削 ﹃
第 1節 数学教育における概念形成に関する先行研究
① 導入の工夫
導入のェ夫について ,導 入題を ,学 習の方法面と内容面の両方か ら以下のよ うな視点で開発することを試みている。
<方
法 的 な面 か らの工夫>
Al.問
題 づ く り活動 に よる導入A2.作
業的 な活動,体
験 的 な活動 に よる導入A3.学
習具,具
体物 を用 いた活動 に よる導入A4.ク
イ ズや ゲー ム性 の あ る問題 に よる導入、
(p.25)
<内
容 的 な面 か らの工夫>
Bl.既
知 と未 知 との接 点 にお け る問題 に よる導入B2.多
様 な方法,多
様 な結論 のあ る問題 に よる導入B3.知
的探 究 心 を高 めた り,意
外性 があった りす る問題 に よる導入B4.楽
しさの あ る問題 に よる導入B5,実
用性 の あ る問題 に よる導入(p.26)
②
構成的相互作用の活用
構成的相互作用 とは
,子
ども達が構成 し,所
有 している知識 か ら出発 して新 たなる合意的な知識 を構成 してい く過程 にお ける相互 作用の こ とであ る。 この 名称 には,単
な るコ ミュニケー シ ョンや話合 い として位置づ け るので はな く, 知識 の 「構成」を基 に,よ
りよい知識 の 「構成」を意図 した活動 であることと, それ に加 わ るもの相互 に影響 を与 え合 う活動 であるこ とを明確 化す るね らいが 込 め られてい る。①
認 知 的機 能
… 自分の考 えを明確化 し
,表
現す る。②
伝 達的機 能
… 自分 の考 えを行為化 し
,発
信 す る。③
結合 的機 能
…他者 の考 えを受信 し
,同
意,不
同意 の契機 とす る。④
構成的機能
…知識 の構成 を喚起 し
,促
進す るも⑤
反省 的機 能
・1・ 自分の考 えを反省 し
,整
合性,機
能性,効
率性 な どの 視点か らの検討促進す る。⑥
再構成的機能
… 自分の考えの変容
,再
構成 を促進す る。⑦
集 団思考的機能 …集団内に分化
,対
立 を起 こし,合
意,協
定ヽ と導 く。(p.30)
構成的アプ ローチに よる授業 を行 うのは
,次
のよ うな問題 解決的授業にお け る問題点があるか らであ り,そ
の問題 点を解決す るために第1節
第2項
の方法 的工夫がある。(p.33)
さらに
,中
原(1999)では,上
記 の問題解決的授業にお ける問題 点につ いて以下 の よ うに述べている:「子 どもの 自力角翠決 にお けるい ろいろな考 えをで きる限 り生かす 立場 に立 うてい る。 そ のた めに
,子
ども同士 の検討,協
議 を重 視す る とと もに,子
どもの 自己選択 の場 を設 け,先
生主導 に よる序 列 的 な扱 い は 避 けるよ うに している。 それ とともに,子
どもの誤 りの中には素晴 らしい考 えが含 まれ てい るものが多 く
,そ
れ を生か してい く学習 が重要 と考 えてい る8さ
らに,算
数 的知識 は高度 な抽象性,一
般 性 に富 む も ので あ り,そ
れ だ けに丁寧 な抽象化 の過程,一
般 化 の過 程 が必要 で あ り,そ
うした学習過程 を構築 して い る。 またその た めに,1時
間 で完 結す るので はな く,2〜 3時
間型 の ゆ と りの ある学 習設 定 も取 り入 れ るよ うに して い る。」 (pp.3334)(下 線筆者)
この よ うに
,問
題 解 決授 業 にお い ては:子
ども同士 の検 討,協
議 を重視 し,教
師 主導 に よる序列 的 なま とめ方 を避 け る とともに
,多
様 な考 え方 を生 か して, 抽象化,一
般化 を図 つてい くこ とで知識 を構 成 してい く必要性 を述 べ てい る。また
,問
題解 決 や 多様 な考 え方 につ いて は,多
くの研 究や 実 践が な され て い るが,そ
の こ とにつ いて は,次
節 で述 べ る。問題解 決 的授 業 の問題 点
ア
.導
入 問題 が教師 か らの押 し付 けになつてい る。イ
.既
存 の解 決 方法 に とらわれす ぎて,子
どもの考 えが十分 に生か されてい ない。 と りわ け,い
わ ゆ る序列 的 な扱 いが多 く,ま
た誤 りのあ る考 えが 生 か され ていない。ウ
.1つ
の問題 の解決 か らす ぐに下般 的な方法へ と進 む。工
.1時
間以 内で完結 しよ うとす る,1時
間主義 に囚 われ てい る。‐52‐
2.問
題解決 と多様 な考 え方第
3章
第1節
第1項
において,構成的アプ ローチにお ける授業過程 を概観 し, どのよ うに して知識 を構成 してい くか,ま
た,問
題解決 的授 業 の問題 点を概観 した。本項 においては,問
題解決 と多様 な考 え方 についての研 究 を概観 し,そ
の課題 を整理 してい く。
構成 的アプ ローチに よる授業 を考 える上で
,子
ども同士の検討,協
議 を重視してい く必要がある。
したがつて
,構
成的相互作用 について,数
学的 コミュニ ケー シ ョンの研究及び多様 な考 え方 についての研究を概観 してい く。(1)数
学的 コ ミュニケー シ ョンか ら金本
(1998)は
,「数理的な事象 について考 えてい るJ,「算数 の多様 な表現 ・ 表記 が使 える」 とい うこ とをもつて,「数学的」 とい う言葉 を規定 し,「数学的 コ ミュニケー シ ョン能力」 と称 し,表 3‑3の 4つ
の視 点か ら捉 え,学
習者が身 につ けるべ き能力 について定義 してい る。 また,数
学的 コミュニケー シ ョンの 展開につて,授
業 を基 に分析 を行 い,数
学的 コ ミュニケー シ ョンを引 き出す 手 立てについて提起 してい る。そ して,表 3‑3の 4つ
の視点が適切 に育成 されて い くことによ り,「数学的 コミュニケー シ ョン能力」が育成 され ると考 えてい る。表
3‑3
数学的 コミュニケーシ ョン能力 (金本,1998,p.34)(1)算
数 ・数 学 の多様 な表現 。表記 が使 える。. (2)考
えの伝 達や討 議 な どの交流 がで きる。(3)数
学的表現 の よ さが理解 で きる。(4)話
し合 いや議論 の大切 さへ の適切 な態度 が形成 され てい る。また
,概
念形 成 に関 して,
レベル の高 い文脈 (メ タ・ コンテ クス ト)を
学級 に持 ち込 む こ との必要性 につ いて次 の よ うに述 べてい る。「子供たちに とつて,「 もとの値段 が違 うか ら」 とい うだ けではなかな か合意 は得 られ ない。 しか し
,こ
の例3で
は,100円
の もの と1億
円のものの場合 で考 える とい う文脈 を持 ち込む ことに よつて問題 の文脈 を相 対化 し, 自らの考 えの着眼点その ものを浮 き立たせ よ うとしてい ること が分 か る。言 い換 えれ ば
,単
に問題 を解 決 す るだ けで はな く,
自分 の考え方 が一般性 の あ る考 え方 で あ る とい うこ と自体 を説 明 してい るので あ る。 そ の こ とが
,解
決 の仕方 その ものの妥 当性 を考 え る とい うレベ ル の高い文脈 (メ タ・ コンテ クス ト)を ,学
級 の 中に持 ち込 む こ とに な るので あ る。̀
実際
,練
り上 げ段 階 にお いて,こ
の例3の
子供 の発言 が,学
級 の 中での 倍
"の
考 え と 差"の
考 え との対立的 な関係 を一挙 にか え,共
通 の 「土俵 」 の上 で考 える視 点 を与 える こ とになったので あ る。」(p.65)(下 線筆者)
「この例
3は ,…
(中略)… 他者 との交流 の場 にお いて は重要 な役 割 を 果 た してい る よ うに思 われ る。 それ は,授
業 での練 り上 げ段 階 の場 で, 例3の
子供 の発言 に よつて多 くの子供 た ちが 倍"の
考 えへ と考 えを改 めてい った とい う事 実 に よる。 いわば
,他
者 の納得 を引 き出 した の である。」(p.68‑69)この よ うに
,メ
タ・ コンテ クス トを用 い る こ とは,単
に問題 を解決 す るだ けで はな く,一
般性 の あ る考 え方 へ と学級 の話 し合 い を導 き,対
立 。拮抗 した場 面 を転換す る こ とに繋 が る と思 われ る。 したが つて,意
図 的 にメ タ・ コンテ クス トを生み 出す よ うに授 業 を展 開す る こ とは一般化 を図 る うえで必 要 で あ る と言 える。 また,一
般 化 を図 るた めに,意
図的 に メタ・ コンテ クス トを生 み 出す ように授業を展開することは ,ア ーギュメンテーションを取 り入れた授業とも言 うことができる。
100円 の物を 300円 値上げ した と言えば,も のす ごく高 くなつたよ うに感 じるが
,1
億 円の物 を 300円値上げ し て もそ うかわ らない と感 じ る。
もとの値段か ら,÷ (何分 の何)ふえた とい う考えをし た ら,元 の値段が安いA店の 方が高 くなつた と言 える。
ヽ 二 し い 二 紳 苺 ︻磁
島 毎 電 話 亀
将
︑ 撃 ザ
ヽ今勢
"寺 te雑
鞍 グ ャ ゛ ャ 車も く感 :滋誉タト脅│ 繊 鬱う.例 3(p.64)
‐54‐
江森
(2012)は ,抽
象 的 な見方 と しての構 造 の伝 達 の方 が,具
体 的 な操作 の伝達 よ りも困難 で
,か
つ,数
学 と して価値 が高 い もの で あ る と して,数
学学 習 にお け る コ ミュニケー シ ョンを「数学 的 な構 造 の交換 」と位置 付 けた。また,「数 学 的 コ ミュニケー シ ョン」 と呼ぶ た めには,表
現形式 よ りも思 考 の厳 密性 を重 視 す る必 要 が あ り,数
学的表 現 を駆使 した コ ミュニケー シ ョンで あ つて も,そ
こで展 開 され てい る思考 が数 学 として正 しい もので な けれ ば な らない と述べ て い る。 金 本氏 は
,子
どもが身 につ け るべ き能 力 を中心 に数 学 的 コ ミュニケー シ ョンにつ いて提 言 され て いたが,江
森 氏 は,教
師の コ ミュニ ケ ー シ ョン能力 に 焦点 を当てて考察 を行 つた。 そ の 中で,概
念形成 にか かわ る数 学学 習 にお け る 認 知的不協和 につ いて,以
下 の よ うに述べ てい る。る危 険性 を含 んでい る。 それ ゆえ
,教
師 は,討
論 の終結 時 に細 心 の注意 を払 い,潜
在化 した不協和 が学習者 の事項 を混乱 させ るこ とのない よ う に しなけれ ばな らない。教 師 が学習者 同士 の コ ミュニケー シ ョン活動 を 支援 す る場合 には,フ
ィー ドバ ックを受 けた学習者 が どの よ うな認 知変 容 をた どるのか に注意 をす る必要 があ る」(p.58)(下線筆者)この よ うに
,対
立す る学習者 同士 の討 論 が一方 の意 見へ収束 した とき,そ
こに新 たな認 知 的不協 和状 態 に陥 る可能性 が あ る こ とを教 師 が認 識 せず に討論 を終 えて しま うこ とで