本邦技術 1-1.
(1) 免震技術
アイテックが行ってきた過去の調査等でも、日本の免震技術の優位性については保健省 側に説明を行って来たが、本年初旬に就任した保健省保健投資局副局長Murat Binici氏との 面談では、改めて日本の免震技術に対する期待について言及があった。第 4 章で述べたよ うに、日本が実際の震災を経て培った免震技術として、免震ゴムだけでなく、すべり支承、
ダンパーなどを組み合わせた最適な免震技術、それを支える免震のシミュレーション解析、
維持管理というものには大きなアドバンテージと共にニーズがあると考えられる。
(2) 防災技術
トルコには東西約 1,200km にわたり歴史的にも多くの地震を引き起してきた北アナトリ ア断層や、東アナトリア断層、またエーゲ海沿岸地域に中小の活断層が集中しており、上 記、免震技術に加え、災害を想定した病院設計、院内インフラ整備、また災害時の病院運 営マニュアル、インフラ供給確保や備蓄品など、防災対策は必須である。しかしながら、
現行の病院 PPP 事業の入札図書では、具体的な災害対策についての記載はなく、応札者の 提案に委ねられている。そのため、実施の震災を経験し、事業継続計画(BCP)に基づいた 災害対策の経験に対するニーズは非常に高いと考えられる。
病院設計においては、自然光を活用できる設計、廊下や待合などに医療ガスアウトレッ トを配置し災害時に転用できるようにする、非常用電源、再生水の活用、食糧や医薬品の 備蓄、他の医療機関や AFAD、自院の医療スタッフとの連絡手段の確保、災害マニュアル 整備と訓練、医療機器の固定等々、ハードとソフトの両面においてニーズがあると考えら れる。
以下に、日本の技術に優位性のあると考えられる免震技術、防災技術の例を示す。
出典:中東遠総合医療センター基本設計書より抜粋 図45 日本の技術に優位性のあると考えられる免震技術、防災技術の例
(3) 省エネ技術
現在の病院PPP 事業では、入札図書に、再生水、地熱発電、トリジェネレーター、グリ ーンルーフ、太陽光発電、カーテンウォールなどの利用が記載されているが、明確な仕様 は規定されておらず、日本の省エネ技術を活用する提案により事業受注の可能性を高めう る余地があると考えられる。
以下に、日本の技術に優位性のあると考えられる省エネ技術の例を示す。
1. 自然保護
2. 自然採光、換気の活用
3. グ リ ー ン ル ーフ等
4. 太 陽 光 発 電(ハ イブリッドなど) 5. 太陽熱利用
6. 雨水利用
7. BEMS
8. 地震吸収層 9. 排熱利用
10. 高遮断断熱ガラス 11. 外部ルーバー 14. Eco Materials
12長寿命建物設計 13. Skeleton Infill 15. 節水機器
16. 照明制御 17.節電照明
出典:中東遠総合医療センター基本設計書より抜粋 図46 日本の技術に優位性のあると考えられる省エネ技術の例
(4) 医療技術
① 粒子線治療
日本の医療技術として、前述した内視鏡治療だけでなく、粒子線治療装置への期待は 非常に大きい。
特に陽子線治療装置については、現在日本国内で 11 施設に導入されており、これは 世界最多である。日立製作所、三菱電気、住友重機の 3社が開発、提供しており、シン クロトロンタイプ、サイクロトロンタイプ、また炭素線などと組み合わせた治療も行わ れている。各施設により特徴はあるが、小型化されたシステムや、スポットスキャニン グ照射、ペンシルビームスキャニング照射、動体追跡、呼吸同期などの技術を持ってお り、先駆的に技術を培ってきた日本の陽子線治療装置は世界的に優位性がある。
トルコでは、粒子線治療装置はまだ1台も導入されていない。近年トルコにおける死 因のトップ3の一つとなっているがんに対する治療法として、侵襲性が低く正常な組織 に損傷を与えない粒子線治療装置が注目されている。保健省としても、病院PPP事業の 計画が始まった 5年ほど前から、特に陽子線治療装置については調査を続けているが、
トルコ初の陽子線治療装置を首都であるアンカラに配置するのか、もしくはイスタンブ ールに配置するのか、さらには大学病院か大型病院PPP事業に配置するのかが、政治的 な判断に委ねられ結論が出ていない状況であり、実際の導入には至っていない。そのた めこれまでは大きな進捗は見られなかったが、病院PPP事業もファイナンスクローズに 至った案件が出るなど今後進展していくことが予測される中、陽子線治療装置設置に関 する議論も進展が期待され、日本が培ってきた陽子線治療技術に大きな期待が向けられ ている。
以下に、日本の陽子線治療装置の特徴をまとめる。
1. 自然保護
2. 自然採光、換気の活用
3. グ リ ー ン ル ーフ等
4. 太 陽 光 発 電(ハ イブリッドなど) 5. 太陽熱利用
6. 雨水利用
7. BEMS
8. 地震吸収層 9. 排熱利用
10. 高遮断断熱ガラス 11. 外部ルーバー 14. Eco Materials
12長寿命建物設計 13. Skeleton Infill 15. 節水機器
16. 照明制御 17.節電照明
表43 日本の陽子線治療装置の特徴
日立製作所 三菱電機 住友重機機械工業
加速器
シンクロトロン
(サイクロトロンに比 べ、加速エネルギーが高 く、産出粒子の損失が少 ない。エネルギーが可変 であり、サイクロトロン よりも、ペンシルビーム スキャニング照射を容易 にできる。
元々サイクロトロンより も設置面積は大きいが、
縮小化が進められてい る。)
シンクロトロン
(サイクロトロンに比 べ、加速エネルギーが 高く、産出粒子の損失 が少ない。エネルギー が可変であり、サイク ロトロンよりも、ペン シルビームスキャニン グ照射を容易にでき る。
元々サイクロトロンよ りも設置面積は大きい が、縮小化が進められ ている。)
サイクロトロン
(陽子線ビームを連続 的に供給するラインス キャニング照射(*詳 細については、別表「照 射方法」参照)が可能。
シンクロトロンより も、照射強度が安定し ている。
また、設置面積が小さ い。)
線量率 1.0Gy/min 以上 2.0Gy/min 以上 1.0Gy/min 以上 ビームエネルギー 陽子 250MeV 陽子 70~250MeV 陽子 230MeV
照射室の種類
・固定照射室
・回転ガントリー照射室
(360 度の方向から照射 可能)
・固定照射室
・回転ガントリー照射 室
・固定照射室
・回転ガントリー照射 室
照射室構成 2~3 室 3~6 室 1~4 室
粒子線治療装置 の他に必要な 大型機器
CT 等 CT 等 CT 等
照射方 法
(※各 照射方 法の説 明は、
別表
「照射 方法」
参照)
ペンシルビームスキャ ニング照射法(スポッ トスキャニング照射 法)
● ● ●
ラインスキャニング照
射法 ●
高線量率照射 ●
積層原体照射システム ●
ユニバーサルノズル ●
呼吸同期機能 ● ● ●
動体追跡照射技術 ●(世界初)
自動位置決めシステム ● ● ●
強度変調陽子線治療法
(IMPT) ● ●
炭素イオン/陽子タイ
プ 治療システム ●(世界初)
導入実績 国内:3
海外:1
国内:7 (※建設中含 む)
国内:2
海外:2 (※建設中含 む)
出典:各社資料より調査団作成
② スポーツ医学
2013 年に当時のエルドアン首相が、イスタンブールのイキテリ案件にスポーツ医療 を含ませることを表明したこともあるなど、トルコのスポーツ医学に対する期待は高い。
実際には、イキテリ案件ではリハビリ病院の一部に検討されている程度となっているが、
新たなイスタンブールの病院PPP事業においては、スポーツ医学専門病院を導入するこ とを保健大臣が検討しているとの情報もある。日本はスポーツ医学に関してトルコより も長い経験を有し、国立スポーツ科学センターをはじめとして多数の研究機関や大学・
医療機関のスポーツ医学診療科が設置されており広い裾野を形成している。そのため本 邦のスポーツ医学に関する経験は大いにニーズがあると考えられる。
本邦ノウハウ 1-2.
これまでファイナンスの問題により停滞していた病院PPP事業であるが、保健省自身も入 札図書の見直しを行ってきており、2014年の9月以降はいくつかの案件で融資が付き始めて いるという情報もある。しかし運営の観点からは、保健省と事業者間の業務・リスク・費用 分担が不明確な点が多くある。この点で、本邦の病院 PFIで培った経験には大きなニーズが ある。また、病院運営という観点からは、院内物流の効率化や多くの医療機材の管理やメン テナンスなどにもニーズがあると考えられる。
さらには、現在トルコで導入されている病院情報システムは、情報を収集し共有する手段 として用いられているが、事業者側からの病院への経営支援、外来の待ち時間を減らすため の業務フローに合わせたシステム構築、入院患者サービス、医療機器管理、手術室管理など には日本のノウハウを活用する潜在的なニーズがあると考えられる。また、現状のトルコの 病院では、病棟にて紙カルテを併用しているといった状況もあり、クリニカルパスと連動さ せたシステム、看護支援などにもニーズがあると考えらえる。
これらは、第3章、第4章にまとめている。