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第三章 日中におけるビデオリンク方式による裁判の比較

第 2 節 ビデオリンク方式による裁判の実施

1 どのような設備を用いるのか

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ロ犯罪、組織犯罪または薬物犯罪等の事件の訴訟を行う場合に、証人、鑑定人または被害 者が出廷して証言する際に、本人の容姿または音声等を識別できないようにすると規定さ れている。それから、ビデオリンク方式による証人尋問という措置については、明文では 言及していないが、その正当化根拠にとして、同法62条の5にいう「その他の必要な措置」

の1つとして講ずることができるとする理解が妥当である。

しかし、ビデオリンク方式による証人尋問を行うとしても、どのような証人に、このよ うな方式での出頭証言を許容するのか、どのような事件でこの方式が認められるかという 問題が残されている。他方で、ビデオリンク方式で裁判を行う場合において、証拠を識別 する際にして、証拠の信用性への疑いが生じ、その証明力が損なわれるという状況の存在 が指摘されるようになる119

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2016年に改正された『法院組織法』第4条によれば、刑事裁判所は、裁判時に証人に証

言させるために、ビデオリンク専門室を配備することができる。その保護対象は、法律に 基づいて保護すべきである者、または保護を提供しなければならない証人、鑑定人、被害 者である。

もっとも、電子裁判所やビデオリンク専門室などの設置は、大量の人的物的リソースを 消費することが予想される121。中国国内の経済格差という問題を考慮するならば、電子裁判 所やビデオリンク専門室などの配備は、主として東南地区、沿海地域では実施することが できる。しかしながら、経済が発達していない辺境地区では、コンピュータ、カメラおよ びソーシャルメディアなどを通じて、裁判・証明を行うことになる。

2 『遠隔地での刑事事件を審理する取り扱い規定』--寧波の例に挙げて(以下

「寧波規定」と略称する)

中国におけるビデオリンク方式による裁判は、実務においては広く普及している。ただ し、それに関連する適用対象、適用規則、ネットワークプラットホームなどについて、共 通の標準が存在するというわけではない122

ここで、寧波中級人民法院の例に挙げて、その要点を指摘しつつ、その実務的取扱いの 実情を説明することにしたい。

⑴ 適用される事件について

寧波規定第一章第 3 条によれば、以下の刑事事件について、遠距離のビデオリンク方式 による裁判、または上級裁判所が、下級裁判所で審理中もしくは審理済みの事件を再審理 することができる。

の裁判所では、コンピュータ、カメラおよびソーシャルメディアなどの手段を通じて、裁判を行うことが ある。

121 謝・前掲(107)論文25〜26頁。電子裁判所の導入費用は、約470,000元であり、装着費用は約10 元である。

122 馮琳「試論遠程審判之現状及其完備—刑事審判為視角」法制博覧(2016年)7月(下)63頁。

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① 一般事件についての遠隔地での裁判は、ビデオリンク方式を用いて審理を行うこと ができるとし、重大かつ複雑であり、被告人の人数が複数である事件は、それを適 用しないこととする。

② 簡易手続で審理する事件。

③ 事件の性質、被告人の数、および監禁場所などの制限を問わず、裁判官が当該事件 の判決を下す場合には、ビデオリンク方式でこれを行うことができる。

④ 上級裁判所が、下級裁判所で審理中または審理済みの事件を再審理し、裁判し、判 決を下すにあたり、ビデオリンク方式を用いる必要と認める時。

⑤ その他の適用されるべき刑事事件であること。

ビデオリンク方式で裁判を行う時には、事前に訴訟関与者の同意を得ることを前提と する(同規定1章4条)。

⑵ 公判前での準備

ビデオリンク方式を用いて刑事裁判を行うこととした場合、裁判所が裁判の開始前の 5 業務日以内に、司法警察部門にそれを通知しなければならない。司法警察部門はその通知 を受けた後、2業務日以内に、刑事裁判の時間を割り振り、かつ裁判所を確定しなければな らない。ビデオリンク方式を用いて刑事事件の判決を下すこととした場合、裁判所が判決 を下す前の 2 業務日以内に、司法警察部門に通知なければならない。司法警察部門はその 通知を受けた後、2業務日以内に、刑事裁判の時間を割り振り、かつ行政装備部門に通知し なければならないと規定する(同規定2章1条)。

ビデオリンク方式で裁判を行う事件は、起訴書副本、開廷通知書を送達することとし、

もしくは上級裁判所が、下級裁判所で審理中または審理済みの事件を再審理する時には、

当該事件の担当者、または司法警察官は、被告人および弁護人に対し、ビデオリンク方式 に関連する注意すべき事項を告知しなければならないと定めている(同規定2章4条)。

⑶ ビデオリンク方式による裁判の取り扱い

裁判を開始する前に、裁判長は、当該事件がビデオリンク方式で裁判を行うものである

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ことを公表し、当該事件における被告人および訴訟関与者に対し、それらに関連する権利 や義務などを告知しなければならないとされている(同規定3章1条)。

物証を識別する時に、オンライン・プラットホームを通じて、物証を被告人にはっきり と示さなければならない。被告人はその物証を巡り、反対尋問を行うことができる。被告 人は、書面陳述書または他の素材を提出する場合において、法廷で朗読し、提出し、証拠 を検証した後、当番司法警察官を通じて当該事件を担当する裁判官、または書記官に渡す ことができるとされている(同規定3章2条)。

被告人は、法廷で提出した証拠の真実性に疑いを抱いた場合には、重大な異議を申し立 て、もしくは新しい証拠の提出を要求し、または当該事件に関して大きく相違する主張を 提出し、もしくは被告人は容疑事実を否認する場合には、合議廷、または裁判長の決定に よって当該事件の審理を中止すると規定する(同規定3章3条)。

送信信号に中断、遅延などの状況が発生する場合には、事件の審理を一時停止させて、

すぐ技術部門に連絡しなければならない。設備の不具体が解消されることで、審理を再開 することができる。裁判を再開する前、最初に故障が発生する前の審理内容を確認すべき であるとし、当事者は、不具合を理由として異議を申し立てる場合において、異議の内容 をめぐって改めて審理することができる。不具合が適時に解決できない場合には、当該事 件の担当者は、すぐ司法警察官に連絡し、期日を変更することを被告人に告知しなければ ならないと定めている(同規定3章4条)。

裁判の終了後で、書記官は留置施設内に装着したネットワーク・プリンターを通じて裁 判の記録を謄写し、司法警察官はそれを被告人に渡し、被告人は閲覧して確認する。被告 人は異議がある場合において、書記官に修正を申し込むことができ、また、その修正内容 を記録に記載することができる。被告人が署名した後で、司法警察官はその記録を裁判所 に返送する。記録を照合し、署名する過程は、ビデオカメラで記録を行わなければならな いとされている(同規定3章5条)。

第 1 回の裁判が終わった後、裁判を再開する必要があると認めるときには、その取り扱 いの流れは、前述の規定と同じであると定めている(同規定3章6条)。

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小括一

概括的な評価を加えると、寧波規定は、遠隔地で裁判を行うとした場合、適用事件、適 用対象などの諸点、また、証拠を識別すること、不具合が発生する時の救済などの場合に おいて、それらの多少の不備を補うことを肯定する意味合いをもつものと理解すべきであ る。目下のところ、この規定を実施した結果として、被告人を護送するために要する時間 やコスト等の負担が軽減されるということがあり、そのことは、訴訟経済の実現に貢献す るとともに、司法の効率化等の向上にもつながるものと考えられる。