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本研究の限界と今後の課題

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 174-183)

本研究では、第4,5,6章に記述した事例を、「胃瘻を知った経緯」「胃瘻造設に至 ったプロセス」「導入後」の 3 つの局面に焦点化して、横軸に切り取った考察をおこ なった。各事例では、それぞれの事例の個別性から示唆されるものを記述したが、い くつかは考察されなかった重要なトピックもある。たとえば、第 5 章の、「こんなに なってまで生きていたくない」という、自己の身体を客観的な別物として捉え延命を 拒否しようとする態度は、社会状況とのどのような相互作用によって形成されている のかといった分析、考察がなされていない。また、第 6 章では、「うわさ」や風評か ら知識を得る際に、決定者は「うわさ」されていることのすべてを受け入れるわけで

はなく、決定者固有の歴史性と、対象となる高齢者と決定者の関係性が大きく関与し ているはずであるが、ここでは示唆するに留まっており、エスノグラフィカルな分析、

考察が深められていない。こうした事例に寄り添った縦軸の考察は、今後の課題とし たい。

また、本研究では、お互いに呼びかけ合う関係性から紡ぎだされる情動を資源とし た意思決定の要因を発見し「関係因」と名付けた。では、先行研究において「関係因」

と目されるものはどのように扱われ、意思決定においてどのような役割を担っている と捉えられてきたのか、あるいは捉えられてこなかったのか。また、実際の医療現場 で、関係因はどのような役割を担っているのか、あるいは受け流されているのか。関 係因に焦点化した文献レビューと事例研究を行い、先行研究で、「思い」や「揺らぎ」

として捉えられてきたものと関係因はどのように異なるのか、あるいは言い換え可能 なのかに言及し、「関係因」の概念の精緻化をはかることが今後の課題であると考え る。また、諸外国では、「関係因」はどのように研究され、実際の医療現場では、ど のような文化的・社会的状況において、どのように扱われているかを捉えることも今 後の研究課題である。

なお、本論の第4章は、『質的心理学研究』第13号(p.238-252)掲載論文を加筆・

修正のうえ転用したものである。

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