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各教科におけるアーギュメンテーション研究

削 ﹃

第 3節   各教科におけるアーギュメンテーション研究

本節 で は

,各

教科 で行 われ て きた アー ギュ メ ンテー シ ョン に関す る先行研 究 を概観 し

,本

研 究 へ の示唆 を得 る。

1.社

会科 にお ける研究

(1)ア

ーギュメ ンテー シ ョンの捉え方

豊鳥(2008)に よる「アー ギュメンテー シ ョン」の捉 え方は以 下の通 りである。

「思考 としての (広義 の

)ア

ーギュメン ト」研究では

,前

者 を 「(狭

義 の)アー ギュメン ト」に

,後

者 を 「アーギュメンテー シ ョン」 に峻 別す る。社会科 な どの教育での討論活動 によ り引き付 け

,言

えば,

前者 を 「理 由づ けが ともな う主張」

,後

者 を 「その よ うな主張 につい て検討す る双方 向的な言語活動」に峻別 できよ う。」

(2)ア

ーギ ュメンテー シ ョン研究の背景

社会科 におけるアー ギュメンテーシ ョン研究 を行 う背景 として

,次

のよ うに

述べてい る。

「現 下

,教

育 で注 目の キー ワー ド

,PISA型

読解 力

,OECDキ

ー・ コン ピ

テ ンシー

;言

語力

,評

価 の新観 点 「思考 。判断・表現」等 は,「 他者」

や 「伝達」 な ど相 互作用 を前提 とす る関係 構築的 な学力 が 目指 され る こ とで通底す る。 社会科 で は

,指

導案等 の活動表記 に 「話 し合 う」 が 多用 され る。(中略)個 人 間つ ま り複数人 で

,問

/課

題 を見つ け る,

予濃1する

.調

査す る。検証 す る等合意 され た 「皆 で

,考

,わ

か るJ

対話 的

0共

同的 な探 究 としての社 会認識 形成 が多分 に意 図 され て い よ う。 翻 って

,社

会科授 業 の内実 と して 「教師 と子 どもは話 し合 えてい るか」。教 師 と子 どもの相互作用 において

,指

導計 画 に意 図 され た社会 認識 の形成 は実現 で きてい るか。 さらに

,そ

れ はいか に実現可能 か。

指導計画 に止 ま らず学習経験の総体 として社会科授業 を捉 え直す 問題 意識 を強 く持つ。」(p.2)(下線筆者)

60‐

(3)研

究 目的

一斉授業形態の社会科授業実践における「話 し合 い」として

,教

師 と子 ど もの対話的交渉 による相互作用 に照射 し,指導計画 に意図 された社会認識形 成 を成 立 させ るための教師処遇 を解 明す る

前述 の 目的 を達成す るために,「 リヴォイシング (再声化)」 を鍵概念 に

よ り社会科方略的な解 明を 目指 して研究が行 われた。

(4)研

究の成果 と課題

研究の成果 と課題 は

,以

下の通 りである。

アー ギ ュメ ンテー シ ョンの見地 か ら

,従

前 の社会科研 究 にお ける トゥール ミン社会科及 び討論 ス キル社会科 は

,拠

って立つ社 会科 の 目標

/方

法原理 にう いて

,教

師及 び学び手 に よる対話 的交渉 の検証 を経 た 明権 な指導方法 の確 立 にい た つて いない こ とを指 摘 した。

リヴォイ シ ングを類型化 し

,特

に 「説 明」型 につ いて

,教

育 実習 生 とベ テ ラン教師 に よる同一授業 比較分析 か ら

,そ

の有効性 を検証 し

,社

会科 での 課題解決 の 目的 にか な う方法 で あ るこ とを明 らか に した。

学び手 との 関係 か ら捉 えて きたが

,学

び手 間の関係 構築

,学

び手個 人内の 認識 変容 につ いて も見 て い く必要性 が あ る。

2.理

科 にお ける研究

(1)「 アー ギ ュメ ン ト」 の捉 え方

坂本 ほか (2011)は ,「 アー ギ ュメン ト」 につ い て以 下 の よ うに捉 えてい る。

「アー ギ ュメン ト (argument)と は、理 由づ けや反 証例 の想 定 な ど、

あ る主張 を構成 す るた めの一連 の言葉 の形 式 、あ るい はそれ らの構成 要素 を含 む一連 の言葉 のや りと りを指す。」(p.8)

(2)ア

ー ギ 三メ ン ト ロス キル研究 の背景

坂 本 ほか (2011)は

,理

科教 育 にお いてアー ギ ュメ ン ト・ ス キル の研 究 を行 う 背景 として

,以

下 の よ うに述 べ てい る。

「日本 では、教科教育にお けるアー ギュメン トの研 究 自体 がほ とん ど ない。(中略)し か しなが ら、思考 力・判 断力・表 現力 にか かわ る学習 活動 を充実 させ るた めのデザイ ン指針 の提 唱 にっ なが る研 究 は、特 に 小学校 では、 ほ とん どされ てい ないのが実情で あ る。 こ とばの ス キル を訓練す る こ とは、 これ まで少 なか らず行 われ て きたが 、ス キル 教 育 単体 では期 待 した ほ どの成果 が上 が らない ことも明 らか に なって い る。

(中略)知 識 の創 出 を 目指す 問題解 決学習 の 中で、思考お よびそ の成果 の表 現 と してのアー ギュメ ン ト・ スキル を指導す るこ との有効性 が示 唆 され てい る。 この よ うな指導 は、スキル を利用 す る意義 を学習者 に 伝 え る とともに、学 んだ スキル を即 時 に活用・練 習す る場 を学習者 に 提供 す る こ とにな り、ス キル 教育単体 では成果 が上 が りに くい とい う、

これ までの スキル 教育 の問題 点 を克服す る可能性 が あ るた めで あ る。

また、小 学生 を対象 と した アー ギ ュメン ト・ス キル を評 価 す る枠 組 み を、理論 と実証 に基づ いて策 定 し、現場 で利 用可能 な評 価 ル ー ブ リッ' ク と して具体化 す る こ とが必要 で ある。」 (pp.823)(下 線筆者)

この よ うに

,問

題 解 決 型 の学習 の 中で

,思

考 及 びそ の成果 の表 現 と してのアー ギュメ ン ト・ ス キル を指 導す る こ とが有効 で あ るこ とを述 べ てい る。 そ こで, 小学生 を対象 にアー ギ ュメ ン ト・ス キル の育成 をめ ざ し

,以

下 の

2点

を 目標 と

して研 究が行 われ た。

‐62‐

(3)研究の 目的

 

日本 の小学校理科 で使 えるアー ギュメン トの分析 フ レー ム ワー ム と評価ル ーブ リックを策定す る。

 

アー ギュメン ト・スキル の育成 を 目指す小学校理科授業 を開発す る。

 

なお

,本

研 究 では

,ラ

イテ イングのアー ギ ュメン トを中心 に取 り上 げて研 究 を行 い

,オ

ー ラル のアー ギュメ ン トについては試 行 的 に研 究 を行 つた。

(4)オ

ー ラルの アー ギ ュ メン ト研究

坂本 ほか (2011)の 研 究 で は

,ラ

イ テ ィング とオー ラル のアー ギ ュ メ ン トにつ いての研 究 が な され

,オ

ー ラル のアー ギ ュメ ン トにつ いて以 下 の よ うに捉 えて い る。

「近年 の先行研 究 では、オー ラル のアー ギュメン トを、アー ギュメン テー シ ョン (argumentatiOn)と 呼ぶ ことが多 い。 アー ギ ュメ ンテー シ ヨ ン とは、 あ る立場 を支持 す る考 えを正 当化 した り、反論 した りす るこ とで 、論 理 的 な批判 を して くれ る相 手 に 自分 の考 えを受 け入 れ て くれ るよ うに納 得 させ る こ とを 目的 と した言語 的で社 会 的な活 動 で あ る (van Eemeren & Grootendorst,2004)。 」 (p.22)

また

,ア

ー ギ ュメ ン ト・ ス キル を評 価す る枠組 み と して

,利

用可 能 なルー ブ

リックの作成 が必要 で あ るこ とを指摘 してい る。評価 ルー ブ リックにつ いて は,

3‑4の

通 りで あ る。

3‑4 

評価ルーブ リック (Osborne et al,2004a,p.23)

レベル

1…

単純 な主張 もしくは対立す る主張か ら成 り立ってい る。

レベル

2…

証拠 または理 由づ けを用いた正 当化が含 まれてい るが

,反

論 は含 ま れ ていない。

レベル

3…

弱い反論 が含 まれ ている。

レベル

4…

明確 な反論 が

1つ

含 まれている。

レベル

5…

複数回の明確 な反論 を行 つている。

さ らに

,ア

ー ギ ュ った。 図

31は

,

もので あ る。

メ ン トの構 成要 素 を学習 させ

,ア

ー ギ ュメ ンテー シ ョンを行 アー ギ ュメンテー シ ョンの構 造 の説 明 をす るた めに

,示

した

3‑1 

アーギュメンテーションの構造の説明(坂本ほか,20H,p.27)

(5)研

究 の成果 と課 題

研 究 の成果 と課題 は

,以

下 の通 りで あ る。

・反論 のス キル を育成 す るた めのデザイ ン指針 を組 み込 ん で

,小

学校理科 に お ける思考 的 な単元 開発 を行 い,/Jヽ学生 のアー ギ ュメ ンテー シ ョンを分析 す るた めの フ レー ム ワー ク とルー ブ リックの試 作版 を開発 しが

,精

緻化 が 課題 とな る。

・単元 の 中盤 か ら終盤 にか けて は

,ア

ー ギ ュメ ンテー シ ョンの レベル の向上 が見 られ なか つた こ とか ら

,単

元 にお け る支援 を改善 してい く必 要性 が示 唆 され た。

64

3.算

数科 にお けるアー ギ ュメ ンテー シ ョン研究

(1)ア

ー ギ ュメ ンテー シ ョンの捉 え方

磯 田 (2009)は,「アー ギ ュメ ンテー シ ョン」について以 下 の よ うに捉 えてい る。

「推測 (予想

)し

た考 えを他者 (含む一般 的他者

)に

数 学 的表現 で立 論 して い く過程 で

,他

者 と自己の結論・論 拠・推論 とを対 比 し

,相

の説 明の内容 ・表現 ・質 を相 互 に評価 し

,適

否 を判 断 し

よ リー般性

の あ る考 え と説 明 を構成 してい くこ と」(p.16)

「正否 だ けではな く

どの考 えに も根拠 が ある とい う立場 で授業 を展 開 したい。根拠 を も とに再現す る ことな く

,た

だ正 否 を検討 して しま

うと

,正

答以外 の子 ど1ゝ は話合 い に参加 で きな くな ってい くら

また

,対

立・拮抗 の場面までは作 り出せ

,お

互いの矛盾 を言い合う こ とはで きて もなか なか全員 が共有 した考 え方 は容 易 に得 られ ない。

教 師 の権威 で収東 す るので はな く

,他

の問題場面 に も適用 を図 る こ とに よって

,よ

リー般性 の高 い もの を子 ども 自 らが選 択 ・判 断 で きる よ うに 展 開す る。(中略)逆 に

,信

念 を持 って考 えを出 した子 どもは

,何

とか 自 分 の正 しさを主張 しよ うとして こだわ りを もつ。 これ が

,対

0拮抗 で

生ず る平行線 で あ る。(中略)対 立 ・拮抗 を生み 出 し

,他

者 の考 えの不完 全 さを正論 で論破 して も

自分 の考 えは深 ま らない。反例 を生み 出す力 は

,他

者理解 の上 に成 り立つ概念 であ り

自分 の正論 ばか りを追 究 して いたので は生 まれ ない。」(pp.41‑49)(下線筆者)

つ ま り

,ア

ー ギ ュメ ンテー シ ョンは

,相

手 の考 えを解釈 す る こ とに よ り

自 分 の考 えを深 め る こ とがで き

,論

破 す るので はな く

,よ

りよい考 え を創造す る 対話 とな りうる と言 え よ う。 ここで

,磯

田 (2009)に お け るアー ギ ュメ ンテ

Tシ

ョンの捉 え方 をふ ま え

,第 3章

2節

におい て定 めた アー ギ ュメンテ ー シ ョン の捉 え方 を以下 の よ うに修正す る。

アー ギュメンテー シ ョン とは

,他

者理解 を前提に理 由づけが ともな う主張 について検討す る双方 向的な言語活動 である。

(2)ア

ーギュメ ンテー シ ョン研究の背景

磯 田(2009)には

,算

数科 にお けるアーギュメンテニ シ ョン研 究の背景 につ い て

,以

下のよ うに述べ られてい る。

「OECDに よる

PISA読

解力調査 の低迷 を受 け

,文

部科学省 は言語活動 を教育課程改訂 の中核 に据 えた。本書は

,そ

の活動 を

,我

々が追究 し

てきた対話型問題解決授業 の下

:ア

ーギュメンテー シ ョン とい う語 で 具体化 した。」(3.3)

※ 「学び直 し」 は,「 復 習」,「 活用 。発展」,「 拡 張」 の

3つ

の 目的が あ る。

(4)研

究 の成果 と課題

研 究 の成果 と課題 は

,以

下 の通 りで ある。

。「ずれ 」,「異表 現」,「一般化 のふ るい」を も とに構 図マ ップ を作成 す るこ と に よ り

どの よ うに話 し合 い を計 画すれ ば よいか明確 にな つた。

。その考 えが他 の場合 に も使 えるか

,い

つ で も使 え るか とい う算数 の価値観 を醸 成す る こ とで

,反

例 を生み 出す こ とがで きた。

・反例 ,「 背理法型」反例,「 二般化 のふ るい」 によ り

,拡

張場 面 で の 「学び 直 し」 を実現 し

,議

論 を決 着す る こ とがで きた。

本節 で は

,各

教科 にお けるアー ギュメ ン ト

,ア

ーギ ュメ ンテー シ ョンの先行研 究 を概 観 して きた。 リヴォイ シ ングに よる教 師 と児童 のアー ギ ュメ ンテー シ ョ ンは

,教

師 と児童 にお け る関係構 築 まで しか研 究が進 んでい ない。したが って, 児童 と児 童 にお け るアー ギ ュメ ンテー シ ョン研 究 とは異 な る。 また

,ル

ー ブ リ

ックを作成 し

,精

緻 に評 価 を行 ってい くこ とは

;ア

ー ギ ュメ ン ト・ ス キル が十

(3)研

究の 目的

 

言 語活動 の充実 をすべ く

,問

題解決 の授 業 を通 してアー ギ ュメ ンテー シ ョンカ の育成 を図 る。

 2008年

の学習指導要領 の改訂 で強調 され た

,算

数 的活 動 の一層 の充実 の た めの 「算数 的活動 の仕 方(算数 の創 り方)」 と価 値 の醸 成 をす る。

 

アー ギュメンテー シ ョンに よる 「学び直 し」 を実現す る。

66‐