第 2 章 中国の流通システムの構造的特質と発展過程
4 市場経済体制期における流通システムの変革(1992-2000 年)
4-1 流通近代化政策の展開
以上で述べたように、経済改革開放期においては、国民所得が大幅に上昇し、都市 部と農村部の一人当たり可処分所得も年々拡大してきた。1992年の鄧小平による「南 巡談話」を契機に、社会主義市場体制の形成という経済改革の目標が決定され、市場 開放に拍車をかけた。中国経済は目覚ましい成長を遂げたとともに、消費構造にも劇 的な変化をもたらし、消費者ニーズの変化も単一化から多様化・個性化へとシフトし てきた。こうした経済成長と消費構造の激変につれて、生産と消費の分離を架橋する 流通業の発展と変革が要請されるようになった。1992年6月、中国政府は「社会主義 の市場経済体制を確立する上での若干の問題に関する決定」を公表して流通近代化の 推進を公式文書としてはじめて提起し、流通近代化がなければ工業や農業の近代化も 覚束ないということを認識するようになってきた。改革当初、流通近代化の政策は根 強い産業保護の立場から、その開放の度合いをまず最小限にし、そのリスクを有効に コントロールできる範囲内にとどめ、その後漸次開放の範囲を拡大するという方針を 採った。そして流通近代化政策は流通分野の対外開放政策から始まり、流通開放政策、
チェーンストア推進政策および流通情報化促進政策などの諸政策が加わった(謝、
2008、183頁)。
4-1-1 流通開放政策
1992年7月、流通開放政策としての「商業小売分野の外資導入に関する通達」が国 務院により提出され、中国流通業への外資の参入が条件つきで認められるようになっ た。その具体的な内容は進出地域、申請手続き、業務範囲の 3点にまとめることがで きる。①進出地域は6つの沿海大都市(北京、上海、天津、広州、大連、青島)と5つ の経済特区(深圳、珠海、厦門、汕頭、海南)でそれぞれ1~2社の合弁・合作経営の 小売企業を実験的に導入する。②申請手続きに関しては地方政府が国務院に届け出て、
審査・認可を受ける。③業務範囲に関しては百貨類商品の小売業務と輸出入業務に限
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り、卸売業務と輸出入代理業務を禁じる。1993年3月、国務院は「全国第三次産業開 発計画に関する基本方針」を公表し、特定の都市と地域では中外合弁の小売企業と生 産財の卸売業が実験的に設立することができるようになった。さらに 1995 年 6 月に は「外資導入の方向を指導する暫時的規定」と「外資導入分類指導目録」が国家発展 計画委員会・国家経済貿易委員会・対外貿易経済合作部の共同で発表され、従来の外 資投入が禁止されてきた小売業、生産財の卸売業が「投資制限業種の乙類」17に入れら れ、制限付きで外資の参入が許可された。また同年10月、国内貿易部による「流通業 の外資導入に関するガイドライン」が追加的に公表され、外資企業は以下の新たな 4 原則に基づいて導入しなければならないとされた。①合併する相手企業の条件に関し ては、国際的に知名度の高い会社でないといけないこと。②中国側の出資比率は51%
以上占めなければならないこと。③合併期間は30年間を超えてはいけないこと。④相 手の輸出入許可については、輸入商品が自社の小売商品に限定し、その総額は当年売
上総額の30%以下で輸入が輸出を超えないこと。1996 年9 月、対外貿易経済合作部
は「中外合併対外貿易企業の試行的な設立に関する暫定条例」を公布し、輸出入業へ の外資参入が条件つきで認められるようになった。具体的には、①設立地域は上海の 浦東新区と深圳経済特区に限定すること、②外資企業の前年の売上高は50億ドル以上 でなければならないこと、③中国側の出資比率は 51%以上を占めてはいけないこと
(謝、2008、158頁)。1999年6月、国家経済貿易委員会と対外貿易経済合作部によ って「外資商業企業の試行的な設立に関する条例」が打ち出され、外資参入に対する 中央政府の規制が大幅に緩和された。具体的には①外資企業の実験範囲はすべての省 都・自治区の中心都市、直轄市、計画都市および経済特区に拡大すること。②4つの直 轄市(北京、天津、上海、重慶)において1 社の外資卸売業を設立することができる こと。③3 店以下の店舗を持つ小売合弁企業、CVS とチェーン方式の専門店や専売店 を経営する小売合弁企業及び国内で大量商品を仕入れグローバル販売ネットワークを 利用して中国製品の輸出を拡大させる小売合弁企業、という 3種類の企業に関しては 外資小売企業の出資比率が65%に引き上げることができること。
表2-3 流通近代化政策の展開
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年月 公表機関 政策の区分 政策の名称 政策の内容
中国共産党中 央委員会、国
務院
1992年6月 国家第三次産業の発
展を加速する決定政策
サービス産業の発展の奨励、外資導入を促進す る政策である。
1992年7月 国務院
商業小売分野の外資 導入に関する通達(国 務院82号函)
流通業への外資進出を条件つきで認可するように なった。
流通開放政策
流通開放政策
政府の許可による特定の都市と地域において小 売・供給・販売に従事する中外合弁企業を実験的 に設立することができるようになった。
1995年6月
国家発展計画 委員会、国家 経済貿易委員 会、対外貿易 経済合作部
外資導入の方向を指 導する暫時的規定、外 資導入分類指導目録
流通(国内貿易)を含む産業分野の投資誘導政策 であり、小売業、卸売業(生産財の卸売業も含む)
を投資制限業種の乙種に入れていたが、制限付 で外国投資の導入ができるようになった。
流通開放政策
流通開放政策 1995年3月 国務院 チェーンストア推
進政策
チェーン経営の発展及 び商業体制改革と流 通産業近代化の推進 に関する議論
SMやCVSなどの食料品や日用雑貨を扱う業態は 政策推進の重点として提出された。
1995年6月
(1)五ヵ年の計画
①全国大型商業企業の6割及び中小商業企業の 3-4割が電算機管理の普及、②金銭登録機、
POS機、流通VAV、EDI、EOSの試験的な応用の 実施 (2)中・長期発 展の計画概要(2010年まで)
①流通情報管理の電算化、自動化およびネット ワーク化の実現、②主要業種と沿海都市の流通 情報化が先進国並みのレベルに達成。
(3)中・長期目標達成の政策手段
①先進企業の経験の宣伝②新設店舗の電算機 利用の義務化、③人材の養成、④国際交流・合 作の拡大、⑤資金源の開拓、⑥優秀技術者に対 する奨励
①チェーンストア推進計画は大・中都市を中心に チェーン企業1500社とストア6万店及び売上高 1200億元を目標として設定した。②目標達成する ための政策措置として規範的な管理の強化、配 送センターの設置、店舗施設、情報ソフトの開発と 利用、人材の育成、商業企業の改革、政策的・財 政的支援などの8項目を取り上げた。
国内貿易部 チェーンストア推 進政策
全国チェーン経営の発 展に関する計画
流通開放政策
1995年10月 国内貿易部 流通業の外資導入に 関するガイドライン 1993年3月 国務院
全国第三次産業開発 計画に関する基本指 針
1994年11月 国内貿易部 流通情報化促進 政策
全国の商業電子情報 技術の開発と応用に 関する五ヵ年の計画お よび中・長期の発展に 関する概要
流通外資企業の設立条件の見直し ①外資小売 企業の設立地域:すべての省都、自治区、直轄 市、計画単列都市。②外資卸売業が設立資本 金:8000万元以上(西部地域:6000万元)。③4店 舗以上のチェーンストアで小売合併企業を経営す る場合の中国側の出資比率:51%以上。④小売 合併企業の最低資本金:5000万元(西部地域:
3000万元)。
外資商業企業の試行 的な設立に関する条 例
国家経済貿易 委員会、対外 貿易経済合作
部 1999年6月
地方政府による外資商業企業の審査・認可を禁 止し、そのすべての権限が中央政府に集中するよ うになった。
流通開放政策 1997年11月 国内貿易部 チェーンストア推
進政策
フランチャイズ・チェー ンの経営管理に関する 試行的な条例
フランチャイズ・チェーンの規準である経営方法、
資格条件、権利義務などの規定である。
1997年5月 国務院
地方の外資商業企業 の審査・認可を即座に
禁ずる通達 流通開放政策
外資導入の4原則:
①合併する相手企業の条件:国際的に知名度の 高い会社。②中国の出資比率:51%以上。③合 併期間:30年以内。④相手の輸出入許可につい ての規定:輸入商品が自社の小売商品に限定、
総額が当年売上総額の30%以下。輸入が輸出を 超えないこと。
輸出入企業への外資参入が条件つきで認可する ようになった。①外国投資企業の前年の売上高:
50億ドル以上。②中国側の出資比率:51%以上。
1996年9月
1997年3月 国内貿易部 チェーンストア推 進政策
チェーン経営管理基準 案
チェーン経営組織の形態、規準化管理の内容、販 売方法、営業面積を決定する振興策である。
流通開放政策
対外貿易経済 合作部
中外合併対外貿易企 業の試行的な設立に 関する暫定条例