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確率的フラッシュ AD 変換器の量子化誤差モデル

ドキュメント内 sugi doctor final0313 (ページ 45-48)

第 3 章 確率的フラッシュ AD 変換器のモデル化 25

3.5 確率的フラッシュ AD 変換器の集合平均によるモデル化

3.5.2 確率的フラッシュ AD 変換器の量子化誤差モデル

無相関で独立なPDF同士の集合平均は中心極限定理から,平均したPDFが正規分布に漸近 することが知られている.しかし,確率的フラッシュAD変換器は,各比較器の入力端子が全 て並列接続されており,全体の量子化雑音εn と入力信号xが独立ではなく,中心極限定理が 成立しないので改めてPDFを計算する必要がある.

入力信号は各比較器で同じであることと,各1ビットAD変換器出力を集合平均する構造で あることを踏まえて,n個の比較器から成る確率的フラッシュAD変換器の量子化誤差は次の ようにモデル化できる.

εn = 1 n

n

k=1

{sign(x−θk)−x}

(k= 1, 2, 3, . . . , n). (3.18) ここで添え字のkは閾値のオフセット電圧(比較器)の番号を表している.また,簡単のため,

閾値は小さい順番に並べ替えてθ1 < θ2 < · · ·< θn とする.

図3.9に,比較器4個で確率的フラッシュ AD変換器を構成した場合の一例を示す.緑の 線は比較のために等間隔に閾値が分布する理想的な4値のフラッシュADCの場合を示してい る.等間隔に閾値が配置されるので量子化雑音はよく知られているように一様分布する.青線 は母集団が一様分布である閾値群から4値抽出し,比較器のオフセット電圧として与えた確 率的フラッシュAD変換器の例を示している.確率的フラッシュAD変換器のPDFは一様分 布ではなく,理想フラッシュADCPDFの幅も,より広がっていることがわかる.すなわ ち,分散が大きいということだから,等間隔の場合よりも量子化雑音電力が大きいことを意味 する.

実際に一様分布に従う4つの閾値をランダムに選んだ確率的フラッシュAD変換器の量子 化雑音PDFの期待値は,式 (3.18)を用いて解析的に求められる.1ビットのときと同様に,

入力信号 xと確率変数θkが一様分布するとして量子化雑音εを計算すると,

pdf4(x)=

























1 64

(71−64|x| −48x2 −16|x|3−2x4)

: 0≤ |x| ≤ 12

1 128

(115−128|x| −24p2+32|x|3+12x4)

: 12 <|x| ≤1

1 128

(91−128|x|+24x2+32|x|3−12x4)

: 1< |x| ≤ 32

1

32(−2+x)4 : 32 <|x| ≤2

0 : それ以外

(3.19)

となる.計算はMathematicaで行った.上記の解析解と,同じ平均と分散を持つ正規分布を同 時にプロットした結果を図3.10に示す.

正規分布と比較すると中央部が尖っているものの,おおむね形状が一致している.中央が尖 るのは,入力信号が最小値と最大値のときに量子化誤差が必ず0 になるためであると考えら れる.

以上の解析結果より,確率的フラッシュAD 変換器の量子化雑音PDF の期待値は通常の AD変換器の様に一様分布ではなく釣り鐘状になることがわかる.

図3.11には,n= 1 ∼ 9個までのフルスケール入力のときの PDFの計算結果を示す.比較 器数を増やしていくと,分布がより細くなっていく様子が見て取れる.導出したPDFから計 算したそれぞれの確率的フラッシュAD変換器の分散は表 3.1に示すように,比較器が1

3.1 n=1∼9までの分散の期待値の計算結果.

n 1 2 3 4 5 6 7 8 9

σ2n 23 13 29 16 152 19 212 121 272

のときの分散2/3を基準に比較器の数nでスケーリングされており,n= 1 ∼ 9の範囲では式

(3.16)と厳密に一致していることが確かめられる.また,この結果はフルスケールが2倍違う

-1 0 1 -1

-0.5 0 0.5 1

analog input [V]

quantization noise [V]

1 0.5 0 -0.5

-1 0 1 2 3

quantization noise [V]

PDF

ideal flash ADC SFADC

3.9 5値理想フラッシュADCと確率的フラッシュAD変換器との比較.明らかに,確 率的フラッシュAD変換器は分布の分散が大きい.

-1.5 -1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

PDF( ε )

Quantization Noise ε

3.10 4値確率的フラッシュAD変換器の量子化雑音PDFと,同じ平均値,分散の正規 分布のグラフ.形はおおむね正規分布状であることが確認できる

ことを考慮すればWeaverらの解析結果[45]とも一致する.

なお,さらに多数の比較器についても式(3.18)を用いて解析的にPDFを導出することがで きるが,著者らの計算機ではリソースの制限によりn=9までしか解析解を導出できなかった ので,多数の比較器を用いる場合については数値シミュレーションで推定した結果を示す.

-2 -1 1 2

0.5 1.0 1.5

PDF n ( ε )

Quantization Noise ε

n =1 n =2 n =3 n =4 n =5 n =6 n =7 n =8 n =9

3.11 n =1∼ 9個までの量子化雑音PDFの計算結果.数を多くすると,裾野が滑らか になりより正規分布に近づく.

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