第 2 章
3.3.4 明晰化ストラテジーの効果の調査
明晰化は通訳・翻訳において、非常に普遍的なストラテジーであるが、通訳・翻 訳業界に関係のない人は勿論、通訳者・翻訳者にもこのストラテジーの存在を意識 している人が多いわけではない。本研究の主な目的は通訳・翻訳プロセスモデルを 提案することであるが、このプロセスにおいて明晰化が不可欠な役割をしていると 考えるため、プロセスモデルを検討する際のこのストラテジーの存在価値を合わせ て検証・実証したいと考えている。そのためには、このストラテジーの活用傾向を
明らかにするだけでは足りず、実際の効果についても評価する必要があると思われ る。以下、明晰化の効果を評価するための調査方法とこの調査方法によって得られ る調査結果の信頼性について説明していく。
3.3.4.1 調 査 方 法
明晰化ストラテジーの効果はアンケート調査の結果をもとに考察する。アンケー ト調査の対象は全部で60名であるが、3つのグループに分かれている。 ベトナム語 が分からない日本人(グループ A)、日本語が分からないベトナム人(グループ B)、日本語とベトナム語はどちらも分かるベトナム人(グループ C)という三つの グループであり、協力者の数に関しては20名ずつとした。
グループ A を対象にするアンケート用紙では、原文やベトナム語原文に対する日 本語直訳や本研究の被験者による翻訳文を提示する。グループ B では、原文や日本 語原文に対するベトナム語直訳や本研究の被験者による翻訳文を提示する。グルー プ C は、B と同様に原文や訳文を提示するが、直訳文は基本的には提示しない。な お、複雑な原文だけは参考のため直訳文を提示する。
評価は 5 段階評価の形を採用し、通訳者・翻訳者の伝達内容・表現・分かりやす さ等に対する総合的な評価を依頼する。評価度が高いほど、高い点数になるという 原則になっている。
それぞれのグループ対象に対するアンケート用紙は資料集を参照されたい。
3.3.4.2 調 査 結 果 の 信 頼 性
評価は定性的な作業であり、簡単に行えるものではない。研究者自身が評価を行 うこともできるが、このような評価方法は主観的過ぎて、信頼性が足りないと思わ れがちである。それで、本研究では、評価結果の信頼性を高めるために、筆者自身 による評価を行わずに、第 3 節に説明していたアンケート調査という形でこの作業 を行うことにした。4.1 節にも説明があったように、評価調査協力者の数は 60 名も おり、且つ違う立場を持っている協力者であるため、様々な角度から客観的に本研 究で観察できた明晰化ストラテジーの効果について評価できるのではないかと思わ れる。
以上のように、本研究では厳密な形でデータを収録し、且つ出来る限り信頼性の 高い方法で追加の調査(インタビュー調査、アンケート調査)を行った。このよう
な方法によりどんな結果が得られるか、研究設問への回答に繋がるかどうかについ ては、第4章で検証していきたい。