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第 4 章 日本語の調査結果の分析

第 2 節 各場面における意味公式の使用率

図 4 日本語における場面 1 の意味公式の使用率(%)

次に、場面 2 の意味公式の使用状況を詳しくみる(図 5)。「親友に頼まれたジュース を買い忘れた」場面 2 においても、使用された主な意味公式は謝罪の定型表現(82.2%)と 非定型表現の〔事実認め〕(83.9%)であり、いずれも 8 割以上の回答者が使用している。

このほか、〔対策/提案〕(19.8%)と〔感動詞〕(20.5%)が 2 割ほど用いられる。母親 に対する場面 1 と比較すると、数字的に多少の違いはみられるものの、謝罪の定型表現と〔事 実認め〕が場面 1 と場面 2 での謝罪の基本要素であることが明らかになる。〔対策/提案〕

において、対母親より対親友のほうが 1 割高くなっているのが比較的目につく。これは、親 友に対しては母親よりも気をつかっている表れだと考えられる。しかし、全体的にみれば、

日本語話者は相手が母親でも親友でも、あまり変わらない謝罪言語行動をとるといえよう。

図 5 日本語における場面 2 の意味公式の使用率(%)

続いて、「母親の服に醤油をこぼした」場面 3 をみると、定型表現が 95.5%用いられ、

この場面で最も多く使用される意味公式となっている(図 6)。これに対し、非定型表現に おいては、〔感動詞〕が 24.5%と 2 割以上使用され、この場面で定型表現に次いで多く用 いられる意味公式である。このほか〔気遣い〕が 19.2%と 2 割ほど使用されている。この 使用傾向から、場面 3 では、ほとんどの日本語話者は、母親に対して謝罪の定型表現を使用 し、しかもそれのみで謝罪する回答者が多いことがわかる。また、これに加え、謝罪表現の 前に「あ、」などの感動詞をつけたり、「大丈夫?」などの気遣いのことばをかけたりする場 合もあることが覗える。

図 6 日本語における場面 3 の意味公式の使用率(%)

いっぽう、同じ「相手の服に醤油をこぼした」場合でも、相手が親友である場面 4 ではど うであろう(図 7)。ここでも謝罪の定型表現が圧倒的に多く使われており、100%近くの 使用率である。非定型表現をみてみると、〔気遣い〕が 32.3%と最も高く、その次が〔対 策/提案〕で 25.3%、〔感動詞〕が 17.3%である。相手が母親である場面 3 と比較すると、

〔対策/提案〕と〔気遣い〕が場面 3 より 2 割近く増えている点が目を引く。親友に対して 醤油をこぼしたことで発生した不快状況を改善すべく、対策を提案したり、気遣いを見せた りする必要性を感じていることが覗える。このような違いはあるものの、「醤油をこぼした」

場合には、定型表現を圧倒的に多く使い、他の表現はいくつかに限られているというパター ンは、母親と親友に対して共通にみられるといえよう。

図 7 日本語における場面 4 の意味公式の使用率(%)

次に、「母親に借りていたビデオカメラを壊した」場面 5(図 8)だが、ここで最も多く 使われた意味公式も謝罪の定型表現(89.1%)であった。非定型表現をみると、3 割近くの 回答者が〔事実認め〕(27.0%)を使用しており、ほかの意味公式はかなり低い使用率をみ せている。こうした傾向から、母親に対する重い謝罪場面においては、他の場面と同様に、

謝罪の定型表現を主に使うことで謝罪を成立させることがわかる。しかしいっぽうで、ビデ オカメラをこわしたという場面の性格上、その事実をことばで認めることも、定型表現の使 用と共に重要視されていることがわかる。

図 8 日本語における場面 5 の意味公式の使用率(%)

いっぽう、「親友に借りていたビデオカメラを壊した」場面 6 においては、日本語では 96.5%の回答者が謝罪の定型表現を使用しており、この場面で用いられる主な意味公式とな っている。定型表現以外の意味公式の使用については、4 割以上の回答者が〔対策/提案〕

(43.9%)を使用している。場面 5 と比べてみると、定型表現はどちらにも非常に多く使わ れているが、非定型表現の〔対策/提案〕が母親にはわずか 6.6%であったのに、親友には 43.6%と、多く使われていることがわかる。これは回答者が両親に経済的に依存している大 学生であることから、「ビデオカメラを壊した」ことで母親に弁償などの対策を講じる事態 になりにくいのに対し、親友にはそれが必要となることの現れと考えられる。〔事実認め〕

が母親の場合(27.9%)より少ない(14.5%)のは、〔対策/提案〕をすること自体が、カ メラを壊した事実を認める機能を持っているからだと考えられる。

図 9 日本語における場面 6 の意味公式の使用率(%)

以上、日本語における各場面の意味公式の使用状況を概観した。全体的にいずれの場面 においても、定型表現が非常に多く用いられ、それのみでも謝罪として成り立つのが特徴で ある。非定型表現も含めてみると、場面ごとの性格によるものの、定型表現と〔事実認め〕、

定型表現と〔気遣い〕、定型表現と〔対策/提案〕のような組み合わせが典型的であり、非 定型表現の使用率と種類は少なく、表現方法がパターン化していることも大きな特徴である。

また、母親と親友に対しては、一見して意味公式の使用傾向が非常に似かよった謝罪言語行 動をとることが窺える。母親と親友についての比較は、第Ⅱ部の第 2 章であらためて取り上 げ、考察を深める。