第1章 2つの「指針」が示す乳児保育の方向
第2節 生活活動(遊び)の相補的活動の視点
1、乳児保育の方向の検討
1)視点は領域
乳児保育(1歳児未満)においては次のように保育の方向を示している。
イ本項においては、この時期の発達の特徴を踏まえ、乳児保育の「ねらい」及び「内容」については、身体的発達に関 する視点「健やかに伸び伸びと育つ」、社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」及び精神的発達に関 する視点「身近なものとかかわり感性が育つ」としてまとめ、示している。
この3つの視点に基づいて、3つの視点ごとに「ねらいと内容」および、「内容の取り扱い」を示し ており、乳児保育の領域と考えられる。この視点を理解するためには、0・1歳児の「生活」と「遊び」
の区分、2歳児の「生活」と「遊び」・「社会」の区分が「視点」という名で3領域を示していると受け 止めることも可能である。すなわち、運動・社会・精神的領域を提案している。それは、乳児保育を 教育の視点から見直すという意図性もあるといえる。単なる託児ではないということを示すためとも いえる。例えば、教育の視点からいえば、1歳児以上の保育と同様に「養護+5領域」という区分を採 用する方が一貫しているともいえる。つまり、0歳児においては、「発達の領域」と「保育・教育の領 域」とが重なり合っているが、保育ではどのような内容と働きかけが必要であるのかを明示すること が求められる。また、発達の側面では、成長する側面を記述する必要がある。特に、「ねらいと内容」、
「ねらいと活動」の関係を意識して整理することが必要であると考える。なぜ取り入れられなかった のかにも注意が必要である。乳児保育においては、この3つが妥当かどうかを考えるためにも、子ど もの生活適応活動は、個別的な「情動的交流」が土台となる。つまり、「子どもが生活する活動を通し て個別的情動的交流」を発展させていくことが保育課題の中核である。特に、0 歳児は家庭における 特定の大人との関係と同質のケアを、保育実践である「生活適応活動の展開」の中で受容することが 重要である。つまり、情愛の交流を含めた家庭的保育のよさを引き継ぐ必要があり、そのよさは生活 適応活動の関与の中で行われる。保育者はさまざまな生活適応活動を通して子どもを理解し応答する。
例えば、「この子の食の行動では、ご飯は小さくかためると食べるが、ばらばらでは食べない。」など といった生活における子どもの行動理解が重要である。また、食の場合には、大人が子どもと一体と なり食行動が実現していくこそが保育といえる。これは、ある種のケアであるとの認識もあるが、こ うしたケアを通じた子どもと保育者の関係こそが土台となるような乳児保育を検討したい。こうした 積み重ねによって子どもは保育者を認め模倣するようになる。現在の人員体制のなかでこうした個別 性を確保することは容易ではなく、行政上子どもの視点に立った保育条件を検討する必要がある。
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2)1 歳児未満の発達理解は乳児保育の方向を示しているか
ア乳児期の発達については、視覚、聴覚などの感覚や、座る、はう、歩くなどの運動機能が著しく発達し、特定の大 人との応答的なかかわりを通じて、情緒的な絆が形成されるといった特徴がある。これらの発達の特徴を踏まえて、乳 児保育は、愛情豊かに、応答的に行われることが特に必要である。
「第2章子どもの発達」で子どもの発達の姿を細かく書いていたが、今回は縮小して書いている。子 どもの育ちは、子育て支援とも関連し、暦年齢のようには育たない実情を鑑みているともいえる。子 どもや子育て家庭の実情に合わせたアセスメント、子ども理解に基づいた育ちの保障が求められてい る。暦年齢になったから何かが自然と育つのではない。そこにいる大人から受ける情愛や情動交流が 必要である。また何を育てる時期か、何が育っているのかという内的活動への理解が必要である。し かし、子どもの発達の姿だけではなく、「子どもの生活・関係」からとらえるという視点が少ないこと に注意を払うべきである。
つまり、乳児期は、「感覚及び運動機能が発達し、応答的かかわりが乳児期の保育の特徴」として掲 げている。しかしながら、最も重要な「子どもと大人の相互依存的・相補的関係」が提示されていない。
例えば、食するときにスプーンで食べさせてもらうのは、「子どもの口をあける→スプーンで口までも っていく→口に入れる→飲み込む」などといった行為の過程があってこそ、結果可能となる。つまり、
ある部分を大人が担い、ある部分を子どもが担うのである。このような分担の活動はほとんど大人の 活動のように見えるが、実際は「相補的関係」なのである。この関係は子どもの生活活動のさまざま な面で示されているが、乳児の保育においては特に顕著である。この点については後で詳述するが、
「融合保育」の発想をもち、乳児保育の土台として「相補的生活活動」を位置づけたい。上記の課題 意識から、乳児保育の「ねらいと内容」について次のように指針は示している。
3)0 歳児(乳児保育)のねらいと内容
⑵ねらい及び内容
ア健やかに伸び伸びと育つ
健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力の基盤を培う。
(ア)ねらい
①身体感覚が育ち、快適な環境に心地よさを感じる。
②伸び伸びと体を動かし、はう、歩くなどの運動をしようとする。
③食事、睡眠等の生活のリズムの感覚が芽生える。
(イ)内容
①保育士等の愛情豊かな受容の下で、生理的・心理的欲求を満たし、心地よく生活をする。
②一人一人の発育に応じて、はう、立つ、歩くなど、十分に体を動かす。
③個人差に応じて授乳を行い、離乳を進めていく中で、様々な食品に少しずつ慣れ、食べることを楽しむ。
④一人一人の生活のリズムに応じて、安全な環境の下で十分に午睡をする。
⑤おむつ交換や衣服の着脱などを通じて、清潔になることの心地よさを感じる。
この「ア健やかに伸び伸びと育つ」の項目で基本となることは、「健康な心と体を育て、自ら健康で 安全な生活をつくり出す力の基盤を培う。」である。すなわち、健康な心と体を育て、自ら安全な生活 を作り出す力の基盤を培うことが土台といえる。しかし、乳児保育は、姿勢の転換はじめ「様々な身 体移動・活動の感覚」は大人への依存や一体的活動、大人とのやり取り(○○ちゃんここまでおいで
→来た来た→「おお、かわいい」等)という関係性の中で育つものである。保育者と子どもとが一体 的な土台があってこそ、運動感覚は育つといえるのである。
この視点は、次の「イ、気持ちが通じ合う」ではどうか。このことに触れているのだろうか。
83 イ身近な人と気持ちが通じ合う
受容的・応答的なかかわりの下で、何かを伝えようとする意欲や身近な大人との信頼関係を育て、人と関わる力の基盤 を培う。
(ア)ねらい
①安心できる関係の下で、身近な人と共に過ごす喜びを感じる。
②体の動きや表情、発声等により、保育士等と気持ちを通わせようとする。
③身近な人と親しみ、かかわりを深め、愛情や信頼感が芽生える。
(イ)内容
①子どもからの働きかけを踏まえた、応答的な触れ合いや言葉がけによって、欲求が満たされ、安定感をもって過ごす。
②体の動きや表情、発声、喃語等を優しく受け止めてもらい、保育士等とのやり取りを楽しむ。
③生活や遊びの中で、自分の身近な人の存在に気付き、親しみの気持ちを表す。
④保育士等による語りかけや歌いかけ、発声や喃語等への応答を通じて、言葉の理解や発語の意欲が育つ。
⑤温かく、受容的なかかわりを通じて、自分を肯定する気持ちが芽生える。
ここでは、ねらいはそうした関係の視点から書かれている。しかし、いくつかの課題もある。
① 大人との関係が成立するには、様々な生活適応活動が築かれる必要がある。例えば、授乳の積み 重ねの中で、大人との関係が育つ。また、子どもが「何かを細かくする活動」の繰り返しの中で、大 人と一緒に行動した「楽しかった」体験が、大人との関係性を構築する。つまり、関係性を構築する ための「活動」とは何かという、保育内容編成への見通しが大切である。
② この時期に土台となる保育者と子どもの関係性は、保育者一般とのかかわりではいけないという ことである。保育所保育指針は「安心できる関係の下で」と表現している。基本は、子どもにとっての 1 対 1 の関係が作れることが必要である。
③ 子どもの活動の中にある、子どもの意図性、子どもの「内的活動」を読み取る大人が必要である。
0歳児は、子どもの感情表現行動(泣く等)にとらわれ、子どもの内的活動を見過ごす可能性がある。
先の大人との関係性では、子どもが自らの意図性を大人に「理解されている」という感覚が重要であ る。このため、大人との交流は、「食べる・一緒に寝る等」といった生活経験(活動)や「追う―追われ る」などの遊び体験(活動)で、1対1の関係が生じる必要がある。このような活動を通じて、子ども は大人に「理解されている」という感覚が育つのである。すなわち、このような交流の中で1対1の 関係は生じるものであり、交流のないところで子どもの育ちはないと考えるべきであろう。
次に、「ウ、身近なものと関わる」という活動ではどうか。このことに触れているのか。
ウ身近なものとかかわり感性が育つ
身近な環境に興味や好奇心をもってかかわり、感じたことや考えたことを表現する力の基盤を培う。
(ア)ねらい
①身の回りのものに親しみ、様々なものに興味や関心をもつ。
②みる、触れる、探索するなど、身近な環境に自分から関わろうとする。
③身体の諸感覚による認識が豊かになり、表情や手足、体の動き等で表現する。
(イ)内容
①身近な生活用具、玩具や絵本などが用意された中で、身の回りのものに対する興味や好奇心をもつ。
②生活や遊びの中で様々なものに触れ、音、形、色、手触りなどに気付き、感覚の働きを豊かにする。
③保育士等と一緒に様々な色彩や形のものや絵本などをみる。
④玩具や身の回りのものを、つまむ、つかむ、たたく、引っ張るなど、手や指を使って遊ぶ。
⑤保育士等のあやし遊びに機嫌よく応じたり、歌やリズムに合わせて手足や体を動かして楽しんだりする。