力を決定する.多数の定規を利用することで,

等価的に右下の様な精度の良い定規を実現できる.

ᑣឋễܭᙹỉἋἃὊἼὅἂ ቫफễܭᙹỉἋἃὊἼὅἂ

3.2 定規のスケーリング.加工精度が一定と仮定すると,スケーリング後は同じ精度で も長さが短くなった分だけ分解能が低下する.粗悪な定規の様に精度を諦めれば,LSIでも 同等の分解能(目盛りは20値分)を得ることはできる.

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