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乳児の保育内容研究の課題

ドキュメント内 乳児保育のカリキュラム編成の研究 (ページ 39-53)

第1章 2つの「指針」が示す乳児保育の方向

第1節 乳児の保育内容研究の課題

本論文は、乳児保育の「保育内容のカリキュラム編成」について検討することを目的とする。序論 で述べたように、乳児保育(本論文では3歳未満児の保育を示す)それ自体は従来あまり省みられず、

先行研究は少ない状況であった。乳児保育のあり方は、児童福祉法の改訂によって「保育に欠ける子」

から「保育の必要な子」を対象とする時代に変化してきた。また保育所保育指針の改定(2017)によ り、乳児保育は養護と「教育」としての見直しが必要であるということが保育内容に位置づけられた。

乳児保育のあり方が改めて問われる時代のなかで、今、まさに乳児保育の「保育内容編成はどうある べきか」といった「保育内容のカリキュラム編成」を検討することは必須の課題となっている。本論 文では、乳児保育における指導計画の内容編成についてどのような原理や方法が採用されてきたのか を整理し、新たな内容編成の原理と方法を提案する。実践構造の解明には、乳児保育の実証的な検討 を行うなどいろいろなアプローチが考えられるが、本研究では保育所保育指針が示す乳児保育の実践 構造を整理することとした。その理由は以下のとおりである。

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1)保育所保育の乳児保育の実践は、2008年改定の現行の保育所保育指針に規定されており、2008

年保育所保育指針はどのような実践構造を提起しているのかを読み取り、整理することが本章の目的 である。この場合の実践構造とは、子どもを目の前にして子どもに保育者はどのように働きかけてい るかを指し、その実践には働きかけのプラン(これを実践プランという)や現実の働きかけを含むも のとする。

2)2008年保育所保育指針は、乳児保育の実践の枠組みとして想定されている保育課程・指導計画

が保育実践をどのように方向付けているのかを検討するため、①保育課程及び指導計画の考え方、② 保育課程及び指導計画のねらいと内容の編成、③保育課程及び指導計画の編成の手順、などの観点を 設け検討した。本来ならば、編成の手順だけを検討すれば、実践と指導計画の関係がわかるはずであ るが、編成の手順は深く保育課程・指導計画の考え方と連動すると考えたためにこのような観点を設 けた。

3)乳児保育における実践構造は、全年齢の保育実践のあり方と結びついて提起されていることか ら、保育実践一般の整理を試み、その後に、乳児保育における実践構造を検討する。

4)また、2つの保育所保育指針において保育課程・指導計画は保育実践をどのように規定している

か(規定していないか)を検討する。これまでの想定では、保育課程が保育実践の枠組みを規定する ものであり、指導計画は、本来実践のプランであると考えていた。実際には、指導計画は直接保育実 践がつながっていない現状もあり、この3つの関係を検討する。

5)1965年の保育所保育指針は、2008年保育所保育指針と比較するために取り上げる。1965年保

育所保育指針は、保育課程・指導計画の考え方が2008 年保育所保育指針と異なると仮定しているた めである(玉置,2008、玉置,2003)。

1、領域主義と生活主義の統合

乳児保育における実践構造は、多様である。何らかの「領域」を設定することは当然であるが、子 どもは人間としては一体であり、部分的に順番に育つのではない。様々な身体性や精神性が一体とな って総合的に育っていく。乳児保育は生活が軸となって実践が行われる。

乳児保育における生活とは「社会への適応」であると考えられる。人間は生理的に未成熟な状態で 生まれ、生まれてからの周りの環境を通して育つ。すなわち、子どもはあらゆる環境、生活文化に適 応していくこと、すなわち生活適応力こそが乳児保育において重要である。1965年保育所保育指針は

「望ましい活動」を「生活と遊び」に分けているが、「生活適応力」の視点から考えると当然といえる。

「食事・睡眠・排泄・清潔・衣服の着脱」といわれる5項目、すなわち「基本的生活習慣」という特 定の活動が示されていた。このことは重要なことであるが、子どもは周りの環境という生活に適応し ながら、身体的、社会的、認知的、表現的な要因が影響しあって成長を遂げていく。

例えば、乳児が「コップを持つ」ことを考えるとき、身体的には「持つ・つかむ・持ち上げる・運ぶ」といった要因 が考えられる。一方、「自分で持った」「楽しんだ」といった表現的な要因もある。また、「コップ」という物的環境や 生活文化への適応活動ともいえ、「コップ」という物への認知的要因もあるといえる。また大人が「コップだよ」「はい どうぞ」といった呼びかけやかかわりといった社会的要因も含まれる。「生活適応活動」とは、総合的であり、特定の 力や部分を育てることではない。同時に、「生活適応活動」は、乳児からすれば「自分がやろうとすること」と「自分 の能力水準」に段差がある。例えば、コップを取ろうとしてもうまく取れないように(大筋力から小筋力への分化、快・

不快からしっとや喜びへの分化など)、成長や発達には順序性がある。さらに、人との関係において、乳児は大人にコ ップをとってほしいとき、自分ができないことを大人に援助を求めたりすることもある。

子どもは「生活適応活動」を自ら育んでいく(自分でやろうとする力)とも考えられ、乳児保育は、

「必要な生活適応活動への様々な援助」という大人の働きかけが保育内容の軸となる。2008年保育所 保育指針は、「心情・意欲・態度」の育ちを提議しているが、「生活適応活動」から保育内容の整理が 必要である。「生活適応活動」は、人との関係性の中で育つことから、大人すなわち保育者の保育実践 構造への視点が重要である。

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2、 「生活適応活動」を軸とした人との関係性

乳児保育における人との関係性は、特定の大人との絆である。たとえ保護者でなくとも、乳児は大 人に守られながら、大人の真似をしながら生活適応力を身につけていく。

2008年保育所保育指針には、「生命の保持」と「情緒の安定」が養護の目標として提示されている。

大人との関係性の中で子どもは情動交流を育み、周りの環境に生活適応していくと考えられる。乳児 保育は集団であることから、子どもにとっては、大人の働きかけが問題である。

例えば「これが食べたい」と思っても、大人に気づいてもらえないかもしれない。「順番」といって 待たされることもある。乳児期の子どもは、自ら言語や行為で表現できない存在である。保育者は、

大人の働きかけによって子どもが振り回されるという事実を意識しておくことが重要である。また、

運動、排泄、着脱等、探索活動や指先の操作性、巧緻性等の育ちが必要であることから生活技能の獲 得も大切な事項である。

3、乳児保育の実践構造が示す「活動」と「ねらい」

1965年保育所保育指針は、生活活動と遊び活動が実践構造の中核になる。活動は達成すべき目標と して位置づけられているため「望ましい経験と活動」と望ましいという保育の「ねらい」を含んだも のとなっている。このため、「ねらい」は活動内容を表示することになり、わかりやすいといえる。

同時に、特定の活動に追い立てる可能性もある。

2008年保育所保育指針は、ねらいは「心情・意欲・態度」という構造化された形で提示され、養護 と教育(5領域)で示されている。乳児保育の実践構造は、その領域ごとのねらいの実現と考えれば、

養護プラス 5 領域が実践構造ともいえる。一方、「総合的に考える」という立場からは、保育者が行 う事項と子ども発の活動への援助が実践構造であるともいえる。2 歳未満の場合は、個別の指導計画 を必要としており、実践計画と指導計画の乖離が大きくなる。集団保育の計画をどのように編成する かは、「生活・遊びの流れに応じて」と書いてあるに過ぎない。ここでも適切な判断が現場に期待さ れている。

一つは、X活動重視タイプ「1965年保育所保育指針が示す生活活動を軸とした実践構造」である。1965年保育所保 育指針が示す生活活動は、細かく見ていくと①単純活動モデル(図X-1)と②望ましい活動重視タイプ(図X-2)に わけることもできる。

もう一つは、Yねらい重視タイプ「2008 年保育所保育指針が示す、ねらい「心情・意欲・態度」を軸とした実践構 造」である生活活動が軸となった実践構造である。ねらい「心情・意欲・態度」が軸となった実践構造である。養護と 教育(5領域)で示されている。2008年保育所保育指針が示すねらい「心情・意欲・態度」は、細かく見ていくと① ねらい重視モデル(図Y-1)と②主体重視タイプ(図Y-2)にわけることもできる。

4、1965 年保育所保育指針X活動重視タイプ「活動重視タイプ」と 2008 年保育所保育 指針Yねらい重視タイプ「ねらい重視タイプ」

次に、X活動重視タイプとYねらい重視タイプとはどのようなタイプかについてを述べる。

1)X活動重視タイプ「1965年保育所保育指針が示す生活活動を軸とした実践構造」

① X-1 単純活動タイプ(図X-1)

単純活動モデルは、表 1-1「保育所保育指針における領域区分」に示すように保育内容の区分を提 案している。保育内容の中心は活動であるので、保育内容の区分は活動を「領域」として分けること であり、表1-1のように区分している。このモデルのポイントは、「活動」の視点から領域を分け、ま た、「活動の分化」として領域の分化を想定していることである。領域区分から示されている内容であ る。このタイプは、さらに活動内容を再分化して示すことが可能であり、図X-1で示している。乳 児の保育を実際に実施するには、図X-1が示すように遊びと生活の関係によって多様な実践活動が 考えられる。図X-1が示す「生活としての活動」の中には「基本的生活習慣」が一部含まれる。

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