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提案手法と従来の線形化手法の比較

ドキュメント内 sugi doctor final0313 (ページ 69-72)

第 4 章 確率的フラッシュ AD 変換器の設計理論 49

4.4 確率的フラッシュ AD 変換器の線形化

4.4.4 提案手法と従来の線形化手法の比較

■近似的な方法 6組以上の最大平坦近似の厳密解は筆者らの解析した範囲では得られなかっ た.そこで,考え方を変えて,近似的に平坦化する方法を検討する.

多数組を用いてPDFを平坦化する場合,中央付近にある正規分布は左右の正規分布から同 程度の影響を受ける.そのため,図4.11に示すように,正規分布を等間隔に配置しても,最 終的に得られる分布は中央付近では良い精度で等リプル特性を示すと考えられる.分布の両端 付近では左右からの影響が非対称になり等リプル性が崩れるが,使用する比較器の総数が一定 であれば分割組数を増やすことによって,分布の端部にある比較器の影響は減少するので,線 形化手法として有効であると考えられる.

図4.11から明らかなように,リプルの量は参照電圧の間隔dにより調節できる.線形性を 良くするためには分布ができるだけ平坦であることが望ましいので,分割数を多くして適切な dの値を設定すればよい精度で平坦近似が成り立つと考えられる.

図4.12(a) d = 1.5σとした例であるが,PDFが広い範囲で平坦になっている.こうして

得られたCDFの線形性を見るため,CDF3折れ線近似したものからの誤差をプロットした

(同図(b)).CDFのリプル量はピーク値で6.0×104 であり,十分な精度で平坦と看做せるこ とがわかる.

同図(c)は,参照電圧の間隔がd= 1.5σ±20%の範囲で変動した場合を示している.同図よ り,dが設定値から±20%の範囲で変動したとしても,平坦性は殆ど崩れない.すなわち,参 照電圧の間隔dが多少ばらついても平坦性は維持されるということであり,このことは好まし い性質といえる.参照電圧の生成には,抵抗ストリングを用いることで1%以下の比精度を得 ることが容易であり,8ビット程度までの低分解能の用途では問題にならないと考えられる.

次に図4.13に,d =1.5σとしたまま,正規分布のσ±40%変動した場合のPDFを示す.

同図からわかる様に分布の σが小さくなった場合には,入力範囲は広がるものの,分布の広 がりに対して参照電圧の間隔が大きいため合成したPDFはリプルが大きくなり線形性は劣化 する.これに対し,σが大きくなった場合には,入力範囲は狭くなるものの,リプル量は小さ くなるため線形性を劣化させることはない.したがって,所望の線形性を満たすためにはあら かじめ分布のバラツキが大きくなることを見越して,参照電圧の間隔を小さく設定しておけば よい.

20 10 10 20 0.2

0.4

0

Normalized input voltage PDF

d =3σ M =11

d

4.11 多数の正規分布から,等リプル分布を合成するためのアイデア

案手法はオフセット電圧分布の逆関数を演算するのではなく,オフセット電圧分布を合成する という方法によるため,むしろHamらの方法の一般化であると言える.

Ceekalaらの方法では逆関数に相当する抵抗分圧器をあらかじめ製造しておかなければなら

ず,オフセット電圧分布の形状を知っているときにしか適用できない.一方,提案手法のアイ デアはあるオフセット電圧分布を複数組に分割して合成するという方法によるため, 正規分 布でなくても釣鐘状 の分布であれば適用可能である.すなわち,提案手法では製造前にあら かじめオフセット電圧分布を知っておく必要はなく,計測する必要はあるものの,実際に得ら れたオフセット電圧分布に対して最適化することで,オフセット電圧分布の形状に関わらず線 形化手法を適用することが出来るという利点がある.特にオフセット電圧分布が正規分布で近 似できる場合には前節で示したように,例えばd = 1.5σの等間隔のリファレンスを与えると いう方法によって線形化ができる.

ところで,合成されたPDFの両端付近の裾の部分をできる限り少なくして一様分布に近づ けるためには,分割組数をできる限り多くすることが効果的である.よって,単純に考えると 本提案の線形化手法の最も望ましい実施形態は,フラッシュ型と同様,1つの比較器につき1 つの参照電圧を割り当てることである,という結論になりそうに思える.しかし,この結論は 2つの点において問題がある.

第1に,提案した一様分布を合成する手法において,各々の比較器の組はオフセット電圧の PDFが正規分布であると仮定してきたが,その組を構成する比較器数が少なくなると,統計バ ラツキのためにPDFが正規分布からずれてくる問題があり,上記のように1組あたり1個の 比較器にすると,平坦部分が大きく波打つことになると考えられる.したがって,現実には平 坦部分の波打ちの許容値から各組を構成する比較器の数を決める必要がある.

10 5 5 10 0.1

0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 M =11 PDF

Normalized inputvoltage (a)d= 1.5σ

-10 -5 5 10

-0.001 0.001

input Variation of PDF

(b)d =1.5σ

-10 -5 0 5 10

0.2 0.4 0.6 0.8

PDF

Normalized inputvoltage

M =11 -20%

+20%

(c)d= 1.5σ±20%

4.12 各組の間隔をd=1.5σとして並べたM =11組の例(a). (a)は平坦に見えるが,実 際にはリプルが存在する.そのリプルの大きさを知るために,3折れ線近似した直線と,(a) PDFを積分したCDFをフィッティングして差分を計算した結果を(b)にプロットしてい る.リプルが十分小さいことがわかる.(c)は,各組間隔dに対する平坦性の感度を見た結 果を示しておりいずれの場合も平坦性を保っており,感度が低いことがわかる

-5 0 5 10 0.2

0.4 0.6 0.8 M=11

PDF

-10

Normalized input voltage [σ] σ=0.6

σ=1.4 σ=1

4.13 オフセット電圧分布のバラツキσがばらついた場合の例.バラツキが小さくなる と影響がでるので予め間隔を狭くとっておけば問題にはならない

第2に,実際には製造の際に決まるオフセット電圧バラツキの標準偏差σだけでなく電源 電圧VDD の制約があり,無制限に分割組数を増やして入力範囲をVDD より拡大しても意味が ない.すなわち,σVDD から決まる範囲内で最大の分割数となるようにしなければならな い.したがって,実際の設計においては,これらの制約を設計指針として,必要な分割組数を 決めることになる.

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