第1章 2つの「指針」が示す乳児保育の方向
第3節 1965 年「指針」の乳児「保育の構造」
1、1965 年保育所保育指針における「保育の構造」
1965年保育所保育指針では、「保育計画は、在所する各年齢の乳幼児の望ましい活動を選択、配列 し、また、全体として一貫性をもったものとなるよう作成されなければならない。」とし、全体計画は 活動を選択して一貫したものとなるようにと考えている。保育計画は、「各保育所においては各章に示 されている事項に基づき、それぞれの保育所において適切な保育計画を作成する」とされ、保育の現 場に任されている部分もある。しかし、「活動の選択・配列」は、「望ましい経験と活動」を参照して 作成することと考えられる。その上で、保育計画は、保育の原理、保育内容構成の基本方針の諸事項 を基とするとあり、基本方針の諸事項では、次の3 つのことを述べている。
一つめは、表1-7(前掲) のように保育内容の区分を提案している。保育内容の中心に活動を位 置づけ、活動を「領域」として分けて保育内容を区分した結果、表 1-7(前掲)のように区分して いる。この提案のポイントは、「活動」の視点から領域を分け、また、「活動の分化」として領域の分 化を想定していること、4 歳になって初めて6 領域となる点にある。
二つめは、7 つの年齢区分を提示し、その区分ごとに「発達上の主な特徴」「保育のねらい」「望ま しい主な活動」「指導上の留意事項」をあげている。
三つめは、先に述べたように「保育計画を作成する」ことである。保育計画の指導にあたっては、
指導効果があるようにするため、次の13の留意事項を示して保育計画を作るとしている。
1)発達段階、2)個人差、3)生活の流れ、4)自発性、5)総合性、6)集団活動、7)長時間保育、8)入所時の指導、
9)組の編成、10)家庭との関係、11)問題行動のある子ども、12)行事、13)保育の反省と評価
「生活適応活動」または「望ましい経験と活動」という活動の典型が示され、実践構造の中核をにな っていると評価できる。
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2、乳児保育における「保育の構造」
乳児保育における保育計画は、前述した通り「望ましい経験と活動」を中核とすることは乳児の場 合も同じである。保育計画では「年齢区分」が必要であるとし、「1 歳3 か月未満」「1 歳3 か月か ら2 歳未満」と分けている。また、「内容区分」は「1 歳3 か月未満」「1 歳3 か月から2 歳未満」
の「活動としての生活」と、「活動としての遊び」が示唆されている。加齢とともに、活動が分化して くることから、「2 歳」では対人関係と結びつくものを「社会」の領域とし、「健康・遊び・社会」と している(第1 章 2(1))。乳児保育における保育計画は、この年齢区分と内容区分に従って、両者 のバランスをどうとるかということが大切である。1965年保育所保育指針の場合、指導計画作りの方 向付けは示唆されているが、保育実践を規定しているとはいえない。保育計画は大綱的なものを決め ているとはいえ、実践の土台となるのは指導計画である。指導計画がそのまま保育実践の土台となれ ば、指導計画そのものも実践の土台となってしまうがそう考えてもよいのであろうか。
3、1965 年保育所保育指針における指導計画の編成
基本は、「保育所では、保育の目標を達成するために、すべての子どもが在所中、常に適切な養護と 教育を受け、また、それぞれの能力に応じて積極的に活動することができるように次の諸事項に留意 して、調和の取れた発展的組織的指導計画を作成するものとする」としている(65 解説書,p.244)。 諸事項とは次の7 点である。
①保育のねらいの設定、②望ましい活動の設定、③望ましい活動の配列、④年間指導計画、⑤期間・月間指導計画、⑥ 週案・日案、⑦その他(個人差への対応、指導計画、子どもの実態理解)である。
以下に項目ごとの内容を述べる。
① 保育のねらいの設定
保育の目標に「子どもは豊かに伸びていく可能性を秘めている。その子どもたちの現在を最もよく 生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎をつちかうこと」(65 解説書,p.210)とある。「望ましい 未来をつくり出す力の基礎とは何か」の理解が、保育所・保育者には問われる。一方1965年保育所 保育指針では、各年齢別に保育の「ねらい」として示している。さらに具体化するために、心身の発 達の程度、地域の実態などを考慮し、「保育のねらいを具体的にまた明確に設定すること」としている
(65 解説書,p.244)。
② 望ましい活動の選択
次に、望ましい活動の選択であるが、ここでも各年齢別に示された子どもの望ましいおもな活動を もとにして、子どもの年齢・保育年数などの違いなどを考慮して「生活経験に即した適切なものを調 和的に選ぶ」としている。
③ 望ましい活動の配列
次は、望ましい活動の配列であるが、「子どもの具体的な生活経験に即して、領域にとらわれないで 総合的な生活の中で指導できるようにすること」としている。その際、活動が偏りなく指導できるよ うにすることとある。
④ 年間指導計画、⑤ 期間・月間指導計画、⑥ 週案・日案、⑦ その他(個人差への対応、指導 計画、子どもの実態理解)
具体的な指導計画として、「年間指導計画は、先の保育計画の具体化をはかる」とある。前述した保 育計画もこの手続きと同じ手順を踏む。年間指導計画と重なる部分はあるが、具体化することは困難 ではない。次に、期間・月間指導計画も基本的に同じである。振り返りや反省を反映させること、活 動に偏りのないようにすることをあげている。週案・日案では、「これまでの保育計画・指導計画を踏 まえ、その時期の子どもの実態に即し、最も具体的な活動を取り入れ、子どもの生き生きとした活動 が展開できるようにする」とある。指導計画の編成は具体的に整理されており、容易に実践構造とな る可能性がある。年齢ごとの「ねらい」と「望ましい主な活動」が示され、保育内容を客観的に振り 返ることも可能である。1965年保育所保育指針は、「年齢ごとに発達上の特性の理解→発達上のおも な特徴→保育のねらい→望ましい主な活動・配列」の順に示され、この順序で検討を行う。
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4、乳児保育における指導計画の編成
① 発達上の特性理解、発達上のおもな特徴を理解
「1 歳3 か月未満児」「1 歳3 か月から2 歳未満児」など年齢区分にしたがって、「発達上のおも な特徴」、「発達の要点」が書かれており、各々の発達段階に応じて編成しやすくなっている。「子ども の経験に即して関連性をもって考える」、「子どもの心身の発達の程度、保育所や地域の実態などを考 慮し目標を設定する」ことが示唆されている。
② 保育のねらいを編成する
「望ましい経験と活動」を具体的に示した「保育のねらい」として1 ~ 6 項目である。例えば、1 歳 3 カ月から2 歳未満児は、子ども発の「望ましいおもな活動」のねらい(2・3)と「保育者の働きか け内容」からのねらい(1・4・5・6)があるが、保育者の働きかけを「する、させる、助ける、楽し ませる」と表現しており、保育者の働きかけの内容・指導内容編成の根拠と考えることも出来る。
③ 内容の編成をする
「望ましい経験と活動」は、具体的に示した「保育のねらい」6 項目と照らし合わせ、例えば、1 歳 3 カ月から2 歳未満児の項目から保育者が選択し、配列することで指導計画の内容の骨組みは出来た ことになり、乳児の保育実践を方向付けることは可能である。1歳3 カ月から2 歳未満児の項目では
「生活」「遊び」という活動が内容を示しており、まずこの活動から選択する。内容をねらいとの関連 で整理すると、「3. 望ましいおもな活動」は「生活」28 項目、「遊び」25 項目になっている。次に、
選択した「生活」や「遊び」活動の項目から具体的に配列する。「望ましいおもな活動を基にして子ど もの生活経験に即した適切なものを調和的に選ぶ」、「具体的な生活経験に即して、領域にとらわれな いで総合的な生活のなかで指導できるようにする」、「活動がかたよりなく指導できるようにする」「活 動に対する留意事項」が示されている。
④ 具体的な指導計画の作成(年間指導計画・期間・月間指導計画・週案・日案)
「活動の配列が内容編成の根幹」であると解説には書かれている。乳児は、「生活」「遊び」という「活 動」が実践構造の中核という構図である。乳児の発達は月齢で考えることや発達の特徴があることを 考慮しながら、保育者は長期・短期の指導計画を編成すること。しかしながら、「生活」活動といって も乳児の場合、「基本的生活習慣」が中心となると、特定の活動内容に追い立てる可能性もある。年間 指導計画は、「遊び活動」といっても、「子ども自身の月齢や個人差、興味や関心、発達の特徴や特性 による視点」と「保育者が育てたいと思う発達の特徴や特性」があり、様々な指導計画が考えられる。
1965年保育所保育指針は、望ましい活動→総合的な生活(活動)→指導計画の編成、さらに、年間指 導計画→期間・月間指導計画→週案・日案→その他として具体的に示されている。
⑤ その他(個人差への対応、食指導計画、子どもの実態理解)
その他「3 歳未満の子どもの指導計画は、個々の子どもの生育歴・心身および活動の実態に即して、
個人ごとに作成するなど特別な配慮を行うこと。」「子どもの実態を把握し、その指導が適切に行える よう家庭との連絡を緊密にすること。」「指導計画はたえずそれに基づいて行われた指導の成果を、子 どもの発達の実態に即して評価し、その改善に努めること。」(65 解説書,p.245)が乳児の保育実践 において示唆されている。
⑥ 各年齢の配慮事項について
1965年保育所保育指針では、各年齢に「指導上の留意事項」をあげている。これは子どもの発達の 課題に伴う保育者の働きかけのポイントを書いて、実践の課題を明示しているので保育実践の構造に つながるものと思われる。例えば、2 歳児未満で「(3)子供が自分でしようとするときは、あまり世 話を焼かないで、それを満足させるようにし、助けを求めそうなときを見て助けるよう留意する」と 具体的な実践・かかわり方を提示している。ちなみに、すべてではないが、2 歳児では「(3)身の回 りのことが十分には自分で出来ないのに、自分でしようとして頑固にがんばる場合には納得できる方 法を考えること」とあり、1 歳3 カ月未満では直接の記述はないなど年齢ごとの保育者の働きかけの 違いを意識しやすい記述となっており、保育指導計画の実践の方向付けの参考になると思われる。