第 6 章 中国の家電流通システムの変遷過程と取引慣行
3 中国の家電量販店における市場構造と急成長
3-1
中国の家電専門店チェーンの業態特徴中国では、1980 年代まで主な家電販売チャネルは百貨店が中心であったが、
1980 年代後半から伝統的な百貨店での家電製品の販売が次第に減少し始めた。
1990年代後半からは、中国の伝統的な百貨店は新規出店や既存店の改装・増床ラ ッシュなど企業規模を拡大させた結果、大都市においてオーバーストア現象を作
地方都市部家電量販店 農村部家電販売直営 店
大手家電量販店系卸売会社 家電メーカー
(A)
家電メーカー
(B)
家電メーカー
(C)
都市部家電量販店 家電量販店卸子会社
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り出してしまった。また、政府の流通開放政策の実施によって、国内の新しい小 売業態(コンビニエンス・ストア、スーパーマーケット、ショッピングセンター、
チェーンストアなど)が登場するとともに、 外国のスーパーマーケット、ハイパ ーマーケット、専門大型店など強大な実力を持つ外資企業が中国市場へ相次いで 進出したため、競争は一層激しくなった。伝統的な百貨店は厳しい状況に陥り、
販売不振や業績悪化の店舗が続出し、さらに倒産した大型百貨店さえあった12。こ のような状況の中で、多くの家電メーカーは大都市で新興の大型総合スーパー13、 電気城14や家電量販店を利用して自らの製品を販売させるようになった。その中で、
家電量販店を代表する国美や蘇寧は中国の一級、二級都市で 家電製品販売額シェ アを急激に拡大し、百貨店や系列店を凌ぐようになった。特に 2000年以降、大量 仕入れ・低価格販売を特徴とする家電量販店は全国でチェーン化を急速に推し進 め、チェーンストアの特性を生かして店舗間で商品を融通することでさらなる低 価格を実現した。このことは、日本の家電量販店が歩んできた道のりと酷似して いる。中国の家電量販店は中国語で「家電連鎖店」と呼ばれ、日本の家電量販店 と同じように、家電メーカーから大量に仕入れる事で仕入れコストを抑え、これ を大量販売するという販売戦略を採っている。しかし、中国の家電量販店は、日 本の家電量販店とは異なるいくつかの特徴を持っている。
第 1 に、家電製品の値引き方式が異なる。日本ではメーカー希望小売価格があ り、そこから 3 割 4 割を割引することで値引き感を出しているが、中国の家電量 販店ではメーカー小売価格のままで販売するのが一般的である。売場全体からみ た値引き品の割合は少ないが、引くときは、「何割引」でなく「数百元引き」の表 現で値引く。商戦期にしても、数百元値引きに加えて、鍋や食器セットなどのお まけをプレゼントして客寄せする15。
第 2 に、家電製品の取り扱いが異なる。中国の家電量販店は、基本的には日本 と同じように白物家電、AV機器などの幅広い分野の家電製品を展示・販売してい る。ただし日本の家電量販店は入口に近い 1 階で、乾電池やメディアなど消耗品 類を販売しているが、中国の家電量販店では、そういった小さな商品は扱わない16。 また、調理家電、健康器具や電球などの小物家電は一般的に大型総合スーパーな どで販売されていることが多い。
第3に、売場の経営方式が異なる。何より日本の量販店と決定的に異なる点は、
派遣店員制の取引慣行の下で、量販店自身が一切販売業務を行わない点である。
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中国の家電量販店は売場を区分して家電メーカーに貸し出し賃貸料を徴収するの が一般的である。つまり、中国の家電量販店は製品別の売場をメーカーごとに分 け、各メーカーから派遣された従業員に販売させる。家電量販店の社員は店舗管 理が主要な業務で、商品を販売するノウハウや技術を持っていない。中国の家電 量販店は、本来の意味で業態による店舗差別化が行われているとは言うことはで きない17。
ここでは、中国に進出した日系の家電量販店と国内企業の家電量販店の類似点 と相違点について簡単に述べたい18。日本の家電量販店はグローバル化があまり進 んでいない中で、ヤマダ電機は2010 年に先頭に立って独立資本で中国遼寧省の瀋 陽市に進出した。ヤマダ電機は日本市場においては、商品別の売場構成であるが、
中国市場においては、中国の家電量販店と同じようにブランド別の売場構成を採 用している。また、内資系の家電量販店と同じように、メーカーの派遣社員が販 売業務を行い、自社の社員が店舗の管理を行っている。 中国のヤマダ電機は、売 場経営方式の面では、地場の家電量販店と同じようなやり方で行われているが、
サービス面では日本のやり方で行われている。それは、日本 の家電量販店の良い サービスを中国人顧客に伝えて理解をさせ、地場企業との差別化を図るためであ る。
3-2 家電量販店の急成長
1990年代後半から、中国の家電量販店は急速に成長し、一級・二級の大都市で チェーン展開により圧倒的なシェアを占め、家電メーカーに対して優位な地位を 持つようになった。特に、2000 年以降、中国の家電量販店の上位集中化が進み、
国美、蘇寧、五星電器と永楽電器の 4 大企業が大きな成長を遂げ、家電流通チャ ネルにおいてリーダーシップを発揮するようになった。図 6-6 は 4 大家電量販店 の売上高の推移を表している。
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図6-6 中国家電量販店企業の売上高の推移(2002~2006年)
(注):縦軸の単位は億元である。
(出所):『中国連鎖経営年鑑』(2003-2007)の資料より筆者作成。
2005 年から 2008 年の 4 年間、中国の家電小売業界では大規模な M&A が相次 いだ。特に国美は、この間に永楽電器を含む 7 社の大手家電量販店を買収し、売 上高と店舗数において業界のナンバーワンとなった。国美が成長のサイクルに入 ったのは、1998年に「国美経営管理手引」が発表された後である。これには、チ ェーンストア経営のもと中央統制の徹底によって規模の利益を獲得する方法や、
職場の職務・責任などの規範が詳しく記されている。これに基づいて、国美は 1990 年代末から全国チェーン展開に着手した。国美は 2005年に黒竜江省最大規模の黒 天鵝家電、深圳の易好家商業連鎖、江蘇金太陽家電を、2006年に上海永楽電器を、
2007 年には北京大中電器を、さらに 2008 年には三聯商社をそれぞれ買収し、全 社総店舗は1,000店舗以上に達した19。一方、蘇寧は創業以来家電製品の卸売を主 要事業としていたが、1990 年代末からエアコンを手始めに小売販売に乗り出し、
2000年になると小売の販売額比率が 60%に達して卸売を上回るようになり、家電 小売として全国へと店舗を展開していった。2004 年、深圳証券取引所に上場し、
小売の売上高ランキングは第4位に上昇した。2007年、蘇寧は年間売上高855億 元で国美を追撃し、小売ランキングでも第 3 位に上昇した20。2008 年以降、家電 量販店業界は国美と蘇寧の2強時代に入り、中国の大都市の中心地や繁華街では、
ほぼ例外なく国美と蘇寧の双方が出店している。
最近、中国の小売業界においては、家電量販店の優位が続いている。2014年の 0
100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000
2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
国美電器 蘇寧電器 五星電器 永楽電器
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チェーン小売業売上高の上位10社をまとめた表6-1によれば、トップ2社は家電 量販店の国美と蘇寧、3位と4位は大型スーパーの華潤万家と康成投資である。ま た、売上総額と店舗数からみても、国美と蘇寧の差は極めて小さい。国美は2002 年の64店から2014 年には1,698店に増加し、12年間で約 26倍も増えた。一方 で、蘇寧は2002年の134店から2014年には1,696店へ増加した。国美の年間売 上高も2002年の109億元から2014年の 1,435億元へと大幅に伸び、蘇寧の年間 売上高も2002年の 61億元から2014年の 1,428億元に大幅に増えた21。
表6-1 中国の小売チェーンストア上位企業の売上高と店舗数(2014 年)
順番 企業名 売上総額(億元) 業態 店舗数(店)
1 国美電器有限公司 1,435 家電量販店 1,698
2 蘇寧曇商股份有限公司 1,428 家電量販店 1,696
3 華潤万家有限公司 1,040 総合スーパー 4,127
4 康成投資(中国)有限公司 857 スーパー 304
5 ウォルマート(中国) 724 スーパー 411
6 山東省商業集団有限公司 639 百貨店等 638
7 聯華超市股份有限公司 618 スーパー 4,325
8 重慶商社(集団)有限公司 615 百貨店等 335
9 上海百聯集団股份有限公司 599 百貨店等 4,400
10 百勝餐飲集団中国事業部 507 スーパー 6,600
(出所):中国連鎖経営協会『2014年中国連鎖百強』、2015年版より筆者作成。