第二章 証人保護措置の一考察
第 2 節 日本における証人保護の立法状況
4 平成 28 年の法改正
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意見を付して、これを裁判所に通知しなければならない(同条第2項)。
被害者等参加人等の質問が、検察官のした質問内容と重複するような場合や、意見陳述 のために必要がある事項に関係のない事項にわたるときは、これを制限することができる とされている(同条第3項)。
⑸ 被害者参加人等による論告求刑権(316条の38)
証拠取調べが終了した後に、被害者参加人等から、事実または法律の適用について、法 廷で述べることができる。その手続および考慮すべき要件に関しては、同法316条37の1 項の被告人に対する質問の手続と同様である(同条第1項)。
前項の申し出は、あらかじめ、質問をする事項を明らかにして、検察官にしなければな らない。この場合において、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする(同条第2 項)。
裁判長は、被害者等の意見に重複がある場合や、訴因として特定された範囲を超える場 合には、これを制限することができる(同条第 3 項)。被害者参加人等による意見陳述は、
証拠とはならないものとする(同条第4項)。
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証人の秘匿制度については、すでに平成 11(1999)年から、関連する制度が導入されて いた。同年の改正によって「秘匿制度」について、2 つの条文が加えられた。1 つは、299 条の2であり、裁判長は、尋問をする際にして、「証人、鑑定人、通訳人もしくは翻訳人も しくはそれらの親族の身体もしくは財産に害を加えて、これらの者を畏怖させもしくは困 惑させる行為がなされるおそれがある」と認めるときで、これらの者が十分に供述するこ とができなくなる場合には、これらの者の住居、勤め先その他の通常所在する場所が他人 に知らないようにする。だたし、当該措置が採られているときには、被告人の実質的な防 御権へ妨げてはならない。もう1つは、299条の6〔現行規定〕によって、検察官または弁 護人は、証拠取調べの請求と閲覧等の機会の付与という要請に応じて、「証人、鑑定人、通 訳人もしくはは翻訳人もしくはそれらの親族の身体もしくは財産に害を加えて、これらの 者を畏怖させもしくは困惑させる行為がなされるおそれがある」と認めるときには、犯罪 の証明もしくは犯罪の捜査または被告人の防御に関し必要がある場合を除いて、訴訟に関 する書類または証拠物を閲覧、謄写するにあたり、これらに記載または記録されている当 該措置に係る者の氏名・住所を、被告人を含む関係者にしられないようにする措置を採る ことができるとされている。
平成 19(2008)年の刑事訴訟法改正により、特定事項の秘匿対象は、被害者等にまで拡
大する。性犯罪、児童福祉法などに及ぼす犯罪、また、犯行の態様、被害の状況その他の 事情により、法廷で明らかにされることにより、被害者等の名誉または社会の平穏が著し く害される可能性があるため、被害者の氏名および住所などその他の特定させることとな る事項を公開の法廷で明らかにしない措置を採ることができる旨と定められている(刑事 訴訟法290条の2)。引き続いて、同法299条3項は、299条1項の規定により「証人の氏 名および住居を知る機会を与えまたは証拠書類もしくは証拠物を閲覧する機会を与える」
に当たり、被害者等の身体もしくは財産に加える行為、名誉または社会の平穏へ著しく害 されることを防ぐために、被害者等の特定事項を匿名化できることとしたものである。
また、平成28(2016)年の法改正で新設された同法299条の4によれば、同法299条の 1と同じような条件で、弁護人に対し、当該氏名および住居を知る機会を与えたうえで、
証人の要請に応じて、被告人を知らせないようにするか、もしくは被告人に知らせる時期
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もしくは方法を指定することができる。ただし、「その証人、鑑定人、通訳人または翻訳人 の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利益関係の有無を確かめ ることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずる恐れがあると きは、この限りでない」という制限が加えられている。
⑵ 協議、合意制度、刑事免責制度の新設
組織犯罪の解明・立証のためには、供述証拠は不可欠である79。そこで、平成28(2016)
年の法改正において、供述調書に過度な依存からの脱却という要請に応えるために、証拠 収集等への協力および訴追に関する制度(刑事訴訟法350条の2~350条の15)、および刑 事免責制度(同法157の2、3)が新たに導入された。
①協議・合意制度
平成28年の改正により導入された協議・合意制度は、刑事訴訟法350条の2以下の規定 に則り、特定犯罪に係る事件の被疑者または被告人が他人の犯罪事実を明らかして訴追機 関に協力した場合に、見返りとして刑の減軽や免責を受けるとするものである80。
この合意には、弁護人の同意が必要である(同法350条の3)。協議・合意の対象は、大 別して、財政経済犯罪(ホワイトカラー犯罪)と、組織犯罪として行われる可能性が高い 犯罪(薬物銃器犯罪)に限られている(同法350条の2第2項各号)81。しかし、死刑また は無期懲役また禁錮に該当する重大な法益侵害を伴う犯罪は、被害者や遺族を含むの被害 感情を考慮し82、司法取引によって、刑の減免を認めることはできないと考えられる。
合意の内容は、捜査機関の取調べにおいて真実を供述したり、当該他人の刑事事件の証
79 田口守一「立法のあり方と刑事免責・証人保護等」刑事法雑誌37巻2号(1998年)71頁。
80 小坂井久=青木和子=宮村啓太『Q&A平成28年改正刑事訴訟法等のポイント』(2016年・新日本法規出
版)194頁。司法取引には、2つの型がある。1つは有罪を自認した場合刑の減軽や免責を受ける「自己負 罪型」であり、もう一つは、訴訟機関と協力し、他人の犯罪を明らかにするため、見返りとして刑の減軽 や免責を受ける「訴追協力型」である。今回の可視絵は、訴追協力型のみが導入されることになった。
81 佐藤隆之「平成28年刑事訴訟法改正による〔合意精度〕の導入について」東北ローレビュー5号(2018
年)54頁。
82 佐藤・前掲(81)論文71頁。
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人として証人尋問を受ける場合においても真実を供述したり、証拠収集に協力したりする ことを要する(同法350条の2 第1 項)しかし、合意に違反して、捜査官に対して、虚偽 の供述をし、または偽造もしくは変造の証拠を提出した場合においては、5年以下の懲役に 処する(同法350条の15第1項)。
②刑事免責制度
刑事免責制度は、組織犯罪および共犯者の犯罪に対応すべく、供述証言を求めるため設 けられたものである。協議・合意制度とある程度の共通するところがあるが、協議・合意 制度と異なり、対象事件に特に限定がなされていない。しかし、供述者自身を免責するた めに、自ら関与した刑事事件は対象外となっている83。
刑事免責の手続は、刑事訴訟法157条の2、同法157条の3に定められている。検察官は、
証言の重要性、関係する犯罪の軽重および情状について他の事情を考慮し、刑事免責を付 与することを、あらかじめ裁判所に対し請求し、当該手続を採用するか否かの最終判断は 裁判所に委ねられている。
⑶ ビデオリンク方式による証人尋問の拡充
平成 12(2000)年に導入されたビデオリンク方式による証人尋問では、証人の在席場所
は、裁判官および訴訟関係人が在席する場所と同一の構内に限定されていた。これに対し
て、平成 28(2016)年の改正により、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との
関係、また、証人の職業、健康状態、住所などの諸要素を考慮した上で、より一層証人の 負担の軽減を図るために、同一構内以外にある場所に証人を在席させ、ビデオリンク方式 による証人尋問が実施することができるとされている(刑事訴訟法156条の6第2項)。
小括一
これまで述べてきたとおり、日本では、組織犯罪に対応すべき、アメリカのような証人
83 小坂ほか・前掲(80)書243頁。
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保護制度はない。ただし、近年の刑事訴訟法の改正等によって、被害者支援および証人保 護に資する制度において、世界的な標準と比較して、じわじわとその差を縮めるようにな ってきている84。このような日本の状況に対して、では、中国ではどのような状況になって いると評価すべきであろうか。
そこで、次節において、中国における証人保護措置の検討を進めることにしたい。