第五章 企業結合規制の手続
第二節 問題解消措置
二 中国における問題解消措置
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係にある市場における競争を活性化し、川下市場からの価格低下圧力や洗練された買手 の存在・成長を促進ないし維持することを通じて協調行動による競争を実質的に制限す る効果を抑制することもある403。
Ⅲ、市場支配力の確約
問題解消措置は、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるという 問題が生じると考えられた場合に、措置をとらせることで、当該問題を解消するもので ある。企業結合が行われ、競争が活発でなくなることによって、市場支配力が形成・維 持・強化されることになりはするものの、形成等された市場支配力を行使しないことを 約束することは、競争の実質的制限という問題を解消する措置ではない。市場が非競争 的に変化し、協調的行動による競争の実質的制限が生じると考えられるとくに、「協調 的に値上げを行ったり、数量を削減することはしない」という約束をすることも、同様 にして、競争の実質的制限という問題を解消する措置にはあたらない。ただし、値上げ をしないことなどによって、競争者の牽制力が強められて競争が活発に保たれ、それに よって市場支配力の形成等が発生しなくなるというのであれば別であって、このような 値上げ禁止措置は問題解消措置たりうる。ガイドラインでも、後者の種類の措置のみが 記載されている404。
(3)第三者のとる措置
第三者がとる措置は、競争を実質的に制限するかどうかを判断する上では関連性をも つ事情である。もっとも、当事会社が行うものでなく、排除措置命令の下命者とならな いなど履行確保に向けた手続が整備されていない以上、当事者が実施する問題解消措置 とは、質的に異なるものであることに注意すべきである405。
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29 条は「国務院独占禁止執行機関は、禁止しない結合に対して、結合から生ずる競争 制限効果を減少させる制限的な条件を課す決定を行うことができる」、そして第 48 条に
「事業者がこの法律の規定に違反し、結合を行った場合、独占禁止執行機関は、結合の 停止を命じ、一定期間内において、株式若しくは資産を処分し、又は営業の譲渡を命じ、
原状回復のために必要な措置をとることができる。さらに、50 万元以下の行政制裁金 を課すことができる」とそれぞれ定められている。これは事業集中に関する救済措置と して、29 条は行動に関する措置であり、48 条は構造に関する措置である。
そして、「事業者集中審査規則」第 11 条によれば、「制限的条件」には、①集中に参 加する事業者の資産または業務の一部を分離する等の構造的条件、②集中に参加する事 業者がそのネットワーク又はプラットフォーム等のインフラ設備を開放し、重要技術
(特許、ノウハウ又はその他の知的財産権)の使用を許諾し、排他的合意を終了する等 の行為的条件、及び③構造的条件と行為的条件を組み合わせた総合的条件の三種類が含 まれる。
(2)「事業者集中における資産又は業務の分離の実施に関する暫定規定」について 商務部は、「事業者集中審査規則」の公布前に既に制限的条件付の審査決定を公布し ていたが、その実施方法について明文規定はなかった。そこで、商務部は、構造的条件 付の審査決定の実施を規範化し、資産又は業務の分離の滞りない完了を確保するために、
2010 年 7 月 5 日に「事業者集中における資産又は業務の分離の実施に関する暫定規定」
(以下「暫定規定」という)を公布した。暫定規定は、集中に参加する事業者の義務及 び買受人の条件を規定し、監督受託者及び分離受託者という独立した第三者を導入する ことにより、事業者集中における資産又は業務の分離を順調に進めることを図っている
406。
Ⅰ、資産又は業務分離とは
暫定規定において資産又は業務の分離とは、商務部の事業者審査規定に基づき、資産 又は業務の分離義務を負う、集中に参加する事業者(以下「業務分離者」という)がそ の一部の資産又は業務(以下「分離業務」という)を分離すること及びこれと関連のあ る行為を指す(2 条)。その進め方によって、資産又は業務の分離は、自主分離と受託 分離に分けられている。自主分離とは、分離義務者が、商務部の審査決定に定める期限 までに、適当な買受人をみつけて売却契約及びその他の関関連契約を締結し、分離業務 の移転を実現することを指す(3 条1項)。受託分離とは、分離業務者が期限どおりに 自主分離を完了することができない場合に、分離受託者が審査決定に定める期限及び方 式に従って適当な買収人をみつけて、売却契約及びその他の関連契約をまとめ、分離業
406 孫彦「「事業者集中における資産又は業務の分離の実施に関する暫定規定」について」国際 商事法務38巻8号(2010年)1124頁。
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Ⅱ、集中に参加する事業者の義務
実務上、商務部より構造的条件付きの審決決定がなされた後、集中に参加する事業者 が分離業務の管理をきちんと行わず、又は自らの地位を濫用し分離業務に不利益をもた らす等のおそれがある。そこで、事業者の当該不公行為を防ぐため、暫定規定第 12 条 では、集中に参加する事業者の義務を列挙した。同条によれば、分離完了前に、集中に 参加する事業者は、分離業務の価値を確保するため、次の各号に掲げる義務を履行しな ければならない。
①分離業務とその他の業務との間の相互独立を保ち、かつ最も分離業務の利益に合う 方式で管理を行うこと
②分離業務に不利な影響をもたらすおそれのあるいかなる行為も実施してはならな いこと。これには、被分離業務の従業員を雇用すること、分離業務の営業秘密及びその 他の秘密情報を入手すること等が含まれる
③専門の管理者を指定し、分離業務の管理にあたらせ、かつ上記①、②に定める義務 を履行させること
④潜在的買収人が公平かつ合理的な方式で分離業務に関する十分な情報を入手でき ることを確保し、潜在的買収人が分離業務の価値、範囲及び将来性(中国語原文は「商 業潜力」)を評価できるようにすること
⑤買収人の要求に基づいてそれに必要な支援及び援助を提供し、分離業務の滞りない 引継及び安定した経営を確保すること
⑥買収人に遅滞なく分離業務を引き渡し、かつ関連法的手続を履行すること
但し、上記暫定規定の規定については、商務部がケースバイケースによって更に細かい 条件を求めてくる可能性がある407。
Ⅲ、買収人の条件
分離業務については、誰でも買収人になることができるわけではない。暫定規定第 9 条によれば、分離業務の買収人は、次に掲げる要求に合致しなければならない。
①集中に参加する事業者から独立しており、それとの間に実質的利害関係が存在しな いこと
②必要な資源、能力を有し、かつ分離業務を維持し、及び発展させる意思があること ③分離業務の買受が競争の排除、制限の問題をもたらさないこと
④分離業務の買受にその他の関連部門の認可が必要である場合には、買受人は、その 他の監督管理機構の認可を取得するための必要条件を備えていなければならない 上記の規定についても、商務部が、個別の案件の特殊性に基づき、審査決定の際に、
407 孫彦・前掲注406、1125頁。
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買収人の資格条件等をより厳しく規制する可能性がある408。
Ⅳ、監督受託者及び分離受託者
事業者集中が競争に与えるマイナス影響を減少させる目的を確実に実現するために、
暫定規定では、分離資産の売買において監督受託者409及び分離受託者410という独立した 第三者を導入した。暫定規定第 5 条 1 項によれば、監督受託者及び分離受託者は、①受 託業務に携わるのに必要な資源及び能力を有すること、②集中に参加する事業者及び分 離業務の買受人から独立していること、及び③集中に参加する事業者及び分離業務の買 受人との間に実施的利害関係が存在しないことの三つの条件を満たす必要がある。
また、監督受託者は、商務部の監督の下、勤勉に職責を果たすという原則に基づき、
分離義務者から独立して次の各号に掲げる職責を履行しなければならない(7 条)
①分離業務者の義務を履行するのを監督し、かつ定期的に商務部に監督報告を提出す ること
②分離業務者の推薦する買受人の候補、締結しようとする売買契約及びその他の関連 契約等について評価を行い、かつ商務部に評価報告を提出すること
③売却契約及びその他の関連契約の執行を監督し、かつ定期的に商務部に監督報告を 提出すること
④分離業務者と潜在的買受人(暫定規定に定める買受人の基準に合致し、かつ分離義 務者に分離業務買受の意思を示した事業者)との間に分離の件について生じた争いの調 整にあたり、かつ商務部に報告すること
⑤商務部の要求に応じて業務分離と関連のあるその他の報告を提出すること
暫定規定第 3 条 2 項によれば、分離義務者は、売却契約及びその他の関連契約の締結 日から3か月以内に分離業務を買受人に移転し、かつ所有権移転等の関連の法的手続を 完了しなければならない。但し、分離業務の内容、規模、移転方法等によっては、3か 月いないに、当該移転手続(主に認可手続である)が終わらない可能性がある。よって、
同第 3 条 2 項では、「事案の具体的状況に基づき、分離義務者の申請及び理由説明によ り、商務部は、情状を勘酌して移転業務の期限を延長することができる」と定めている。
408 孫彦・前掲注406、1126頁。
409 監督受託者とは、分離業務者の委託を受けて、業務分離については全過程の監督を行うこと を担う自然人、法人又はその他の組織を指す(4条2項)。
410 分離受託者とは、受託分離段階において、分離義務者の委託を受けて、適当な買受人をみつ けて売却契約及びその他の関連契約をまとめることを担う自然人、法人又はその他の組織を指す
(4条3項)。