• 検索結果がありません。

事業の目的、必要性 2-1.

トルコの保健医療に関して、前項で述べた通りいくつかの特徴が挙げられる。具体的には 急激な人口増加とそれを維持する若い人口構成、都市部への人口集中、社会保障制度の充実 による患者数の増加に対し、病床や医療人材の不足が目立つ構造となっている。合わせて、

衛生環境の改善や生活習慣の変化などにより、疾病構造がいわゆる先進国型となっている。

死因のトップ3は循環器系疾患、がん、呼吸器系疾患であり、一般に高度な医療が求められ る疾病が増えていることがわかる。

その一方で、トルコの医療提供体制についていえば、医療施設は病床数比で国立病院が約 6 割、私立病院が占める割合が約 1 割であり、国立病院では診療費が全額保険適用となるた め、外来患者数がきわめて多くなっているのが特徴である。しかしながら、医療の内容にお いては、国立病院は民間と比較して低いレベルにあるとされ、主に施設設備や機器の老朽化 などがその原因であるとされている。

また、ヨーロッパ諸国と比較すると安いコストで医療が受けられることを強みに、ヨーロ ッパのみならず、特に中東地域の富裕層を対象とした医療ツーリズムの誘致にも積極的に取 り組んでいることも近年の特徴である。これらを踏まえると、現在トルコは「質の高い医療」

のニーズが増加している、ということがいえる。

271.7

304.5

358.4

166.8 182.3 204.7

100 150 200 250 300 350 400

2007 2009 2011

男 女

(人)

(年)

271.7

304.5

358.4

166.8 182.3 204.7

100 150 200 250 300 350 400

2007 2009 2011

男 女

(人)

(年)

一方、トルコは比較的高い経済発展を維持しているとはいえ、輸入超過による慢性的な経 常赤字を抱えている国であり、政府としては財政支出を安定化し、可能な限り債務を増加さ せることなく公共事業を速やかに進めることが命題となっている。

そこで、トルコ政府は、初期投資の調達を民間事業者に求め、建設された病院をリース払 いとすることで財政上はオフバランスとしながらも、必要な病床を確保することが実現可能 となるPPPによる国立病院の再整備を計画し、全国的に事業を進めている。

出典:調査団作成 図11 病院PPP事業の必要性

関連法規 2-2.

(1) 病院 PPP 法

トルコは世界に先駆けてPPP法(個別法)を立法化した国の一つであり、1984年に発電 所事業に民間企業の参入が認められた(法律第3096号)。また、1994年には運輸、エネル ギー、水道などのインフラ分野を対象とした、BOT 方式を定めた法律が制定された(法律 第3996号)。さらに、その後、主にエネルギー、水道事業においてBOT、BO方式が導入 されており、1995年から2001年にかけて30ヶ所の発電所がBOT、BO方式により整備さ れた。

表9 トルコにおける民営化関連法 Built-Operate-Transfer (Law No:3096, 3465, 3996)

⇒Low No 3996は、トルコにおけるBOT方式を定めた基本的な法律

Built-Operate(Law No: 4283)

Transfer of Operational Rights (Law No: 4046, 5335, 3465, 3096) Long Term Rent(Law No:5335, 4046)

Built-Rent-Transfer(Law No: 5396)

⇒保健分野におけるBRT方式によるPPP事業を許可。

出典:調査団作成

医療分野に関しては、2005年に医療サービス基本法に附則第7条が追加され、同条及び 同条に基づき制定された「賃貸借の対象とする新規医療施設の建設並びに非医療サービス 及び非医療施設の運営の対象とする既存医療施設の改修に関する規則(規則第 26236 号)

により、病院PPP 事業に関する規定がなされた(Supplemental Article 7 of Health Services Basic Law No. 3359及びRegulation Regarding Construction of Health Facilities in Return of Leasing and Renewal of such Facilities in Return of Operation of the Services other than the Medical Services, Regulation No. 26236)。

しかしながら、2012年にトルコ医師会等により病院PPP事業に対する訴訟が起こされ、

7月にトルコ最高位の行政裁判所であるCouncil of Stateによって病院PPP事業に対する停止 命令が出される事態に至り、トルコ政府には病院 PPP 事業を実施するための法的根拠の早 急な整備が求められていた。特に、医療従事者を民間事業者が雇用する点や、国営地外で あっても既存病院跡地を民間事業者が商業利用できる点等が問題視され、Council of State より違憲判決が出されていた。

その状況を受け、2013年 3 月に新病院PPP 法(Construction of Facilities, Renovation of Existing Facilities and Purchasing Services by Ministry of Health by Public Private Partnership

Model Law No. 6428) が制定され、旧来の病院PPP事業を規制していた法を、体系的にか

つ明瞭に規定するに至った。新病院PPP法の制定により、病院PPP事業の停止命令の理由 となっていた、既存病院跡地の商業利用に関する課題について整理された結果、事業実施 の敷地に制限されることとなり(臨時第 1 条)、違憲判決への対応が示された。また、融 資側にとっては、融資に対するトルコ政府、財務省による返済保証が示されたこと(第 13 条、14条、15条)や、為替リスクへの対応策が明確にされたこと(第5条)、契約解除時 の融資団の権限が明確にされたこと(第 4 条)等からバンカブルな事業に近づいたとの見 方がされている。

その後、同法の実施細則として「保健省による官民連携モデルに基づく施設の創設、改 築及びサービスの調達に関する実施規則」(The Implementation Regulation Regarding the Construction, Renovation of Facilities and Procurement of Services by the Ministry of Health under the Public Private Partnership Model)が2014年5月に制定、病院PPP事業を進めるための法 的根拠は揃ったとされている。

(2) SPV の設立にあたっての法規制

外国企業は、株式会社、有限責任会社(株式会社、有限責任会社ともに有限責任法人で ある)、支店、連絡員事務所を設立することが出来る。連絡員事務所及び支店は親会社の 延長線上にあり、トルコ法では独自の法人格を有していない。したがって、外国企業は特 に株式会社または有限責任会社を選ぶ傾向にある。この両者の設立等に関する手続き等は 実質的に同じであるが、主な違いとして公的債務に対する株主責任の有無や、税務面で違 いがある。

会社設立の手続きは、定款の作成、公証、会社帳簿の承認、納税手続き、出資、登記等 の手続きを踏んで行われる。設立スケジュールとしては、必要な書類を提出後 1 週間から 10 日間を要する。一般的な会社設立に要する概算費用は、2,500~3,000 ユーロ(翻訳、公 証、登記費用)だが、翻訳、公証を行う文書の頁数次第で変動する可能性があることに留 意が必要である。SPV については、公証や確認証明を要する文書が通常の会社設立と比較

して多くなる場合があり、その場合には概算費用は、3,000~3,500 ユーロに増加する。ま た、SPVの株主は会社登記前に資本金の4 分の1 を払い込む必要があり、加えて資本金の 0.04%を公正取引委員会の銀行口座に預け入れる必要がある。この点から、会社設立にあた っての資本金の金額は会社設立費用として考慮に入れておく必要がある。

(3) SPV の運営にあたっての税制

SPV 運営に必要な税金は、法人税、源泉徴収税、VAT、固定資産税、印紙税等がある。

法人税は税引前純利益の 20%であり、源泉徴収税は個人の所得から差し引いて納税される。

その他、トルコで得た利益を外国へ送金する場合も15%の源泉徴収税が差し引かれる。

VAT に関しては、18%がかけられるが、保健省への確認によると、SPVが請負事業者へ 支払う委託費に上乗せするVATは保健省より償還されるとのことであった。なお、生活必 需品は8%がかけられる。

その他、固定資産税は本事業においては免税、印紙税は事業者との契約金額に対し、最 大1%がかかるとのことである。

(4) その他関連法規

病院PPP事業に関連する法規については、『経済産業省 平成23年度 日本の医療サー ビスの海外展開に関する調査事業 トルコにおける病院整備運営環境調査調査報告書』の p.65からp.91が詳しい。本事業の計画から実施に際しても関連法規の確認を必要に応じて 実施することに留意する。

事業の実施方法、実施体制 2-3.

(1) 事業実施体制

トルコで現在実施されている病院PPP 事業は、トルコ政府(保健省)と、民間企業が組 成したSPVが契約し、官民で役割分担をしながら国立病院を整備、運営する事業である。

医療行為にあたる診療や看護、検査・治療は、保健省の管轄とされ、また、土地について も、保健省が使用権を有し、無償でSPVに貸し出すこととなっている。

民間企業が組成するSPVは、入札により選定される。共同企業体構成員並びに株主より 出資金を集め、また貸主より融資を受け、事業の初期投資に係る費用を調達する。SPV は 初期投資として施設の設計・建設・機器の調達などを行い、開院後は施設を所有しながら 施設設備の維持管理、医療機器並びに情報システムのリースと保守、物品管理や検体検査 サービスを提供することが求められている。実施にあたっては、設計事務所や建設業者を 雇用し、また運営期間には運営サービスを運営業者にアウトソーシングするなどして、各 種サービスを提供することとなる。

一方保健省は、賃料やSPVのサービスに対する対価を払い、その施設を利用して周辺住 民に医療を提供する。

なお、SPV の選定とは別に、保健省は政府側コンサルタントを選定する入札を、SPV 決 定後に実施する。コンサルタントは、保健省とコンサルタント契約を締結し、保健省に代 わり、運営事業者であるSPVの設計・運営計画を評価し、事業実施を監理モニタリングす