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子宮頸がんワクチン

第 3 章 日本における予防接種制度の概要と子宮頸がんワクチン

3.4 子宮頸がんとワクチン

3.4.2 子宮頸がんワクチン

この子宮頸がんを予防できるとして開発されたのが、子宮頸がんワクチンである。子宮 頸がんワクチンは、世界保健機関(WHO)の推奨である「前がん病変の予防」指標に基 づく臨床試験において、ほぼ100%の予防効果が、現段階では約9年間継続することが解 っており、統計モデルによる計算では、20年以上の効果継続が期待できるとされている25

(1) ワクチンの概要と日本での実施経緯

20 国立がん研究センターがん情報サービスHP, https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/, 2018年4月閲覧。

21 黒川(2015)内の隈本邦彦による「証言二」参照。

22 この子宮頸がんの罹患数は、地域がん登録全国推計値2012年の値であり、死亡者数は、人 口動態統計2014年の値である。国立がん研究センターがん情報サービスHP,

https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/, 2018年4月閲覧。

23 この25%という数値は子宮頸がん征圧をめざす専門家会議の2008年から2012年に製作さ

れたHP(http://www.cczeropro.jp/qa/371/394.html)による数字であるが、国立がん研究セン ターがん情報サービス(https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/screening_p06.html)の情 報では、2016年の子宮頸がん検診受験率(20歳~69歳)の全国平均は42.3%となっており、

大幅に増加している。

24 子宮頸がん征圧をめざす専門家会議HP, http://www.cczeropro.jp/qa/371/394.html, 2018年 4月閲覧。

25 子宮頸がん征圧をめざす専門家会議HP, http://www.cczeropro.jp/qa/369/379.html, 2018年 4月閲覧。

現在、日本で流通しているワクチンは 2種あり、1 つはイギリス、GSK社の、HPV16 型と18型の2つのHPVに有効な2価ワクチンのサーバリックスと、もう1つはアメリカ、

MSD社の、HPV6型、11型、16型、18型4つのHPVに有効である4価ワクチン、ガー ダシルである(はた 2016:15-16)。これらのワクチンは 2 つとも、遺伝子組み換え技術 を用いた方法で製造されている。サーバリックスは、HPVウイルスの外側の殻のタンパク 質を作るDNAだけを、イラクサギンウワバという蛾の培養細胞に入れて増やすという方 法で製造されており、免疫賦活剤(アジュバンド)26として水酸化アルミニウムとモノホ スホリルリピドA27(MPL)が含まれている。一方、ガーダシルは、酵母の遺伝子を組み 替えて、酵母に HPV の外側の殻を作らせるという方法が用いられており、免疫賦活剤と し て は ア ル ミ ニ ウ ム を 主 体 と し た も の が 添 加 さ れ て い る ( は た 2016:15-16; 黒 川 2015:146-14728)。

日本では、サーバリックスが、2009年10月に厚生労働省により認可を受け12月から 販売され、ガーダシルは、2011年7月に認可され8月から販売が開始されており、2つの ワクチンはいずれも計3回の接種が必要である(厚生労働省2011a; MSD HP29)。接種費 用は地方自治体によっても異なるが、およそ5万円と高額であることから、厚生労働省は 2010年度から「ワクチン接種緊急促進事業」を実施し、各自治体が行う接種事業に公費助 成を行った(厚生労働省 2010b)。その結果、大多数の接種対象者(小学 6 年から高校 3 年の女子30)は、ほとんどの自治体で、この接種を無料または費用の一部負担により受け ることが可能となった(子宮頸がん征圧をめざす専門家会議2012:7-8)。2013年4月、こ

26 免疫賦活剤(アジュバンド)とは、ワクチンの効果を高める物質であり、それ自体には免疫 を誘導する作用はないが、トキソイドや微生物由来の成分と混合して接種した場合に、免疫誘 導力を高め、免疫を長期化する力を持つ。日本では一般的にアルミニウム(水酸化アルミニウ ムやリン酸アルミニウム)が使用されている(大谷・三瀬2009:39)。

27 アジュバンドには、他に細胞壁の構成成分の1つである、リピドAから由来したものも存 在する。リピドAは、細菌の内毒素(細菌が作り菌の外側に放出する毒素を外毒素と呼ぶのに 対し、細菌の構成物それ自体が持つ毒素のこと)の1つであるリポ多糖中に存在するもので、

これが血管内に入ると高熱やショックを起こすので、注射液の製造時にはこれが混入しないよ うに細心の注意を必要とするものである(大谷・三瀬2009:37)。

28 黒川(2015)内の隈本邦彦による「証言二」参照。

29 MSD HP, 「ニュースルーム」2011年7月1日、

http://www.msd.co.jp/Pages/NewsRoomDisclaimer.aspx, 2014年7月閲覧。

30 この年齢群は、子宮頸がんワクチンが公費助成対象となっていた時のものであり、自治体に より、対象年齢には多少のずれがある(子宮頸がん征圧をめざす専門家会議2012:7-8)。定期 接種になってからの対象年齢は、小学6年から高校1年相当の女子とされている(厚生労働省 2013a)。

れらのワクチンは努力義務がある定期接種となり31、販売開始から2017年8月31日まで に、両ワクチンを合わせて約 340 万人が接種を受けた(薬害オンブズパースン会議 2018:10)。

サーバリックスの医薬品添付文書においては、このワクチンが HPVの内の16型と18 型の感染を予防するとされているが、この2つのHPVによる子宮頸がんの日本人の発症 率は、子宮頸がん全体の約半分であり(黒川2015:74)、日本人女性における16型および 18型の感染率はそれぞれ0.5%および0.2%である(はた2016:14,26)。また、ワクチンの 接種を受けて予防効果が期待できるのは、6~10年とされており、中学 1年の13才で接 種しても、大学卒業時の 20 代には効果は消滅し、再接種が必要とされると考えられてい る(安田2013:10-11; 黒川2015:19532)。

さらに、これらのワクチンには2つとも、通常、医薬品を選択する際にその有効性や安 全性を示す指針となる、実際に子宮頸がんへの罹患を減らしたという実績が、使用開始時 には存在していなかった。厚生労働省も「子宮頸がん予防ワクチンは新しいワクチンのた め、子宮頸がんそのものを予防する効果は証明されていない」と明言している(厚生労働 省2010a,2013c; 安田2013:11; 黒川2015:75,147-15133)。

(2) 欧米製ワクチンの日本での適用

前(1)で述べたように、これら2つのワクチンは、イギリスとアメリカで製造されたもの である。言うまでもなく、第二次大戦後から日本は著しく欧米化したとはいえ、これらの 国と日本はその歴史や文化において同一ではない。

子宮頸がんは、性交渉によりHPVに感染することで発症するがんであり、その効果も、

被接種者において性交経験がないことが前提となっている(安田2013:13)。ここで注目す べきであるのは、日本の女性の性的活動が、欧米の女性と同じ時期に始まるのかという問 題である。これは大変デリケートで個人的な問題であり、アンケート調査の結果なども信 憑性が問題となるところであるが、10代の妊娠率からの推測は可能と考える。

ワクチンの接種対象は各々、サーバリックが 10 才以上、ガーダシルが9 才以上の女子 だが、日本での接種対象年齢は、小学校6年または中学1年から高校1年生相当の年齢(お

31 厚生労働省HP, 予防接種法の一部を改正する法律の施行等について, http://www.mhlw. go.jp/topics/bcg/tp250330-2.html, 2014年8月閲覧。

32 黒川(2015)内の西岡久寿樹による「証言三」参照。

33 黒川(2015)内の隈本邦彦による「証言二」参照。

およそ12歳から16歳)である。そこで、10代(15才から19才)の女性の妊娠率を比 較すると、2012年の10代女性1000人中での妊娠数は、最多がニジェールの208人、最 少が韓国の1.7人であり、アメリカが30人、イギリスが18人、日本は4.5人である34。 この数値だけで、その国の女性の性的活動開始の時期を特定することはできないが、10代 で妊娠する率が低いということは、それだけ性的な活動もその年齢群では少ないという推 定は可能であると考える。2.2.5において、何をリスクと認識するかは文化により異なると いうメアリー・ダクラスの主張に言及したが、性的活動が 10 代で活発になる文化圏と、

そうでない文化圏があるとすれば、子宮頸がんワクチンの接種対象年齢に関しても、欧米 の現状を、そのまま日本という異なる文化圏に適用することには問題があると考える。こ の点については、6.2.6および6.3.3において論議を展開する。

次項 3.4.3 では、この子宮頸がんワクチンを選択した結果、若い女性達が被った副反応

被害とはどのようなものであるかについて、詳しい見分を行う。

3.4.3 重篤かつ多岐にわたる副反応