第 3 章 本事業の成果
3.2. 中小企業共通 EDI の効果
3.2.1. 生産性向上効果
モデルプロジェクトのデータ連携調査実証の結果から、業種の垣根を越えたデ ータ連携システムの活用による生産性向上効果について考察する。ここでは、生 産性向上の指標として、業務時間削減効果を扱うこととする。
業務時間削減効果は、全モデルプロジェクト(67社10)の平均で53.3%となり、
業務時間がほぼ半減する結果となった。また、全てのモデルプロジェクトにおい て、各全体の業務時間が削減方向にあったことから、本事業にて調査実証を行っ た仕組みは、一般的に生産性向上効果が認められたといえよう。
(1) 業務時間削減効果の概要
表 3 に、各モデルプロジェクトにおける、発注企業・受注企業別の業務時間削 減効果11を示す。
全てのモデルプロジェクトにおいて、業務時間削減率にばらつきはあるものの、
それぞれのプロジェクトにおいて業務時間は削減される結果となった。発注企業、
受注企業の別における業務時間の削減率については、全体を平均した場合大きな 差異は見られず、それぞれ50%程度となった。
9 ■ 集計・効果分析の対象とする実測データについて
本事業では、中小企業共通EDIの活用による受発注業務の効率化・生産性向上に加えて、一部プロジェクトが 独自テーマを設定し実証に取り組んだ。実測データの集計及び効果分析では、各プロジェクトが設定した独自テ ーマに関するデータは集計・分析から外している。具体的には、以下に関するデータは対象外とした。
・ 貿易プロジェクト(全体)
・ 豊田プロジェクト(IoT連携、金融連携)
・ 多摩プロジェクト(金融連携)
・ 静岡プロジェクト(スケジュール管理・調整業務)
■ 集計・効果分析結果と各プロジェクトからの報告との関係について
集計・効果分析には、各プロジェクトから報告された業務時間の実測データを用いた。ただし、集計に当たり、
対象とする業務の範囲等について全体の整合をとるため、報告された実測データの一部を集計対象外とする等に より、集計結果が各プロジェクトの報告書の数値と一致しない場合がある。
10 1社が受注企業、発注企業双方の立場で調査実証をした場合は、それぞれを1社とし合計2社として計上している
11 業務時間削減率は、以下の計算手順に基づき算出した。
① 現行業務の平均時間 - EDI導入後業務の平均時間 = 業務の削減時間(測定企業別)
② 業務の削減時間 / 現行業務の平均時間 = 業務時間削減率(測定企業別)
③ Σ(業務時間削減率(測定企業別)) / 測定企業数 = 業務時間削減率(平均)
同じ業務に分類される業務プロセスであっても、業種や企業により対象とする業務の所要時間には大きなばらつき が生じる。そのため、業務所要時間の単純な合計値・平均値から業務時間削減率を算出すると、もともとの業務所 要時間が長い企業の測定結果に計算結果が強く影響されることになる。そこで、測定企業別の業務時間削減率を計 算したうえで、算出した各社の業務時間削減率を平均する方法で、全体の平均業務削減率を計算した。
29
12.静岡 PJ の受注企業については、この分類上唯一業務時間が削減されず、逆
に増加する結果となった。この原因については後述とする。
表 3 モデルプロジェクト別業務時間削減率
モデルプロジェクト名 発注企業 受注企業 全体
01.水産PJ 39.6% 84.3% 62.0%
02.北海道PJ 47.5% 81.3% 64.4%
03.大阪PJ 93.8% 85.4% 89.6%
05.業務品.PJ 38.6% 25.0% 31.8%
06.豊田PJ 70.7% 61.3% 65.6%
07.碧南PJ 46.2% 19.8% 32.2%
08.サービス業PJ 91.3% 90.5% 90.9%
09.自動車PJ 36.8% 75.4% 56.1%
10.多摩PJ 67.6% 63.1% 64.9%
11.水インフラPJ 44.4% 43.7% 53.9%
12.静岡PJ 18.5% -10.3% 4.1%
全体平均 51.1% 47.3% 49.2%
中小企業平均 56.7% 50.8% 53.3%
図15、16に、各業務プロセスにおける発注企業・受注企業別の業務時間削減効 果を示す。
本事業にて生産性向上の対象とした受発注業務(注文プロセス:注文-注文受領)
については、全企業を集計対象とした場合、発注企業55.5%、受注企業51.0%(全
体平均53.2%)、中小企業を集計対象とした場合、発注企業61.9%、受注企業55.1%
(全体平均58.2%)の業務時間削減効果があった。
他の業務プロセスについては、サンプル数が比較的少ないことから一概には言 えないものの、それぞれの結果として業務時間が削減されており、それぞれ生産 性向上効果があるであろうことが推測された。
30
図 15業務プロセス別の平均業務時間削減率(調査実証参加企業全体)
図 16 業務プロセス別の平均業務時間削減率(中小企業のみ)
0%
50%
100%
-3.1% [4]
在 庫
/ 見積 情 報 依 頼
40.9% [6]
在 庫
/ 見積 情 報 提 供
32.8% [4]
在 庫
/ 見積 情 報 受 領
55.5% [29]
注 文
51.0% [30]
注 文 受 領
75.5% [5]
納 入 指 示
44.7% [21]
注 文 回 答
39.4% [20]
注 文 回 答受 領
53.8% [6]
納 入 指 示受 領
52.6% [11]
出 荷
34.1% [10]
受 領
・検 収
56.8% [9]
受 領 証 受領
81.1% [3]
請 求
20.6% [2]
仕 入 計 上
66.3% [3]
請 求 受 領
92.6% [1]
入 金 結 果情 報 受 信
47.3% [36]
受 注 側 全体
51.1% [33]
発 注 側 全体
76.7% [1]
入 金 結 果情 報 送 信 注文
プロセス
発注側 受注側 [ ]内は計測社数
0%
50%
100%
52.1% [2]
在 庫
/見 積 情 報 依 頼
48.3% [5]
在 庫
/見 積 情 報 提 供
83.5% [2]
在 庫
/見 積 情 報 受 領
61.9% [22]
注 文
55.1% [26]
注 文 受領
67.4% [3]
納 入 指示
45.1% [19]
注 文 回答
52.1% [14]
注 文 回答 受 領
53.8% [6]
納 入 指示 受 領
62.8% [8]
出 荷
34.1% [10]
受 領
・検 収
53.1% [8]
受 領 証受 領
81.1% [3]
請 求
20.6% [2]
仕 入 計上
66.3% [3]
請 求 受領
92.6% [1]
入 金 結果 情 報 受 信
50.8% [31]
受 注 側全 体
56.7% [23]
発 注 側全 体
76.7% [1]
入 金 結果 情 報 送 信 注文
プロセス
発注側 受注側 [ ]内は計測社数
31
また、参加各社へのアンケート調査で把握した企業規模、年間受発注件数等の 基本情報をもとに、各社の業務時間全体(全従業員の総労働時間)に対する業務 時間削減率を試算した場合、調査実証に参加した企業平均で6%程度、中小企業の みで平均した場合6.5%程度の業務時間削減にあたると推計された12。
(2) 業務時間削減の要因分析
データ連携システムの導入・利用による業務時間削減について、タスク(FAX 受け取り、システム入力、注文書印刷、注文書ファイリングなど)の粒度で分析 を行い、効率化の要因を次の3パターンに分類した。
(ア) データ連携システムの導入・利用により、データ入力などの手間が削減(自 動化)されるパターン
データ連携システムの代表的な効果として、既存業務でのデータ手入力・手 作業業務が自動化されることがある。特に、既存では業務の垣根を越えたデー タ連携システムが存在しないことから、自社システムが存在する場合でも、紙 の注文書であればデータの手入力が必要であり、データで受け渡されたとして も自社システムへ再入力する必要がある。データ連携システムによるこのよう な作業の自動化により、該当タスクの業務時間はほぼなくなる。
(イ) データ連携システムの導入・利用に伴う業務の見直しにより、タスクそのも のが不要になるパターン
データ連携システムの導入の際、特に既存業務を紙の注文書で行っていた場 合は、受発注業務の業務フローに大きな見直しが入る。その際、既存の業務に あった注文書印刷、注文書ファイリングなどのタスクが、業務フローの見直し により実施する必要がなくなる。
(ウ) データ連携システムの導入・利用に伴うインターフェースの改善などにより、
タスクにかかる時間が削減されるパターン
データ連携システムは全てのタスクを自動化するわけではなく、例えば注文 の際の人為的な選択作業などは必要となる。ただし、同様のタスクであっても 既存の業務と比較し、データ連携システムのインターフェースの使い易さ、洗 練された入力項目等により、タスクの業務時間が削減される。
12参考:業務時間全体に対する業務削減率の推計式
① 各社の従業員総労働時間 = 従業員数 × 年間営業日数 × 1日あたり労働時間(480分)
② 実証検証で得られた1件あたり業務削減時間
③ 年間の受注/発注処理件数 (実証検証を行った対象業務により受注または発注を選択)
より、
④ 業務時間全体に対する業務削減率 = ② × ③ ÷ ① 各社の④を求めた後、その平均値を計算した。
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他方、データ連携システムの導入・利用により、むしろ業務時間が増加したタ スクがあり、次の2パターンに分類した。
(エ) データ連携システムの導入・利用に伴うインターフェースの変更の影響など により、タスクにかかる時間が増えたパターン
データ連携システムを利用することで、既存業務と変更があることから、同 様のタスクにおいてむしろ時間がかかる場合がある。特に、既存の業務が紙の 注文書であり最低限の記載で発注・受注していた場合や、既存のシステムに対 する従業員の慣れが強い場合などは、新たなデータ連携システムの利用により、
業務時間が増加する場合があった。
(オ) データ連携システムの導入・利用に伴う業務の見直しにより、タスクそのも のが増えたパターン
データ連携システムの導入・利用に伴い業務を見直した結果、既存の業務で は存在しなかったCSVデータの作成、取り込みなどのタスクが発生することが あり、この業務時間は純増となる。
また、データ連携システムの導入・利用により、影響がなく維持されるタスク があった。これを6つ目のパターンとする。
(カ) データ連携システムの導入・利用があっても、タスクに変更がないパターン 在庫確認などのタスクは、既存の業務においても、データ連携システムを用 いた業務においても、実施内容に変更はなく、タスクの業務時間は変更がなか った。
以上の 6 パターンの傾向を見るため、参加企業毎に業務時間削減率を求めた上 でソートを行い、「業務時間削減上位(22 社)」「業務時間削減中位(23 社)」「業 務時間削減低位(22社)」としてほぼ均等に分類した。また、それぞれに対し、デ ータ連携システムの導入・利用による業務時間の変化について、先述の 6 パター ンの割合を分析した(図17)。