• 検索結果がありません。

ジェネリック医薬品の動向

第2章 日本の医薬品産業の動向

第 5 節 ジェネリック医薬品の動向

(1)ジェネリック医薬品の概要

ジェネリック医薬品(Generic drug)とは、先発医薬品と有効成分・含量・用法・用量が 同一で、効能・効果が同等であると国が認めた医薬品である。通常、先発医薬品の再審査機 関および特許期間の満了後に市場に出る。欧米では有効成分の一般名(Generic name)で 処方されることが多いため、「ジェネリック」という言葉で呼ばれている。ジェネリック医 薬品は製剤工夫のため先発医薬品と異なる添加剤3を配合することがあるが、有効性・安全 性に影響しないことが認められたものを使用している。ジェネリック医薬品は製剤の規格 及び試験方法、安定性試験、および先発医薬品との生物学的同等試験4の成績を審査して承 認される。

今日では医療技術や医療機器の発展により、高齢化社会を背景に国民医療費が増加した。

厚生労働省は膨張する医療費を抑制するための政策の一つに、ジェネリック医薬品の普及 があるが、思うように進んではいない。

2007年6月の「経済財政改革の基本方針2007」によれば「平成24(2012)年度までに ジェネリック医薬品のシェア(数量ベース)を 30%以上にする」という数値目標を策定し た。そして2007年10月、厚生労働省は、ジェネリック医薬品に関する安定供給・医薬品 確保・情報提供などの充実・向上と使用促進を図るための「後発医薬品の安心使用促進アク ションプログラム」を策定した。

このアクションプログラムを策定した 2007年度、ジェネリック医薬品の使用率は 17%

程度であった。その後、2013年4月、「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマッ プ」を策定し、「2017 年半ばに 70%以上、2018 年~2020 年度末までに 80%以上に引き上げ ること」を目標としている。このロードマップには、安定供給・品質に関する信頼性の確保・

情報提供の方策・使用促進に係る環境整備・医療保険制度上の事項・ロードマップの実施状 況のモニタリングといった、行政や医療関係者、医薬品業界など国全体で取り組む施策とな っている。

先発医薬品の薬価とジェネリック医薬品の薬価は、三段階に分かれていることが分かる

(表 2-2)。そのため高い薬価を得るために、早く認可を受け薬価を得た方が、高い薬価が つく仕組みとなっている。高薬価のジェネリック製造認可を受けるためには、迅速な対応が 必要となるのである(図 2-10)。今日、競争が激化している要因である。

34

表 2-2 後発医薬品(ジェネリック医薬品)の例

出所:厚生労働省(2015) 「医薬品産業強化総合戦略」 (参考資料)、佐藤薬品工業株式会社 奈良県製薬薬剤師会 第 10 期製薬技術研修会資料「第 9 回 受託事業はどうしたら よいのか?」

図 2-10 医薬品メーカーのバリューチェーンと受託ビジネス

出所:厚生労働省(2015) 「医薬品産業強化総合戦略」 (参考資料)、佐藤薬品工業株式会社 奈良県製薬薬剤師会 第 10 期製薬技術研修会資料「第 9 回 受託事業はどうしたら よいのか?」

研究

開発 創薬 臨床 工業化 認証申請 承認

許可 生産 出荷流通 販売 探索研究

(3-5年) (5-8年)

商用製造

(10-30年以上)

CRO

医薬品開発業務を受託する企業

CMO

CDMO

製薬会社から医薬品の製法開発、ならびに前臨床・治験・商業段階 までの製造を受託する企業

35

(2)ジェネリック医薬品に対する先行研究

先行研究には、横井・大崎・寺倉他(2011)の「ジェネリック医薬品の使用促進が進まな い地域における要因の調査」(2011)がある。この研究では、滋賀県内の全病院及び保険薬 局に対してジェネリック医薬品のアンケート調査を行ったものであり、その結果、保険薬局 の代替率は全国平均を上回っているものの、変更可能な処方箋の発行割合が低いことが要 因であり、加えて医療関係者や患者への周知も不十分であると指摘している。

近藤(2014)は、「2005年薬事法改正以降の富山県医薬品産業の動向と課題」を分析し、

研究の中で富山の医薬品生産金額の推移を調査している。2005 年の 2,636 億円から 2011

年には5,754億円へと高水準で推移していることが分かった。しかし、配置薬から受託製造

への転換要因を中心とした研究では、ジェネリック医薬品の普及と取り組みに関しては深 く分析されていないのである。

以上の先行研究から、本論文では医薬品産業が地場産業である富山の、ジェネリック医薬 品の普及要因に関する研究をし、地域活性化への取り組みを調査し、分析を行った。富山県 は2004年度から、全国に先駆けてジェネリック医薬品の普及促進に取り組んでいる。その 結果としてジェネリック医薬品の使用割合が全国平均を上回っている。国の後発医薬品促 進政策もジェネリック医薬品市場にとっては追い風となっている。医薬品産業が主要産業 である富山にとって、ジェネリック医薬品の普及啓発は、地域活性と密接な関係があること が推察できる。

(3)ジェネリック医薬品の市場をめぐる実態と動向

ジェネリック医薬品は国の使用促進政策の効果により、着実にシェアを伸ばしてきてい

る(図2-11)。それに伴い国内のジェネリック医薬品市場へ、外資系医薬品メーカーや国内

外の新薬メーカー、異業種からの参入が増加している。2020年には80%を目標としている のである。

図 2-11 ジェネリック医薬品の市場シェアの推移

出所:厚生労働省(2016)「後発医薬品の数量シェアの推移と目標値」のデータを参考に 2020 年までの推移と目標値を筆者作成

36

また、海外からの医薬品受注生産が増加傾向にあり、特にジェネリック医薬品はインドや イスラエルの製薬企業が世界でトップを争うなど、国際間の競争が一段と激しくなってい る。2008年、第一三共がインドの製薬企業最大手であるランバクシー・ラボラトリーズを 買収した。さらに2011年には、世界最大のジェネリック医薬品メーカーであるイスラエル のテバファーマスーティカル・インダストリーズが、日本のジェネリック医薬品メーカーの 大洋薬品を買収し、日本進出を果たした。 日本の医薬品流通のシステムが直売ではなく卸 を通して販売するという特異性により、海外の医薬品メーカーは日本の製薬会社と提携ま たは合併しているのである。

武田テバは、武田薬品工業とテバファーマスーティカル・インダストリーズが2016年4 月 1 日に設立した合弁会社である。主にジェネリック医薬品を扱う武田テバファーマと武 田薬品から継承した長期収載品を取り扱う武田テバ薬品の2社から成っているのである。

諸外国と日本のジェネリックリック医薬品の数量シェアの比較においても、日本のジェ ネリック医薬品の普及が不十分であることが伺える(図2-12)。

図 2-12 各国の後発医薬品のシェア(数量ベース、年平均値)

出所:厚生労働省(2016)「各国の後発医薬品の数量シェア」の数値データを基にグラフを筆者作成

各国のジェネリック(後発医薬品)のシェアは、1位はアメリカで92%を占め、2位はド

イツ85%であり、3位はイギリスの75%と高い比率をしめている。日本は7か国のうちの

最下位であるの55%である(図2-12)。

各国のジェネリックのシェアと比較すると、日本はなぜジェネリックが使用されないの か。その原因と、高齢化が進み医療費が増大する日本の皆保険制度を維持できるのかについ て研究調査をする。医療費の削減には、医薬品の占める割合が大きいのである。よって、特 許の切れた高品質・高付加価値の安心で安全な安価なジェネリックが求められているので ある。ジェネリック医薬品の普及は富山県のみでなく、今後の日本の増大する医療費の削減 の要となる重大な要件の一つである。

55%

92%

85%

75%

58%

66%

65%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

日本 アメリカ ドイツ イギリス イタリア フランス スペイン

各国のジェネリック医薬品のシェア(数量ベース、年平均値)

2014.10~2015.9

37

(4)後進国におけるジェネリック医薬品の問題点

2013年4月1日、インドの最高裁は、スイスの大手製薬会社、ノバルティス社(Novartis)

が抗がん剤メシル酸イマチニブである、商品名グリベックの特許の認定とインドでの製薬 企業による後発品の製造と販売の差し止めを求めていた訴訟で、新規性が不十分で、特許と して認められないと訴えを棄却し、後発薬を事実上容認する判決を下した。ノバルティス社 は2005年にインドで抗がん剤のメシル酸イマチニブ(商品名グリベック)の特許を申請し たが、特許庁で却下された。2007年の高裁判決も却下された。インドでは特許審理への意 義を審査する機関も高裁判決を支持した。その後、インドの最高裁で争われ、2013年4月 1日ノバルティス社の訴えが棄却された。

インド特許法は医薬品に対して特許の基準が他の国に比べて厳しい。すでに存在する成 分を組み合わせた新薬等は特許として認められていない。インドの最高裁はグリベックに 使用されている「メシル酸イマチニブ」は既知の物質であり、インド特許法が求める新規性 や発明性の評価を満たさないとして訴えを棄却した。

低開発国は安いジェネリックの薬を要求しているが、現在は特許により高額な医薬品を 買わなければならない状況となっている。例えば「グリベック」であれば年間7万米ドルか かる。一方インドのジェネリック版であれば、年間2500米ドルである。インドの2/3の人 口は1日2米ドル以下で暮らしている。インドは毎年ジェネリック医薬品を1兆円輸出し ている。インドと中国を合わせて、アメリカで使われているすべての薬の有効成分の 80%

以上製造している。

「グリベック」はノバルティス社のいわゆるブロックスター(年間売上10億米ドル(1000 億円)以上)の抗がん剤である。

・反対の意見

製薬会社は、インドにおいて今後新薬の開発の環境を悪化させる例だと考えている。

知的財産権の価値を認めない証拠だと非難した。

・賛成の意見

インドの患者支援団体の弁護士のアナンド・グローバー氏は、現在アメリカにおいては、

薬の化学構造式を変えたり、服用する量を変えたりすることにより新しい特許を得ること が出来る。古い薬のマイナーチェンジに多額のお金が支払われている。たとえば、1日2回 から 1 回に服用方法を変えることによって新しい特許を得ているが、ほとんどが、患者の 利益になっていない。

アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)によって2001年に記録的な速さで承認され、

白血病の様な形態に対しての効果的な治療法を提供している。製薬業界はアメリカ政府に 対し、環太平洋の国々の政府との貿易協定を通し、マイナーな特許を認めるアメリカと同じ ような特許保護政策をとるように活動している。

アメリカの政府はさらに厳しい保護のルールを許可すべきだと主張し始めている。その 結果、貧しい患者は、安いジェネリック医薬品を手にすることが出来なくなってきている。