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事後検証

ドキュメント内 ―日本法との比較法的研究― (ページ 182-185)

第五章 企業結合規制の手続

第二節 問題解消措置

1 事後検証

(1)事後検証の重要性

そもそも企業結合審査とは企業結合が実施される前の時点で、結合後の将来の競争状 況を予測し、企業結合による市場の競争への影響を判断するものである。そのため、企 業結合審査の評価分析においては、企業結合が行われた後に、たとえば、将来の輸入圧 力といった審査時点における考慮事項やその競争促進効果の認定、審査時点において

「企業結合により競争が制限されるおそれ」があると判断した場合の当事会社から提出 される問題解消措置の有効性の認定等の妥当性について、事後的にしか検証・評価する ことができない。こうした問題解消措置に対する事後的な評価分析は、企業結合審査の 透明性の向上に不可欠である。

例えば、米国では、連邦取引委員会(FTC)が企業結合規制の問題解消措置について、

譲渡された事業が有効に営まれているかどうかを検証し、問題解消措置の設計のあり方 に焦点を絞った調査を行っている。すなわち、1990~1994 年の間に資産譲渡(知的財 産権のライセンスを含む)を命じた 35 事例における 50 の購入者のうち 37 社(その他、

当事会社 8 社と第三社 2 社)に対し、以下の事項についてインタビューを行い、

ア 購入者が譲受事業を現時点で営んでいるか

イ 購入者は合理的な期間内に譲受事業を開始できたか ウ 購入者は効果的に競争する能力を獲得できたか

これらすべて満たす場合に、譲受事業は viable と評価できるとしている((37 のう ち 28 が viable)。また、個々の事例に即して、有効な資産分離を阻害する要因(有力 でない買い手の選択、購入者の事業活動の妨害、購入者に十分な情報を与えない等)や 問題解消措置の有効性を高める方法(有効な譲渡を実施しない場合の crown jewel の譲 渡条項、購入者への技術援助等)について提案している。

また、司法省も、2004 年 10 月 21 日、合併の救済措置に関する反トラスト局の政策 を説明し、その政策の法的、経済学的基礎について述べた「合併の救済措置に関する反 トラスト局の手引き」を公表している。手引きでは、反トラスト局による合併事案にお ける救済措置の発展のために、いくつかの「指導原則」を説明し、以下の重要な点を強 調している。すなわち、

ア 有形または無形の資産の分離を含む構造的な措置は、行動的措置より望ましい。

行動的な救済措置は限られた状況においてのみ適切である。

438 泉水・前掲注388、12頁。

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イ 資産分離には、買い手が効果的、かつ長期的な競争者となるために必要な資産(重 要な無形財産を含む)が含まれなければならない。

ウ 資産分離には、買い手が効果的、かつ長期的な競争者となるために必要な資産(重 要な無形財産を含む)が含まれなければならない。

エ 関連製品の効率的な製造および流通のために必要なすべての資産を所有する1 つの現存するビジネス全体の分離が、部分的な分離より望ましい。

オ 仮に反トラスト局がある合併が法律違反になると考える場合でも、反トラスト局 は訴訟提起に先立ち、その代わりに、合併から生じる競争上の問題を完全に除去する限 り、当該合併が完了する前に当事者が履行する構造的な救済措置を受け入れることに前 向きである439

また、2011 年 6 月に司法省反トラスト局が公表した「企業結合における改善措置に 関するポリシーガイド」においては、企業結合における問題解消措置の基本的な考え方 としては、

A 必要以上に介入せずに競争を保持すること、そして

B 個々の競争者を保護するのではなく、競争自体を保持するという考え方を忘れず、

C 個別事例における個々の事実関係について法的・経済的な考え方・原理を丁寧に 当てはめて措置内容を検討する、ことを挙げている。また、ある統合計画について競争 上の問題があると判断する場合には、司法省は、必要以上に介入せずに問題点を解消す るための措置を検討し、それができないときには差止めを検討する、としている。そし て、措置内容の検討に当たっては、個々の企業の競争意欲を殺がないようにすることが 重要であるとし、また命じる措置は、市場を競争的に維持することにより得られるメリ ットを可能な限り殺さず、企業結合によってもたらされる効率性の向上を保全する観点 から検討するとしている。そして、行動的問題解消措置は、垂直的統合より生じる競争 上の問題点を処理するのに効率的な手法であるが、同時に、水平的統合による問題を解 消するために構造的問題解消措置と併せて用いられることも当然あり得る、としている。

また、行動的問題解消措置には様々な形があり得るが、執行不可能(執行不全)であっ ては意味がなく、曖昧な言葉を用いたり、容易に曲解・反故されてしまうような内容に してしまうと、当初の目的を達成するには十分でないし、競争上の問題・悪影響が見過 ごされてしまうことになる。このため、行動的問題解消措置を検討するに当たっては、

明確かつ入念に内容を検討することが極めて重要であり、命令では当事会社が負う義務 を明確に、曖昧なところが残ることがないように記載されるべきである、との基本認識 を示した440

(2)EU 事後検証報告書―資産譲渡の措置に関する分析

439 林・前掲注53、144頁。

440 小俣栄一郎「米国企業結合規制の最近の動向」公正取引737号(2012年)29頁。

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以下の各視点に基づき、各措置の分析を行っている。

ア 譲渡された事業の範囲が適切だったかどうか(事業として成立する最小規模以上 のものであったかどうか等)

イ 第三社の合意を必要とする措置について、きちんと実行されているかどうか(JV からの離脱について、他の JV メンバーの合意を得て実施されているかどうか等)

ウ 資産譲渡に関する当初の選択肢がとれない場合に、crown jewel の譲渡を約束し ている場合の効果(当初の選択肢をとるインセンティブが増大しているかどうか等)

エ 一定期間の後に譲渡される予定の事業について、適正に管理されているかどうか

(譲渡されるまでの間に必要となる投資や顧客管理が行われているかどうか、譲渡予定 資産が分離して管理されているかどうか等)

オ 資産譲渡の相手方の選定過程において、当事会社が不公正な方法をとっていない かどうか(強力な競争相手となるそうな事業者には、条件を悪くする等)

カ 当事会社から一部事業を分離する場合の問題点(当事会社に残る事業と当事会社 から分離される事業の間で、共通の資産(研究開発資産、知的財産権など)をどのよう に配分する等)

キ 譲渡事業の完全移転の際に、すべての資産がきちんと譲渡されているかどうか等 ク トラスティの選定に係る問題点(トラスティの任命がいつ行われているか、トラ スティがきちんとした資質を有しているかどうか等)

ケ 購入者が適切であったかどうか(購入者が当該事業を効率的に経営し当事会社に対 する競争圧力となっているかどうか、十分な資金力を有しているかどうか、当事会社か ら独立しているかどうか、当該事業を継続していくインセンティブを有しているかどう か等)

コ 譲渡の期限を延長したケースについて、その期限延長の妥当性の検証

上記の各視点および譲渡された事業のシェアが譲渡拡大しているかどうか等のデー タに基づき、分析対象の問題解消措置を「効果的」、「一部効果的」、「効果的でない」に 分類している441

(3)問題解消措置の検証の視点

以上見た欧米の問題解消措置の視点は、凝縮すれば次の視点で行われている442

441 林・前掲注53、146頁。

442 たとえば国際競争ネットワークによる企業結合の届出手続に関する推奨される方法におい て、問題解消措置の手続および実施は、効果的および用意に執行できるよう構築されるべきであ る、として、効果的かつ実効可能性の向上のため、問題解消措置は、当事会社による遵守の必要 条件を明確かつ正確に明らかにすべきであると提言している。たとえば、実施されるべき企業の 一部売却、ふさわしい購入者の特徴および期限だけでなく、問題解消措置の対象となっている事 業および資産について明確にすべきであるとし、さらに問題解消措置の条件は、条件を実施する 事業者を明らかにし高速すべきであるとしている。当事会社に対し当該問題解消措置の実施に際 し適切な指針を提供し、当事会社が当該問題解消措置を適切に実施できるかどうかを検証するこ

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