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全データ分析結果

ドキュメント内 通訳・翻訳プロセスモデルの検討 (ページ 101-104)

第 4 章

4.3.1 全データ分析結果

本研究で収集した通訳データ及び翻訳データにおける明晰化ストラテジーの出現 状況を以下の表に基づき、概観してみたい。

6 通 訳 全 デ ー タ 及 び 翻 訳 全 デ ー タ に お い て 出 現 す る 各 明 晰 化 ス ト ラ テ ジ ー の 頻 度

No 明 晰 化 ストラテ ジ ー 通 訳 全 デ ー タ 翻 訳 全 デ ー タ 計

1 主体の明示化 74 47 121

2※ 前置き表現の活用 109 0 109

3 原文の構成変更 71 66 137

4※ 反復 25 0 25

5 性別の明示化 8 2 10

6 指示語の意味明確化 10 17 27

7 指示語の付加 5 17 22

8 暗示された情報の復元 40 2 42

9 程度副詞の付加 18 6 24

10 説明の追加 159 51 210

11※ 複数の類義語の活用 11 0 11

12※ 接続詞の付加 13 0 13

13

読み手・聞き手に馴染みの あるような表現への変換

114 71 185

14※

テンス・アスペクトの 変換・具体化

0 24 24

15

原文の不自然さに 対する処理

5 18 23

16※ 形式名詞の具体化 0 10 10

17

英語(表記)の併用による誤 解防止

1 3 4

663334 回 997 回

備考:※は通訳か翻訳、いずれかにしか観察できない明晰化ストラテジーである。

表6を見ると分かるように、全体的には、通訳の明晰化ストラテジーの活用率は翻 訳の倍程度高いということである。これは、花岡(2001)が分析した結果と正反対 のものになっているが、二つの研究で取り扱う場面が異なり、検討対象となる言語 ペアも違うからであると考えられる。なお、通訳と翻訳における明晰化の類似点、

相違点の検討は本論の第7章で行い、本章ではまず通訳と翻訳データに出現した明晰 化を概観するに留めたい。

ベトナム語−日本語の通訳・翻訳において最も頻度多く使われている明晰化ストラ テジーは「説明の追加」(10)、「読み手・聞き手に馴染みのあるような表現への 変換」(13)、「原文の構成変更」(3)、「主体の明示化」(1)の順になってい る。その中で、「説明の追加」、「原文の構成変更」は先行研究にも言及があった ように、通訳・翻訳において普遍的なストラテジーであるため、この結果は予想さ れた通りであるとも言える。「読み手・聞き手に馴染みのあるような表現への変換」

や「主体の明示化」は、言語システムがかけ離れている日本語−ベトナム語の言語ペ アの場合、特に多く活用する必要があることがこの結果の背景にあるのではないか と思われる。無論、これらのストラテジーの使用状況は訳出形態によって、相違が 出てくるが、この分析や考察は第10章で行うことにする。一方、「前置き表現の活 用」(2)は出現回数が多いが、通訳データにしか現れなかった。なお、この結果は

「前置き表現の活用」の特徴、すなわち話し言葉、会話に使われるのがメインであ るという特徴に矛盾がない結果であろう。また、極端に出現頻度が低いのは「英語

(表記)の併用による誤解防止」(17)である。確かにこのストラテジーが使われ る場面はかなり限定されており、機械の図面についての打ち合わせなど、非常に専 門性が高く、且つコミュニケーション参加者がお互い専門知識、専門用語を共有す る場面に限って多用されていることから、本研究で設定した普段の商談(打ち合わ せ)で活用されなかったのも予想通りである。

続いて、表7をもとに、通訳データや翻訳データで見られた明晰化ストラテジーの 性質の大きな特徴を把握したい。

7 通 訳 全 デ ー タ 及 び 翻 訳 全 デ ー タ に お け る 明 晰 化 ス ト ラ テ ジ ー の 性 質

表7の結果から分かったのは、訳出形態によって活用される明晰化ストラテジーの 特徴も大幅に異なるということである。例えば、必然性に関しては、通訳で使われ

た明晰化の殆どが任意的なもので有るのに対し、翻訳では逆の傾向が見られた。活 用レベルについては、全体的に見ると通訳形態を問わず文法レベルのストラテジー 活用率が最も低かったが、談話レベルと語彙レベルの活用率に関しては傾向が共通 していない。このような傾向の出現に、通訳者の意図・意識がどのように関わって についてはアンケート調査によって明らかにする。また、活用レベルと必然性に大 きな相違があるが、ストラテジーの利用目的に関しては、どちらの訳出形態でも

「意味明確化のため」という目的のほうが高い割合を占めているということが今回 の分析結果で確認できた。

また、ここで断っておきたいが、本節の目的は、翻訳と通訳データに現れた明晰 化ストラテジーの違いを詳細に比較するのではなく、本研究で収録できたデータで 見られた明晰化ストラテジーの全般的な特徴・性質を把握することである。そのた め、翻訳と通訳によって活用された明晰化ストラテジーの特徴・性質が異なってい る点については、本章では考察を行わず、再び第7章で詳しく論じていきたい。

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