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企業謝罪の国際クロス比較

ドキュメント内 社会的機能としてのメディア“謝罪” (ページ 164-172)

第 4 章 謝罪の比較研究

第 5 節 企業謝罪の国際クロス比較

価された記事を二つ対象として用いた339。公聴会での発表は謝罪会見とは呼ばないが、グ ーグルの検索に”Toyota apology”の検索を入れると必ず出てくる映像であった。そのた め、謝罪経験として映像を使った。マクドナルドの場合、2015年2月5日に行われたFNN

の YouTube に残された謝罪を対象とした。これ以外に、東洋経済オンライン新聞と

Forbes AsiaとJapan Timesの記事も比較研究のために用いた。

比較分析

トヨタの社長の公聴会での発表をどこまで謝罪会見として扱うかどうか疑問があるが、

メディアの前で行われた発表であり、謝罪の言葉も発言している。よって、日本の形式化 された謝罪会見とは違うが、次の理由で分析対象として使うことにした。日本の場合は、

伝統的な謝罪として名付けた、被害者と加害者の間で行われる謝罪会見が存在するが、公 聴会のケースでも伝統的な謝罪と似たように、加害者あるいは、被害者の代わりに代表が いて、謝罪者が被害者の代表に向かって事情を説明して謝る。その行為をメディアが録画 して視聴者に見せる。今回のトヨタの場合、アメリカの全国民に影響を与えそうな事件で あったため、被害者の代わりに公聴会の会長が代表としている。会長とトヨタの社長の間 に行われている会話をメディアが録画して報道する。このことにより、アメリカでのトヨ タの会見は伝統的な謝罪会見としても捉えることができ、謝罪会見の一種類として扱うこ ととした。

本会見の特徴は日本の企業が外国で起こした問題の場合、問題を起こした国の文化に合 わせて謝罪するべきであるのか、自国の謝罪の定義に合わせて謝ればよいのかということ である。Kellerman によると謝罪は文化、内容そしてジェンダーによって形式化されてい る。更に、謝罪者が理解しないといけないのが、各文化の視聴者が謝罪を異なる方法で解 釈することである340。つまり、各文化に合わせて謝罪することが正しいやり方である。今 回、トヨタの謝罪もこれの一つの例であった。豊田社長の発表は日本の視聴者には合わな い方法で行れ、アメリカンスタイルの謝罪会見に合わせてあった。それを証明するために いくつかのポイントを取り上げる。

① 感情移入させる発言

”I love cars as much as anyone. And I love Toyota as much as anyone.“

「皆さんと同じように私は車が好きです。皆さんと同じようにトヨタが好きで す341。」(2:31-2:39)

まず、豊田社長は発表を感情的な発言から始めた。日本の謝罪会見でほとんど見られな い感情的な構造である。視聴者に同意を得るためのプロセスとも考えられる。このような 感情的な言い方は理化学研究所の小保方晴子の謝罪342で「STAP 細胞はあります」という 論理ではなく感情に近い発言に似ている。

② お礼

トヨタの社長は、話の最初に会長に今回はこの場で発表出来る機会をいただいたことに 対するお礼を述べている。それは日本の謝罪会見の場合、「本日はお忙しい中、お集まり をいただきありがとうございます」という意味と同じであろう。

”I would like to express my appreciation(中略)for giving me this opportunity to express my thoughts today.”

「今日は、私の意見を発言できる機会をいただき、感謝の気持ちを伝えたいで す。」343(3:50-4:14)

③ 責任を取ること

”However in the past few months our customers have started to feel uncertain about the safety of Toyota`s vehicle and I take full responsibility for that.”

「しかし、最近の数か月間お客さんはトヨタ自動車の安全に対する不安が高ま っていき、それに対して私は全面的な責任を負います。」344(3:03-3:16)

341 “Toyota Gas Pedals.”

342 https://www.youtube.com/watch?v=bLcROcJ9Z-E

343 “Toyota Gas Pedals.”

344 Ibid.

トヨタの社長は発表を始めてすぐにすべての責任を取るという発言をした。日本の謝罪 ではこのように、すべての責任を負うという発言はほとんど聞かれないので、アメリカの 社会に合わせて責任問題をはっきりさせるためにこう述べたのだろう。

④ 謝罪

”I am deeply sorry for any accident that Toyota driver have experienced, especially I would like to extend my condolences to the members of the Saylor family for the accident in SanDiego. I would like to send my prayers again and I will do everything in my power to ensure that such a tragedy never happen again.”

「事故を経験したトヨタ自動車の運転者に深くお詫びを申し上げます。特にサ ンディエゴのセーラー一家にお悔みを伝えたいです。お祈りを送り、このよう な事故が再び起こらないように全力で努力します。」345(7:40-8:08)

謝罪を表す表現は、勿論日本にもあるが、形式化された謝罪表現が使われている。トヨ タの社長の感情的な謝罪は日本ではほとんど聞かれない表現である。日本では「ご迷惑を おかけまして申し訳ございません」という表現を使い、細かく○○家族にとはいわない。

一方、今後の約束については日本の謝罪会見と同じようにここにも見られている。

28.豊田章男トヨタ自動車株式会社の社長346

トヨタの謝罪を全体的に分析すると、日本の謝罪より感情的な言葉が現れている。日本 では言葉ではなく、顔の表現、お辞儀、涙で感情を表すが、アメリカでは体ではなく言葉

で感情を出す。逆にそれが日本人は言葉の表現には信頼を持たない347ことを証明するだろ う。この謝罪の構造を見ると、三つのグループに分けられる。まず、一番目はトヨタのイ デオロギー、二番目はリコールの問題の説明、三番目は品質管理マネジメントであった。

お客様の安全について 3 回も繰り返し、発表の最後にはもう一度感情的な方向へ戻り、

「私の名前はすべての車に付してあります。必ずお客様の信頼を戻すために努力すること を私は約束します。」と述べた。

一方、どんなに感情的でもアメリカの研究者はトヨタのパフォーマンスを良い謝罪とし て認めてなかった。The Perfect Apology348はお悔みと発言するのはよいが、それは実際、

何に対してのお悔みであるのか。リコールが遅くなったことに対する失敗を認めているの か、あるいは国民のみなさんと同じように亡くなった人に対するの悔やみであるののか。

更に、トヨタは実際の自分の失敗に距離を置き、それに対する説明も謝罪もなかった。

このように、The Perfect Apologyの研究者によって欧米と日本の謝罪の差異が見えてく るようになった。日本の謝罪は、曖昧さに注目しないといけない。ほぼ10分間の説明で、

誰が誰に何に対してお悔みを感じているのか分からない。誰が誰に何のことに対して謝罪 しているのかも分からない。トヨタが失敗したのか、どこでしたのかも分からない。責任 を負うと言っているが、誰に何に対する責任を負うかも分からない。一応説明はしたが、

はっきりした説明ではなく、曖昧さの残る説明で、事情は隠されたままであった。

29.マクドナルドホルディングスジャパンの謝罪349

347 Clancy, The Acquisition of Communicative Style in Japanese.

348 “Toyota Apology | Recall | The Perfect Apology.”

349 (全録)日本マクドナルドのサラ・カサノバ社長が会見.

マクドナルドのサラ・カサノバ社長の謝罪を分析すると、言語的な発言でトヨタとの謝 罪と類似点が多い。一方、非言語的な方法から見てみると、カサノバ社長は日本の形式化 された謝罪を演じていたと言える。会見場に入る時、他の取締役とともにカサノバ社長も お辞儀したが、お辞儀の長さは長く、挨拶ではなく謝罪としても理解しやすかった。

社長の発表は日本語で書かれものを英語に翻訳したものだということがすぐ分かる。”

Thank you for coming today despite your busy schedules.”は「本日お忙しいの中お集ま りをいただきまして誠にありがとうございます。」という表現だろう350。更に挨拶の後、

すぐに謝罪に入り、

”I would like to sincerely apologize once again for all of the great anxiety and concern that the recent reports of food related foreign objects have caused our customers.”

「異物混入問題が起きましてお客様に多大なご迷惑、ご心配をおかけしまして、

ここで改めて深くお詫び申し上げます。」351 (2:00-2:27)

そこでもう一度 3 人が立ち上がり、6 秒の長いお辞儀を行った。そこからカサノバ社長 は冷静に自分たちの前回の失敗を説明し、言葉で再び謝った。事前の問題に関して、誤解 しやすい説明、遅かった謝罪、直接社長が現れなかったことに対しても謝った。つまり、

自ら前回の謝罪方法の失敗を理解し、今回の問題が発生して、日本の社会に合わせて、早 くて謝罪したのだろう。次に、原因の調査と今後の対応についての約束をした。ここで、

トヨタと似たような表現を使い、企業の責任を感情的な表現で説明する。

”We serve billions of menu items every year. And in the food industry we understand that these kind of incidents should never happen. It is our responsibility to do everything we can to attain as close to zero as possible.”

「私たちは毎年十数億食のお食事をご提供させていただいております。食べ物 を扱う企業として、異物混入はあってはならないことです。私たちはこれを可

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