第 3 章 の概要
3.2. 研究 2a
3.2.1. 方法
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3.2. 研究2a
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く回答できなかった個人は,十分に質問項目に注意を向けられていなかったと
みなして分析からは除外し,最終的に299名を分析対象とした (Mage = 39.2, SD
= 5.55, Range = 20–49)。分析対象となった回答者のうち,98.3%が正社員であり,
平均勤続年数は13.15年 (SD = 0.97),子供の数は平均で1.62人 (SD = 0.97)だっ た。
3.2.1.2. 質問項目
3.2.1.2.1. 男性の育児休業に対する態度
個人態度を測定するため,「男性の育児休業について,あなたはどう思います
か? (1.非常に否定的~6.非常に肯定的)」,「男性の育児休業を取得することをあ なたはどれくらい容認できますか? (1.受け入れられないと思う~6.受け入れら れると思う)」,「育児休業を取得する男性を,あなたはどれくらい支持しますか?
(1.全く支持しない~6.強く支持する)」,「育児休業を取得する男性を,あなたはど
のように評価しますか? (1.全く好ましくないと思う~6.非常に好ましいと思 う)」,「育児休業を取得する男性を,あなたはどれくらい魅力的だと感じますか?
(1.まったく魅力的ではないと思う~6.非常に魅力的だと思う)」の5項目で尋ねた
(α = .94)。次に,他者態度推測も同様にして,20代から40代の男性がどのよう
に考えているかについて,「男性の育児休業について,平均的な(典型的な)20-40
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代の男性はどう思っているでしょうか? (1.非常に否定的だろう~6.非常に肯定 的だろう)」,「男性が育児休業を取得することを,平均的な(典型的な)20-40代の 男性はどれくらい容認できるでしょうか? (1.受け入れられないだろう~6.受け
入れられるだろう)」など5項目を尋ねた (α = .95)。
先行研究は,個人態度と他者態度推測の得点を比較することで多元的無知を
捉えようとしてきた (e.g., Prentice & Miller, 1993)。本研究でもその測定方法を採
用して,男性の育児休業に対する 20 代から 40 代の男性従業員個人の態度にく わえ,同年代の男性の態度についても推測して回答するよう求めた。そして,個
人態度についての 5 項目に対する回答の平均値を求め,個人態度得点を算出し た。他者態度得点についても同様にして算出した。どちらの得点においても,値
が大きいほど,男性の育児休業に対して好ましい態度を抱いていることをあら
わしている。
3.2.1.2.2. 育児休業の取得意図
続いて,将来子供が生まれたときの行動意図について尋ねた。これは,回答者
の「行動的選好」と「実際の行動意図」が一致しない状況を測定するために設定
された。具体的には,取得願望 (i.e. 行動的選好)は「今後,もし子供が生まれた としたら,あなたの理想としては,育児休業を取得したいとどの程度思います
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か? (1.絶対に取得したくない,4.どちらともいえない,7.絶対に取得したい)」
を用いて尋ねられた。そして,行動意図 (i.e. 実際の行動意図)は「今後,もし子 供が生まれたとしたら,現実としては,あなた自身は育児休業を取得しようとど
の程度思いますか? (1.絶対に取得しないだろう,4.どちらともいえない,7.絶対 に取得するだろう)」を用いて尋ねられた。
3.2.1.2.3. 統制変数
3.2.1.2.3.1. 伝統的性役割志向性
伝統的性役割志向性を測定するため,回答者は次の 4 項目について,どの程 度あてはまるか回答を求められた: 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである。
子育ては女性にとって一番大切なキャリアである。女性の居るべき場所は家庭
であり,男性の居るべき場所は職場である。男性の仕事は収入を得ること,女性
の仕事は家庭と家族の面倒をみることだ。 (1.全くあてはまらない~7.非常にあて はまる)」。これらの項目は平等主義的性役割態度尺度 (SESRA-S; 鈴木, 1994)の 逆転項目を参考にして,筆者が独自に作成したものである。先行研究から伝統的
性役割志向の強い個人ほどジェンダーステレオタイプ的な行動に固執する傾向
にあることが示唆されている (Orlofsky, Cohen, & Ramsden, 1985)。この変数は,
伝統的性役割志向性が態度や行動意図に及ぼす影響を統制するために測定され
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た。クロンバックのα係数は十分に高い信頼性を示しており (α = .89),得点が高
いほど伝統的な性役割態度を抱いていることをあらわす。4項目に対する回答を 平均した得点を分析では使用した。
3.2.1.2.3.2. デモグラフィック変数
回答者の年齢,子供の数,勤続年数,そして雇用形態が測定された。父親の年
齢と子供の数 (Salmi, Lammi-Taskula, & Närvi, 2014, フィンランド人サンプル),
そして雇用形態 (Brandth & Kvande, 2002; ノルウェー人サンプル)が育児休業の 取得と関連していると示唆されている。仮説をより厳密に検証するため,以上の
統制変数も合わせて測定された。
3.2.1.2.4. 多元的無知の操作的定義
従来の研究は,態度における「自他乖離得点 (perceived self-other discrepancy
score)」を多元的無知の操作的定義として扱ってきた。この得点は,他者態度推 測得点から個人態度得点を減算することで算出される (e.g., LaBrie, Hummer,
Grant, & Lac, 2010; Sandstrom et al., 2013; Vandello et al., 2009)。この乖離得点が大 きければ大きいほど,個人態度と他者態度との間に差を知覚していることをあ
らわしている。例えば,Sandstrom et al. (2013)は小学生を対象として,いじめを
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目撃した文脈における自他乖離得点と行動的反応との関連性について検討した。
得点といじめへの参加 (i.e. いじめを始める,いじめっ子を助ける,いじめの被 害者を笑う)との間に正の相関が見出され,さらに,積極的に被害者を守ろうと すること (i.e. いじめの加害者にいじめをやめさせようとする)と負の相関が見 出された。この結果は,個人態度と他者態度推測との乖離が行動的選好の表明を
抑制することを示している。
しかしながら,この手法には問題点がある。この手法では,例えば,あるトピ
ックにおける個人態度として“6.とても肯定的”,他者態度推測としては“4.どち らかというと肯定的”と回答した個人と,個人態度として“3.どちらかというと否 定的”,他者態度推測として“1.非常に否定的”と回答した個人を区別することが
できない (i.e. 両者の得点はどちらも-2となってしまう。)。ここで,多元的無知 とは,「集団の多くの成員が,自分自身は社会規範を受け入れていないにもかか
わらず,他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると誤って思い込んで
いる状況 (Katz & Allport, 1931)」を指すことを踏まえれば,多元的無知は“自他 得点の相対的なズレ”よりもむしろ“自他得点の絶対的なばらつき”に基づいて扱 われるべきだろう。
この問題に取り組むため,以降の分析では男性の育児休業に対する個人態度
と他者態度推測得点に基づき,回答者を4群に分類した。この手続きにより,多
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元的無知が個人の行動的選好の抑制と直接的に関連しているのかどうかを検討
可能となる。さらに,この分類手法であれば,相対的な自他乖離得点を用いたと
きに懸念される相対的な程度差が含む問題を克服できる。
分類のカットオフ得点は3.5だった。本研究では,個人態度と他者態度推測は それぞれ 5 項目を用いて 6 件法で測定され,それらの平均値が分析で用いられ ている。この場合,平均値の中点は3.4か3.6となり,得点が3.5を取りうるこ とはない。つまり,回答者の態度は常に肯定的 (i.e. 3.5 < 平均値)か否定的 (i.e.
3.5 > 平均値)のいずれかとなる。男性の育児休業について自身は肯定的に評価し
ているものの,他の男性は否定的に評価しているのだろうと知覚している人々
(i.e. 多元的無知群; N = 118)を多元的無知に陥っている個人として,本研究では
操作的に定義した。その他のカテゴリについての分類基準は,以下のとおりであ
る。個人態度は肯定的 (平均値 > 3.5)で,同時に他者態度推測得点も肯定的 (平 均値 > 3.5)だと回答した人々は“自他ポジティブ群”(N = 103)とみなせる。個人 態度は否定的 (平均値 < 3.5)だが,他者態度推測は肯定的 (平均値 > 3.5)だと回 答した人々はサンプル数が小さかった (N = 9)ため,以降の分析からは除外した。
そして,個人態度と他者態度得点がともに否定的 (平均値 < 3.5)だと回答した 人々からなる群を自他ネガティブ群とした (N = 69)。
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