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問題解消措置の諸類型

ドキュメント内 ―日本法との比較法的研究― (ページ 168-171)

第五章 企業結合規制の手続

第二節 問題解消措置

2 問題解消措置の諸類型

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える影響が大きい手段を講じるよりも、行動にかかる措置を当面の間とることとして、

事業の推移を見守ることが、より適切である場合もある、ガイドラインも、技術革新等 により市場構造の変動が激しい市場においては行動にかかる措置をとることが妥当で ありうると述べている398

なお、当事会社としては、事業譲渡や議決権処分などを行うこととして、これに向け て適切な売渡先を探し、利害・契約関係を有する者らと一連の契約交渉・締結を行うな どするような、一定の行動をとることを約束することのほうを、好むことが多い。さら には、当事会社にとって重要な事業や、企業結合を計画した理由の核心をなす事業を譲 渡するよりも、企業結合の計画を一切放棄することのほうが当事会社にとって望ましい こともないのではない。問題解消措置をとることとするか、企業結合の計画を行わない こととし白紙に戻すかの判断は、当事会社に委ねられている。

168 (b) 事業譲渡――譲渡先について

事業譲渡を通じて問題を解消しようとする場合には、譲渡先が市場支配力に対する抑 制として機能するには十分な抑制力をもちうるものでなかったり、この措置によって競 争者間の同質性が高まって協調が促進されることで市場構造が非競争的に変化してし まうことが、懸念される。企業結合当事者は、このような譲渡を行おうとするインセン ティブを有している。

ガイドラインは、「例えば、問題解消措置として事業部門の全部又は一部の譲渡を行 う場合には、当該企業結合の実行前に譲受先等が決定していることが望ましく、そうで ないときには、譲受先等について公正取引委員会の事前の了解を得ることが必要となる 場合がある」と述べている。譲受先が事前に決定していなければ公取委の了解を得た上 で譲渡を実施し、事前に決定しているのであれば、公取委はその適切性も考慮しながら 企業結合の合法性を審査することになる。こうすることは、不適切な相手方への事業譲 渡が行われないようにするために、必要である400

Ⅱ、競争者の牽制力強化、参入・輸入促進措置 (a) 競争者強化のための諸措置(長期的供給契約等)

市場構造に関する措置の中でも、事業譲渡・議決権処分等の企業の組織的変更を通じ て問題を解消するタイプの措置が望ましいものであるが、これを実施できない場合もあ る。ガイドラインでは、こうした場合に備えて以下の記述をおいている。

「なお、需要が減少傾向にあるなどのために、当事会社グループの事業部門(例えば、

製造販売・開発部門)の全部又は一部の譲受先が容易に出現する状況になく、商品が成 熟しており、研究開発、需要者の要求に応じた商品の改良などのサービス等が競争上あ まり重要でないなどの特段の事情が認められる場合には、競争者に対して当該商品の生 産費用に相当する価格での取引権を設定する(長期的供給契約を締結する)ことを問題 解消措置とすることが有効であると判断されるときもある」。

(b) 新規参入・輸入促進のための措置等

事業譲渡という問題解消措置をとることが現実的でない場合にとりうる措置につい て、ガイドラインはもう1つ記述を置いている。

「需要が減少傾向にある等のために、当時会社グループの事業部門の全部または一部の 譲受先が容易に出現する状況にないなどの理由から、事業譲渡等を問題解消措置として 講じることができないと認められる場合には、例外的に輸入・参入を促進すること等に よって、企業結合によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとな るという問題を解消することができると判断される場合がある」。「例えば、輸入に必要 な貯蔵設備や物流サービス部門等を当事会社グループが有している場合、それらを輸入

400 川濱昇等・前掲注107、247頁。

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業者等が利用することができるようにし、輸入を促進することにより、企業結合によっ て一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなるという問題を解消す ることができると判断される場合がある。また、当事会社が有している特許権等につい て、競争者や新規参入者の求めに応じて適正な条件で実施許諾等をすることにより、企 業結合によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなるという 問題を解消することができると判断される場合がある」。

事業譲渡の場合と異なって、この種の措置では、当事会社も利用する設備・物流サー ビスを提供するというのであるから、競争者の牽制力を弱めるべくこれら設備の価値を 戦略的に損なうという行動がとられる見込みは、相対的に、低いと考えてよいだろう。

もっとも、新規参入・輸入に際して、どの範囲ないし種類の設備・物流サービスが必要 であるのかを事前に知ることは必ずしも容易ではない。提供対象となる設備・物流サー ビス等が、当事会社の支配下にある他の設備・部門等と有機的に結合されていて、提供 対象となった設備・物流サービスだけでは十分に機能しないこともありうる401

(2)行動に関する措置

Ⅰ、事業活動実施上の独立性維持、情報遮断措置等

ガイドラインは「当事会社グループの行動に関する措置を講じることにより、企業結 合によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなるという問題 を解消することができると判断される場合」があるとして、次のような事例を挙げる。

「例えば、商品の生産は共同出資会社において行うが、販売は出資会社がそれぞれ行う こととしている企業結合の場合、出資会社相互間及び出資会社と共同出資会社間におい て当該商品の販売に関する情報の交換を遮断すること、共同資材調達の禁止など独立性 を確保する措置を講じること」である。

共同出資会社によって一定の事業を行う際に、共同出資会社がいかなる事業を営み、

当該事業に出資を行う会社がどのように関与し、他方で出資を行う企業が同じ分野ある いは関係する分野でいかに、どのような事業を営んでいるか、あるいは将来的に営む予 定であるかは、問題解消措置を検討するときのみならず、結合の有無や、競争にいかな る影響を及ぼすのかを検討する際に考慮される事柄であるだろう402

Ⅱ、差別的取扱い禁止による閉鎖性・排他性問題の防止

ガイドラインは「事業を行うために不可欠な設備の利用等について、結合関係にない 事業者を差別的に取り扱うことを禁止することにより、市場の閉鎖性・排他性の問題が 生じることを防止することができると判断される場合がある」とする。

なお、企業結合関係の有無を問うことなく公平に取引先を取り扱うことは、垂直的関

401 川濱昇等・前掲注107、250頁。

402 川濱昇等・前掲注107、255頁。

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係にある市場における競争を活性化し、川下市場からの価格低下圧力や洗練された買手 の存在・成長を促進ないし維持することを通じて協調行動による競争を実質的に制限す る効果を抑制することもある403

Ⅲ、市場支配力の確約

問題解消措置は、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるという 問題が生じると考えられた場合に、措置をとらせることで、当該問題を解消するもので ある。企業結合が行われ、競争が活発でなくなることによって、市場支配力が形成・維 持・強化されることになりはするものの、形成等された市場支配力を行使しないことを 約束することは、競争の実質的制限という問題を解消する措置ではない。市場が非競争 的に変化し、協調的行動による競争の実質的制限が生じると考えられるとくに、「協調 的に値上げを行ったり、数量を削減することはしない」という約束をすることも、同様 にして、競争の実質的制限という問題を解消する措置にはあたらない。ただし、値上げ をしないことなどによって、競争者の牽制力が強められて競争が活発に保たれ、それに よって市場支配力の形成等が発生しなくなるというのであれば別であって、このような 値上げ禁止措置は問題解消措置たりうる。ガイドラインでも、後者の種類の措置のみが 記載されている404

(3)第三者のとる措置

第三者がとる措置は、競争を実質的に制限するかどうかを判断する上では関連性をも つ事情である。もっとも、当事会社が行うものでなく、排除措置命令の下命者とならな いなど履行確保に向けた手続が整備されていない以上、当事者が実施する問題解消措置 とは、質的に異なるものであることに注意すべきである405

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