第 7 章 木質バイオマス活用方針とプロジェクトの検討
7.1 導入方針の検討
木質バイオマスエネルギー導入の基本方針を、これまでに調査を行った、檜原村における木質資源の 賦存量及びエネルギー需要量などを参考として設定しました。
7.1.1 檜原村の特徴
檜原村の特徴について、地域特性や森林資源量・エネルギー需要量などから整理しました。
(1) 檜原村における社会環境の特徴
檜原村における森林・林業的な特徴は以下のとおりです。
● 林野率が 92.5% ⇒ 森林資源に恵まれている
青梅林業地域にあり、歴史的にも林業が盛んな土地柄である
島嶼を除く、東京で唯一の「村」としての発信を行っている
東京の奥座敷とも言われる、南北秋川の清流や豊かな森林など、自然資源を生かした観光 地である
森林セラピーや教育の森事業など、森林と観光を結びつける事業に力を入れている
(2) エネルギー需要量からみた檜原村の特徴
エネルギー需要量からみた檜原村の特徴は以下のとおりです。
● 産業部門・民生部門のエネルギー需要は横這い・減少傾向にある
⇒ ・地域産業の活性化の必要性がある
● エネルギー需要における運輸部門の占める割合が大きい
⇒ ・クリーンエネルギー自動車の導入を検討
⇒ ・将来的なバイオマス燃料導入の可能性の検討
● 村内の温浴施設や福祉施設のエネルギー需要が大きい
⇒ ・エネルギー需要の大きい施設への木質バイオマス導入
⇒ ・木質バイオマス導入による観光やいやしの村のアピール 檜原の多様な森林資源を十分に活かした、新たな活力のあるむらづくり
檜原村新エネルギー詳細ビジョン 第 7 章 木質バイオマス活用ビジョンの検討
● 未利用残材の活用による地域資源循環体系の構築
● 木質バイオマスを利用した村内新規ビジネスプランの促進
● 村全体を森林資源の活用を行う“木質バイオマスの村”と位置づけ
● 木質バイオマスを利用した「火のある村の暮らし」の再考 (3) 木質バイオマス賦存量からみた檜原村の特徴
以下に、木質バイオマス賦存量からみた檜原村の特徴を示します。
● 伐り捨て間伐材の賦存量が大きい
⇒ ・伐り捨て間伐材の利用による森林資源の活用
⇒ ・路網整備・低コストな搬出システムの構築による林業の活性化
● 木材加工施設からのおが粉・端材が少なく、他の用途に利活用されている
⇒ チップ・ペレットといった加工を必要とする燃料の製造が難しい
⇒ ・薪など、加工の少ないかたちでの利用が望まれる
● 樹皮・伐り捨て間伐材の利用に困っている
⇒ ・未利用資源の活用が望まれる
7.1.2木質バイオマスエネルギー導入の基本方針
檜原村の特徴を踏まえ、木質バイオマスエネルギー導入の基本方針について、以下の案を設定しま した。
檜原村の特性からみた木質バイオマスエネルギー導入の基本方針 未利用材の薪によるエネルギー利用
檜原村新エネルギー詳細ビジョン
第 7 章 木質バイオマス活用ビジョンの検討
7.2 導入プロジェクトの検討
上記の方針に沿った導入プロジェクトを設定します。プロジェクトの構想を以下に示します。
表 7-1 木質バイオマス導入プロジェクト
No. 導入プロジェクト 導入対象 導入目的 導入構想 1 木質バイオマスボイラ
ー導入プロジェクト
温浴施設・福祉施設・
宿泊施設等
施設における二酸化炭素 排出削減、燃料費削減等
熱需要の多い施設への木質 バイオマスボイラーの導入 2 木質バイオマスストー
ブ導入プロジェクト
観光施設・学校・旅 館・民宿・一般家庭等
普及啓発、環境教育等 施設や家庭に向けた木質バ イオマスストーブの導入 3 薪流通システム構築
プロジェクト
一般家庭・公共施設・
学校等
村内での薪流通システム の構築、燃料費の削減等
村内の未利用材流通システ ムの構築
薪ステーション
薪製造 ストーブ利用
ボイラー利用
配達
チップ製造
製材業者 等
シルバー人材 センター 素材生産業者 薪製造業者 等 伐捨間伐
花粉症対策 利用間伐
素材生産業者 森林組合 伐出業者 等
用材の搬出 木材市場
製材
製材端材
温浴施設 宿泊施設 等
公共施設 観光施設 家庭 等 収集
残材の搬出 未利用材の搬出
燃料販売業者 シルバー人材 センター 等
森林組合 伐出業者 等
二酸化炭素排出削減
図 7-1 木質バイオマス導入プロジェクトイメージ図 7.2.1木質バイオマスボイラー導入プロジェクト
村内の熱需要や普及啓発効果の高い施設に木質バイオマスボイラーを導入し、給湯・暖房時の燃 料として利用します。
「檜原温泉センター数馬の湯」は、村の代表的な温泉施設となっており、宿泊客やハイキング客が 多く利用しています。また、「檜原やすらぎの里」は、村の総合福祉施設として、多くの村民が利用して います。このような熱需要の大きな施設に導入を行うことで、CO の排出削減につながります。
檜原村新エネルギー詳細ビジョン 第 7 章 木質バイオマス活用ビジョンの検討
われている森林セラピーツアーなどと併せ、いやしの村をアピールすることも可能です。
図 7-2 チップボイラー 図 7-3 ペレットボイラーのしくみ
規模の小さな民宿や一般家庭に向けては、家庭用小型(薪・ペレット)ボイラーを導入し、風呂の加 温などに利用することが考えられます。村内では、かつて薪風呂などが広く使われていましたが、現在 は燃料の調達や火を焚く手間などから、化石燃料のボイラーを利用している家庭が多くなっています。
家庭への木質バイオマスボイラー導入により、昔から受け継がれてきた火のある暮らしを見直すだけで なく、二酸化炭素の排出削減や温暖化防止など、新たな木質バイオマスの魅力や価値を広く村内外 にアピールすることができます。
また、燃焼後の灰は、農地への還元や釉薬にも活用できます。檜原村は、こんにゃくの産地として知 られており、この凝固剤としての利用や、有機農業と連携し、じゃがいもなどの農産物に付加価値をつ けることも考えられます。
直接燃焼による熱利用だけでなく、長期的にはバイオマス発電による電気自動車へのエネルギー 供給など、複合的な木質バイオマス活用についても検討していきます。
また、近隣の施設では、奥多摩体験の森にペレットボイラーが、秋川渓谷「瀬音の湯」に薪ボイラー が導入されています。
7.2.2木質バイオマスストーブ導入プロジェクト
木質バイオマスボイラー導入の必要性が高くない公共施設や観光施設については、普及啓発や環 境教育・観光効果といった視点から、木質バイオマスストーブ(ペレットストーブ・薪ストーブ)の導入を 検討します。
ペレットストーブには炎のゆらぎ・ペレットの落ちる音などの癒し効果があり、ストーブが村内に普及 すれば「森林セラピーのむら」を効果的に演出できます。ペレットストーブは自動運転式であり、操作が ガスストーブや石油ストーブなどと同等に手軽で扱いやすいため、一般家庭や民宿等への普及も期待 されます。
現在、村内では役場のカフェや都民の森などに、ペレットストーブが導入されています。
東京都旧林業試験場 奥多摩体験の森
檜原村新エネルギー詳細ビジョン
第 7 章 木質バイオマス活用ビジョンの検討
図 7-4 薪ストーブ 図 7-5 ペレットストーブ
薪ストーブは、一般家庭において最も手軽に導入できる木質バイオマス機器です。薪については、
各家庭において近隣の山から収集することも可能であり、冬場の燃料代の削減に繋げられる反面、調 達や燃焼、灰の処理などに手間が掛かるという面もあります。
また、学校などの教育施設における導入は、火を熾すことや薪割りなどの体験学習に加え、木質バ イオマスエネルギー利用に対する環境教育にもつながります。
7.2.3薪流通システム構築プロジェクト
村内には、薪の原料となる未利用材がたくさんあります。このような資源を村内で流通させることは、
化石燃料の削減とともに、村内資源の有効利用や循環にもつながり、また村内でエネルギーの供給が できるということは、村外に流出していた金銭が村内で循環するため、地域経済の活性化にも繋がると 考えられます。
村内で薪を流通させる場合、チップやペレットに比べて廉価での提供ができると考えられ、これを利 用することは、燃料費の削減にもなります。そこで、村内において薪を販売や相互融通などによって流 通させるシステムを構築するとともに、村内で行われている取り組みと併せた効果的な利活用方法に ついて検討を行っていきます。