第 3 章 「乳児保育」大学テキストの分析―2 つの指針の視点(調査 2)―
第 1 節 研究目的と方法
仮説 1)2 つのタイプが、対象として取りあげる教科書の事例には存在しており、その多くは活動 型である。2つのタイプの特徴は以下のとおりである。
① X活動重視タイプである。「生活・遊び」の外的操作に着目している。保育者が中心となって乳児 保育の実践構造を構築している「活動」と「望ましい活動」を重視している活動は、外的操作だけで はなく、乳児に育てるべきねらいを望ましい経験として示していると理解することが出来る。
② Yねらい重視タイプである。「ねらい」を重視しているが、ねらいだけではなく内的操作に着目し ている。また、子ども主体であり、外的操作と内的操作(子ども自身の活動目的・どのような面白さ・
楽しさ・喜びを感じているか)の両方に着目している。
仮説 2)長期指導計画(年間指導計画及び月間指導計画)および短期指導計画(週案)においてこ
の2つのタイプはどのように使われているのか、3つの指導計画で一貫している指導計画となってい る場合を「一貫型」とよびその内容を検討する。同時に、先に述べた理由から変更した場合(×印の 部分)を「転換型」と名づけその内容を検討する図1-6(前掲)。2つの指針が示す「指導計画と実践 プラン」に示されるように、カリキュラムの編成の理念としては、X活動重視タイプは、「望ましい活 動」という考えに基づく実践プランであり、Yねらい重視タイプは、「子どもが環境と関わっての主体 的活動」という考えに基づく実践プランであり、二つの考え方があることを提示している。前者は実 践プランとなる可能性が高く、後者は実践プランの枠組みを含めて現場で考える必要がある。
乳児保育の実践構造からみると、Yねらい重視タイプは、領域ごとに分けた指導計画と子ども主体 の指導計画という2つのタイプが考えられる。養護と教育(5領域)から保育課程を編成し、そこか ら指導計画を作るため、指導計画と実践プランとの間にはねじれが生じることが考えられる。「転換型」
と名づける。同じことは、長期と短期の指導計画との間にも生じる可能性がある。これに対して、X 活動重視タイプは、活動の選択だけではなく配列をするので長期には主要な活動を書くことが想定で き、短期にはある程度の保育形態を決めておけばそれがそのまま実践プランになることがわかる。「一 貫型」と名づける。こうしたねじれはどのように解消されているのか、保育現場にゆだねる論理とし て「総合的に考える」、「適切に考える」、「~を考慮して」、などの用語が使われている。ねらいや内容 は、子どもの実態から実践プランは保育者が作るものとされている。指導計画という本来保育実践が 想定されているはずのものが、いつの間にかそこに隙間が生じている。その指摘を図にしたのが図1-6
(前掲)である。2008年保育所保育指針は、指導計画の部分でねじれが生じていることが読み取れる。
×印は断絶がある可能性を示し、保育現場の創意工夫に委ねられていることを示している。
仮説3)この2つのタイプではねらいと活動をどのように統合しているのかを示し、新たな統合の あり方を方向付ける。特に、両者を統合する視点からの乳児保育の実践構造を提示する。
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2つのタイプは、活動を系統的に発展させる積極的な保育の役割を承認するX活動重視タイプと子 どもの主体的な活動・子どもが環境に関わって主体的な活動が中核になるというYねらい重視タイプ 2 つのタイプがあることがわかった。前者は系統的な活動を育てるタイプであり、外的活動が中心で ある。保育者の論理とも言える。後者は子ども中心のタイプであり、内的活動が中心である。むしろ 子どもの論理といえる。これらの対立軸は十分な考慮や議論が必要である。保育の理論としてはどの ように理解すべきかは大きな課題である。本論文では、X活動重視タイプとYねらい重視タイプのい ずれかではなく、むしろ2つの良さを認めつつ各々が持つ問題点を克服する保育を提案する。本論文 では、「融合保育」とよぶこととする。乳児の保育実践では、むしろ、ねらいと活動を統合することが 必要である。「保育は子どもの力と保育者の力が調和して働くときに有効になる。」という考え方を提 案する。乳児保育においては、生活活動における具体的な大人と子どもの関係性として、「相補的関係」
とよぶこととする。2つの力をかみ合わせるような保育を「融合保育」とよぶ。X 活動重視タイプも Yねらい重視タイプも「ねらいと活動という2つの力が働く必要がある」という議論と考えられる。
前者はそのまま実践プランとなる可能性が高く、後者は実践プランの枠組みを現場で改めて考える 必要がある。ただし、「子どもの育ちに関する長期的見通し」をもつ保育課程の編成を求めており、そ の見通しをしっかり持てば実践プランを編成する可能性もある。X活動重視タイプは、望ましい内容 を活動としてあらわし整理しているが、望ましい活動と考えているのは保育者であり、保育者が活動 を選択する。Yねらい重視タイプは発達の側面を意識したとき、保育課程や年間指導計画では領域の ねらいを前面に出している。しかし子どもの自発性・意図性と保育者の指導性・意図性のどちらかと いう議論ではない。両方がたいせつであり、その調和をどのように図るのかという視点から提案して いる。では、ねらいには「子どもの心情・意欲・態度」を書くのか、「望ましい活動」を書くのかとい う問題を考えても、子どもの成長に関わっている以上どちらも大切である。むしろ、両者の調和や統 合をどのように図るのかが実践構造として必要である。「子どもの最善の利益」を追求する「保育実践」
の中で、2つのタイプが示すいいところを持ち合わせた指導計画の作成が課題である。
1、調査対象
前述した先行研究を参考に、本学図書館にある「乳児保育」の教科書(55冊)を分析した。その結 果、指導計画が掲載されていた著書35冊(表3-1)を抽出し、掲載されている乳児保育の指導計画を 検討する。これを対象としたのは、保育所保育指針を踏まえて指導計画論が述べられていることから、
直接保育の現場からの事例よりも指針に即した検討になること、又、教科書として取りあげられてい るので一定の妥当性が高いと考えたことによる。対象の詳細を示したのが、表0-6(前掲)である。
35冊(表3-1)を読み取りの対象とした。ただし、全ての事例が挙がっている事例はなかった。主
に、年間と月案を検討することにしたので、主要な対象は16例であった。週案・日案では35例から 適切なものを選んで検討したが、あくまでも補足資料と考えた。
2、分析の基準と手続き
カリキュラム編成の理念としては、「望ましい活動」という形で整理した X 活動重視タイプ 1965 年保育所保育指針の考え方に基づく実践プランと、Yねらい重視タイプ2008年保育所保育指針のよ うに「子どもが環境と関わる主体的活動を軸にしたプラン」の 2 つがあることは前述して指摘した。
前者はそのまま実践プランとなる可能性が高く、後者は実践プランの枠組みを現場で改めて考える必 要がある。ただし、「子どもの育ちに関する長期的見通し」をもつ保育課程の編成を求めており、その 見通しをしっかり持てば実践プランを編成する可能性もある。前述したように、「望ましい活動」とい う形で整理した1965年保育所保育指針の考え方に基づくX活動重視タイプと、2008年保育所保育指 針のように「子どもの主体的活動」を軸にしたYねらい重視タイプという2つが提案できる。この2 つは細分化すると4つに分かれることもある(X-1タイプ、X-2タイプ、Y-1タイプ、Y-2タイプ)。 ここでは、この2つのモデルの特徴を基準として分類を試みる。読み取りは、筆者のほかこの2つの モデルを理解している他の研究者に依頼し独立して行った。一致度は100%であった。
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次のような課題が浮かび上がったが、共同で討議して評価を行った。
表3-1 「乳児保育」教科書に見られる指導計画の種別一覧
保育課程
0歳 1歳 2歳 0歳 1歳 2歳 0歳 1歳 2歳 0歳 1歳 2歳
1001 2014 1 0 1 0 1 1 0 1 1 1 1 1 1 10
1002 2009 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 3
1003 2007 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 2
1004 2006 1 1 0 0 1 0 1 0 0 0 1 0 0 5
1005 2006 0 1 0 0 0 1 0 0 1 1 0 0 0 4
1006 2005 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 4
1007 2002 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1008 2000 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1
1009 1999 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1010 1997 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 3
1011 1995 1 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 4
1012 1995 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 3
1013 1993 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 3
1014 1986 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 3
1015 1986 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 3
1016 1982 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 2
1017 2004 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1018 2010 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1019 1992 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 4
1020 1984 1 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 5
1021 1979 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 4
1022 2001 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1023 2009 1 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 5
1024 1974 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 2
1025 2005 1 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 4
1026 2009 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1027 1976 0 1 1 0 1 1 0 1 1 0 1 1 0 8
1028 1990 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 2
1029 1992 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1030 1973 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 5
1031 1975 1 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 1 0 5
1032 2010 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 2
1033 2010 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1 1 0 4
1034 1980 1 1 1 0 1 0 1 0 1 1 1 1 1 10
1035 1992 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0 7
9 19 6 1 20 5 4 11 4 4 23 7 4 117
計 発行年
No 年間指導計画 月間指導計画 週案 デイリー
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