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平成 19(2008)年の被害者参加制度の導入

第二章 証人保護措置の一考察

第 2 節 日本における証人保護の立法状況

3 平成 19(2008)年の被害者参加制度の導入

平成 19(2008)年に成立した「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法

等の一部を改正する法律」(平成19年法律第95号)によって、被害者等参加制度が導入さ れた。その目的は、一方では、被害者等が、自ら被害を受けた犯罪の当事者として、その 被害に係る刑事事件の裁判の推移や結果に重大な関心を持つことが予想されることに対応 するためである。もう一方では、個人の尊重を重んじて、犯罪被害者等の尊厳にふさわし い処遇を保障するために、その名誉の回復や被害からの立ち直りにも資するもの76との考え を実現することにある。

被害者等参加制度の対象者は、刑事訴訟法316条の33第1項に定められている。すなわ ち、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、強制わいせつおよび強制性交等の罪、業務 上過失致死傷等および過失運転致死傷の罪、逮捕および監禁の罪ならびに略取誘拐および 人身売買の罪等に係る被告事件の被害者等(被害者、被害者が死亡した場合もしくはその 心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者・直系の親族・兄弟姉妹)もしくは当該

76 滝沢誠「被害者参加制度と公判前整理手続」井田良=川出敏裕=高橋則夫=只木誠=山口厚編『椎橋隆

幸先生古稀記念-新時代の刑事法学』(2016年・信山社)325頁。

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被害者の法定代理人またはこれらの者から委託を受けた弁護士は、被告事件の手続へ参加 するものとする。被害者の意見陳述を保障するために、必要に応じて、被害者参加人に対 して付添人を付き添わせたり、被告人または傍聴人と被害者参加人との間に遮へい措置を 採ったりすることができる旨を定めている(同法316条の39)。

被害者参加人の権利は、同法316条の34から38までで明らかにされている。

⑴ 被害者参加人等の公判期日への出席権(316条の34)

被害者参加人等は、公判への出席権を認めることで、原則としてすべての公判期日に出 席することができる。さらに、公判期日において、被害者参加人等は、被害者は証人尋問 が行われる際や現行法上の意見陳述の場合を除いて、必要に応じて、「法廷で検察官の隣な どに着席し、もしくはバーの内側に出席する」77ことが認められる(同条第 1 項)。公判期 日外に行われる証人尋問や検証においても、出席することも許されるとしている(同条第5 項)。裁判所は、被害者参加人に対して通知する義務を負うことを明記したのである(同条 第2項)。しかし、被告人の被害者が多数である場合、被害者参加人等の数に対して一定の 制限が加えられているものである(同条第3項)。裁判所は、審理の状況や被害者参加人等 の数そのほかの事情により、全部もしくは一部の公判期日へ出席を許可しないことができ るとされている(同条第4項)。

⑵ 検察官に対する意見表明権・説明要求権(316条の35)

被害者参加人等の意見表明権を肯定することは、被害者参加人等が、独立の訴訟当事者 として位置づけることを意味するわけではない。被告人(弁護人)・検察官の二当事者制は 貫かれていて、その結果、むしろ、被害者参加人等と検察官との協力関係が強調されると いう帰結と認めせざるを得ない状況にある78。被害者参加人等と検察官との間で信頼関係・

協力関係を築くために、綿密なコミュニケーションを通して、相互に情報を提供したり、

77 岡村勲(監修)守屋典子=高橋正仁=京野哲也『犯罪被害者のための新しい刑事司法〔第2版〕(2009

年・明石書店)66~67頁。

78 岡村ほか・前掲(77)書70頁。

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意見を交換したりすることができる。検察官は、被害者の意思と違う訴訟行為を行った場 合には、被害者の要望により必要に応じて、その理由について被害者参加人等に説明しな ければならないことを意味する。

⑶ 被害者参加人等による証人尋問(316条の36)

裁判所は、証人尋問を行う際、被害者参加人等から、その者がその証人を尋問するの申 し出があるときは、被告人または弁護人の意見を聴き、審理の状況、申し出の事情を考慮 し、相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く)についての 証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、申し出をした者がその証人を尋問 することを許すものとされている(同条第1項)。

検察官の尋問が終わった後、直ちに、尋問事項を明らかにして、検察官にしなければな らない。この場合において、検察官はみずから尋問する場合を除き、意見を付して、これ を裁判所に通知するものとする(同条第2項)。

裁判長は、被害者参加人等の尋問をする際に、証人等やその親族の身体・財産に害が加 えることによって、これらの者を畏怖させて困惑させる行為がなされる恐れがあり、また、

証人等の住居や勤務先その他その通常所在する場所が特定される事項が明らかにされれば、

証人等が十分な供述ができないような尋問・陳述制限事項に触れる場合には、これを制限 することができる旨定められている(同条第3項)。

⑷ 被害者参加人等による被告人に対する被告人質問権(316条の37)

裁判所は、被害者参加人等から、その者が被告人の供述を求めるための質問を発するこ との申し出があるときは、被告人または弁護人の意見を聴き、被害者参加人等による陳述 する必要があると認める場合において、審理の状況、申し出に係る質問をする事項の内容、

申し出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、申し出をした者が被告 人に対してその質問を発することを許すものとする(同条第1項)。

前項の申し出は、あらかじめ、質問をする事項を明らかにして、検察官にしなければな らない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら供述を求める場合を除いて、

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意見を付して、これを裁判所に通知しなければならない(同条第2項)。

被害者等参加人等の質問が、検察官のした質問内容と重複するような場合や、意見陳述 のために必要がある事項に関係のない事項にわたるときは、これを制限することができる とされている(同条第3項)。

⑸ 被害者参加人等による論告求刑権(316条の38)

証拠取調べが終了した後に、被害者参加人等から、事実または法律の適用について、法 廷で述べることができる。その手続および考慮すべき要件に関しては、同法316条37の1 項の被告人に対する質問の手続と同様である(同条第1項)。

前項の申し出は、あらかじめ、質問をする事項を明らかにして、検察官にしなければな らない。この場合において、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする(同条第2 項)。

裁判長は、被害者等の意見に重複がある場合や、訴因として特定された範囲を超える場 合には、これを制限することができる(同条第 3 項)。被害者参加人等による意見陳述は、

証拠とはならないものとする(同条第4項)。