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中国の流通システムに関する研究

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Academic year: 2021

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序章 研究課題と本論文の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

1 研究課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2 理論的背景と研究の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 3 研究方法と本論文の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 3-1 本論文の研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 3-1-1 比較研究の研究方法――流通システムの国際比較・・・・・・・・・・・・・・・7 3-1-2 事例研究の研究手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 3-2 本論文の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

1 章 流通チャネル論の研究系譜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 2 伝統的なチャネル研究の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 2-1 チャネル構造選択論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 2-2 チャネル拡張組織論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 2-2-1 Ridgeway(1957)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 2-2-2 Alexander & Berg(1965)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 2-2-3 Mallen(1964)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 2-2-4 風呂(1968)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 2-3 チャネル交渉論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 3 社会的システムとしてのチャネル研究の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24

3-1 Hunt & Nevin(1974)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 3-2 Etgar(1976b、1978)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 3-3 石井(1983)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 4 政治経済アプローチ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

4-1 Stern & Reve(1980)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 4-2 Arndt(1983)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 4-3 Dwyer & Welsh(1985)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31

(2)

ii 5 垂直的協働のパラダイム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 5-1 アメリカにおける協調的関係論の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 5-1-1 信頼アプローチ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 5-1-2 取引コストアプローチ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 5-1-3 パワーバランスのアプローチ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 5-2 日本のチャネル・パートナーシップ論に関する理論の枠組み・・・・・・・・・・・40 5-2-1 矢作(1994)と米谷(1994)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 5-2-2 石原(1996a)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 5-2-3 上原(1997)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 5-2-4 尾崎(1998)の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 6 おわりに――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43

2 章 中国の流通システムの構造的特質と発展過程・・・・・・・・・・・・・・52

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 2 計画経済期における流通システムの変革(1949-1977)・・・・・・・・・・・・・・・・・53 2-1 国有商業企業による独占的地位の確立・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 2-2 政府主導型流通システムの形成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 3 経済改革開放期における流通システムの変革(1978-1991)・・・・・・・・・・・・・・・57 3-1 流通体制改革と流通構造の変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 3-2 流通システムの変革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61 4 市場経済体制期における流通システムの変革(1992-2000)・・・・・・・・・・・・・・・62 4-1 流通近代化政策の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 4-1-1 流通開放政策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 4-1-2 チェーンストア推進政策と流通情報化促進政策・・・・・・・・・・・・・・・・65 4-1-3 チェーンストアと外資小売業の急展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65 4-1-4 製造業者主導型流通システムの形成――代理販売制度の展開・・・・・・・・・・68 5 流通全面開放期における流通システムの変革(2001 年-現在)・・・・・・・・・・・・・・69 5-1 流通外資参入の加速と流通企業間競争の激化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70 5-2 チェーンストア経営の拡大と小売上位集中化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72 6 おわりに――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74

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iii

3 章 中国の大型百貨店における聯営制の形成と制度化の過程・・・・・・・80

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80 2 改革開放後の流通政策と百貨店の経営方式変革(1980 年代)・・・・・・・・・・・・・・83 2-1 改革開放後における小売段階の流通改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83 2-2 百貨店の経営方式の変革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84 2-2-1 大型百貨店における経営方式の変革の第 1 段階(1978-1983 年)・・・・・・・84 2-2-2 大型百貨店における経営方式の変革の第 2 段階(1984-1986 年)・・・・・・・・85 2-2-3 大型百貨店における経営方式の変革の第 3 段階(1987-1990 年)・・・・・・・・・87 3 百貨店の経営環境および自己革新(1990 年代前半)・・・・・・・・・・・・・・・・・・89 3-1 政府政策と市場競争の環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90 3-2 百貨店の経営方式の変革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94 4 百貨店経営資源の不足と聯営制の発展(1990 年代後半-2000 年代初頭)・・・・・・・・・95 4-1 人的資源の不足・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96 4-2 資金の不足・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97 4-3 聯営制への転換要因の分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・98 5 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99

4 章 中 国 の 百貨 店 業 界 に お け る 聯営 制 の 合 理 性 ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 06

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106 2 中国の百貨店における聯営制の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106 2-1 百貨店売場の経営形態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・107 2-2 聯営百貨店の運営方式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109 2-3 聯営リスク回避の形成メカニズム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110 2-3-1 百貨店経営リスクの回避と業務範囲の変化・・・・・・・・・・・・・・110 2-3-2 供給業者リスクの回避とコストの転嫁・・・・・・・・・・・・・・・・・・112 3 百貨店の経営に対する聯営制への擁護および批判の検討・・・・・・・・・・・・・・・・113 4 聯営制の問題点についての検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・115 4-1 収益構造からみた取引慣行の問題点―経営技術と機能の衰退による収益の低下・・・・115 4-1-1 百貨店の収益力についての検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116

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iv 4-1-2 「聯営控点」による収益についての検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・117 4-1-3 盲目的な価格競争についての分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・118 4-2 人的資源から見た取引慣行―従業員販売能力の低下・・・・・・・・・・・・・・・・・119 4-2-1 従業員忠誠度の弱体化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・119 4-2-2 顧客管理の劣化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120 4-3 供給業者との取引関係から見た取引慣行―百貨店と供給業者の関係が協調的でない場合の 問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・121 4-3-1 百貨店従業員が賄賂を受ける行為・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・121 4-3-2 供給業者の偽りの行為・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・122 4-3-3 その他不協調関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・122 4-4 社会責任から問われた取引慣行―聯営の社会的な責任の問題点・・・・・・・・・・・123 4-4-1 「中国製造」の二元流通の形成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・123 4-4-2 商品価格の上昇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・124 5 聯営制の継続性問題についての分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125 5-1 百貨店の自主経営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125 5-1-1 自主経営の失敗例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・126 5-1-2 自主経営の成功例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 5-2 聯営制の継続性についての分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129 6 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・130

5 章 大手スーパーの流通システムの変革と取引慣行・・・・・・・・・・133

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・133 2 通道費の特徴と合理性についての先行研究のレビュー―欧米のスロッティング・アローワンス との比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135 2-1 欧米のスロッティング・アローワンス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135 2-1-1 スロッティング・アローワンスの意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135 2-1-2 スロッティング・アローワンスの合理性についての検討・・・・・・・・・・・・137 2-2 中国の通道費について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・138 2-2-1 通道費の意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・138 2-2-2 通道費の合理性についての検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139

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v 3 中国の小売市場における通道費の生成背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141 3-1 外資の進出とその影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141 3-2 台湾で確立したカルフールの経営方式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・143 3-3 カルフールの中国市場への進出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・144 4 中国の大手スーパーにおける通道費問題の発生―カルフールを事例として―・・・・・・・145 4-1 通道費をめぐるカルフールと乾物メーカーとの衝突・・・・・・・・・・・・・・・・・146 4-2 カルフールの事件が示唆すること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・148 5 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・149

6 章 中国の家電流通システムの変遷過程と取引慣行・・・・・・・・・・・・154

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・154 2 中国の家電流通チャネルの変遷過程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156 2-1 家電製品の伝統的流通チャネル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156 2-2 改革開放後の家電流通チャネルの変遷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・157 2-2-1 中国家電産業の構造変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・157 2-2-2 家電メーカーによるチャネルの構築・・・・・・・・・・・・・・・・・・・159 2-3 家電量販店主導型流通チャネルの台頭・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・162 3 中国の家電量販店における市場構造と急成長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・163 3-1 中国の家電専門店チェーンの業態特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・163 3-2 家電量販店の急成長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・165 4 中国の家電量販店における取引慣行にかかわる問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・167 4-1 買掛金を延長させる方式による経営資源の獲得・・・・・・・・・・・・・・・・・・168 4-2 通道費の徴収による経営資源の獲得・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・171 4-3 大手家電メーカーの対抗措置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・173 4-4 国美による家電メーカーとの関係改善の動き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・174 5 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・175

7 章 日本の流通システムの変革とパートナーシップ型流通システムの生成・・・181

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・181 2 日本における流通システムの変革プロセス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・182

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vi 2-1 戦後復興期における流通システムの変革(1945-1955 年)・・・・・・・・・・・・・・182 2-2 高度経済成長期における流通システムの変革(1956-1972 年)・・・・・・・・・・・・183 2-3 安定経済成長期における流通システムの変革(1973-1991 年)・・・・・・・・・・・・185 2-4 バブル経済崩壊後の流通システムの変革(1992-現在)・・・・・・・・・・・・・・・186 3 日本におけるパートナーシップ型流通システムの構築・・・・・・・・・・・・・・・・・188 3-1 大丸とワールドの共同売場開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・188 3-2 イトーヨーカ堂のチームマーチャンダイジングによる共同開発・・・・・・・・・・・190 3-3 相鉄ローゼンと菱食の物流パートナーシップの構築・・・・・・・・・・・・・・・・192 3-4 ヤマダ電機による SCM への取り組みへ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・194 4 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・198

8 章 中国におけるパートナーシップ型流通システムの構築へ向けて―日本の経験

からの示唆―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・202

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・202 2 日中の流通システムの比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・204 2-1 流通システムの発展過程についての比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・204 2-2 小売業態の発展についての比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・207 2-2-1 百貨店・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・207 2-2-2 スーパーマーケット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・209 2-2-3 家電量販店・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・210 3 パートナーシップ型流通システムの中国流通市場への適合可能性・・・・・・・・・・・・212 3-1 小売業のバイイング・パワー問題と不正な取引慣行・・・・・・・・・・・・・・・・212 3-2 小売 MD 業務の依存問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・214 3-3 長い流通経路の問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・216 4 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・216

終章 総括と今後の研究課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・219

1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・219 2 本論文の総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・219 3 今後の研究課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・237

(7)

vii

インタビューリスト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・239

参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

2 4 0

【英語文献】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・240 【中国文献】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・244 【日本語文献】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・249

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序章 研究課題と本論文の構成

1 研究課題

本論文の狙いは、中国の流通市場におけて特殊な取引慣行が外部環境と市場環 境の中で生成して制度化されるプロセスを明らかにすることを通じて 、中国の流 通システムの変革プロセスおよび現状と課題を解明することである。さらに、日本 の流通近代化過程と照らし合わせながら、日本の流通システムの中国への適合可 能性について検討し、今後の中国の流通システムの方向性を探ることである。 流通システムとは「生産から消費にいたるまでの財の社会的流通の仕組み」 (田村、1986、1頁)であり、生産者や流通業者などを構成要素とする経済主体 のほか、これら経済主体が遂行する経営活動や取引関係・慣行から構成される。 しかも流通システムは元々歴史的な概念でもあり、経済の歴史的発展に伴う社会 経済的構造変遷に応じて発展・変化を遂げていく中で社会的に定着するため、そ れは政治や文化をも反映する。したがって、一国の流通システムの構造や存立形 態、発展のパターンは、それを取り巻く地理的・経済的条件や社会的・文化的風 土によって大きく異なっている。しかし、現代のグローバル化時代では、流通企 業の海外進出が進んでいるなかで、先進国の流通企業の経営ノウハウが直接的も しくは間接的に途上国や新興国に移転されることが容易となり、さらにこの過程 で追加的なイノベーションを引き起こしながら現地の小売市場を変えていく(矢 作・関根・鍾・畢、2009、111頁)。一般的に途上国や新興国の流通は、流通先進 国のあとを追う形で近代化される。 流通は一般的に近代化することによりシステムが変化していく。「流通近代 化」もしくは「流通革命1」とは、ある社会的・歴史的背景の下で、経済の持続的 な発展に伴う各業態の出現により、伝統的な中小零細な商業者で構成されていた 商業構造が変容し、消費者を起点にした新たな流通の形と役割が創出されるプロ セスである(矢作・関根・鍾・畢、2009、6頁)。日本では高度経済成長が軌道に 乗った1960年代以降、「流通革命論」が盛んに議論された。代表的著書としては 田島(1962) 、林(1962)、佐藤(1974)が挙げられる2。当時の流通革命論では、 日本の流通機構の欠陥および非近代性を克服して合理的流通システムを構築する

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2 ため、流通革命の必要性が強調された。日本の流通近代化は、概ね3つの変革期 を経て展開され、新たな小売業態もその変革に対応しながら順次登場した。第1 の変革期は、1960年代頃の高度経済成長期である。消費財分野において大量生産 体制を確立した寡占メーカーは、大量の新製品を効率よく市場に流すために、現 代的なマーケティング戦略を駆使して流通段階に介入するようになった。 一方 で、消費財の大量生産を背景に、大量販売を可能とする近代的な小売業者として スーパーが登場し、消費者に大量生産された豊富な生活必需品を低価で安定的に 提供することが可能となった。第2の変革期は、1980年代の安定経済成長期であ る。消費者の個性化や多様化のニーズに応えるため、コンビニエンス・ストアや ディスカウント・ストア等の新たな小売業態が登場した。多くの大規模小売業者 は、POS(Point Of Sales:販売時点情報管理)システムを活用した品揃えの改善 や本部集中仕入れ、物流改革を通じてチェーン・オペレーションの効率化を果た していた。小売業務の効率化は大規模小売業者の成長・上位集中化を進展させ、 大手メーカーの代わりに小売業者がチャネルのリーダーシップを発揮するように なった。第3の変革期は、バブル経済崩壊後の時期である。バブル崩壊後、価格 競争が繰り広げられる中で、低価格販売が小売企業の成長の武器となり、専門量 販店が台頭してきた。競争が激しい市場環境の中で、大手メーカーと大規模小売 業者の間では、流通の主導権を誰かが持つことではなくて、パートナーシップに 基づく協働の取組みが行われるようになった。 一方で中国では、流通近代化への大きな契機となったのは、1978 年の改革開放 政策の導入による様々な流通体制改革の実施であった。 中国の流通近代化過程は 概ね3 つの契機を経て展開されてきた。第 1 は、1978 年の改革開放政策の実施で あった。この時期の改革重点は従来の計画配給システムを廃止し、その代わりに多 種の企業形態、多様な経営方式、少段階の流通経路という開放型の流通システムを 構築した。また、政府の計画的な行為と流通主体の市場行為の並存が流通チャネル の多様化をもたらした。中国の流通システムは、政府主導の下で、主に大規模な百 貨店と零細な個人商店によって支えられた。第2 は、1992 年から、政府が小売業 の対外開放政策とチェーンストア経営の促進政策を打ち出したことである。小売 業の段階的な対外開放は、外資小売企業の中国への進出とそれに触発された内資 系小売業の発展を促し、小売業の多様化に積極的な役割を果たした。中国の大都市

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では、スーパーマーケットやコンビニエンス・ストア等の新たな業態が次々に誕生 した。また、国内企業同士の M&A(合併・買収)が急増し、地場企業のチェーン ストア化が加速し、流通近代化がより一層促進された3。第3 は、2001 年の WTO (World Trade Organization:世界貿易機関)への加盟である。高度経済成長期に入り、 多くの大規模小売業者は、内部成長、フランチャイズ方式及び積極的な M&A など 戦略的に組み合わせてチェーンストア経営を拡大した結果、大きな販売力を持つ ようになり、チャネルリーダーシップを発揮するようになった。 日本と中国の流通近代化プロセスを概観すると、日本では、市場環境の変化に適 応する革新的小売企業の登場により流通システムが変化している。これに対して 中国では、政府主導による外資の参入や、流通近代化を図るためのチェーン・オペ レーションの政策的導入により、各業態はほぼ同じ時期に出現し、発展してきた。 中国政府による小売分野への積極的な外資の導入は、(中国)国内企業にとって現 代的小売方式や新業態の導入への大きな刺激となった。このように、日本と中国で は流通システムの発展の契機は異なるものの、1990 年代以降、日本の流通企業が 大量に中国市場に進出するなかで、流通企業の経営ノウハウが直接的もしくは間 接的に中国の流通企業に移転されている。このことから、今後、中国の流通システ ムは日本における流通システムの発展と同様の過程を辿ると考えることができる。 したがって、国際比較の視点から中国の流通システムを考察することは一定の意 義がある。 もちろん、一国の流通構造問題はその国の経済的構造や歴史的発展段階によっ て異なり、先進国の流通近代化が一つの標準的なモデルとして流通新興国にすべ て当てはまるわけではない。それにもかかわらず、いずれの国の流通機構でも 目指 しているのは、近代的で合理的な流通産業の確立であり、しかもそれは、近代小売 業そのものの運動法則から必然的に帰結されるものだということである( 佐藤、 1971、264 頁)。とりわけ、新興国の中国では、急速な経済成長を背景として市場 環境が目まぐるしく変化する一方で、インフラや法制度等の未整備、取引慣行の異 質性などの問題が残されているため、流通の特殊性が存在している。他方、流通先 進国のアメリカや日本の小売企業の中国市場への参入は、中国の小売業の発展を 促し、流通近代化への歩みを加速させた。したがって、日本の経験は、今後中国に おいて近代的で合理的な流通システムを構築するにあたって参考になると考えら

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4 れる。 以上の観点から、本論文では以下 2 つの研究課題を設定する。第一は、中国固 有の取引慣行の生成・制度化のプロセスを解明した上で、中国の流通システムの特 殊性および小売業の発展特性を明らかにすることである。第二は、日本の流通シス テムの中国への適合可能性について検討し、中国の小売企業の今後の発展の方向 性を明らかにすることである。

2 理論的背景と研究の意義

近代の流通産業は、各国の固有の流通政策の下で、従来の商慣習との調整を図る ことにより発展し、経済成長による消費市場の高度化、成熟化とともに各国独自の 市場およびその市場の独特な流通システムと取引様式が形成されている 。日本で は、1960 年代後半、高度経済成長下での生産領域の近代化と消費領域の変化への 対応(森下、1974)と、従来の商業論、配給論、流通論のパラダイム転換(田村、 1986)を志向する現代商品流通の理論的枠組の構築という 2 つの局面の中で、流 通システムが注目されるようになった。田村正紀は、流通システム論について大き な関心を持ち、それを一連の著書・論文に示している4。田村(1986)は日本の流 通システムに関する研究パラダイムを 3 つの観点から整理した。1つ目は、戦前 の流通研究を代表する向井(1929)、谷口(1935)、福田(1937)の配給論に基づ いた社会経済的な商品流通の全分野の具体的な解明を目指す「古典的配給論」であ る(田村、1986、400-401 頁)。古典的配給論は社会的機能説に基づく社会的流通 過程の合理化への問題提議であったが、流通の基礎概念、流通フロー、流通の本質 的機能などについても記述し、流通における生産と消費間の懸隔への架橋を種々 な流通機能によって克服すべきという、現代的な視点にもつながる概念を提示し た5。2 つ目は、森下(1960)の研究に基づいた資本制商品の全体的流通構造の発 展法則を明らかにする「商業資本論パラダイム」である。森下の商業資本論パラダ イムは「資本制商品流通を自由競争段階と独占段階の 2 つの段階に分けて、両段 階における全体的流通構造の比較分析を発展論的に展開すること」(田村、1986、 402 頁)が基本的な理論課題である。さらに商業資本論パラダイムの特徴について は「自由競争段階および独占段階の 2 つの段階において、流通課業、流通機関と

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5 その活動、調整機構、流通構造、流通成果とそれらの相互関連がどのように展開す るのか」(田村、1986、404 頁)が理論的課題であったと述べた。3 つ目は、荒川 (1960、1978、1983)と林(1962、1964)の研究に基づいて田村が提示した「流 通論パラダイム」である。流通論パラダイムに関する議論の中心は 、流通成果とし ての流通効率の概念をどのように定義し、それをどのように計測するのかであり、 国民経済 と流 通シス テ ム全体の 効率 との関 係 を説明し た。 以上の よ うに、田村 (1986)は流通システムについては、流通構造、流通成果、流通機関、および流 通政策等の諸要素とそれぞれの関連性の中で議論した。そのなかで、田村は、流通 構造と流通成果を中心テーマとして論じ、流通構造の概念を流通システム論の主 役として位置づけた。 また、流通構造の動態のメカニズムに関しては、伝統的な個別取引を端緒とし て、その後の流通支配という段階的な発展形態に、取引コストやチャネル管理等、 企業間取引に関する研究視点を取り入れた流通チャネル6の分析が行われた。商品 の流通は、売り手と買い手との間での市場取引行為の連続がその中心を構成し、取 引の慣行や様式はそれをもとにして形成されることから、Bucklin(1966)が指摘し ているように流通チャネル理論の蓄積が流通構造の研究に最も有効な分析用具を 提供するものと考える7。また、マーケティング研究の中で企業間のインタフェー スに焦点を当ててきたのは言うまでもなくチャネルと通称される分野である(崔、 2013c、44 頁)。 日本のこれまでの流通チャネル研究の展開を振り返ると、商業学、流通論、マー ケティング論などの多くの分野で活発に論争が行われている。日本の流通チャネ ル研究は欧米のチャネル論に基づいて理論展開が行われ、そして代表される研究 の潮流は商業経済論の立場に基づくチャネル交渉論の系譜、パワー・コンフリクト 論の系譜および取引費用論の系譜などがあげられる。とりわけ、1980 年代以降、 流通チャネルの研究の流れは、従来支配的なパラダイムであったパワー・コンフリ クト論からチャネル全体の合理性・効率性を目指すチャネル・パートナーシップ論 へと転換した。現代流通論は流通経路を垂直的流通システムとして理解する8とと もにチャネル・キャプテンという概念を導入し、チャネル・キャプテンが垂直的流 通システムの管理者としてシステムの企画・運営・管理の役割を担いながらシステ ム構成員間の協調的な関係を保つことで、システムの高度化・最適化・統合化が果

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6 たされ、共同目標が達成されるとしている(江尻、1992、202 頁)。 周知の通り、一国の流通構造は、経済条件のみならず、歴史的・地理的環境や、 取引慣行、流通政策等の外部環境要因に規定され、流通システムの変化と問題もそ れぞれ異なっている。したがって、一国の流通システムを解明するには、その国に ある固有な外部環境要因を踏まえて分析することが必要である。一方、流通先進国 と新興国、特に日本と中国は、流通環境の差異があるものの、近代的で合理的な流 通システムの構築という点においては本質的に一致している。流通先進国を代表 するアメリカや日本では、独立した個別企業間における伝統的な売買取引から継 続的取引を経て、協調関係を前提としたパートナーシップ型 流通システムの構築 へと進化している。これにより流通システムの効率化が促進され、企業間取引が有 効に作用している。これらの理論観点は、アメリカや日本等の流通先進国市場を中 心に、近代流通の理論として多くの研究者によって分析され 、その後、日本の流 通・マーケティング現場でその有用性が検証されてきた。冒頭で述べたように、日 本の経験は今後、中国において近代的で合理的な流通システムを構築するにあた って参考になると考えられる。したがって、中国の流通システムの特殊性をより深 く理解した上で、流通先進国、特に日本の流通近代化の経験を学び、中国の不合理 的・非効率な流通システムの修正に何が参考になり得るかを検討することが、中国 の流通システムの今後を展望するにあたり重要である。 日本の学術界では、中国の小売市場に関して、外資系の大規模小売業の中国市場 への参入、特に日系企業の中国・アジア市場への進出に関する調査研究が多い9 その一方で、中国の小売流通に関しては、その発展経緯および成功・失敗の要因に 関する研究がほとんどであり、独特な取引慣行という視角から流通システムの特 質に着目した研究は相対的に少ない。中国の流通システムの発展過程は独自の商 慣習や流通政策、外資政策などの影響を受けながら形成されてきた。日米欧の主要 先進諸国と異なり、社会主義体制による共産党の一党支配という政治体制及び政 策の特殊性を無視できない。そのため、中国における企業間の取引関係について研 究する際は、内部環境だけではなく、政治や歴史という外部環境からの影響を踏ま えることが重要である。また、中国の流通市場では、インフラや法制度などの未整 備、取引慣行の異質性等の要因が、日系流通業の戦略展開に制約を加える場合があ る。したがって、中国の流通システムや取引慣行についての情報は、日系企業が中

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7 国市場に進出するにも有用であり、その理論的な解明と対応策の検討が、実務的に も学術的にも極めて重要な課題と考えられる。

3 研究方法と本論文の構成

3-1 本論文の研究方法 3-1-1 比較研究の研究方法――流通システムの国際比較 流通の国際比較は「比較流通」とも呼ばれ、田島・宮下によれば、「異なった国 の流通を比較することによって、流通機構、流通機関、流通制度、流通活動等にお ける国家間の異同を発見し、それらの異同がいかなる社会的・経済的環境の下で発 生するかを明らかにすること」(田島・宮下編、1985、2 頁)と定義されている。 Cundiff(1965)は、異なった流通システムの比較は海外市場の開拓またはすでに参 入した市場における発展の予測に極めて重要な価値があると して、比較流通の重 要性を強調した。田島・宮下編(1985)はさらに、比較流通を通じて他国の類似 性と異質性を明らかにするだけではなく、そのような類似性や相違性が各国の流 通生産性にどのように結びついているのかを明らかにし 、そのことを通じて今後 の流通がどのような方向に変化するのが望ましいのかを知り 、流通変化を誘導す るための政策手段を立案投入することのほうが重要であると指摘している。田村 は Bartels(1964)の分析から比較流通の課題を「一組の国家を比較対象として選択 し、それらの国の一定期間の経済成長との関連で流通システムを比較し、その間の 相違性と類似性がなぜ生じるかを明らかにすることである」(田村、1986、13 頁) と指摘している。これまで、日本と欧米諸国の流通比較研究が盛んに行われ、たく さんの研究成果が発表されてきた。近年、日本の流通業の中国市場への大量進出に 伴って、日中の流通比較研究も行われている。しかし、個別企業についての比較研 究が大半を占めており、流通システム全体像についての比較研究が少ない。国際比 較の視点から中国の流通システムの全体像を把握することにより 、中国の流通シ ステムの特殊性についてより深く理解することができる。加えて、流通システムの 国際比較を通じて、中国の流通の不合理性・非効率性を是正して近代的で合理的な 流通産業を構築するために、流通先進国である日本の流通近代化の経験がどのよ うな示唆を与えるかを検討することができる。

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8 3-1-2 事例研究の研究手法 本論文では、大量の文献や資料に基づき、事例研究の研究手法を採用する。事例 研究の際、二次データの収集と整理、そして店舗見学やインタビュー調査の手段を 併用する一次データの収集作業を補完的に行っている。インタビュー調査は、企業 の重要な意思決定層(店舗レベルの中間管理層)及び関係研究者に対して 実施し た。 まず、中国の大型百貨店については、主に先行研究の整理や、統計資料の収集な どの二次データに基づく分析に加えて、中国の百貨店の取引慣行を研究している 吉林大学の教授を訪問し意見をいただいた。 次に、総合スーパーマーケットの分析では、中国の小売市場に進出しているカル フールを研究事例としている。カルフールを取り上げる理由は、後で詳しく述べる が、中国の総合スーパーの取引慣行はカルフールによって中国市場に導入され、供 給業者との取引関係という個別的問題を越えて社会的問題にまで発展するように なったからである。中国や日本の学術界ではカルフールに関する議論が盛んに行 われているため、雑誌や新聞などのメディアには多数のデータが存在している。こ ちらの二次データを収集し、整理することに加えて、カルフールの店舗見学や商品 仕入総部のマネージャーへのインタビューを通じて一次データを収集した。 さらに、(中国)国内企業の家電量販店の国美電器と蘇寧曇商を事例として取り 上げた。中国の家電流通においては、国美電器と蘇寧曇商は家電品販売額シェアを 急激に拡大してきた最も注目される家電量販店である。家電量販店は 伝統な百貨 店に取って代わり中国の家電流通の主な販売チャネルとなっている。研究方法と して、まず、中国国家統計局の各種統計資料や先行文献の収集を通じて二次データ を入手した。次に、国美電器の店舗見学や店舗マネージャーに対するインタビュー 調査を実施した。 最後に、日本の流通システムに関して、百貨店の大丸、総合スーパーのイトーヨ ーカ堂、食品スーパーの相鉄ローゼンおよび家電量販店のヤマダ電機 を事例とし て取り上げた。これらの小売業者は1990 年代以降、取引先と積極的に協働し、パ ートナーシップを基礎とする取り組みによって大きな成果を挙げている。 (1)百貨店の事例。1990 年代において、日本の百貨店業界は厳しい市場環境の

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9 中で伸るか反るかの瀬戸際に立たされ、各百貨店は 生き残るための経営改革を模 索した。その中で大丸は、取引先との関係を重視した取り組みに改革を成功した事 例である。大丸が取引先と如何にパートナーシップ関係を構築したかを解明する ため、二次データとしての文献資料の活用に加えて、大丸ファッション専門学校の 理事長に対してインタビュー調査を実施した。 (2)総合スーパーの事例。1990 年代に入ってから、イトーヨーカ堂は情報シス テムが更新され、POS データを活用した単品管理が本格的に始まると同時に、衣 料品の分野でアパレル企業との組織横断的な プロジェクトチームによる業務改革、 つまりチームマーチャンダイジングの取り組みを通じて苦境から抜け出した。 (3)食品スーパーの事例。総合食品卸売業者の菱食と食品スーパーの相鉄ロー ゼンとの一括物流の取り組みは、製販間の物流パートナーシップ関係構築の典型 的な事例である。1990 年以降、両社は、一括物流による物流合理化から、更に菱 食による売り場作りというマーケティングに関わる支援に至るまで 、パートナー シップを発展・深化させている。 (4)家電量販店の事例。ヤマダ電機は同業他社に先駆けて早い時期から先進的 な情報システムと物流システムを導入し、それを基礎にメーカーと協働で SCM (Supply Chain Management:供給連鎖管理)商品への取り組みを実施し多くの利益 を獲得した。ヤマダ電機と取引先のパートナーシップ関係を構築するに至った経 緯を把握するため、文献資料を通じて二次データを収集するとともに、ヤマダ電機 常勤監査役に対してインタビュー調査を行った。 3-2 本論文の構成 本論文は序章と終章を除いて 8 つの章から構成されている(図 1 に、本論文の 構成を概略的に示している)。 第 1 章においては、流通チャネルに関する国内外の先駆的研究を概観し、流通 チャネル研究の現状について整理する。 続いて第 2 章においては、中国の流通システムの構造的特質と発展過程につい て考察する。具体的には、改革開放を分岐点に、中国の流通システムの発展過程を 時系列・段階別に検討する。 第3 章から第 6 章においては、中国の流通チャネルにおいて強大なバイイング・

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10 パワーを有する大規模小売業者である百貨店、総合スーパーおよび家電量販店を 取り上げ、供給業者との間における取引制度の成立過程および取引の実態に焦点 を当てて、大規模小売業者側の視点から流通チャネルのコントロールの有効性に ついて考察する。 まず、第 3 章では、中国の大型百貨店の取引慣行である聯営制に焦点を当て、 改革開放以降の小売流通政策、小売市場の競争環境と百貨店の経営活動を分析し、 聯営制の形成要因および制度化の過程を明らかにする。 次いで第 4 章では、中国の百貨店の聯営制の特徴および発展現状を分析すると ともに、取引慣行が百貨店側にもたらし得る経済合理性について検討する。 第 5 章では、大手スーパーと供給業者との取引慣行に着目し、外資系企業のカ ルフールの事例を通じてその実態を解明するとともに、中国 の大手スーパーと供 給業者との取引関係の今後の方向性を提示する。 第 6 章では、中国の家電流通システムの歴史的な変革過程を踏まえながら、近 年、成長が著しい家電量販店が、その急成長の要因を究明するとともに、急成長の 裏側で直面している課題を指摘する。具体的には、大手家電量販店の国美電器と蘇 寧曇商を事例として取り上げる。 第7 章においては、日本における流通システムの発展プロセスについて考察し、 パートナーシップ型流通システムが構築されるに至った背景や過程を明らかにし、 日本の事例を通じて示唆されるパートナーシップ型流通システムの形成条件を提 示する。 第 8 章では、第 1 章から第 7 章までの議論を踏まえながら、日中の流通システ ムの比較を通じて、パートナーシップ型流通システムの中国の流通市場への適合 可能性について検討し、中国の小売企業の今後の発展の方向性を提示する。 終章では、本論文の検討結果の全体を総括するとともに、残された研究課題につ いて言及する。

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11 終章 総括と今後の研究課題  第8章 中国におけるパートナーシップ型流通システムの構築へ向けて --日本の経験からの示唆--第6章 中国の家電流 通システムの変遷過程 と取引慣行 序章  研究課題と本論文の構成 第1章 流通チャネル論の研究系譜 第3章 中国の大型 百貨店における聯営 制の形成と制度化の 過程 第4章 中国の百貨 店業界における聯営 制の合理性 第5章 大手スーパー の流通システムの変 革と取引慣行 第2章 中国の流通システムの構造的特質と発展過程 第7章 日本の流通システムの変革とパートナーシップ型流通システムの生成 図1 【本論文の構成】 1 関根によれば、「流通近代化」と「流通革命」とはほぼ同義である。但し、1960 年 代頃、「流通革命」という用語が用いられていたが、1970 年代に入ってから「流通革 命」に代わって「流通近代化」がよく使われるようになった。(関根、2008a、1-2 頁)。 2 「流通革命」という言葉は、田島(1962)によって提唱された。そこでは、流通革 命は、大量生産と大量消費をつなぐ「流通機構の革新」と「小売の販売革命」と解釈 されている。流通機構を革新するためには、日本の流通機構の非近代性、つまり低生 産性、過多・零細性および経路多段階性を克服しなければならない。これを克服する

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12 ためには、製造業者は流通段階に直接介入し、マーケティングなどの経営指導を行う ことで流通経路の短縮化や流通費用の削減を通じて流通生産性を向上させる。これは いわば流通系列化である。さらに、日本の流通機構が近代化されても、流通経路の末 端に位置する小売業者が零細・過小のままでは意味がないと述べ、少数の大規模製造 業者と少数の大規模小売業者が問屋を排除して直結することが流通革命である と主張 する。そして小売の販売を革命するには、零細・過小の小売店を整理・統合して大規 模小売店を作らなければならないと指摘している。 一方で、林(1962)の唱える流通革命は、田島(1962)によって提案された「流通 経路の革新」と「小売の販売革命」という概念を「経路革命」と呼び、さらに「消費 革命」と「情報革命」という要素を加えている。「経路革命」は、田島(1962)の解釈 と同様の視点を持っている。消費革命とは、高度経済成長後に中間消費層が増加する とともに、消費量が増大していることである。さらに、情報革命とは、商取引だけで なく、物流および製造業者と小売業者をつなぐ情報流を含めて分析し、流通経路の短 縮化が日本の流通機構を合理化させると主張している。また、流通経路の短縮化を担 う主体は伝統的な小売業者・卸売業者や系列化を行う製造業者のどれでも可能である。 1970 年代に入ってから、佐藤(1974)は、真の流通革命は「小売店舗を大型化する ことより、むしろ小売企業を大型化する、すなわち、チェーンストア化によって大規 模小売企業を実現することによってのみ可能となるのである」(佐藤、1974、252 頁) と述べた。彼によれば、小売企業自体が近代的で合理的な、経営的で産業的な近代小 売産業にまで成長することが何よりも必要であり、チェーンストアを中心とした小売 商業が主導する流通システムなくして、真の流通革命はあり得ないと主張している。 3 中国では流通近代化の象徴であるチェーンストア経営を展開しようとするのは以下 の5 つの背景があげられる。①流通近代化の遅れが産業全体を発展させる上でのボト ルネックとなっている。②商業の発展は製造業の発展とのバランスがよく、需要と供 給のバランスの維持に寄与する。③雇用効果のみならず、価格、賃金、企業経営メカ ニズムなどの改革を促進させる役割を持っている。④相対的に小規模の投資で、技術 の進歩につながる。⑤労働集約型産業に力を入れ、多様な競争形態を導入する必要が ある(虞、1998、21 頁)。 4 田村正紀の流通システム論に関する研究は以下の著書・論文がある。田村(1964)、 田村(1965)、田村(1968)、田村(1970)、田村(1976)、田村(1982)、田村(1986)。

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13 5 田村によれば、戦後になっても、古典的配給論の主な内容はこの理論の創始者たち の手になる概論書、教科書に盛りこまれることによって影響を与え続けた。もっとも、 彼らの理論が社会的機能説(谷口)、配給職能労働説(向井)、取引企業説(福田)と して知られている通り、配給過程をどのように捉えるかに関して彼らの見解には相違 が見られる。しかし、現代研究者と古典的配給論との関連という点からみると、影響 を与え続けているのはその創始者間での理論上の相違ではない。現代研究者に影響を 与え続けているのは、これらの相違を越えて、古典的配給論が全体として持つ次のよ うな考え方である。1、流通のもっとも基礎的な概念は取引である。2、生産と消費の 間には懸隔がある。それらは人的、時間的、場所的懸隔からなる。3、この懸隔を克服 することが流通の課業であり、このために流通は種々な流通機能を果たしている。4、 流通のもっとも本質的な機能は所有権移転の機能である。しかし、これ以外にも多様 な副次的機能を考える必要がある。5、したがって、流通は生産から消費までの財の所 有権が取引を通じて次々に移動することとしてまず捉える必要がある。(田村、1986、 401 頁)。 6 流通チャネルとマーケティング・チャネルの 2 つの用語を使い分ける場合はそれぞ れの意味合いは異なる。流通チャネルは社会経済的観点による生産者から消費者まで の経路を指し、大手小売企業のプレゼンスを重んずるチャネル・パートナーシップを 強調している。それに対してマーケティング・チャネルは個別企業の経営的観点で生 産者から流通業者までの経路を指し、「流通系列化」で代表されるような大手メーカー によるチャネルリーダーシップを強調している。(崔・石井編著、2009、24 頁)。 7 「流通経路の研究はマーケティング過程の理解の基礎となるものである。それはマ ーケティングの本質的性質、つまり営利制度体間およびこれらの制度体と消費者との 間の相互行為に焦点を当てるがゆえに基礎的である。それが私企業市場の見えざる手 が働く機構を探求するがゆえに基礎的である」(Bucklin、1966、田村訳、vx 頁)。 8 江尻によれば、現在の流通論が流通経路を垂直的流通システムとして理解すべき理 由について以下の3 点を指摘している。①流通経路を組織の一形態であると理解する と、システム論に立てば組織はシステムに他ならないので、流通経路は垂直的流通シ ステムと呼ばれてよい。②生産者、卸売業者、小売業者らが互いに協調し合いながら 流通活動に参加しているという現実の紛れもない事実からみて、流通経路は垂直的流 通システムと呼ばれてよい。③シアーズ・ローバックが小売業者でありながら製造活

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14 動や卸売活動をしているという事例で明らかなように、垂直的に異なる次元の流通活 動を統合し、一元的に流通活動を企画したり管理したりしている社会的存在がいくつ も眼につくようになった。(江尻、1992、198 頁)。 9 例えばウォルマート、カルフールについての研究として以下の著書・論文が挙げら れる。葉(2003)、胡(2003)、黄(2003)、黄(2006)、馮(2007)、柯(2011)、韓 (2012)、任(2012)。また、日系のイトーヨーカ堂やイオンについての研究は以下の 著書・論文が挙げられる。矢作(2005)、矢作(2009)、李(2008)。さらに、日米欧 の欧米日小売業の参入戦略を比較する研究として平賀(2004)、向山・崔編著(2009) がある。加えて、コースジェンス(2012)は総合型小売企業のグローバル戦略の困難 性について検討している。

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1 章 流通チャネル論の研究系譜

1 はじめに

流通は生産と消費を連結する経済活動であるが、それは一定の社会的な仕組み を通して行われる。この流通の仕組みをシステム的に捉えた場合、流通システムと 呼ぶ。流通機構においては、商品を生産者から消費者に流通させるために、製造業 者、卸売業者、小売業者の流通主体は様々な機能を果たし、社会的な分業を行って いる。この製造業者から消費者に至るまでの取引で結ばれる主体間関係の連鎖は 流通チャネルと呼ばれる。チャネル概念はマーケティング研究の歴史的経緯の中 で自らが生み出してきた固有の独特かつ永続的な理論概念であるため、マーケテ ィング論の基本概念として位置付けることができる1。Shaw(1915)は、製造業者 によるチャネル管理の重要性を指摘し、マーケティング生成期におけ るチャネル 行動の実態を述べている2。Shaw は流通活動を需要創造(商品に関するアイディ アを消費者に伝達し需要を喚起すること)と物的供給(製品の位置・所有権の移動 に関する活動)という 2 つの活動に大きく分類した。さらに、製造業者は最小の 費用で最大の需要を喚起するために、流通段階数の決定が重要であること を指摘 し、それが中間業者の排除と流通段階の短縮化を通じて実現できると 主張してい る(丹下訳、2012、119-126 頁)。その後、チャネルは、本来、独立した組織と組 織との関係でありながら、命令や権限によって統制される内部組織に類似した性 格を有するため、その対立性と協調性の問題や、チャネル管理問題を中心に議論し た「チャネル構造選択論」以来、様々なパラダイムが提起されている。 本章では、これまでのチャネル研究における主要なパラダイムを「伝統的なチャ ネル研究」、「社会的システムとしてのチャネル研究」、「政治経済アプローチ」およ び「垂直的協働関係のパラダイム」という 4 つに区分し、各パラダイムの展開経 過をレビューする。

2 伝統的なチャネル研究の展開

2-1 チャネル構造選択論

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16 Duncan(1922)に始まるといわれるチャネル構造選択 論は、戦後において一時 的にチャネル研究の主流となっていた。チャネル構造選択論は、古典的なマーケテ ィング論の中心的テーマだった中間商人排除問題との関係で、チャネルの長短・広 狭・開閉の側面を強調し、商品の特性や消費者の購買習慣などを要因とする環境諸 要因とチャネル構造との間の適合関係の究明というマクロ的課題が主な中心内容 である。Duncan のチャネル構造選択論は、チャネルの長短を基準として①消費者 への直接販売、②小売業者への直接販売、③卸売業者への直接販売、の 3 形態に 大別し、この3 形態のチャネルを基本的チャネル型とした(Duncan、1922、325-339 頁)。石井(1983)は Duncan(1922)の流通チャネルの基本型を表 1-1 のよ うにまとめている。 表1-1 流通チャネルの基本型 1、消費者への直接販売 ・すべての小売業者に商品の取り扱いについて制限 することなく販売するあばい。 ・専属小売店にのみ販売するばあい。 ・製造業者が独自の販売組織を確立するばあい。 ・通信販売店または委託機関を利用するばあい。 2.小売業者への直接販売 3.卸売業者への直接販売 ・すべての卸売業者に商品の取り扱いについて制限 することなく販売するばあい。 ・地域代理店に販売するばあい。 (出所):石井(1983)、12 頁。 Duncan(1922)のチャネル構造選択論に対して、Copeland(1924)3は、製品カ テゴリー別のチャネル構造選択論を展開することを主張している。Copeland(1924) によれば、企業は利潤を拡大するため、採算の取れる製品価格設定と販売数量の増 大が必要となる。また、それを実現する方法としては、製品特性やそれに対応する 消費者購買習慣あるいは行動を基準にチャネル構造を選択すべきであると主張し ている。さらに、Copeland(1924)は消費財を最寄り品、買回品、専門品という 3 つのカテゴリーに分類し、それぞれの基準に合致するようにマーケティング政策 をとらなければならないと主張している。具体的には、(1)最寄り品販売について は、できる限り多くの販売窓口を設定し、商品露出を高める「高密度販売窓口政策

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17 (dense distribution)」、(2)買回品販売については、商圏の大きい買い回り中心に 設定した販売窓口を選択すると共に、品揃え及び在庫が大規模な小売商を選択す る「選択的販売窓口政策(selective distribution)」、(3)専門品販売については、商 標や店舗に対する消費者の愛顧動機(patronage motive)に即応しうるような販 売政策をとるべきことを指摘している(風呂、1968、199-200 頁)。風呂(1968) は Duncan(1954)によるチャネル政策類型論をチャネル構造選択論における集大 成として位置づけた。Duncan(1954)は、①開放・広範的販売政策(extensive or widespread distribution)、②選択的販売政策(selective selling or selective distribution)、 ③排他的販売政策(exclusive distribution)という 3 つのチャネル選択分類をその中 心課題として捉えた(風呂、1968、200 頁)。そして選択的販売政策と排他的販売 政策のチャネルについては、製造業者と販売業者による取引関係の限定性を認め、 その効果として、製造業者にとっての販売量、利潤増大への貢献を挙げている(風 呂、1968、201 頁)。その後、Phillips & Duncan(1960)は製造業者が選択しうる チャネル構造として、①消費者に対する最大限の製品露出を目指した「開放的チャ ネル」、②取引高、発注規模、信用、さらには製造業者への協力意図について一定 の条件を満足した小売業者を選別して利用する「選択的チャネル」、③小売業者の 選別をさらに進めると同時に、選択された小売業者に対して、特定販売地域におけ る専売権を付与し、競合他社製品の取り扱い制限を求めるなどして、取引関係の排 他的性格を強める「排他的チャネル」の 3 つを識別している。Phillips & Duncan (1960)は、「流通業者からの協力確保がチャネル選択時の重要な考慮事項になる だけでなく、一旦、特定のチャネル構造が選択された後であっても、流通業者から の協力維持が必要であると述べており、チャネル構造選択と共に流通業者からの 継続的な同調獲得を目指した取引関係管理が重要になる」(結城、2014、23 頁)と 指摘している。 第二次世界大戦前のアメリカで一時的に研究の潮流となったチャネル構造選択 論では、製造業者と流通業者との協力関係の重要性が指摘されており、製造業者が いかに流通業者を選択するかを討論の課題とし、チャネル管理を長短・広狭・開閉 の構造選択問題として捉えている。また、最適なチャネル構造は、製品の特性、消 費者の購買習慣、利用可能な流通業者の販売能力や成長可能性などの環境要因に 依存しながら変化すること、そしてチャネルの選別性もしくは排他性を強めるほ

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18 ど、流通業者からの協力度も増えることが、研究者の主な主張である4。現在でも 多くの流通・マーケティングに関する研究の中で、流通チャネル管理の問題がチャ ネル構造選択論に依拠して説明されており、チャネル構造選択論の理論化は「 流通 チャネル管理の理論として 1 つの地平を切り開いたパラダイムである」(石井、 1983、13 頁)。しかしながら、チャネル構造選択論は、製造業者の政策視点に立ち ながらも、チャネルの管理や設計などの取引関係の管理問題は、製造業者による流 通業者の選択問題に解消されてしまい、理論的に掘り下げられることはなかった5 2-2 チャネル拡張組織論 チャネル管理の問題が本格的な理論問題として取り扱われるようになったのは、 1960 年代前後における流通業者への寡占的な大規模製造業者の支配力強化という マーケティング環境の変化と、当時流行のシステムズ・アプローチの影響によって 生まれたチャネル拡張組織論においてであった。チャネル拡張組織論は「①チャネ ル管理の問題は組織内部の管理の延長線上に理解できるのではないか、②その結 果として、経営組織論あるいは経営管理論を例外はあるものの原則的には応用で きるのではないか」(石井、1983、16 頁)という考え方を根底に持っている。以下 で は 、1950 年から 1960 年にかけてチ ャ ネル拡張組 織論の 代表 的研究とし て Ridgeway(1957)、Alexander & Berg(1965)、Mallen(1964)、そして風呂(1968) の研究を検討する。

2-2-1 Ridgeway(1957)の研究6

Ridgeway(1957)は自動車、農機具および石油の業界に見られるディーラーシ ップの現状を考察し、その中に利害の共通性(a community of interest)と相互依存 性が存在することを説明し、チャネル拡張組織論としての性格を強調する最初の 論者である。Ridgeway(1957)によれば、マーケティング・チャネルはそれぞれ が異なる独立の組織体から構成された複合組織であり、製造業者が「第一次組織」 をなし、流通業者(原材料の供給業者および製品の販売業者)が「第二次組織」を なすところの1 つの拡張システム(one extended system)である(風呂、1968、163 頁)。したがって、この拡張されたシステムにおける製造業者と流通業者は、個々 の独立的な経済主体として、資源の所有、配分の意思決定がなされている点におい

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19 て単一企業組織ではなく、当該システムが有効に運営されるためには、各組織 の管 理のみならず、何らかの形でシステム全体の統合的な管理がなされなければなら ないと主張している。また、Ridgeway(1957)は流通チャネルの管理は競争的な優 位性を確立するための1つの重要な要素となっていることを示唆し、そのために 必要な流通チャネル管理の諸方策を詳しく列挙するとともに、チャネルの管理方 法は組織経営管理の拡張問題として捉えることが可能であり、経営組織論や経営 管理論を援用することが有効であると主張する(石井、1983、17 頁)。Ridgeway (1957)によれば、チャネル問題の解決は、①意思決定が製造業者および流通業 者において相互に矛盾のないようになされるべきこと、②計画は相互に関連を持 つこと、③製造業者と流通業者の間及び流通業者相互間で双方的意思疎通をすべ きこと、④成果基準の確立とそれが有効な報償・制裁メカニズムを通して実施する こと、⑤適切な変化と成長をもたらすよう製造業者と流通業者の意思決定につい て絶えず再評価すべきこと、という 5 つの命題に基づいて再構成することで、製 造業者と流通業者の間における意思決定の乖離を極小化できると考える (風呂、 1968、163-164 頁)。Ridgeway のチャネル拡張組織論に関しては、「現代の事業競 争がチャネル・システム間競争としての性格を有しているために、製造業者と流通 業者は1つのシステムとして行動することが求められる点を強調するが、このチ ャネル・システム間競争という概念自体が既にチャネル・システムの存在を前提と しているため、やはりなぜ特定の製造業者と流通業者の間に、協調的なシステムが 形成されるのかは説明できない」(結城、2014、27-28 頁)という研究の限界が指 摘されている。

2-2-2 Alexander & Berg(1965)の研究7

Alexander & Berg(1965)においては、マーケティング・チャネルが製造業者の 内部組織の理論的拡張であることを主張し、「内部組織の理論的拡張」論を提唱し た。Alexander & Berg(1965)は、チャネル構成員間の関係は単一組織における成 員相互作用の基本原理に準じて認識される。つまり、機能的な相互依存関係8によ

って結びついている製造業者と流通業者は協調と衝突の 2 側面を持ち合わせてい るが、そこでの衝突はあくまで「協調の範囲内」においてよりよい地位をめぐって 行われる衝突に過ぎない(風呂、1968、159-160 頁)と主張する。Alexander & Berg

図 1-7  Heide & John(1990)のモデルの仮説と分析結果

参照

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