【要 旨】 当院は 2008 年 4 月 SPD(Supply Processing and Distribution)システムを導入した。導 入目的は、デッドストック・過剰在庫の削減、物品管理業務に要する時間の削減、医事請求漏 れを防止し経営改善を図るためである。物品管理の一元化は、物の原価・納入日・部署・量が一 目瞭然に確認できるなど多くのメリットがある。今回業務の効率化を図るために、看護部署 の棚番を統一、保管場所を整理し、消費実績から適正在庫数を提示、副看護長と相談し定数 を改めた。又、長期休暇時の請求においても、データから推奨数で足りることを実証し、医 療材料費を削減することができた。適正な物品管理はコスト削減に繋がるため、SPD システ ムを全職員が正しく理解し、病院経営を考えていかなければならない。
【キーワード】 適正在庫、消費実績、SPD システム、コスト削減、病院経営
活動報告
3 . 年末年始の臨時請求分について、推奨数の正当 性を実証する
4 . 適正在庫の必要性を職員に浸透させる
方 法
1 . 対象;看護部
2 . 医療材料を種類別に分け、物品一覧表(図 1 ) を作成・各部署に配布する( 6 月)
図1 物品一覧表
3 . 号館別に物品棚の位置を決め、棚番シールを作 成する( 6 月)
− 87 −
県西部浜松医療センター学術誌 第 3 巻 第1号(2009)
4 . 3 ヶ月の消費実績を基に推奨数を出し、各部署 の副看護長と棚の整理・定数変更をする。OP室 は材料室、外来は 2 階処置室のみ( 7月〜10月)
5 . 定数変更前後の診療材料費を比較する(10月)
6 . 物流システムについてのアンケート調査を実 施、結果をまとめ評価する(11〜12月)
7 . 年末年始臨時請求分を、推奨(放科・内視鏡は 除く)・部署追加・消費金額でデータ化し、結 果を各部署に提供する( 1 月)
結 果
アンケート結果では、問 1 の医療材料を分類し棚 番を統一したことを「知っている」が83.5%、「知ら ない」が16.5%だった。職種別の「知らない」の内訳 は、看護師495人中83人(17%)、看護助手40人中 7 人
(18%)、クラーク17人中 1 人( 6 %)だった(図 2 )。 又、看護師が100%「知っている」と答えたのは 2 部 署のみであり、一番低かったのは外来看護師の60%
であった。
図2 物流アンケート結果
問 2 の「知っている」のうち「良い」が49.2%で 理由としては「見やすく場所がわかりやすくなっ た」「勤務異動をしても戸惑わない」「整理され探 す時間が減った」「収納時間が短縮した」などがあ り、「何ともいえない」は48.4%で、理由としては
「まだ実感できていない」「分類が浸透していな い」であった。「悪い」は0.9%で理由としては「使 い勝手が悪い」「慣れるまで大変」「統一した理由 が分からない」「統一できる部署と出来ない部署が ある」であった(図 3 )。棚卸しについては「棚順 ごとチェックできたので確認しやすく時間も短縮で きた」「定数の見直しが出来た」との声があった。
図3 物流アンケート結果
定数変更については一般病棟で前6,473,294円、後 5,892,043円で581, 251円の削減(図 4 )、OP・放射線・
内視鏡においては前25,406,606円、後25,050,505円で 356,101円の削減、その他の部署は前11,830183円、後 10,799,694円で1,030,489円の削減、看護部署合計で 1,967,841円削減できた。年末年始長期連休の臨時請 求においては、各部署(放射線・内視鏡は除く)に 推奨数を提示したが、追加分が非常に多く総払出し 金額が10,103,987円となった。これは月毎の平均の2 倍にあたる。物品センターの推奨数金額は2,835,125 円、実際の消費金額は2,405,794円であり、2号館9 階、MFICU、ICU、救急外来以外は推奨金額内で十 分足りていた。払出し金額と消費金額の比について は 1 号館 9 階、3 号館 8 階が 3 倍、3 号館 6 階が 4 倍、3 号館 5 階が 8 倍、OP室は倉庫品が10倍、非 在庫品が42倍以上であった(図 5 )。
図4 定数変更前後の材料費の比較
図5 年末年始臨時払出状況
考 察
棚番の統一は ①勤務異動やリリーフ時の物品保 管場所の混乱を少なくする ②整理整頓され在庫管 理がしやすくなる ③搬入をスムーズにさせるとい う目的で実施した。アンケート結果から統一したこ とを知らない看護師が17%と以外に多く、スタッフ 全員が「知っている」と答えたのは 2 部署のみで あった。特に外来室は60%と低く、これについては 処置室しか棚の整理を行なっていない、52名という 大所帯であり、パート看護師も多いため目的が十分 浸透しきれなかったためと考える。又、統一したこ とについては「良い」と「何ともいえない」がほぼ 同じ数値であった。これは実施期間も短く、勤務異 動やリリーフの経験がなく他部署の様子がわからな いため、現時点ではまだ実感できないためであると いえる。看護師は勤務異動があり、その度に物品の 位置がわからず戸惑うことが多い。全ての部署の棚 が同じ形で同じ物・量の物品を入れて済むのであれ ば管理もしやすい。しかし、部署毎すべてが違い、
副看護長会でも「統一する意味がわからない」とい う声もある中で、どのように統一したら良いかを考 えるのは中々大変であった。業務の効率を考えると 物品の標準化は必要なことであり、部署格差が少な く安全かつ適切な看護ケアを提供しなければならな い2)。そのため全部署の棚の中身をチェックし、可 能な範囲で統一を図った。棚番シールを全部署統一 したことで見やすく整理整頓はしやすくなったが、
「今は余りメリットを感じない」との意見もあるた め、今後も評価していく必要がある。
病院は製造業やスーパーと違い数が固定できない ため物品管理は難しいと言われてきた。それは、医 療材料は多品種少量製品であり、新しい製品がどん どん開発されライフサイクルが短いため3)と、患者 数・患者層・治療内容などが日々変化する中で、い つ何処で何をどれだけ使用するかが不確実なためで ある。医療者は「治療したい時物がないと困る。医 師に怒られる。借りに行くのが大変」と言う気持ち が強くあり、どうしても物を備蓄する傾向がある。
必要以上の物を在庫として置くことは、デッドス トックを生む原因となり、日常的に使用しない物ほ ど単価も高いため不経済となる。そこで購入された 物が無駄なく消費されるような適切な在庫管理が必 要となる。今までは「この位あれば足りるであろ う」という経験と感覚で決めていた量が、消費実績 データから適正在庫を決めたことで、医療材料費だ けで1,967,841円削減できた。このことからも消費実 績による適正在庫がいかに病院経営に影響するかが 分かる。物品の過剰在庫はデッドストックを増やす だけでなく、新しい物を常に患者に使用するという 理に反することにもなるため、少なくても年2回は 定数を見直し、必要な物を必要な時に必要量提供で きる物流システムを構築していかなければならな い。年末年始の臨時請求においては、SPDシステム 導入ではじめて推奨数を出し各部署に提示すること ができた。不安による部署の追加分が非常に多く、
総額10,103,987円で結果としては消費実績金額の4.2 倍と高かった。実態は推奨金額と消費金額がほぼ同 一であり推奨数の正確さが実証できた。結果を副看 護長会で報告したところ、「足りなくなると困る し、仕方がないのでは」「スタッフは安心してい た」との声が多く聞かれたが、反面「取り過ぎてし まい反省している」「グラフにすると良くわかる」
との声もあり、SPDシステム導入の成果を少しは認 識することが出来たのではないかといえる。診療報 酬が引き下げられている現在「足りなくなると困る から」と言う考えから、消費データに基づく適切な 数を効果的に使用し、無駄を省き業務の効率を上げ る物品管理意識を全職員が持つことが大切となる。
秋山は「経営的に安定した数値を残すためには材料 比率を20〜30%に持っていくことが望ましい。非常
− 89 −
県西部浜松医療センター学術誌 第 3 巻 第1号(2009)
に経営の良い病院は材料比率が10%台である。そう いう意味で情報通信技術(IT)を用いて改善する ターゲットは医薬品や診療材料などの物流管理にあ る」3)と述べている。特に当院のような急性期病院 では、多くの医療材料や薬剤を使って医療行為をす るため、費用対効果を出すためにもITによる物品管 理が必要であり、今後電子カルテとの連動も踏ま え、資源を正確に管理できるSPDシステムをいかに 有効活用していくかが重要課題となる。
標準化は業務の効率性を追求し、かつ医療安全に も繋がる。加えて適正在庫は病院経営を大きく左右 する。今回はSPD導入後の最初の取り組みであり、
主として対象は看護部であった。今後は全職員対象 に働きかけ病院全体の適正在庫管理を実現したいと 考えている。
文 献
1 )秋山昌範、長谷川敏彦、長谷川友紀:これから の医療情報・システム・評価.病院.2005;64巻
1 号;45〜56.
2 )川島みどり、井部俊子、山西文子、他:今日の 看護指針.看護の科学者;2007.74〜85 3 )秋山昌範:ITで可能になる患者中心の医療.日
本医事新報社;2003.76〜83
4 )鶴田邦夫:医療・介護施設のための在庫管理入 門.じほう;2004.1〜11.21〜29.80〜82.