第 7 章 「多文化空間」における保育所の利用者及び利用状況について
第3節 保育所利用者の利用実態
第1項 週の利用回数-「毎日・平日全部」の利用者が
8割以上
それでは先ず,保育所利用者の利用実態として,子どもを
1週間にどのくらいの回 数保育所に預けているのかについてみていく.この質問は,調査票の
q7においてお こなった.q7 の度数分布を確認した結果,以下の表
7-23の通り値の再割り当てを おこなった.
使用した変数 対応する選択肢と変域,変数処理の詳細
週に子どもを預けている回 数(q7)
「1.毎日, 2.平日全部, 3.週3~4回,
4.週2回~3回, 5.週2回以下」との設問項目を 以下のように値を再割り当てした.
1,2=1:「毎日・平日全部」
3,4=2:「週2~4回」
5=3:「週2回以下」
なお,「週2回以下」についての回答はゼロだった.
表20. 分析に用いた変数と値の再割り当ての詳細
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
毎日・平日全部 29 96.7 96.7
週2~4回 1 3.3 3.3
合計 30 100.0 100.0
表7-24.週の利用回数(階層Ⅰ,Ⅱ)
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
毎日・平日全部 18 90.0 90.0
週2~4回 2 10.0 10.0
合計 20 100.0 100.0
表7-25.週の利用回数(階層Ⅲ)
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
毎日・平日全部 15 88.2 88.2
週2~4回 2 11.8 11.8
合計 17 100.0 100.0
表7-26.週の利用回数(階層Ⅳ)
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
毎日・平日全部 20 90.9 90.9
週2~4回 2 9.1 9.1
合計 22 100.0 100.0
表7-27.週の利用回数(階層Ⅴ)
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
毎日・平日全部 5 55.6 55.6
週2~4回 4 44.4 44.4
合計 9 100.0 100.0
表7-28.週の利用回数(階層Ⅵ)
181
表7-24から7-28は,週に保育園を利用している回数に関する度数分布表である.週の利 用回数については,階層Ⅰ~Ⅴ(表7-25~28)については,子どもをほぼ毎日,保育所に 預ける人びとが8割以上となっており圧倒的に多い.専業主婦が構成要素となる階層Ⅵ(表
7-28)は,「毎日又は平日全部」と「週2~4回」の利用回数で約半数ずつを占めている状
況だ.
第2項 利用している保育時間
では
次に,利用している保育時間について見ていく.保育時間については,本調査票q8 において質問をおこなった.分析可能な変数とするため,表7-29の通り変数処理をおこな った.度数の散らばり具合をみた結果,上記のように値の再割り当てをおこなった理由としては,
次のようなことが考えられたからだ.先ず,「7時間~9時間利用者」というのは,例えば,9 時に子どもを預けて,17時に迎えにいくというような,一般的によく言われる9-5時スタ イルの働き方に該当するような人びとが入る.「10時間~12時間利用者」というのは,9時 からの利用の場合は,19時に子どもを迎えにいくことになるので,9-5時スタイルの働き方 より,もう少し長時間,あるいは,残業があるような働き方をする人びとが該当する.そし て,「13時間以上」というのは,9時からの利用の場合は,22時まで利用することになるた め,これは,夜間まで働く人びとが該当する.本論文第5章で述べたが,新宿区の「夜間保 育園」の基準は,午後10時まで保育をおこなう保育園のことである(第5章,p.151).つま り,「13時間以上保育利用者」とは,夜間保育利用者となる.それでは,以上のことを踏ま えつつ,階層別に保育時間について見ていく.
使用した変数 対応する選択肢と変域,変数処理の詳細
利用している保育時間(q8)
( )時から( )時まで.
終了時間から開始時間を引き算して,利用してい る保育時間を算出.度数分布表を出力した結果,
以下のように値の再割り当てをおこなった.
3~6時間=1,7~9時間=2,10~12時間=3,
13時間以上=4 表7-29 分析に用いた変数
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
7~9時間 4 13.3 13.3
10~12時間 22 73.3 73.3
13時間以上 4 13.3 13.3
合計 30 100.0 100.0
表7-30.利用している保育時間(階層Ⅰ,Ⅱ)
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
7~9時間 4 20.0 20.0
10~12時間 10 50.0 50.0
13時間以上 6 30.0 30.0
合計 20 100.0 100.0
表7-31.利用している保育時間(階層Ⅲ)
182
表7-30~7-34は,職業階層別の保育利用時間の度数分布表である.これらの表を見る
と,階層Ⅰ,Ⅱ(表7-30)は,30件中,22件(73.3%)が「10~12時間」の利用者で最 も多い値となっている.それ以外の時間数に回答したのはそれぞれ一割程度の回答者とごく 少ない.階層Ⅲ~Ⅴ(表7-31~33)も,「10~12時間」の利用者が4割~5割程おり多い が,他の時間数についても2割~3割程の回答者がいる.階層Ⅵは,全体の7割が「7~9時 間」の利用者だ.
以上のように,主に正社員の管理又は専門・技術職で構成されている階層Ⅰ,Ⅱは,10~
12時間の利用率が非常に高い一方で,他の時間帯についてはほとんどニーズがない.階層Ⅰ,
Ⅱの人びとは,先にも述べたが,9時からの利用の場合は,19時に子どもを迎えにいくとい うような働き方をしているということであり,夜間勤務の傾向にない人びといえる.次に,
階層Ⅲ~Ⅴは,「10~12時間」の利用者の割合が高くなっていると言えるが,他の時間数に ついても回答者がある程度おり,むしろ,様ざまな時間帯にニーズがあると言える.つまり,
正社員で且つ,管理職か専門・技術職に就いている人びと(階層Ⅰ,Ⅱ)以外は,働き方が 固定されているものではなく,様ざまな保育時間帯にニーズがあるということだ.それでは,
次では,保育等にかけている金額についてみていく。
第3項 ひと月に保育等にかけているお金
本節では,ひと月に保育等にかけているお金(q9)をみる.なお,この質問は,調査票上 の文言では,「保育所等の利用に一カ月にどのくらいのお金をかけていますか。普段利用して いる以外の緊急時の保育サー-ビス(例えば,ベビーシッターなど)の利用も含めて,以下 から当てはまるものに一つだけ〇を付けて下さい」との通り,普段利用している保育所以外 の臨時の保育サービスの利用料金を含めた保育にかけているお金を聞いたものである.
以下の表7-35~7-39は,各階層のひと月に保育等にかけている金額の度数分布表である.
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
7~9時間 4 23.5 23.5
10~12時間 9 52.9 52.9
13時間以上 4 23.5 23.5
合計 17 100.0 100.0
表7-32.利用している保育時間(階層Ⅳ) 度数 全体パーセ
ント
有効パーセ ント
3~6時間 2 9.1 9.1
7~9時間 4 18.2 18.2
10~12時間 9 40.9 40.9
13時間以上 7 31.8 31.8
合計 22 100.0 100.0
表7-33.利用している保育時間(階層Ⅴ)
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
3~6時間 2 22.2 22.2
7~9時間 7 77.8 77.8
合計 9 100.0 100.0
表7-34.利用している保育時間(階層Ⅵ)
183
以上の表をみて分かる通り,階層Ⅰ,Ⅱ(表7-35)は,30件の回答のうち19人(63.3%)
が,保育にひと月10万円以上の金額をかけていると答えている.階層Ⅰ,Ⅱの平均世帯年収 は,共に1000万円を超える裕福層であるため,保育等にかけられる金額も高くなっている可 能性がある.
階層Ⅲ(表7-36)は,「2万円以上~4万円未満」の金額区分に回答した者が最も多く,
20件中7人(35%)となっている.その一方で,「10万円以上」の区分に回答したひとも6 人(30%)おり,保育等にかけている金額の二極化が見られる(表7-37参照).この二極化 は,この他の階層でも見られる.階層Ⅳは,17件中7人(41.2%)が「10万以上」に回答し ているが,それと同数の人びとが,金額区分として最も低い「2万以上4万円未満」に回答 しており,二極化が顕著である(表7-38参照).階層ⅢとⅣの平均世帯年収は,ともに700 万円を超えており比較的高収入の階層といえる.しかし,両階層とも階層内での世帯年収を 見てみると,「年収600万円以上800万円未満」の金額区分を境に,低収入よりの家庭と高 収入家庭に二分されてることが分かる(表7-20参照).つまり,階層Ⅲ,Ⅳは,階層内で世 帯年収が二極化されているため,ひと月に保育等にかけることのできる金額もそれに伴い二 極化されているということなのだろうか.
階層Ⅴは,「2万円未満」の回答者が,22件中,10人(45.5%)と最も多く,続いて,「2 万円以上4万円未満」に6人(27.3%)のひとが回答している(表7-38参照).階層Ⅴは,
この下位2つの金額区分の回答者で全体の7割以上を占めている.階層Ⅴの平均世帯年収は,
度数 全体パーセ
ント
有効パーセ ント
2万以上~4万未満 3 10.0 10.0
4万以上~6万未満 1 3.3 3.3
6万以上~8万未満 4 13.3 13.3
8万以上~10万未満 3 10.0 10.0
10万以上 19 63.3 63.3
合計 30 100.0 100.0
表7-35.ひと月に保育等にかけるお金(階層Ⅰ,Ⅱ)
度数 全体パーセ
ント
有効パーセ ント
2万未満 4 20.0 20.0
2万以上~4万未満 7 35.0 35.0
6万以上~8万未満 1 5.0 5.0
8万以上~10万未満 2 10.0 10.0
10万以上 6 30.0 30.0
合計 20 100.0 100.0
表7-36.ひと月に保育等にかけるお金(階層Ⅲ)
度数 全体パーセ
ント
有効パーセ ント
2万未満 7 41.2 41.2
2万以上~4万未満 1 5.9 5.9
4万以上~6万未満 1 5.9 5.9
8万以上~10万未満 1 5.9 5.9
10万以上 7 41.2 41.2
合計 17 100.0 100.0
表7-37.ひと月に保育等にかけるお金(階層Ⅳ)
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
2万未満 10 45.5 45.5
2万以上~4万未満 6 27.3 27.3
8万以上~10万未満 2 9.1 9.1
10万以上 4 18.2 18.2
合計 22 100.0 100.0
表7-38.ひと月に保育等にかけるお金(階層Ⅴ)
度数 全体パーセ ント
有効パーセ ント
6万以上~8万未満 2 22.2 22.2
8万以上~10万未満 1 11.1 11.1
10万以上 6 66.7 66.7
合計 9 100.0 100.0
表7-39.ひと月に保育等にかけるお金(階層Ⅵ)
184
738万円となっており,比較的高収入家庭の階層であると言えるが,保育等にかけている金 額はどの階層よりも低くなっている.
階層Ⅵは,6万円以下の金額区分の回答者はゼロだった(表7-39参照).9件の回答のう ち,「6万円以上~8万円未満」に2人,「8万円以上~10万円未満」に1人,「10万円以上」
に6人が回答した.階層Ⅵの平均世帯年収は,950万円と高額のため,保育等にかけられる 金額も高額となることが伺える.
以上のように,階層Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅵの分析結果をみると,世帯年収と保育等にかけて いる金額に相関がありそうに思われるが,階層Ⅴの分析結果は,それには該当しない.世帯 年収と保育等にかけている金額に相関があるのかどうか,また相関があるとしたら,階層Ⅴ の結果はどのように解釈できるのか.そのことを明らかにするため,世帯年収と保育等にか けている金額や各階層がどの保育園(認可園又は無認可園など)を利用しているのかについ て,クロス表分析をおこなう.
第4項 世帯年収と保育等にかけている金額のクロス表分析
本項では,クロス表分析を用いて世帯年収と保育等にかけている金額に相関があるかどう かを分析する.階層と世帯年収のクロス集計表(表7-20)から,年収600万円以上800万 円未満の金額区分を境に,世帯年収の傾向が二分されていることが分かったため,年収600 万円未満を「低~中収入家庭」,そして,800万円以上を「高収入家庭」とする,合成変数を 作成し,保育等にかけている金額との関係をみる.
表7-40は,世帯年収とひと月に保育等にかける金額のクロス集計表である.χ2検定の
結果p<.05になっているため,統計的に優位な関連があると判断できる.結果を見ると,低・
中収入家庭のひと月に保育等にかけている金額は,2万円未満と2万以上~4万円未満の金額 区分に全体のおよそ7割が集中している.また,高収入家庭は,10万円以上のこのひとカテ ゴリーに全体の6割が集中しており,8万円以上~10万円未満のカテゴリーの数値を合わせ ると,この2カテゴリーで8割を占めている.このような分析結果から,世帯年収が低い家 庭は,保育にかけている金額が低い傾向にあり,世帯年収が高い家庭は,保育にかけている 金額が高くなるという関連が明らかになった.
第3項では,階層Ⅰ,Ⅱがひと月10万円を超える保育料を支払っている家庭が多いことが 明らかになったが,以上のような分析結果から,これは階層Ⅰ,Ⅱが,平均世帯年収1,000 万円を超える裕福層であるため,保育にかける金額も高くなっていると言える.また,階層
2万未満 2万以上~4 万未満
4万以上~6 万未満
6万以上~8 万未満
8万以上~10
万未満 10万以上
低・中収入家庭 12(46.2%) 8(30.8%) 2(7.7%) 1(3.8%) 2(7.7%) 1(3.8%) 26(100%) 高収入家庭 0(0.0%) 4(6.8%) 0(0.0%) 6(10.2%) 10(16.9%) 39(66.1%) 59(100%) 合計 12(14.1%) 12(14.1%) 2(2.4%) 7(8.2%) 12(14.1%) 40(47.1%) 85(100%)
世帯年収
ひと月に保育等にかける金額
合計 表7-40 世帯年収とひと月に保育等にかける金額のクロス集計表
χ2(df=5, N=85)=55.96, Cramer' V = 0.81, p<.05。