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基本的生活習慣形成論は保育内容の軸となるか

ドキュメント内 乳児保育のカリキュラム編成の研究 (ページ 33-36)

保育界において基本的生活習慣がどのように扱われてきたかについて、高橋弥生は「幼稚園教育要 領・保育所保育指針における基本的生活習慣の取り扱いの変遷(目白大学 総合科学研究 11 月号)

2015」にて分析結果を報告している。また、谷田貝公昭・高橋弥生(2007)『データでみる 幼児の

基本的生活習慣―基本的生活習慣の発達基準に関する研究―(一藝社)』をはじめとして、谷田貝公昭・

高橋弥生(2007)「食事の習慣の発達基準に関する研究(目白大学短期紀要第43号)」等論文が執筆 されている。1965保育所保育指針は、山下俊郎の基本的生活習慣に関する研究「幼児に於ける基本的 生活習慣の研究(第一報告~第三報告)、『教育』4巻~第6巻1936年~1938年」が反映されており 細やかな記載となっている。一方、2008年保育所保育指針は、告示化に伴う大綱化により、基本的生 活習慣に関する記載は少なくなっていると指摘している。また、松田純子(2014)は、「幼児期にお ける基本的生活習慣の形成―今日的意味と保育の課題―(実践女子大学 生活科学部紀要第51号)」 において、「基本的生活習慣の形成は、幼児期のしつけの一環ともいえる」とし、松田純子(2011)「乳 幼児をもつ保護者が、基本的生活習慣の形成に関心がないわけではない。むしろ子育てで力をいれて いることの上位にはいる事柄である(ベネッセ次世代育成研究所)」と指摘している。また、「子ども が家庭や社会環境に適応した生活ができるように、またその中で子どもの心身が健全に発達するため に、大人は必要な生活習慣を子どもに身につけさせる。」としている。しかしながら、アメリカの教育 社会学者であるハヴィガースト(1953)は、人生を6段階にわけ、各段階に発達課題を設定している。

第1の発達段階は就学前の0歳~6歳である。その項目は8つあるが、食事や睡眠、排泄等の基本的

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生活習慣以外に「親ときょうだいに対して情緒的な結合の開始」、「話すことの学習」、「歩行の学習」

等が記載されていることは意味深い。

1、基本的生活習慣が保育の中核に

1965保育所保育指針は、初めて体系的に乳児保育を含めて保育内容を提示したものである。先に述 べたが、山下俊郎の基本的生活習慣研究が詳細に記載されており、食事・睡眠・排泄・着脱・清潔と いった5項目が中心となっている。その保育内容は、乳児においては「生活・遊び」で示され、2歳 以上は6領域の流れをくんだ内容となっている。本研究では、1965保育所保育指針をX活動重視タ イプとしているが、そのうち「基本的生活習慣」を軸とした保育を単純活動タイプ(X―1)とした。

一方、保育内容に記載されている事項は、「望ましい活動」であり、こちらは望ましい活動タイプ(X

―2)とした。1965保育所保育指針X活動重視タイプは、いずれも「大人主導」ではないかといえる。

2、基本的生活習慣論の考え方とその発生

乳児の保育課題として基本的生活習慣論があることはこれまで1965年保育所保育指針を軸に検討 してきた。乳児の保育として生活と遊びの領域を立て「望ましい活動」をあげている。ここで「望ま しい活動」を中心としているのは、「保育計画は在所する各年齢の乳幼児の望ましい活動を選択し、配 列し、又、全体としての一貫性を持ったものとなるように作成されなければならない。」(保育計画の 作成)とおさえているからであるが、これを2歳までは「生活」と「遊び」の「領域」を立てている ので、生活と遊び各々に「望ましい活動」をあげている。結果として、1歳3カ月未満児の保育内容 として「生活と遊び」は各々次のことが取りあげられている。

生活 食事に関する行動(1-4)、排泄(5-6)、生活時間(6-7)、衣服の着脱(8)、健康(9-13)、保母とのかかわり(14-17)、

言葉(16-19)、環境への応答(20-23)、運動(24-25) 遊び 運動的遊び(1-7)、大人との会話、絵本(9)

食事・睡眠・清潔・排泄・衣服の着脱など乳児の保育の課題が示されており、保育内容として留意 すべき事項である。しかしながら、課題もある。

1)乳児保育において、基本的生活習慣論を保育の中核にするには、いくつもの留意事項が必要で ある。例えば、第1には、X活動重視タイプをさらに分化し、Ⅹ―1としての単純活動タイプとして の位置づけではなく、Ⅹ―2として望ましい活動タイプを位置づけることが想定できる。その場合は、

望ましい活動を想定して「お箸を使って食べる」などのような「ねらい」になる可能性が高い。事実 そのような事例が多く存在する。特に、短期のねらいにこれを掲げると特定の習慣を保育者は追求す ることになる。そこでは「子どもの内在的な力」が検討されなくともお箸を使うことを追求するため にお箸を使うこと自体が自己目的になりやすい。

2)生活習慣論としてあまりにも「狭い」ということである。乳児の保育内容の中核を子どもの生 活行動からとらえるとしても、生活行動の中核は生活の中で「生きる」ことが重要である。ここでい う基本的生活習慣も大人との連携なしには成立しない。また、言語の活動も生活する・生きる上で子 どもを補うなどの大人の支えなしに成立することは難しいといえる。

3)基本的生活習慣論は子どもの成長の全体をとらえていないことは当然であるが、乳児保育にお いては冒頭述べてきたように、「子どもを全体としてみる」、「全体として発達する」ことが重要である。

例えば、「スプーンをもつ」という行為は、部分ではなく、手先の操作性や目と手の供応動作、大人が

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使う道具操作の模倣、食への関心、手の動作が口に運ぶことに連携する所作、食べたい・真似したい 大人との関係等、無数の育ちが関係している。

4)幼稚園教育要領における経験主義の存在がある。幼稚園教育の目標は、教育基本法に基づく公 教育制度の一つとして社会要求に応じることであると同時に、幼稚園教育が子ども自身の興味や要求 を出発点とし、その過程を子どもの生活現実にあることを求めている。田中(1984)は、「兵庫教育 大学、幼児教育カリキュラムの研究『経験活動の視点から見た教育内容の変遷について(我が国の場 合)』」のなかで、「保育要領が出されてから、10年近くの間に、経験活動を尊重する幼児教育の基 本的な性格が一応は形成された。しかし、実際のカリキュラム化や実践の蓄積の面で、現状とそぐわ ない点も問題として出された。6領域時代の始まりであった。こうした背景の中で、「保育要領」の 改訂として、1956年幼稚園教育要領が出された。これらの子どもの生活を根本とする活動が、学校教 育体系の中で同一の目的・目標として出されていることは、以下の 「学習指導要領一般編」 の第一章

「教育の一般目標」にあげてある諸目標が、同時に幼稚園教育もあてはめられる。「教育基本法に掲 げてある教育の理想や、学校教育法に示してある幼稚園の目的や、その教育の目標や、教育の一般目 標など、こうした社会の要求をはっきりわきまえ、その実現につとめなければならないと同時に、こ の目標に向かっていく場合、あくまでも、出発点となるのは『子供の興味や要求であり、その通路と なるのは子供の現実の生活である』ことを忘れてはならない(解説書p33)」 と述べられたことに見 られる。つまりは、子どもの興味を中核として現実の生活を通路として育つことを目指していたとい うことができる。現実の生活理解は行動主義による記述であった。

このため、1964年の幼稚園教育要領「第1章総則」には、11 の活動をあげている。当然の帰結で あった。このことから、1965年保育所保育指針は「保育所のもつ機能のうち、教育に関するものは幼 稚園教育要領に準ずることが望ましいこと。」とされ、「経験活動」の面ではかなりの共通性が見ら れる。1歳3カ月未満、1歳3カ月から2歳まで「生活・遊び」、2歳「健康・社会・遊び」、3歳「健 康・社会・言語・遊び」等である。実際の乳児保育の経験を保育内容の編成としてどのようにしてい くのかがむしろ課題といえる。この部分がわかりにくいことから、結果として、基本的生活習慣が経 験の全てのように理解されていったとも考えられる。

行動主義(behavio(u)rism)とは、小川隆によれば次のように定義している(日本大百科全書(ニッ ポニカ))。

心理学の対象を意識としないで、人および動物の客観的な行動とする立場。ブント以来の意識心理学に対し、「内観」

を退け、もっぱら刺激と反応との関係、それから構成された体系を扱う。1913年、アメリカの心理学者ワトソンは『行 動主義者からみた心理学』という論文により、この立場を主張し、以来、アメリカ心理学の主要な潮流となっている。

[小川 隆]

初期行動主義では、狭義の行動主義はワトソンに代表される初期行動主義で、19世紀に発達した動物心理学の成果、

パブロフの条件反射学、ジェームズの機能主義などに育成されたものである。その主張の要点は、(1)意識内容の構成 要素を明らかにしようとした構成心理学に対し、生体の機能は行動を通じて明らかにしようとする。(2)特殊な器官の 機能を研究する生理学と異なって、生体の全体の機能を問題にする。(3)内観法によらないで、観察者の影響をできる だけ除いた自然科学的方法による。(4)行動を複合的なものとみ、刺激―反応の最小単位である反射、条件反射から明 らかにしようとする。(5)行動は環境内の刺激に対する条件づけの結果であるとし、生得的面より習得的面を重視する。

こうして、感覚は刺激に対する差別反応、感情は内臓器官の活動、思考は発声を伴わない言語反応などとみなされ、

すべての意識は刺激―反応の関係に置き換えられる。[小川 隆]

次に新行動主義によれば、初期行動主義は、生体の全体の機能を扱うとしながら、あまりにも刺激―反応の関係が直 接的である点、刺激―反応の関係を受動的にだけ扱っている点、反射・条件反射の単位を要素として、行動の全体をそ れらの複合として扱う点などが反省され、1930 年ごろから、新行動主義といわれる動向が現れることになった。広義 の行動主義はこの動向を総称する。

行動主義は、人と動物とに共通な行動の性質を考究する道を開き、主観主義、擬人主義の偏見を正したし、習得行動

ドキュメント内 乳児保育のカリキュラム編成の研究 (ページ 33-36)