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病院ハード(施設、医療機器等)の実態と課題 2-1.

本調査において訪問した国立病院はどれも建物規模、診療規模ともに大きく、多くの患者 を抱えている。また建設された時期は古く、増築や増床、設備や医療機材の更新を繰り返し ているが、今日の医療需要に十分に応えられていないことが、どの病院にも共通した実情で ある。一方で、私立病院は施設や設備・医療機材など先進国と遜色ない医療サービスを提供 している。このことからも、国立病院の改善は喫緊の課題といえる。

トルコの病院の現状課題としては以下が挙げられる。

 以前に建設された病院の建物は、一般的に柱、梁は鉄筋コンクリート造であるが、内 外壁はレンガ積みもしくはコンクリートブロック積みであり、地震時にレンガが倒壊 する恐れがある。

 以前に建設された病院の病室は多床室で狭いものが多く、入院看護に十分なスペース が確保できていない。

 一般居室をNICUや手術室に転用している病院もあり、十分な空調環境や衛生環境が 確保できていない。

 ICU等に多くの医療機器が整備されていて、十分なスペースがないために正しい位置 に配置されていない病院もある。

 多くの国立病院や大学病院は、建設が古く旧式な調理設備を使用しており、衛生状態 も必ずしも良くない。

 狭く旧式なドアが多くバリアフリー対応の有効幅が確保されておらず、車いす利用者 が通ることができない病院がある。

 ガスシリンダーが部屋に置かれており、医療ガスが中央配管されていない病院も多く ある。

 一部の病院では、情報システム化が積極的に推進されており、オーダリングシステム

(一部、電子カルテを含む)、予約システム、患者待ち表示システムなどが装備され ている。

アンカラ・ヌムネ病院 大理石階段の摩耗と不陸

アンカラ・ヌムネ病院 階段手摺のぐらつき

アンカラ・ヌムネ病院 天井の歪み

ブルサ・チェキルゲ国立病院 狭い 2 床室

アイドゥン・母子病院 納まりの悪いケーブルラック

アイドゥン・母子病院

本来の使用目的とは異なるダクトの貫通 出典:調査団撮影 図41 トルコの病院建築の問題例

トルコの病院施設に関する規定 2-2.

(1) 国立病院の施設 - 面積等

法令上、国立病院の総床面積、敷地面積および階数に関する規制は存在しない。これら の施設規模に関する事項は、技術仕様書および保健省と契約者との間の事業契約によって 特定される。なお、病床1床当たりの面積に関しては、現在、保健省は病床1床当たり200

㎡を基準値として定めている。

- 病床数

国立病院に要求される病床数は病院の種類毎に規定されており、例えば、総合病院

(General Hospital)は50床以上の病床が必要とされ、外来病院(Day Hospital)は5床以上 の病床が必要とされている。各国立病院は、保健省の承認がなければ、新たな医療サービ スを提供したり、病床数を変更したりすることは認められない。

以上の法的規制に加え、国立病院の建設については、「医療施設の設計基準に関するマ ニュアル」(Manual on Minimum Design Standards of Turkish Healthcare Facilities)がある。同 マニュアルは保健省によって推奨される基準であるが、現状では法的拘束力を有するもの ではない。しかし、同マニュアルにおいて言及されている技術仕様については、今後、法 的拘束力のある規制が導入されることが予想されている。

- 病室

病室の規模に関する法的な規制は存在しない。この点については、「医療施設の設計基 準に関するマニュアル」が広範に規定しており、例えば、1床室には 9 ㎡以上、2床室の場 合には1床当たり7 ㎡以上の面積などを有することが求められ、また、病床間には110㎝ 以上の距離があることが求められている。

他方、病室 1 室当たりの病床数については、これまでは「大部屋」方式として、病室内 の病床数は3~4床とすることが多かったが、2002年の医療改革以降、より高い水準の医療 ケアの提供を目的に新たな施設環境が計画されており、「2010 年トルコ医療施設最低設計 基準に関するガイドライン(2010 Guideline on Minimum Design Standardsfor Healthcare

Buildings in Turkey)(保健省発行)」や「私立病院に関する規定」(第24708号、2002年

3月27日発効)において、各病室内に設置できる病床数は2床までとされている。

病室の種類は、プライベートルーム、ファーストクラスルーム及びセカンドクラスルー ムに分類され、プライベートルームには病床 1 つの他に冷蔵庫、テレビ、電話、付添人の ためのスペース、ユニットバス及びシンクが、ファーストクラスルームには病床 1 つの他 に付添人のためのスペースとシンクが、セカンドクラスルームには病床 2 つ又は 3つの他 にシンクが備えられていることが必要とされる。

- 必要なサービス

国立病院が提供しなければならない医療サービスとして、例えば以下のものが規定され ている。①外来診療サービス。②症例に応じて医師、研修医、看護師、薬剤師、栄養士、

理学療法士、精神分析医又はその他の専門家からなるチームによって行う診断・治療・介 護サービス。③十分な数の人員によって24時間体制で提供される救急医療サービス。④ラ

ボサービス。⑤必要な設備及び医師の指揮下にある必要な人員の提供を含む手術室サービ ス。⑥手術に用いられる設備の消毒サービス。⑦集中治療及び蘇生サービス。⑧手術によ る合併症を回避するための術後サービス。⑨調剤サービス。⑩清掃サービス。⑪患者及び 職員のための食事及び栄養サービス。⑫消毒に関するルールに従って責任者により行われ るクリーニングサービス。⑬消耗品、薬品、食品、清掃用品、燃料、診療材料等の調達及 び保管サービス。⑭庭園整備等の技術サービス。

(2) 民間病院規則による施設規定

公立病院および民間病院に適用される医療関連法令には様々なものがあるが、民間病院 に 関 す る 施 設 、 人 員 に つ い て 広 範 な 規 制 を 規 定 し て い る 「ÖZEL HASTANELER

YÖNETMELİĞİ」では以下のように規定されており、公立病院についても平面計画上準用さ

れている。

- 施設規模

民間病院規則により、民間病院には、原則として 100 床以上の病床を設置することが求 め ら れ て い る 。 た だ し 、 保 健 省 は 、 計 画 お よ び 雇 用 に 関 す る 委 員 会 (Planning and

Employment Commission)の意見を聴取した上で、医師の数および必要なサービスの内容に

応じ、病床数100床未満の病院の開設を認めることが出来る(ただし、最低50床の病床が 必要であり、また、各診療科につき 1 床以上の病床が必要である)。総床面積、敷地面積 および階数等に関する規制は存在しないが、各階を結ぶ階段は担架を運べるように1.5m以 上の幅があることが求められ、廊下は 2m 以上の幅があることが求められる。また、電気 使用計画によって計算される使用電力の 70%以上を発電できる発電機が設置されているこ とが必要である。さらに、TSE の設定する基準に合致した最低 2 基のエレベーターを設置 することが必要とされ、そのうち 1 基は車椅子又は担架に乗った患者を搬送することが出 来るものでなくてはならない。

- 必要な施設

民間病院規則により、民間病院は以下の施設を有していなければならない。①総合診療 室(なお、産婦人科用の診療室および泌尿器科用の診療室には、原則としてトイレの設置 が必要とされる)。②最低2室以上の手術室(手術室内の治療スペースは30㎡以上である ことが求められ、手術室の床から天井までの距離は原則として 3m以上なければならない。

また、手術室内の廊下の幅は2m以上でなければならない)および覚醒室(Awakening Parts)。

③2 床以上の病床を有する集中治療室。④救急治療室。⑤薬局。⑥特別の許可証が付与さ れた検査室。⑦標本室。⑧消毒室。⑨セントラルヒーティングシステム(手術室、救急治 療室およびその他の消毒が必要とされる施設については、特に衛生的な空調システムが要 求される)。⑩十分な数のシンク、トイレおよび風呂。⑪医療廃棄物および一般廃棄物用 のゴミ室。⑫死体安置所。⑬厨房および洗濯室。⑭救急車

その他特殊病床の1床当たりの面積として、小児病室6㎡以上、集中治療室12 ㎡以上、

NICU(新生児集中治療室)6㎡以上、観察室6㎡以上などがある。

(3) 必要設備

「病床を有する医療機関の運営に関する規則」は、国立病院が提供しなければならないサ ービスの内容を規定しており、これらのサービスを提供する施設についての一般的な条件 を規定しているが、具体的な技術要件は規定されていない。

他方、「医療施設の設計基準に関するマニュアル」は、前述の通り法的拘束力を有しない が、広範に技術要件を規定している。

(4) 保健省による災害医療関連新技術の導入計画

現在、以下の技術について、トルコにはスタンダードや規則が存在しないが、新規病院 案件には導入が推奨されている。スタンダードや規則の策定も予定されており、日本の進 んだ技術の導入の可能性は大きい。

 免震設備:地震危険度レベル1,2地域の100床以上の病院では導入が義務付けられ ている。

 コジェネレーション

 グリーンルーフ、省エネ設備

 中水

 雨水利用施設

 地熱発電

 自家発電

(5) 医療シェルターの設置基準

保健省では災害や非常時のために避難施設として医療シェルターの設置を以下のように 定めている。

 地下

 集中治療室、手術室に近く、直接アクセスできる位置

 火災や災害の被害が及ばない場所

 病院の集中治療室の病床の半数が収まる広さ

 集中治療室、手術室の患者が一時的な治療を受けることが可能な機器を揃えたケア ユニットを有する。

 ベッドサイドの電気ソケット、医療ガス、薬品準備スペース、機器用の部屋を有す る。

 インフラやケアユニット内の医療機器は、医療シェルター内のみで独立する。

 医療シェルター内は完全に滅菌されている必要はない。

 以下の要件でエレベーターを有する。

 100~200床の場合1つ、200~300床の場合2つ、300~400床の場合3つ、400床以上 の場合4つ

 積載能力1600kg

 ドア1.5m幅

 広さ2.4m×2.4m