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日本における問題解消措置

ドキュメント内 ―日本法との比較法的研究― (ページ 165-168)

第五章 企業結合規制の手続

第二節 問題解消措置

一 日本における問題解消措置

1 概要

(1)意義

388 泉水文雄「企業結合規制の課題」日本経済法学会年報第33号(2102年)8頁。

389 栗田誠・前掲注6、64頁。

390 泉水文雄・前掲注388、8頁。

391 多田敏明「2009年改正後の企業結合手続等」自由と正義62巻12号(2011年)31頁。

392 工藤俊和「企業結合案件における企業の対応―パナソニックによる三洋電機子会社化案件を 事例に―」日本経済法学会年報第33号(2102年)107頁。

393 泉水文雄・前掲注383、8頁。。

394 栗田誠・前掲注6、63頁。

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企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなると認められ た場合には、当該企業結合は禁止されなければならない。多角的に事業を営み複数の商 品・役務を提供する企業間で企業結合が行われる場合には、当事会社の扱う商品・役務 のそれぞれについて、商品ないし役務のいずれか1つについてでも、一定の取引分野に おける競争を実質的に制限することとなると判断されれば、当該企業結合が禁止されな ければならない。この際には、競争制限効果が発生するものとして禁止の根拠とされる 商品や役務が、当事会社にとってどのような重要性をもつのかなどは問われない。例え ば、当事会社の商品ラインの中では重要性が低いものであるとか、当事会社の全売上高 において当該商品の占める割合が些少なものにすぎないなどといったことは、問題とな る企業結合を禁じることの妨げとはならない。

このように一定の取引分野を画定し、その範囲において競争が制限・阻害されること がないように独禁法を運用することは、独禁法が命じることであるとともに、独禁法に 基づく他の規制(3 条、8 条、19 条等による規制)におけるアプローチとも一致してい る。

もっとも、企業結合は、部分的に競争制限効果をもつものであっても、他の商品等に ついては競争促進効果をもつものであることもある。このことから、市場支配力が形 成・維持・促進されることがないようにしながらも、競争促進効果をもつ企業結合を実 現させることが可能であるならば、その実現を可能にするように法を運用することが望 ましい。様々な事業を営んでおり、競争が実質的に制限されることとなるのは、これら 事業のうちの一部であるような場合には、とりわけそうである。

このような課題に応えて実施されてきているのが問題解消措置である。これは、企業 結合によって一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなる場合に、こ の問題を解消すべく当事会社によってとられる措置のことをいう。市場支配力が形成等 されることとなると考えられる一定の取引分野ないし事業について、一方企業の事業を 他社に譲渡するなど、一定の措置を講ずることによって、市場支配力の形成等の効果が 発生することがないようにし、それによって当事者が意図する企業結合を実施すること を可能にするものである395

問題解消措置を適切に設計し、独禁法に違反しない形で企業結合を計画するためには、

競争効果分析能力を備えるとともに事業経営を理解し、創造性をもつ必要がある。他方 で、競争当局ないし企業結合規制を審査する者にとっては、問題解消措置として提示さ れた計画が、現実に履行可能な措置であり、競争の実質的制限効果の発生を適切な期間 内に十分な程度に解消するものであるかどうかを見分けることが課題となる。目指され ている、あるいは、既に実現されている規模の経済・範囲の経済が損なわれないように するという配慮も必要となる396

395 川濱昇等・前掲注107、235頁。

396 川濱昇等・前掲注107、236頁。

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(2)構造的措置・行動に関する措置

Ⅰ、意義

問題解消措置は、ガイドラインでは、市場内で事業を営む者の数を減らさないように するなどして市場の構造を維持ないし変更することに向けられた構造的措置と、そうで はない措置であって当事会社らに対して企業結合実施後に一定の行為を行うことを命 じる行動に関する措置の2種類に大別されている。当事会社の事業部門や生産・販売設 備の売却が構造的措置の典型である。これに対して、市場構造に直接的な影響を与えよ うとする措置ではないものの、例えば、結合する企業の部分間で、独立に事業を営むこ ととしたり、情報を遮断したりすることで、市場内における行動のあり方に影響を与え ようとするものが、行動にかかる措置に分類されている。

Ⅱ、ガイドラインの立場

ガイドラインは、「問題解消措置としてどのような措置が適切かは、個々の企業結合 に応じて、個別具体的に検討されるべきものであるが、問題解消措置は、事業譲渡等構 造的な措置が原則であり、当事会社グループが価格等をある程度自由に左右することが できないように、企業結合によって失われる競争を回復することができるものであるこ とが基本となる」とする。そして、これに続いて「ただし、技術革新等により市場構造 の変動が激しい市場においては、一定の行動に関する措置を採ることが妥当な場合も考 えられる」と述べる。

平成 16 年のガイドラインでは、「競争を回復する」に足りるものであるべきことは述 べられており、本文では構造的措置のなかでも事業譲渡または当事会社と他会社との結 合関係を解消する措置が原則として優先されるべきであることが示唆されていたもの の、構造的措置が原則であるという記述は存在しなかった。この記述の付加は、適切で あるとともに、平成 19 年のガイドライン改正の中でも重要なものである。

従来から、上記2種類の問題解消措置のうちでは、構造的措置、中でも当事会社に属 する事業を直ちに操業可能な形で譲り渡す措置(事業譲渡)が、市場支配力形成等を阻 止する効果が高いとともに、確実に履行を行わしめるために競争当局がかける必要のあ る費用が比較的すくなくてすむのであって、より望ましいものであることが知られてき た。事業譲渡や議決権処分を通じた構造的措置のほうが、法運用費用が低くてすむこと は、直感的にも明らかであろう397

もっとも、事業譲渡を行う場合であっても、譲受者が迅速かつ効果的に当該事業を開 始・運営して競争者として十分な抑制力となるまでには物的・技術的に援助が必要とな る場合が多い。このことから、競争を回復するには、補完的措置をとることが必要なこ とが多い。また、事業の変化が激しい分野においては、構造的措置という事業経営に与

397 川濱昇等・前掲注107、238頁。

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える影響が大きい手段を講じるよりも、行動にかかる措置を当面の間とることとして、

事業の推移を見守ることが、より適切である場合もある、ガイドラインも、技術革新等 により市場構造の変動が激しい市場においては行動にかかる措置をとることが妥当で ありうると述べている398

なお、当事会社としては、事業譲渡や議決権処分などを行うこととして、これに向け て適切な売渡先を探し、利害・契約関係を有する者らと一連の契約交渉・締結を行うな どするような、一定の行動をとることを約束することのほうを、好むことが多い。さら には、当事会社にとって重要な事業や、企業結合を計画した理由の核心をなす事業を譲 渡するよりも、企業結合の計画を一切放棄することのほうが当事会社にとって望ましい こともないのではない。問題解消措置をとることとするか、企業結合の計画を行わない こととし白紙に戻すかの判断は、当事会社に委ねられている。

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