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中国の家電流通チャネルの変遷過程

ドキュメント内 中国の流通システムに関する研究 (ページ 163-170)

第 6 章 中国の家電流通システムの変遷過程と取引慣行

2 中国の家電流通チャネルの変遷過程

2-1 家電製品の伝統的流通チャネル

中国では、1978年に改革開放が行われる直前まで、産業ごとの流通システムが 形成されておらず、計画経済を遂行するための統一購入・統一販売の計画配給シ ステムであった。一般消費財は政府統制の下で、中央の1級卸売公司、省・市の2 級卸売公司、そして県の 3 級卸売公司の 3 段階の国有卸売公司を経由して、百貨 店などの国有小売業者へと流通した。国有の卸売公司は供給販売区域、取引先お よび割引率・マークアップ率を一定とする「三固定方式」を採用した。 家電製品 の流通システムにおいても、この「三固定方式」の計画配給システムが形成され た5。1957年、商業部により主要大都市(北京、天津、上海、広州など)に家電販 売を担当する 1 級卸である国営の「五金交電公司」が設置された。そして五金交 電公司(1級卸)はメーカーから家電製品を仕入れ、2級卸と一部大型小売業(主 に国有百貨店)に供給する。2級卸は省・直轄市に置かれ、メーカーや 1級卸から 家電製品を仕入れ、都市小売業(主に国有百貨店)や3級卸に供給する。そして 3 級卸は市・県に置かれ、メーカーや 2 級卸から家電製品を仕入れ、現地の小売商

(主に供銷合作社)に供給する(図 6-1 を参照)。そして家電製品の購入切符は職 場で個人消費者に配布され、これをもって、小売店に行けば家電製品が買えるよ うな流通システムであった。

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3級卸売(市・県レベル)

都市小売業

(主に国有百貨店)

現地小売業

(供銷合作社)

家電製造業者

(国家のコントロール下) 消費者

1級卸売(中央レベル)

国営の五金交電公司

2級卸売(省・市レベル)

大型小売業

(主に国有百貨店)

図6-1 改革開放以前の家電流通チャネル

(出所):矢作・関根・鍾・畢(2009)、261頁を加筆・修正。

改革開放以前の家電流通チャネルにおいては、製造業と流通業は完全に国家の コントロール下に置かれるため、家電製品の流通は 消費者のニーズと乖離し、市 場需要に応じることができない。また、三固定方式の実施は複雑な多段階の流通 システムを形成するため、流通の非効率性をもたらした。

2-2 改革開放後の家電流通チャネルの変遷

1978 年、政府は経済体制の改革を決定すると同時に対外開放政策を計画した。

政府の流通政策の下で、中国の家電業界は著しい発展を遂げ、家電流通チャネル も変化し続けている。1980 年代の主な家電販売チャネルは百貨店であったが、

1990年代、百貨店での販売が次第に減少し、家電専門店や家電小売店での販売が 増加してきた。そして2000 年代には、国美と蘇寧をはじめとする家電量販店での 販売が急増し、一級・二級都市で主要な販売チャネルとなってきた。以下では、

改革開放後の1978年から現在までの間、中国政府の流通開放政策の下で、家電流 通システムがどのように変化してきたのか、そしてこうしたチャネル変化の中で どのような取引制度が形成されてきたのかについて述べる。

2-2-1 中国家電産業の構造変化

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1978年、改革開放政策の実行が決まって以降、実験的・漸進的に改革が進めら れたため、各産業では経営改革や技術革新などの実行まで時間がかかった。1980 年代初頭、家電流通は従来の計画配給システムとほぼ変わらないが、改革開放後 は商業部管轄の 1 級卸売に電子工業部傘下の 1 級卸売が加わり、1 級卸売段階の 規模が拡大された。これまで独自の販売網を有していなかった家電製造業者は単 品生産をしたため、独自の流通チャネルの形成が難しかった。それゆえに、家電 製造業者は直接消費地の卸売業者や小売業者、ないしは消費者への販売チャネル を模索し始めた。1980 年代から政府の流通改革が本格的に実行の段階へと移行し 始めた。中国政府による小売業の制度改革は計画経済期の「政企不分」(政治と企 業の区別がない)の問題、とりわけ国有企業の従業員の労働意欲と経営者の責任 感の欠如という企業経営の低効率問題を改善することに重点が置かれ、「放権譲利」

「利改税」および「承包経営責任制」の流通政策が導入された6。これらの制度は 国有大・中型企業を対象に実施された。このように、国有大・中型企業への経営 自主権の付与、配給制度と価格統制の逐次的廃止、経営請負制度の導入が段階的 に実施された結果、企業は活力を与えられた。一方で、消費者の所得水準が上昇 し、家電製品に対する需要が拡大した結果、供給不足の状態に陥った。この供給 不足現象を解消するために、政府の政策により民営の中小零細な卸売業者の参入 も認められるようになるとともに、家電流通の卸売段階では 3 段階の卸売機関が 指定された小売商のほか、指定されていない小売商へも販売できるようになった。

それによって、取引先、供給販売地域、利益率が拡大し、計画経済時代の「三 固 定方式」は次第に崩壊した。家電流通の小売段階では、1980 年代半ば頃、「配給 切符制」が廃止され7、家電製品の購入が自由になった。この時期、家電市場にお いては数多くの中小零細の流通業者が参入し、闇ブローカーの横行をもたらした。

闇ブローカーは不正な手段で供給過剰な地域の家電製品を品不足の地域に高価格 で転売し、家電市場の一時的な混乱をもたらした。政府は闇取引行為を取り締ま るため、1989年、国家工商行政管理局と国家計画委員会による「カラーテレビ専 営許可証の交付に関する通知」が公布された。つまり、政府の規定に適す る経営 資格を満たす小売業者のみに「専営許可証」が与えられ、許可された小売業者の みがカラーテレビを販売できるようになった8

一方で、家電の生産段階では、中国政府は家電産業の発展を促すため 6 つの優 遇政策9を実施するとともに、外資企業との合併、提携を通じて技術が導入された

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ことで主要な家電製品の生産台数規模が拡大した(丸川、2004)。中国政府の家電 産業に対 する 支援政 策 は数多く の国 内家電 製 造業者の 出現 をもた ら した。特に 1980年代半ば頃から、非国有経済の発展が認められたため、民営企業や外資企業 などの様々な非国有家電製造業者も出現した。その結果、家電製品は供給不足か ら次第に供給過剰の状態に移行した。さらに中国企業は香港企業を中心とした外 資企業との合併、提携を通じて技術を習得することでさらなる成長を遂げた。中 国企業の成長により、特に耐久消費財市場において生産過剰現象がさらに顕著に なった。家電製造業者の生産力は大きく向上したが、需要に対応する販売ができ ないため、大量な在庫を抱えてしまった。

政府は家電製品の供給過剰問題に対して 1980年代から90 年代にかけて一連の 生産制限政策を実施し、一定の成果を挙げた。家電製造業者の数は減少し、一時 は約200社もあった家電製造業者が1990年代末になると約 20社に集約されるよ うになった(関根、2009、175 頁)。また、多くの国有や非国有の家電製造業者は

M&Aを通じて規模を拡大した。家電製造業者のハイアール、康佳、TCL などの一

部企業は生産ラインを拡大し年間売上高が100億元を超えるようになった10

2-2-2 家電メーカーによるチャネルの構築

(1)代理店販売制度の確立

日本に比べて中国の国土はかなり広く、地域によって風土や社会習慣などが異 なり、その地域に対応できる販売活動が求めるため、多くの家電製造業者は代理 店販売制度を採用した(朱・董、2008、57頁)。そして1990 年代頃、大規模生産 体制を確立した主要な家電製造業者は、地域ごとに代理店を設置するようになっ た。中国の家電代理店は代理商と呼ばれ、国有代理商と非国有代理商があり、一 般的に「地域多家代理商制」と「地域総代理商制」の販売システムに分けられる。

国有代理商と非国有代理商は原則として自由競争であるが、国有代理商のほう が 行政権利を行使して製造業者から強制的に仕入れ、下請けに買わせたりするため、

大きなパワーを持っている。

「地域多家代理商制」の販売システムは、家電製造業者がある市場範囲におい て、複数の卸売商を選択し、自社選択の販売を代行させる多種所有形態が並存す る流通システムである。地域多家代理商制は一般的に全国の市場を省級ごとに多 数の地域に、そして各省級市場をいくつかの地域に分けて、省級の大規模家電小

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売を除き、地域ごとに2つあるいは2つ以上の卸売商を設置する(図6-2を参照)。

この販売システムは販売ネットワークの拡大や販売政策の貫徹などのメリットを 製造業者にもたらすものであり、1990 年代初期、「新飛」「容声」「ハイセンス」

などの数多くの大手家電製造業者によって採用された(韓、2009a、125 頁)。一 方で、価格独占が不可能であるため、市場価格の混乱、ブランドイメージの低下 や卸売商との関係の悪化などのデメリットも生じていた。

家電メーカー

一級市場大手 小売業

1級卸売:A 区

一級市場 部分小売

二級市場 大手小売

二級市 場卸売

二級市場 卸売商A2 地域(省都)

販売代理店

一級市場 部分小売 区域(2つま

た2つ以上)

1級卸売:B区

二級市場 大手小売

二級市場 卸売商B1

二級市場 卸売業B2

二級 市場 小売 業者

三級 市場 小売 業者

二級 市場 小売 業者

三級 市場 小売 業者

二級 市場 小売 業者

三級 市場 小売 業者

二級 市場 小売 業者

三級 市場 小売 業者

図6-2 地域多家代理商制の家電流通チャネル

(出所):朱・董(2008)、57頁をもとに筆者作成。

一方、「地域総代理商制」の販売システムでは、家電製造業者が代理商の管轄す る一級市場に(一般的に省級ごとに地域を分ける)独立の代理商(1級卸売商)を 設置し、当該地域の大規模小売業を除き、すべての卸売業者と小売業者がこの独 立代理商から家電商品を仕入れしなければならない(図6-3を参照)。このシステム は一級・二級都市における卸売段階の同一ブランドの価格競争を回避することが

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