第 5 章 乳児の保育内容編成の原理―融合保育の視点から―
第 6 節 生活適応活動の構造的理解―相補的関係―
196 見守り、一緒に楽しめるような相補的関係をめざす。
⑥ 子どもが考えた遊びを保育者が真似をして楽しむことが、「真似っこ」遊びの始まりである相補的 関係を大切にする。
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2、乳児にとって相補的関係の発展とは
1)乳児の相補的関係の試論
「相補的」とは、「あいおぎなうこと」を表している。乳児の関係性は、まさに大人と出会い、「補 い合って活動し、生きている」と考える。前述してきたいろいろな理論を整理した結果であるが、現 時点で以下のように整理を試みる(表 5-6)。重要なことは、「子どもの関係性の土台は相補的関係で ある」という想定の下での整理であること。この場合、活動においては軸をどこにおくかが大切であ り、これを含めて以下に表5-6を説明する。
表5-6 乳児の相補的関係
子どもから見た関係 子どもの行動カテゴリー 具体的事例 保育者の行動カテゴリー具体事例 主な月例
分離的自主性 1 見守る 子どもの活動に任せている
分離的自主性 2 確認する あんなおもちゃあったね
分離的自主性 3 共感する すごい面白そう
対等性・対等な交流 4 環境を整える コーナーづくり
対等性・対等な交流 5 遊び手として活動する先生も楽しいな
対等性・対等な交流 6 例示での誘導 手つなぎ鬼で尻尾をつけたら
活動のサポート 7そうしようかな 提案する
サポートされる 8モデルの模倣 モデルを示す おはしをこう使う 知識の提供
サポートされる 活動の予測
サポートされる 9 誘導する お箸をこう握る
一体的包摂・生活の依存 10言語的依存 歩く・初語 技能の保持 一体的包摂・補充 11認知的依存 機嫌・感情の保持 一体的包摂・補充 12 生きる(生命)活動の補足情動的交流
一体的包摂・補充 13身体的依存 寝返り・座る 尊厳の承認 存在の肯定 いやを認める 一体的包摂・身体の自己運動の依存14全面的依存 座る・見る 生存の承認 生命・安全の確保
保育者の岸(堤防)
機嫌・情動転換の依存
子どもの岸(堤防)
2)乳児の相補的関係の軸
① 「自主性」対「一体性」の関係である。
これは、乳児が「大人に依存しないで自分でやれる行動」を「自主性」すなわち、自主的行動とし ておくならば、その反対の極に「一体性」すなわち一体化をおくことが妥当である。一体化というの は、母子一体化といわれるように、体内において一体的な関係であるという状況を念頭においており、
その基本は「大人への依存」である。乳児保育において、「自立」論や「しつけ」論から、「大人への 依存」は否定的にみられがちであり、一方の「主体性」論からは批判される傾向があった。しかし、
乳児の場合には、「自分で吸う」などといった自己活動がある反面、「大人への依存」の関係がなけれ ば生きていけない、育たないという関係が必要であることは明らかである。
② 「大人への依存」の関係は、決して子どもや大人の一方的な関係ではない。「相互依存」、「相互 的相補の関係」である。
「大人への依存」の関係は、決して子どもや大人の一方的な関係ではない。「相互依存」、「相互的相補 の関係」であるのではないか。乳児の場合、自ら「乳を吸う」というような場合は自主的であり、大 人から自立しているともいえるが、大人が吸うためには必要な存在であり、抱き上げるというような 行為そのものは「大人が存在すること、居ること」によって支えられている。「相補的関係」であると いえるのではないか。この 2 つの極を含め、「子どもと大人の関係」は「相補的」であると考える。
本論文では「相補的関係」とよぶことにする。上記の表5-6は、全て「相補的」であるが、タイプが 異なることを提示している。
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3)相補的関係の発展をどうとらえるか
―
4つのタイプを念頭に―
次に、この表5-6から「4つのタイプ」を想定し、乳児保育の保育内容編成に役立てることを試案 として想定する。すなわち、「子どもからみた関係性」は、「①分離的自主性、②対等な共同性、③サ ポートされる、④一体的包摂」の4つのタイプがある。
これら全ては「相補的関係」が大前提であることは前述したとおりである。しかし、同じようにみ える「相補的」タイプではあるが、例えば、「一体的包摂」の細部を考えると、「依存・介護・養護」
の関係となる。これは、大人の側に「生きる活動を支える」という関係があることを示している。乳 児の「身体のコントロール」においてもこうした大人との関係性が軸となることは通例である。もち ろん、大人のなかには「早く自立を」と考える場合もある。しかしながら、子どもはこうした「大人 への依存」を経ることで安定した人との関係を構築していることを見落としてはならない。これは、
生活の自立が想定される3-4歳まで続いており、乳児保育の土台となる大人との関係性である。ただ し、「大人への依存」は、「子どもはいろいろなヒトとしての自己活動を行う」ときに、「大人への依存」
活動があるという認識を見落としてはならない。例えば、「起きたい、抱っこしてほしい」というよう な身体移動はもちろんのことであるが、食事行動においても子どもは「のどが渇いた、お腹がすいた 食べたい」というような自己の欲求に沿った「意思の発揮を行っている」のである。
次に、「包摂」とは大人が子どもを包み込む関係であるが、大人が「この子はかわいい」などといっ た「子どもの存在を認める」ということと、同時に、子ども自身が「自分の活動を行っている」状況 を示す。例えば、子どもは大人に抱かれ、ハグされることから「包み込まれること」を体験する。同 時に、子ども自身が笑うことから「笑顔」を表出し、「いい顔」になって「大人を引き付ける活動」を 展開する。すなわち、このような子どもの行為は、外的活動として笑うという「自分の活動」があり、
結果として「大人を引き付ける活動」に展開している。「情動的交流」は、「包摂」の関係であること に変わりはない。例えば、大人が「いない・いない・ばー」の遊びのように「子どもが笑う関係」を 想定し、子どもも大人と「キャキャ」といって一緒に喜び合う関係を想定しているタイプである。
「支える活動」は、子どもが自分での活動を展開するときにその活動の面白さを発見し、維持した りなどを通して子どもの活動が維持されるようにする活動をいう。
4)子どもの行動カテゴリー
表 5-6「4つのタイプ」からは、乳児保育として「①分離的自主性、②対等な共同性、③サポー
トされる、④一体的包摂」の4つのタイプを示した。次に、4つを「子どもの行動」として示す。
① 分離的自主性 → 自分でしようとする、これなあに、みてみてという。
分離的自主性は、保育者に見守られているという理解のなか、「自分で」何でもやりたい時期といえ る。しかしながら、まだ大人の見守りは必要である。保育者は子どもが自分で「できた」という満足 が得られるように見守ることが大切である。また、「これなあに」となんでも知りたがる時期でもある。
保育者が「これは、いぬ」というように言語化しながら子どもの行動を助ける相補的関係である。
例えば、子どもが紙を細かくちぎる活動をしている場合、子どもはちぎる活動をしながら大人の理 解を求めようとする。子どもが「みてみて」という内的活動を理解する保育者が存在するとき、子ど もとの情動交流が生まれ、自分で意欲的に活動を継続しようとする。自己への自信が芽生えるといえ る。この場合、保育者は見守りながら、一方では「できた、できた」、「すごい、面白そう」という確 認や共感が大切である。
② 対等な共同性 → 玩具でやりとりをする、はいどうぞ、まねっこをする
対等な共同性は、子どもが自ら気持ちよくしてくれる保育者の真似をしようとする時期といえる。
特定のしがみつきたくなるような保育者には、自分のお気に入りの物を「はい」といって渡したり、
受け取ったりしながら面白がって笑う時期といえる。一緒に活動をして面白がってくれる心地よい保 育者の存在が必要である。保育者は、子どもと一緒に同じ活動をする相補的関係である。
例えば、見立て遊びややり取り遊びをする場合、子どもは、パクリと食べる真似をしながら大人に