期間は、平成19年 8 月の第 2 週から平成19年 9 月 の第 5 週までの 7 週間とした。
行動変容プログラムは、各ステップに沿って行っ た。技法の選択後、1 週間に 1 回、透析終了後に別 室で担当看護師が面接をし、患者自身の変化につい て確認していった。
結 果
結果を、行動変容プログラムの進め方のStepに 沿って述べる。
Step1:医療内容の妥当性を含めたアセスメントの 施行。
指導を始める前に、提供している医療や看護が適 切かどうかの確認をした。
血清リン値が高い原因として食事管理に問題があ ることが想像できたが、現状が明らかではなかっ た。高リン血症に対する薬物治療は適切であった。
今までの指導方法は、本人が記入している食事内容 記載のノートを元に、採血結果が出るたびに、その 日の担当看護師が改善したほうがいい点をアドバイ
スする方法だった。
なお、プログラム実施期間中の投薬内容の変更は なかった。
A氏にプログラムを実施するに当たりその目的と 内容を説明したところ、当初は表情がくもり非協力 的に感じられたが、今後、週に一度面接をしていく こと、担当看護師は筆者本人になることを説明する と安心したようだった。
Step 2:現在の困難事と解決意義の確認。
医療者側の判断とは違い、A氏自身が感じている 現在の第一の困難事は不眠であること、それが原因 で氷の摂取が増加することのことだった。不眠につ いては、薬剤の投与方法の変更と生活リズムを整え る事をアドバイスした結果、不眠は改善し、「夜に なるのが待ち遠しくなった。」との言葉が聞かれるほ どだった。
本人にとっての一番の問題を解決するのを待ち、
次に困難と感じていることについて確認すると、リ ンの高値が続いていることだった。
なぜ、その困難と思っている事を解決したいか、
患者自身が大切にしたいこと、それを達成するため の必要な行動を患者自身に結び付けてもらい、その 為にはどのようになりたいかを確認した。A氏から は「リンが高いことは、良くないと思っている。家 族のためにも合併症の危険度を減らしたい」との言 葉が聞かれた。
Step 3:行動目標の設定と自己効力感の確認。
その結果、患者自らが、翌月末の血清リン値の目 標を 6 mg/dl台と設定した。目標が設定できたとこ ろで、次の段階である、Step 4 技法の選択に進ん だ。行動変容プログラムの技法を説明したところ、
セルフモニタリング法と生きがい連結法をとりいれ ることとなった。
Step 5:実施。
セルフモニタリング法により、患者自身が阻害因 子に気づくことができるようになった。透析日は夕 方空腹となるため、自分だけ夕食を早く食べてしま うが、家族が帰宅後、ふたたび摂取してしまうこ と、おやつからのリンの摂取が多いのではないかと いう事に本人自身が気づき、食事時間の調整と、空 腹時の対応、また比較的リンの含有量が低めのおや
つの紹介をし、それぞれについてA氏と共同して対 応していくようにした。
介入後、4 週間経過した頃には、「ケーキより、み たらし団子の方がリンの含有量が少ない」「祭りの 時の寿司は、自分の分は助六にし、エビフライは 2 本で準備することにした」など、実践方法につい て、自ら選択できるようになり、行動化することが できた。 また、今まで透析中に指導をしていた事で も、間違って覚えている点があり、各食物のリンの 含有量、高リン血症による合併症の説明、使用中の 薬剤などの知識の整理が必要だった。
介入前の血清リン値は平均 8 mg/dl前後だった が、介入後は徐々に低下し、7 週間後にはA氏自身が 目標に設定した 6 mg/dl台に低下した(図 1 )。A氏 にも、検査結果が出るたびに同様のグラフを渡し た。
図1 血清リン値の変化
考 察
セルフモニタリング法は、受け入れもよく続行で きた。今回の介入前も、食事内容をノートに記入し ていたことがあったが、書くだけで目標の設定等し ていず、行動に至らなかったと思われる。今回は自 ら目標を設定し、モニタリングしたことを元にして 考え患者自身が気付くことにより行動することがで きたと思われる。
生きがい連結法は、患者自身がなぜその行動を解 決したいかや大切に思うことの為に必要な行動を患者 自身に結び付けてもらうことに有効だったと考える。
透析療法中以外で個別に面接をすることにより、
プライバシーの保護ができ、患者と向き合うことが できた。また、今までも透析中に何度も高リン血症
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県西部浜松医療センター学術誌 第 3 巻 第1号(2009)
について指導をしてきたが、知識の獲得ができてい なかったことが分かり、このような場面の提供は効 果的だったと考える。
翌月末の血清リン値は、6.4mg/dlと低下を示し た。日常生活の中で、血液検査データの自己モニタ リングは困難だが、検査データをグラフ化し本人に 渡すことで、患者自身が現在の状況の把握ができ た。また、その検査データの推移を知ることにより、
「頑張れば、目標が達成できる。」「食事内容によ り、データに差がでることがわかった。」との言葉か 聞かれた。坂野は、『一般的に、ある行動をうまく 行って、成功感を感じた後では、同じ行動に対する 遂行可能感は上昇し、「またできるだろう」という見 通しが上昇する。』2)と述べている。この症例も、自 分の行動で効果を得られたことを実感できたことに より、今後の自己管理への自信につながったと考え る。
岡は、『自己効力が高まると、ある課題ができると いう自分の能力を高く判断するようになり、積極的 な思考、努力配分、および感情などに影響し、十分 な実力が引き出され、行動の遂行につながる。』3)と 述べている。今回、行動変容プログラムを用いた看 護介入で、患者自身が問題視していることを明らか にし、成功体験を得ることが自己効力感を高めるこ とに有効であり、実践につながったと考えられる。
結 論
少しでもセルフケアへの意欲を高められるように 支援することが看護師の重要な役割となる。
患者自らが、目標達成への行動変容を起こすに は、自己効力感の向上が必要になる。自己効力感の 低い部分への看護介入により、自己管理への向上が 期待できると考えられるため、その技術等につい て、さらに学習が必要と思われる。
また、プログラムの実施に対しては、対象者との 信頼関係が必要だと認識できた。その為にも、日々 の看護実践の中で、構築していく必要を感じた。
文 献
1 )岡美智代:透析患者の自己効力感を高める行動 変容プログラムとアクションプラン、看護学雑
誌、2005、6月号Vol.69 No.6、P558-562
2 )坂野雄二:行動変容プログラムの方法論的背景 認 知 行 動 療 法 と 自 己 効 力 感 、 看 護 学 雑 誌 、 2005、6月号Vol.69 No.6、P563-566
3 )岡美智代:EASEプログラムのアクションプラン 4 )江川隆子ほか:患者及び家族の理解のための理 論:日本腎不全看護学会:透析看護.2005透析 看護189-193