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届出規定・審査手続

ドキュメント内 ―日本法との比較法的研究― (ページ 156-164)

第五章 企業結合規制の手続

第一節 事前届出制度・届出前相談制度

2 届出規定・審査手続

(1)「国務院による事業者結合の届出基準に関する規定」2008 年 8 月 3 日施行 中国における企業結合審査の届出基準の規定は国務院に委任しており、一定の基準に 達する企業結合について事前届出制を導入している(21 条)。これを受け、国務院法制 弁公室は 2008 年 3 月 27 日に「企業結合届出基準に関する国務院規定」草案を公表し、

意見募集(2008 年 4 月 12 日期限)を行った366。同草案は、結合事業者の全世界売上高 と中国域外の売上高に基づく 2 つの基準と結合により結合参加事業者の中国国内関連 市場における市場シェアが 25%を超える場合の合計 3 つの基準を明らかにすると同時 に(第 3 条)、支配権の定義(第 2 条第 2 項)、届出人、届出文書および事前相談を含む 届出手続(第 8~10 条)、文書資料の補充(第 11 条)、秘密保持(第 13 条)等に関する 規定も置いていた367

くは持株の比率が50パーセント未満であっても、その出資額もしくは持株によって享有する議 決権が、取締役会、株主総会の決議に重大な影響を与えることができる株主」を指す。そして、

「決定的影響」というのは、事業者が積極的行為又は消極的行為を採って、他の事業者を支配す ること、たとえば、前者は事業者が他の事業者の経営に対し直接支配すること、後者は事業者が 他の事業者の経営活動の重要事項に否決権を行使するなどが考えられる。王晓晔『中華人民共和 国反垄断法詳解』(知識産権出版社・2008年)168頁。

365 寧宣鳳=劉新宇「最近の申告実務からみた中国独占禁止法における「経営者集中」[上]」国 際商事法務38巻8号(2010年)1109頁。

366 国務院法制弁公室就≪国務院関於経営者集中申報的規定(徴求意見稿)≫公開徴求意見的通 知(2008年3月27日)。

367 野村高志「中国独占禁止法下のM&A審査~公表されたガイドライン(草案)の概要~」国 際商事法務36巻7号(2008年)900頁。

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2008 年 8 月 3 日、国務院は「企業結合届出基準に関する国務院規定」を公布した368。 同規定は、(1)その集中に参加するすべての事業者の前会計年度における全世界での 売上高合計が 100 億元を超え、かつ少なくとも二事業者の前会計年度における中国国内 での売上高が 4 億元を超える場合、または、(2)集中に参加するすべての事業者の前 会計年度における中国域内売上高合計が 20 億元を超え、かつ少なくとも二事業者の中 国国内売上が 4 億元を超える場合の2基準のみとして(第 3 条)、上記の基準に達しな い場合でも、収集した事実および証拠が、当該集中が競争を排除し、または制限する効 果をもたらし、またはそのおそれがあることを示す場合、商務部は調査を開始しなけれ ばならないと規定した(第 4 条)。これにより草案よりも売上高の基準が若干引き上げ られると同時に369、シェア 25%基準が削除された。さらに、届出基準以外の届出手続に 関する規定はすべて削除された370

(2)「金融業事業者結合の届出に関する売上高計算弁法」2009 年 8 月 15 日施行 業界、分野ごとに届出基準を定めることは、それ自体困難であるばかりか、かえって 基準を複雑化することになりかねず、経営者、独占禁止法執行機関の双方にとって把握、

運用することが困難となる。それゆえ、「国務院による事業者結合の届出基準に関する 規定」に定める売上高の基準は、あらゆる業界において一律に適用するのが原則とされ ている371

しかし、銀行、保険、証券、先物等の業界・分野については、その特殊な状況に鑑み て、「金融業事業者結合の届出に関する売上高計算弁法」(商務部、中国人民銀行、中国 銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、中国保険監督管理委員会 2009 年 7 月 15 日共同公布)が、銀行業金融機関、証券会社、先物会社、ファンド管理会社、保 険会社などの金融業経営者の売上高計算に関する特別規定を設けている。

「金融業事業者結合の届出に関する売上高計算弁法」によると、銀行業金融機構372の 売上高の要素は以下の項目を含む373。①利息による純収入、②手数料及びコミッション による純収入、③投資収益、④公正価額変動収益、⑤為替収益、⑥その他の業務収入。

証券会社の売上高の要素は以下の項目を含む 。①手数料及びコミッションによる純 収入(ブローカー業務、資産管理業務、引受及び推薦業務並びに財務顧問業務等を含む)、

②利息による純収入、③投資収益、④為替収益、⑤その他の業務収入。

368 2008年8月3日公布中華人民共和国国務院令第529号。

369 草案では、100億元、20億元および4億元がそれぞれ90億元、17億元および3億元とされ ていた。国務院関於経営者集中申報的規定(徴求意見稿)第3条第1号および第2号参照。

370 川島・前掲注260、790頁。

371「国務院による事業者結合の届出基準に関する規定」3 条。

372 銀行業金融機構は、商業銀行、都市信用合作社、農村信用合作社等公衆の預金を吸収する金 融機構及び政策性銀行を含む(「金融業事業者結合の届出に関する売上高計算弁法」2 条 2 項)。

373「金融業事業者結合の届出に関する売上高計算弁法」3条。

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先物会社の売上高の要素は、以下の項目を含む374。①手数料及びコミッションによる 純収入。銀行預金利息による純収入。

ファンド会社の売上高の要素は、以下の項目を含む375。①管理費収入、②手数料収入。

上記事業者結合の届出に関する売上高の計算376は、売上高=(売上高要素の累加-営 業税及び付加)x10%。保険会社結合の届出に関する売上高の計算377は、売上高=(保 険料収入-営業税及び付加)x10%、そのうち、保険料収入=原保険契約の保険料収入+

受再保険料‐出再保険料。

(3)「事業者結合の届出に関する指導意見」2009 年 1 月 5 日施行

企業結合届出に関する指導意見は、事前相談の申請方法、届出人、届出文書の提出、

文書・資料が不完備である場合の補充等の一連の届出手続の詳細を定めている。

その内、届出の前に、事業者が事業結合の届出に関する具体的な問題について、独占 禁止局と相談する必要がある場合、①事業者は、事前に独占禁止局に対して書面による 相談届出を行い、かつ、相談時間を予約しなければならない、②書面申請は、申請人、

申請事項、取引の概況、相談予定の問題及び連絡先等の情報を含まなければならない、

③事業者は、独占禁止局に対して相談を行う予定の結合に関する取引に関する必要な文 書、資料を提出しなければならないと規定し(1 条)、事業者の合併による結合は、合 併に参与するすべての事業者が届出し、その他の方法による事業者結合は、支配権を取 得し、又は決定的な影響を及ぼす事業者が届け出て、その他の事業者がこれに協力する

(2 条)と規定した。

(4)「事業者結合届出文書書類に関する指導意見」2009 年 1 月 5 日施行

事業者の届出の便宜を図るため、「中華人民共和国独占禁止法」第 23 条に基づき、届 出文書書類について、商務部は「事業者結合届出文書書類に関する指導意見」を公表し た。届出者は届出書フォーム(添付)に従い、届出文書書類を作成することができる。

①届出書には、結合に参加する事業者の名所、住所、経営範囲、結合の性質、結合の 背景、結合実行予定日、結合が影響を与える市場、結合の商業的考慮、経済的合理性及 び結合が満たす届出基準を明記しなければならない(1 条)。

②結合に参与する各当事者の基本状況等(2 条)

③結合に参与する各当事者と関連関係のある企業及び自然人のリストならびに概要 等(3 条)

④結合取引の概要(4 条)

374「金融業事業者結合の届出に関する売上高計算弁法」5 条。

375「金融業事業者結合の届出に関する売上高計算弁法」6 条。

376「金融業事業者結合の届出に関する売上高計算弁法」7 条。

377「金融業事業者結合の届出に関する売上高計算弁法」8 条。

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⑤結合の関連市場の競争状況に対する影響の説明(5 条)

⑥市場参入分析(6 条)

⑦関連市場における事業者の水平的又は垂直的な提携協議状況378(7 条)

⑧結合の市場構造、業界の発展、競争者、川上・川下事業者、消費者、技術進歩、経 済発展及び公共利益に対する影響(8 条)

⑨結合により生じる効率性及び関連する裏づけ文章379(9 条)

⑩結合に参与する各当事者の関連市場以外のその他の市場における規模及び競争能 力に関する状況(10 条)

⑪結合協議(11 条)

⑫結合に参与する各当事者の前会計年度の監査済財務報告書(12 条)

⑬結合に参加する各当事者が内部又は外部において作成した結合の評価に役立つ分 析及び報告文書等380(13 条)

⑭仮に結合が禁止された場合の、事業者及び関連市場への影響(14 条)

⑮関連市場の業界協会の情報(15 条)

⑯関連する方面の当該結合に対する意見381(16 条)

⑰当該結合に関するその他の司法管轄区における届出審査状況(17 条)

⑱その他主管機関に説明する必要のある事情382(18 条)

⑲結合に参与する各当事者又は(及び)その授権代理人が署名した届出文書資料の真 実性と(又はソースの正確性)についての声明(19 条)

(5)「事業者結合届出弁法」2010 年 1 月 1 日施行

事業者の結合の届出及び独占禁止執行機構の届出受理を規範化するため、「中華人民 共和国独占禁止法」及び「国務院の事業者結合届出基準に関する規定」に基づき、商務 部により「事業者結合届出弁法」を公布した。

事業者結合届出弁法は、商務部は、事業者結合の独占禁止審査の法執行機構であり、

事業者結合届出の受理及び審査についての具体的な業務責任を負うと(2 条)し、事業 者結合の概念(3 条)、売上高(4 条)、届出前相談(8 条)、届出義務者(9 条)、届出文 書(10 条)等の一連の届出手続の詳細を定めている。

378 例えば、研究開発、特許使用権の譲渡、共同生産、代理販売、長期供給及び情報交換等に関 する協議の有無。可能性がある場合、上記協議のさらなる内容を提出しなければならない。

379 効率性はどのように実現できるか、実現時間、量化放湿、消費者が利益を受ける程度、結合 を通じない当該効率性の実現の可否などの状況を分析しなければならない。

380 例えば結合取引のフィージビリティスタディ、デューディリシエンス調査報告書、業界の発 展研究報告、結合計画報告及び取引後の発展予測報告等。

381 例えば、地方西部及び主管部門の意見、社会各業界の当該結合に対する反応及び社会的影響 の予測。

382 例えば、結合が破産企業、国家の安全、産業政策、国有資産、その他の部門の職能、馳名商 標などの問題に関連する場合、以上の問題について特別な説明を行わなければならない。

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