第 4 章
4.3.2 データ分析結果の信頼性
た明晰化の殆どが任意的なもので有るのに対し、翻訳では逆の傾向が見られた。活 用レベルについては、全体的に見ると通訳形態を問わず文法レベルのストラテジー 活用率が最も低かったが、談話レベルと語彙レベルの活用率に関しては傾向が共通 していない。このような傾向の出現に、通訳者の意図・意識がどのように関わって についてはアンケート調査によって明らかにする。また、活用レベルと必然性に大 きな相違があるが、ストラテジーの利用目的に関しては、どちらの訳出形態でも
「意味明確化のため」という目的のほうが高い割合を占めているということが今回 の分析結果で確認できた。
また、ここで断っておきたいが、本節の目的は、翻訳と通訳データに現れた明晰 化ストラテジーの違いを詳細に比較するのではなく、本研究で収録できたデータで 見られた明晰化ストラテジーの全般的な特徴・性質を把握することである。そのた め、翻訳と通訳によって活用された明晰化ストラテジーの特徴・性質が異なってい る点については、本章では考察を行わず、再び第7章で詳しく論じていきたい。
る。また、項目②「任意的/義務的」、項目③「語彙レベル/文法レベル/談話レベ ル」、項目④「目標テキストの自然さ確保のため/意味明確化のため」に対しても認 定の一致率の算出し、その結果を順次に表10、11、12においてまとめる。
表 8 通 訳 者 01に お け る 項 目 ①
「 明 晰 化 ス ト ラ テ ジ ー の 種 類 」 に 対 す る 認 定 一 致 率 セカンドコーダー(第2評定者)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 計
筆 者
1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 0 2 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 4 3 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 4 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 7 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 1 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 1 0 0 0 0 6 11 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 12 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 13 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3 14 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 15 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 17 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 計 2 3 3 1 0 1 0 1 0 5 0 0 4 0 0 0 0 20
Po =(2+2+2+1+0+1+0+1+0+4+0+0+3++0+0+0+0)/20=0.8 Pc =
(2/20x2/20)+(3/20x4/20)+(3/20x2/20)+(1/20x1/20)+(0/20x0/20)+(1/20x1/20)+(0/20x0/20)+(
1/20x0/20)+(1/20x1/20)+(0/20x0/20)+(1/20x1/20)+(0/20x0/20)+(5/20x6/20)+(0/20x0/20)+(0 /20x0/20)+(4/20x3/20)+(0/20x0/20)+ (0/20x0/20)+ (0/20x0/20)+ (0/20x0/20)=0.2
κ=(Po-Pc)/ (1−Pc) =(0.8-0.2)/(1−0.2)=0.75
以上と同様に、通訳者 2~4(計 3 名)及び翻訳者 1〜4 (計 4 名 )に対しても、
「明晰化ストラテジーの種類 」の 一致率を算出し、結果は以下の表9 にまとめる。
表 9 項 目 ①「 明 晰 化 ス ト ラ テ ジ ー の 種 類 」 に 対 す る 認 定 一 致 率 の 算 出 結 果 の ま と め
通訳者01 通訳者02 通訳者03 通訳者04 翻訳者01 翻訳者02 翻訳者03 翻訳者04
κ 0.75 0.78 0.72 1 0.88 0.84 1 1
以上の結果から、通訳データ及び翻訳データの認定結果はいずれも一致率 κ>0.7 であるため、本研究で行った「明晰化ストラテジーの種類」の認定結果は信頼性が あると結論できる。
表 10 項目②「任意的/義務的」に 対 す る 認 定 一 致 率 の 算 出 結 果 の ま と め
通訳者01 通訳者02 通訳者03 通訳者04 翻訳者01 翻訳者02 翻訳者03 翻訳者04
κ 0.76 0.74 0.72 0.8 0.86 0.74 0.81 0.83
以上の結果から、項目②「任意的/義務的」に 対 す る 一 致 率 の 算 出 結 果 κ>0.7 で あるため、本研究で行った「任意的/義務的」という明晰化ストラテジーの性質の認 定結果は、信頼性があるといえる。
表 11 項 目 ③ 「 語彙レベル/文法レベル/談話レベル」 に 対 す る
認 定 一 致 率 の 算 出 結 果 の ま と め
通訳者01 通訳者02 通訳者03 通訳者04 翻訳者01 翻訳者02 翻訳者03 翻訳者04
κ 0.9 0.71 0.76 0.81 0.78 0.82 0.9 0.81
この結果より、項 目 ③ 「 語彙レベル/文法レベル/談話レベル」 に 対 す る 認 定 一致 率の算出結果 κ>0.7 であるため、 本研究における「「 語彙レベル/文法レベル/談話 レベル」」の認定結果は信頼性があるといっても良いだろう。
表 12 項 目 ④ 「目標テキストの自然さの確保のため/「意味明確化のため」
に対する認定一致率の算出結果のまとめ
通訳者01 通訳者02 通訳者03 通訳者04 翻訳者01 翻訳者02 翻訳者03 翻訳者04
κ 0.67 0.65 0.73 0.78 0.75 0.81 0.73 0.76
以上の結果によると、通訳者 01 や通訳者 02 のデータだけは、認定一致率κ<0.7 であり、算出用ほかのデータはいずれもκ>0.7 という結果を見せた。この結果から、
本研究で項目 4「目標テキストの自然さの確保のため/「意味明確化のため」につい て認定した結果は基本的には信頼性があると見ても良いと考えられる。
分析結果は信頼性が確認できたのは、研究の詳細分析の確固たる基礎になるとい えよう。この結果を踏まえて、第5章から通訳データの詳細分析に入っていく。