第3章 富山の医薬品産業の動向
第 3 節 富山における医薬品受託製造の動向
2010年は、受託先の特許切れによる受注減や、製造設備の切り替えによって一時的に生 産を中止した企業もあった。2011年の生産高からみると、2010年の減少については、一時 的な減少であったことがわかる。
2011年度は工場の新設及び設備増設により、工場稼働率が増大し生産が増加した。日医 工・東亜薬品・広貫堂などで工場新設や設備増強が行われ、工場稼働率が上昇し、生産量が 増えた。また、リードケミカル・富山化学工業の富山事業所で自社製造が増加した。その結 果生産額が増大したのである。
また、2010年度は全国的にインフルエンザが流行しなかったため、富山県におけるイン フルエンザに関する薬の生産高が減少したこともあげられる。
2010年度に全国2位から4位へ後退した原因については、富山県くすり政策課振興開発 班へヒアリングした結果、以下のような回答を得た(2012年5月 30日付 富山県知事政 策局広報課長)。
2010年の医薬品生産金額が前年に比べ、減少した要因としては、
①2年に一度の薬価の改定による生産金額の減少
②受託製造していた先発医薬品の特許切れなどに伴う受託製造の減少 ③新たな製造ラインへの切り替えのための生産調整による、製造量の減少 など、いくつかの要因が重なった一時的なものと考えている。
GMP(Good Manufacturing Practice)は、1963年に最初にアメリカで法制化された。
GMP とは「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」である。
区分 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 推移
医薬品製造販売業者数 71 67 67 66 62 63 60 61 60 57
医薬品製造業者数 102 99 97 94 89 89 89 88 85 85 83 80
製造所数 117 114 122 114 111 112 112 111 108 108 105 102
医薬部外品製造販売業者数 45 44 43 43 35 35 39 39 40 38
医薬部外品製造業者数 46 47 52 55 51 51 43 40 43 43 43 42
医療機器製造販売業者数 10 9 9 9 11 10 9 8 9 10
医療機器製造業者数 22 20 21 22 20 21 24 27 28 31 31 31
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1968年にWHO(世界保健機関)によりGMP制定が決定され、1969年に各国に採用を勧
告した。その後、各国の事情や意見を踏まえたGMPを作成し、1975年に再勧告をするに 至った。
日本においては旧厚生省薬務局に「GMP研究のためのプロジェクトチーム」が創設され、
1976年4月のGMPの実施に向かって進められた。1975年には各都道府県に「医薬品の製 造及び品質管理に関する基準実施細則」として通知された。GMPは1976年に行政指導を し、1979年3月までに実施という指導が行われた。
医薬品製造にはGMP省令があり、GMP適合は製造業の許可を得るために必要な要件で あった。2005年4月1日以降、GMP適合が「医薬品製造販売承認」に必要となった。つ まりGMP不適合となると取引相手の製造販売業者が承認を取れず、販売できないというこ とである。
2005年4月施行の改正「薬事法」で、医薬品製造販売業の許可制度の創設・委受託の完 全自由化が行われ、他社へ最終工程まで委受託ができるようになった。自社工場を持たなく ても、医薬品を販売できるようになったことから、高い技術を持つ富山の製薬メーカーが委 受託先として選ばれるようなり生産額が増大した。
富山県の生産額内訳を 2005 年と比較すると、2006年自社製造分は前年比▲20.2%の減 少に対し、受託製造額は3倍増(前年比193.4%)と、いわゆるOEM2(original equipment
manufacturer)が自社製造額を大幅に上回る状況となっている(表3-7)。
表3-7 2005年から2006年にかけての受託製造の変化(富山県)
出所:厚生労働省(2005~2007)「薬事工業生産動態統計年報」の数値データに基づき表 を筆者作成(枠を挿入した)
富山県の医薬品の受託製造が増加した原因は、「くすりの富山」といわれる300余年の伝 統と歴史を抜きに考えることはできない。現在も医薬品製造は富山県の基幹産業の一つとな っている。これまでの製造や品質管理の実績、大手製薬企業との信頼関係が構築されていた こと、錠剤や注射剤を大量に生産することができる製薬会社があり、外用薬(貼り薬)や軟 膏、目薬等、特殊剤形の医薬品の製造を得意とする企業もある。多種多様な医薬品に対応す る環境が整っているのである。
医薬品だけではなく、周辺に医薬品を支える関連企業の集積がある。容器、包装、資材、
添付文書などの製造やパッケージ印刷を行うメーカーなど一貫して医薬品製造を受託でき 単位:億円
自社製造 受託製造 合計 2005年 1,554 1,083 2,637 2006年 1,240 3,177 4,417
前年比(%) -20.2% 193.4% 67.5%
2007年 1,237 3,446 4,683
前年比(%) -0.2% 8.5% 6.0%
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る環境も整っている。それらが受託製造が増える要因となっている。
また医療医薬品の新薬開発は平均9年~17年という長い年月と、費用は数100億円から
中には1,000億円以上の費用がかかる場合もある。しかし、新薬開発の成功率は31,064分
の 1である(日本製薬工業協会 2011)。このように新薬として市場に出る確率は極めて低 い。各製薬メーカーは新薬開発に社運を賭けている。経営の効率化と生産コストの削減のた め、自社製造から他社への委託製造に切り替えたのである。中小の医薬品メーカーと大手製 薬会社は利害関係が一致したのである。これにより委受託が拡大した。2005年の「薬事法」
改正により、医療品製造分野やジェネリック医薬品分野での新たな事業展開となっている
(図3-13)。
図3-13 富山県受託製造内訳(2017)
出所:富山県くすり政策課(2017)「富山県薬業の状況」の数値データに基づき表を筆者 作成
富山県の医薬品の受託製造の主要取引先は、アステラス製薬、エーザイ、小野薬品工業、
広貫堂、第一三共、大日本住友製薬、武田薬品工業、富山化学工業、日医工となっている。
共通して言えることは、全社に機密保持契約の締結があり、受託製造先の詳細は明示されな い。
富山県を代表する主要医薬品企業は、表3-8のとおりで、原料から薬品製造および最終の パッケージまでの医薬品産業集積が形成されている。
富山県の医薬品企業は受託製造が多く、代表的な医薬品製造企業の例をとっても配置薬 から医薬品製造の受託製造へと変化していることがわかる。
また、表3-8からもわかるように、富山県の代表的な医薬品産業は原薬メーカーを除き、
受託製造企業が多い。
医療用医薬品 80.2%
一般用医薬品 18.0%
配置用医薬品 1.8%
受託製造内訳
2014年66
表3-8 富山を代表する医薬品産業の受託
出所:富山県くすり政策課(2012)「薬都富山をささえる企業」を基に表を筆者作成
受託製造は、医薬品の一般的剤形から伝統的な剤形まで製造する。具体的には製剤設計、
分析方法の開発、包装仕様の提案、申請業務などを行っている(図3-14)。また、大量生産 から少量ロットへの変更など、受託企業は生産コストを制御する多様な提案も行っている。
先発メーカーは承認許可を得ているため、薬品の製造が減少しているが、製造中止にするこ とはできないため自社製造から少量生産で委託している例もある。
受託 企業名 創業 従業員数 特色
朝日印刷㈱ 1872年
(明治5年) 941名配置家庭向けの印刷を足掛かりに医薬品から化粧品まで全国トップシェアを誇る パッケージ専門メーカー
アルプス薬品 工業(株)
1947年
(昭和22年) 328名 薬の基となる有効成分(原薬)を創る原薬製造において国内トップを誇るメーカー (株)池田模範
堂
1909年
(明治42年) 302名液体ムヒ、ヒビケアを中心とした季節商品のブランド拡大努力を続けてきた。ブラン ド力の発展・維持・オンリーワン商品の開発強化のため研究開発等を建設 受託 救急薬品工業
㈱
1963年
(昭和38年) 220名経皮吸収型貼付剤の専門メーカー。口腔内フィルム製剤を製造.新しい医薬品造 形として注目されている
受託 (株)広貫堂 1876年
(明治9年) 701名
(グループ全体)
明治9年、売薬業者らの共同出資によって設立された。いち早く受託生産にも着手 した、富山県配置薬のリーディングカンパニー。設備投資にも積極的
十全化学㈱ 1950年
(昭和25年) 242名 医薬原薬ならびに製薬メーカー向け有機合成物 受託 第一ファインケ
ミカル㈱
1946年
(昭和21年) 429名主力製品の一つパントテン酸カルシウムの世界シェアは、約25%.協和発酵キリ ングループ
受託 大協薬品工業
㈱
1949年
(昭和24年) 120名内服薬から外用貼付剤きず絆まで多種多様な製品を製造販売する総合医薬品 メーカー。龍角散トローチ
受託 ダイト(株) 1942年
(昭和17年) 504名原薬から製剤までの生産体制をベースに三極GMP対応の品質保証体制のもとで の受託製造を行っている
受託 テイカ製薬(株) 1945年
(昭和20年) 339名 貼付剤・点眼剤・軟膏剤・液剤・内服固形剤等の製品開発・製造を行っている 受託 富山化学工業
㈱
1936年
(昭和11年) 930名医薬品の研究開発力が世界的に有名な会社。研究開発に必要な環境や自然に 恵まれており自分の能力を生かせる研究開発型の医薬品会社
受託 東亜薬品㈱ 1940年
(昭和15年) 427名配置家庭薬メーカーとして創業。いち早く大手製薬メーカーと業務提携を結び製剤 技術を研く一方で研究開発にも力を注ぎ独自の開発で成果をあげている 受託 東興薬品工業
㈱
1971年
(昭和46年) 84名世界各国に医薬品外用剤を中心とした数多くの特許を出願している。その特許に 基づく製品を製造して各製薬企業に提供
内外薬品(株) 1902年
(明治35年) 100名 解熱鎮痛剤「ケロリン」が代表的。創業100年を超える歴史ある製造メーカー 受託 日医工(株) 1965年
(昭和40年) 1,138名世界のジェネリック医薬品メーカートップ10の目標を掲げ、高品質の先の超品質を 目指し医薬品製造販売を行っている
受託 日東メディック
㈱
1994年
(平成6年) 489名目に関わる医薬品の製造・販売に特化した製薬会社であり、約60社の製薬企業 から製造を受託している
受託 (株)富士薬品 1930年
(昭和5年) 354名富士薬品グループ。最先端技術を駆使し治験薬や医薬品の多彩な剤形に対応し た受託事業を展開している
受託 ㈱陽進堂 1929年
(昭和4年) 686名 原薬から製剤までの一貫生産体制により高品質で低価格、そして安定供給を図る