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中国の大手スーパーにおける通道費問題の発生

ドキュメント内 中国の流通システムに関する研究 (ページ 152-159)

第 5 章 大手スーパーの流通システムの変革と取引慣行

4 中国の大手スーパーにおける通道費問題の発生

――カルフールを事例として――

一般的に、取引慣行とは、長年の取引の積み重ねの中で、業界関係者に共通の

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規範とし て認 識され 広 く浸透し てい る取引 様 式を指し てい る。中 国 の通道費は 1990年代半ば頃、カルフールを経由して中国の市場に導入され、政府が流通近代 化を促進する中で短時間のうちに普及した。カルフールは販売依存度を利用して、

中小メーカーからより多くの費用を徴収する戦略をとっている。実態としてはカ ルフールの仕入れ担当者が供給業者に対して強硬な費用引き上げ要請を行うケー スが目立つ19。カルフールからの受注量が増加しても、それによる追加利益よりも 通道費の増加分の負担がはるかに大きくなるため、結果として供給業者は損失を 被ることになるケースも多い20。しかし、2003 年まで、通道費は「先進国および 市場経済に存在する一般的現象であり、その導入は国際的な小売業 の経営方式に 従うものである」とみなされ、政府の関係部門、中小供給業者および小売業者に 容認されたため、大きな問題にならなかった。しかしながら、2003年に上海の乾 物メーカーがカルフールの多額の費用徴収に耐えられず対抗する動きをとったこ とがきっかけとなり、通道費が社会問題として全国に広く認知されるようになっ た。

4-1 通道費をめぐるカルフールと乾物メーカーとの衝突

この事件は、2003年4月、中国の乾物を生産するメーカーの連合会である上海 乾物協会(上海炒貨行業)が、多額の通道費の徴収に耐えられず、カルフールに 対して取引方式の変更を要求したことに端を発する。乾物協会とカルフールとの 摩擦の焦点は、取引における不平等さ、費用徴収の不合理さと不透明さ、支払い サイトの長さであった。乾物協会側は、カルフールが徴収した通道費が不合理な ものであると主張したのに対し、カルフールは通道費の徴収は国際取引慣習に準 ずるものであると主張した。6月13日、カルフールと上海乾物協会との交渉が行 われたが、合意に達さず、一部の乾物メーカーはカルフールへの商品供給を中止 した。上海乾物協会はカルフールに支払った通道費の明細をマスコミに暴露した

(表5-3)。6月16日、乾物メーカー協会はカルフールに対して費用徴収の削減を

要求したが、またも合意に達しなかった。その後、上海乾物協会は最大限の譲歩 をしてカルフールと交渉しようとしたが、カルフールに拒否され、上海乾物協会 のすべての会員メーカーによるカルフールへの商品供給を中止がなされた。6 月 18 日、百貨店協会、冷凍食品協会、家電協会などを含む 10 協会は上海乾物協会

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を支持する声明を発表した。7月9日、中国造紙協会及び生活用紙専業委員会も上 海乾物協会の動きを支持した。この事件はマスコミによって大いに取り上げられ、

通道費問題が初めて公にされることになった。

表5-3 上海乾物協会の公表したカルフールの通道費明細

費用名目 金額(人民元)

フランスの店舗に対する祝賀行事費 10万元/年 中国の店舗に対する祝賀行事費 30万元/年 新店舗オープン支援料 1~2万元 既存店舗のリフォーム費 1~2万元

DM手数料 2340元/店(一回の費用)

エンド陳列費 2000元/店(一回の費用)

新製品の陳列手数料 1000元/店(一回の費用)

供給業者側販促人員管理費 2000元/人(一ヶ月)

ステージ陳列費 3~10万元/店

商品購入割引 売上総額の8%

サービス費 売上総額の1.5~2%

諮問費 売上総額の1%

商品配達の遅れに対する補償手数料 1日当たり配達商品の価格の3‰

損失費 保管不全のため生じた商品損失を供給業者が賠償

無条件返品 売上総額の3~5%

税金の差に対する補償手数料 売上総額の5~6%

最低価格差額

ほかの小売商がカルフールより低い価格で商品を販売 すると発見したら、差額を弁償した上、一定額の罰金 の支払いを課す。

(注1):当時、中国に進出したカルフールの総店舗数は34店舗であった。

(注2):表で列挙したDM手数料、エンド陳列費及び新製品の陳列手数料は一回の費 用である。一般的に、1年間で10回程度徴収される。

(出所):『新聞晩報』、2003年6月18日付。

上海の工商部門はカルフールによる費用徴収問題に対して調査を開始し、苛烈 な費用徴収の問題に対処しようとしたが、政府の行政部門による対策は 十分なも

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のではなかった。その後、カルフールと乾物協会は数回の交渉を行い、同年 7 月 22日、カルフールは上海の乾物協会に所属するすべてのメーカーに対して、新た な費用徴収を課さないことに加えて、論争がある通道費に対して適切な調整を行 うことを表明した21。双方の合意に達したことで、通道費をめぐる一連の騒動はよ うやく収まり、取引が再開された。このように、カルフールの通道費をめぐる問 題は供給業者と小売業者の間の一取引関係の問題から社会的問題にまで発展する ようになった。

4-2 カルフールの事件が示唆すること

カルフールの事例は中国の通道費に関するいくつかの問題点を示唆している。

第 1 に、通道費の支払い基準が不明確であり、なおかつ、通道費が様々な目的 のために使われることから、その体系が複雑であることである。たとえば、カル フールが徴収した損失費は明確に表示されて いない。中国の通道費は基本的に事 前徴収と事後差引の形がある。事前徴収の費用は両者の契約によるものが基本で あるが、費用の事後差引において、契約外で供給業者の売り上げ代金から恣意的 に費用を差し引くことが頻発している。また、契約外での様々な名目をつけて費 用が徴収されることも多い。欧米の小売業者は経営コストや経営リスクを供給業 者と共同で負担するためにスロッティング・アローワンスを徴収したため、その 目的や方法が明確に示されている。対照的に、中国の通道費は基準や内容が不透 明であるばかりでなく、使用の目的についても曖昧で不合理 なものが多く存在し ている。実際、カルフールが徴収した費用の中には、フランスの店舗に対する祝 賀行事費のように中国の供給業者にとっては無関係な名目もあった。

第 2 に、通道費の徴収は、小売業者にとって経済効果の実現のためではなく、

一種の価格戦略の実施に過ぎないことである。小売業者は、いったん市場地位を 確立すると、供給業者との交渉において通道費を通じた一連の価格戦略を実施す ることができる。例えば、小売業者は供給業者に対して市場の競争価格を要求し、

さらに通道費を徴収して利益を獲得する。この場合、小売業者は これらを資源と して消費者により低い価格で商品を提供することが可能である。

第 3 に、通道費の徴収が、大規模小売業による競争業者の排除行為であると考 えられることである。カルフールは中国市場に参入した初期からあらゆる方法で

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多くの都市に出店し、出店スピードを重視していた。2000年末にはカルフールは 中国全土に27の店舗を展開し、巨大な売り場面積と総合的品揃えを武器として供 給業者に対して強い交渉力を形成した。カルフールはこの交渉力を行使して、供 給業者に通道費を要求して経営コストを転嫁するようになった。中国のカルフー ルはすべての小売業者より低い価格で消費者に商品を提供することを保証してお り、当時、多くの商品が仕入れ価格のままで消費者に提供されていたことが多く の供給業者によって指摘されている。しかし、優勢な市場支配力を持っていない 内資系小売業者にとって、供給業者に高額の通道費を要求することは難しく、供 給業者からの仕入れ価格に一定のマージンを上乗せして小売価格を設定して消費 者に販売しなければならない。このように見れば、カルフールの通道費の徴収に は、経営コストを供給業者に転嫁するとともに通道費の徴収を通じて利益を獲得 することで、競争相手を排除する側面が内在している。カルフールは自己の取引 上の地位が供給業者に対して優越していることを利用して、国際上の商習慣に照 らして不当に供給業者に対して多額の通道費を要求しており、このような行為は 正に優越的地位の濫用に該当する。

5 おわりに

中国の改革開放が幕を開けて以来、外国小売業が数多く中国市場に進出した。

特に、1990 年代中期から外資参入は加速し、アメリカのウォルマート、フランス のカルフール、日本のイトーヨーカ堂、ドイツのメトロといった世界的な巨大小 売業者が中国市場に進出しており、外資小売業の企業規模、管理技術、顧客サー ビスなどの経営管理の経験は中国企業の手本となっている。1996年から、カルフ ールは中国全土へ急速に店舗を展開し、大きな成功を収めた。台湾の小売市場で 確立したカルフールの低経営コストで高収益を獲得する拡張方式は 、中国市場で も成功の武器となり、多くの小売業者がカルフールの成功に刺激され、その経営 方式を模倣するようになった。とりわけ、通道費の徴収は中国の多くの大手スー パーに模倣され、一つの取引慣行として広く普及している。

1990年代後半から、中国のスーパー業界では、通道費は特殊な市場環境の中で 導入され、広く普及した。それにはいくつかの理由が挙げられる。第 1に、当初、

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